バンさん酔ってるけど踏ん張ってる!その25! 楽しい宴は続いた。彼らは無口だがとても気持ちがよい連中ばかりで気は穏やかだ。ゴウセルいわく人間の文化に興味津々らしく、料理や酒造りもその延長だと語った。言葉は通じないが、バンが料理や酒を褒めるのを嬉しそうに聞いている。そんな彼らにも妖精は珍しいらしい。小さな子どもたちはエレインの周りに集まってそれぞれの言語で歌の教えっこをしたり、ダンスを楽しんだりした。
「お前ら全員魔神族っつー話だけど、みんな人間そっくりだよな?」
ふとバンは、頭に浮かんだ疑問を口にする。魔神族の容貌は人型だったり異形だったりと様々だが、ここの村人は言葉が不自由だという意外では、少なくとも見た目はどう見てもただの人間だ。
バンに話しかけられた男は、通訳して欲しい、というふうにゴウセルを見た。
「うん、村の真ん中に変な岩があるでしょう? あれがみんなを人間に見せてる結界なんだ。彼らは大体、赤色魔神とか灰色魔神と言われてる種族だよ」
「赤色……」
あのデブか。
バンは苦い顔をする。子供達に囲まれながら話を聞いていたエレインも、少しだけうつむいた。
敵対する魔神もいればそうでない、気の良い魔神もいる。実際、ここの村人はもれなく呑気でいい奴らだ。なんといっても仲間であるゴウセルが守っている魔神たちなのだから、それだけでお墨付きだ。それに邪悪さからいえば人間のほうが余程酷い連中が大勢いるだろう。そんな事はバンもエレインもよくわかっている。わかってはいるが、心に根深く巣食う靄はいかんともしがたい。
「うーん、面倒くせえ♪」
バンはぶるぶるっと頭を振ると、ぐいっとエールをあおった。
「ようゴウセル、せっかくの集まりなんだ、野暮な結界は解いちまえよ♬」
といちゃうぞ☆