山奥の村で〜バンとエレインが出会った〜 その22! 丘を超えた先に、唐突に集落らしきものが見えた。大きな岩のモニュメントのようなものが目立つが、それ以外は何の変哲もない村に見える。
「それにしてもこんな恐ろしく何もねぇ、山奥でよく暮らすよな♪」
「そう? 森に囲まれたいい場所じゃない」
エレインの言葉にそれもそうか、とバンは思い直す。そもそも《なにもない度合い》からいうとベンウィックもどっこいだ、と気づいてしまいむしょうに可笑しくなってきた。
「人間にとっては確かに不便かもしれないわね」
そんな事にも気がつくようになったのよ! と薄い胸を張るエレインを、バンは考えるより先に抱きしめて頬ずりした。
ともかく鳥から頼まれた用事もある。二人はじゃれ合いつつ村に入ると、人懐こい笑顔を浮かべた村人が集まってきた。が、なんとも奇妙な雰囲気だ。まず、笑顔ではあるが異様に無口である。バンとエレインの表情は自然と険しくなった。
「変だわ、心は読めるけど知っている言語じゃない」
エレインはバンに耳打ちする。
「鳥が言ってた村はここなんだろうな?」
「それは間違いなさそうだけど……。それに変といえば邪念もないのよ。みんな心は穏やかだし、本当に歓迎されてる」
「ふーん? どういうこった♪」
とにかく誰かに村長はどこか聞こう、と二人の間で話がまとまった所で「旅のお方かな」といきなり背後から声をかけられた。
後ろを取られた?!
バンは反射的に臨戦態勢に入り、エレインを抱いて一歩飛び退く。
しかし相手は、ただのしおれた老人だ。だがバンは油断なく「誰だてめぇ」と尋ねた。
「驚かせたようなら申し訳ない、旅のお方。儂はここの村長だ」
「へ?」
老人が自己紹介した所で、ふエレインが間の抜けた声を発した。
つづくぞ!