泣き顔 朝の気配に瞼が上がる。
寝起きのぼんやりとした視界に映るのは愛しい人の寝顔。
穏やかな寝息をたてて眠る姿に思わず触れたくなるが、グッと堪えて身体を起こす。
静かにベッドを抜け出し寝室の扉を開けても恋人は起きる気配が無い。
そっと扉を閉めて朝の準備に取り掛かる。
そうして朝食を作っていれば、不意に寝室の扉が開いた。
音の先を見れば、まだ眠そうな目を擦りながらラーハルトがこちらを見つめている。
「おはよう、ラーハルト」
調理の手は止めずに挨拶をすれば、見た目にそぐわず掠れた声で小さな返事が返る。
「もうすぐ出来るから顔でも洗って目を覚ましてこい」
半分夢の世界にいるラーハルトが小さく頷き井戸へと向かう姿はどこか幼げで微笑ましい。
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