へそ 行方不明の勇者を探して早幾日。
魔族の特徴が強い者が人里を訪れるのはまだ人々へと理解が足りないと判断し、ラーハルトはヒュンケルと共に人無き地を旅していた。
そうしてたどり着いたとある山奥。
登り始めこそ晴天であったが、一時もしないうちに黒々とした雲が辺りを覆い始めた。
「降りそうだな」
ラーハルトが呟きながらヒュンケルを見ると、見たことのないような神妙な顔で雨雲を見つめていた。
「ヒュンケル?」
不思議に思いながら再度声をかけると、ヒュンケルは雨雲からラーハルトに視線を移し、ゆっくりと頷いた。
「どこか凌げる所を探した方がいいな」
聞いていたのか、とラーハルトは若干呆れつつも、今は雨宿り出来る場所を探すのが先決だと言わんばかりに辺りを見回した。
1950