サプラ~イズその28 一、二度瞬きしただろうか。ともかくその程度の時間で異空間から投げ出されたバンはエレインを抱えて着地の体制をとる。あたりを見回すとひたすらに緑で、一瞬ベンウィックにもどってきたのかと思った。が、なんというか違和感がある。空気が濃いというか、雰囲気が違う。よく見ると少なくともベンウィックでは見ないおかしな植物もそこかしこに生えていた。
「ゴウセルの導きだから妙なとこには飛ばされていないだろうが」
バンは呟いてから「……ゴウセルのやることだから、変な場所かもな」と己の発言を訂正した。
「バン、具合は大丈夫? 気持ち悪かったりしない?」
エレインが唐突に尋ねた。
「全然? どうした急に」
「ここ、私の故郷……妖精界よ!」
「は?!」
エレインの導きで森を抜けると、ひときわ大きい大樹のもとに出た。
「これが神樹ってやつか?
「いいえ、神樹は大きすぎて見えないわ。あれは人間的にいえば宮殿というところね。あ、みんな、久しぶり」
みんな、というのは文字通りともかく《みんな》だった。わらわらと妖精たちがエレインのもとに集まってきて、エレイン様お帰りなさい、お会い出来て嬉しいです、と口々に挨拶と喜びを口にする。そのうちの少なくない数がバンにもまとわりついてきて、旧知の者は再会を喜び、初対面の者たちは遠目に見たり逆に興味津々で近づいてくる者もいた。
「これが噂のバン……様!」
「これとか噂って何だよ♪」
「貴方は有名人ですから。妖精で知らぬものはいませんよ。ご無沙汰しておりますエレイン、バン殿」
そう言って頭を下げたのは他でもない、ゲラードだ。
「おう、久しぶりだなゲラード♬」
「元気そうね、ゲラード。兄さんたちは?」
「奥で首を長くしてお待ちですよ。さぁ、こちらへ」
ゲラードの口ぶりから、ここもあらかじめ旅程に組まれていたらしいと察せられる。バンもエレインも息子と友人たちの徹底した計画ぶりに改めて舌を巻いた。
「エレインは知っていたんじゃねーのかよ」
「私が協力したのはベンウィックの宴会とか、旅行の計画をちょっとだけで……。ここまで聞かされてなかったわ! ほんと凄いわね《さぷらいず》」
びっくり!