Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    bell39399

    @bell39399

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 115

    bell39399

    ☆quiet follow

    ハッピーバースデーエレインちゃん!
    お家に帰り着いたようです。
    1ヶ月間お付き合い頂きありがとうございました!
    こういうちょっとずつ書くほうが向いてるっぽいのでなにかの折にまたやりたいです。
    かけなかったエピソードもあるしそのうち本にまとめようかな…

    #バンエレ誕2024

    ハッピーバースデーエレイン!!さいご!! いよいよ《旅行チケット》の旅程、最終項目。すなわち、帰宅だ。
     ベンウィックに戻った二人を迎えたのは、いきなりの宴会だった。
     そこにはかつての仲間も、先日妖精界で会ったばかりのキングとディアンヌの家族までいる。あまりの用意周到ぶりにバンとエレインは大笑いした。
    「だって今日はおふくろの誕生日だから」
     とランスロットは語る。
    「旅程通りにしてくれるかどうかだけ不安だったけどな」
    「そこはちゃんとセガレの力作の通りにするぜ♪」
     バンはすでに上機嫌で酔っ払っている。彼の息子は「おふくろがいりゃあ大丈夫だと信じてたけど」と頭を振った。
    「そうそう、お土産がいっぱいあるの、見て!」
     そう言って手渡したのは例の旅日記だ。白紙ですっきりと綺麗だった日記帳はエールラベルやら押し花やらで膨れ上がっている。
    「活用してくれたんだな」
     それを受け取ったランスロットは、少年のように微笑んだ。

     親しい仲間や家族との宴会が楽しくないわけはない。皆が持ち寄ったプレゼントをエレインに渡し、子供たちは歌や踊りでお祝いをする。食卓に並ぶのはエレインの好物ばかりだ。
    「凄いわ、お料理もいっぱい。これ全部ランスロットが考えたの?」
    「いや、みんなで。つーか、な、オヤジ」
    「まぁな。実は帰る日に合わせてエレインの誕生日やるって話は前もってランスとしてたんだぜ~♪」
     突然明かされた秘密にエレインは「全然気づかなかった」と手で口を覆う。
    「オヤジがレシピ残していって、今日みんなで準備した」
     ほら、とランスロットが見せたのは紙の束だ。お世辞にも丁寧とは言い難いバンのダイナミックな文字で、レシピがびっしり書かれている。エレインには読めなかったが、最後にひときわ濃い文字で「とにかく愛」と添えられていた。
    「大変だったでしょう。ありがとう、バン、ランスロット。みんなも」
    「いや、オヤジが簡単に誰でも作れるやつを考えておいてくれたから……」
     面と向かって感謝され、照れたのだろう。ランスロットは視線をそらせてぼそぼそしゃべる。そんな息子をエレインはふんわり抱きしめた。他者の心が読める彼らだが、そんな能力がなくっても気持ちは通じ合っている。
    「誕生日ってよくわからなかったけど、改めて皆を思いやる日なのね」
     妖精姫はそういうと、花が綻ぶような笑みを見せた。



     その夜……。

    「セガレや親類の力借りたプレゼントばっかじゃな。俺からはこいつをやるぜ、エレイン♪」
     そう言ってバンがエレインに差し出したのは、見たこともないような燃える紅色の美しい石のかけらだ。よく見ると中で炎のような光が揺らめいている。歓声をあげたエレインは夢中で石を透かし覗き込んだ。
    「凄いわバン。こんなに不思議で綺麗な石、見た事がない!」
    「ディアンヌもそう言って驚いてたな♪」
    「まぁ……」
     地の魔力をもつ巨人族であるディアンヌは、いわば鉱石のエキスパートだ。その魔力で金剛石すら創り出せる彼女の口からそのような言葉を言わせるとは、余程の珍品かつ逸品なのだろう。
    「加工まで追っつかなくてただの裸石で悪ィな。噂のデブスが見つかりゃ加工して貰えるかと思ってディアンヌに聞いたんだが、あいにくあいつも心当たりがねぇって話で」
    「ダブズね。いいのよ、とても美しいから木のつるで小さいかごをつくって、首飾りにする!」
     大喜びではしゃぐ妖精姫を愛おしげに見つめていたバンだったが、すぐにその小さい身体をすっぽりと後ろから抱きしめた。
    「生まれて俺と出会ってくれて感謝だぜ、エレイン」
    「……貴方もね、バン」


     一方……。
     ランスロットは両親の旅日記を読んでいた。父の乱暴に見えるがおおらかな文字、文字を覚えたての妖精である母の、子供が書くようなたどたどしい字。眺めているだけでも笑みが漏れる。
    「ったくオヤジめ、旅先でもくっだらねぇ真似ばっかりしてやがる」
     呆れ笑いしつつ頁を捲る。両親二人の仲睦まじい旅の様子がまるで自分も今その場にいるかのように、鮮やかに瞼のうらに浮かんだ。
     自分は愛され恵まれていると感じる。
     ゴウセルからの小さな記憶のプレゼントとたまに垣間見える記憶の断片から察するに、彼の父は生まれてからしばらくの間、まるで愛に恵まれなかったらしい。生まれるまえから愛され祝福されたランスロットにはその感覚が理解できない。愛というものはくすぐったく、たまに煩わしさも感じるが、それはきっととても稀有で幸福なことなのだろう。

    「ン?」
     最後のページがのりでくっついている。おおかたラベルをくっつけた時の、他の頁ののりがはみだしたのだろう。ランスロットは紙の隙間に指を差し入れて、そっと剥がす。
     そして、心臓が跳ねた。

     ありがとよ、俺たちのセガレよ
     ありがとう、わたしたちのあいするらんすろっと


    「ふたりの誕生日プレゼントだっつーの……」

     ランスロットは静かに日記帳を閉じ、ベッドにうつ伏せた。


    ひとなずおしまい。おかえりなさい!!
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖😍💕💕💕😆😍👏👏👏👏👏👏💴👏💞❤💖💕💗💞💘❤💖💞👏👏👏👏👏👏💖💖🎂💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    bell39399

    DOODLE遡って読んでくださってる方もいらっしゃるようで本当にありがとうございます!うれしいうれしい😆♥💕🎶
    さてバンエレちゃんは不思議な村に来たようですね!(すっとぼけ)

    所で今回のタイトル(?)の元ネタわかった人はお友達です。
    山奥の村で〜バンとエレインが出会った〜 その22! 丘を超えた先に、唐突に集落らしきものが見えた。大きな岩のモニュメントのようなものが目立つが、それ以外は何の変哲もない村に見える。
    「それにしてもこんな恐ろしく何もねぇ、山奥でよく暮らすよな♪」
    「そう? 森に囲まれたいい場所じゃない」
     エレインの言葉にそれもそうか、とバンは思い直す。そもそも《なにもない度合い》からいうとベンウィックもどっこいだ、と気づいてしまいむしょうに可笑しくなってきた。
    「人間にとっては確かに不便かもしれないわね」
     そんな事にも気がつくようになったのよ! と薄い胸を張るエレインを、バンは考えるより先に抱きしめて頬ずりした。
     ともかく鳥から頼まれた用事もある。二人はじゃれ合いつつ村に入ると、人懐こい笑顔を浮かべた村人が集まってきた。が、なんとも奇妙な雰囲気だ。まず、笑顔ではあるが異様に無口である。バンとエレインの表情は自然と険しくなった。
    736

    recommended works