きゅぴん☆その26!「バン……」
「バン!」
ゴウセルとエレインは思わず同時にバンを呼ぶ。しかしその声音はまったく異なる。ゴウセルは心配そうに、エレインのは喜色を含んで。同時でありながら余りの違いに、顔を見合わせ吹き出した。
「やっぱり宴会は、素の姿で楽しまにゃ♪」
バンの提案はゴウセルによって村人に伝えられてやや当惑ぎみ、あるいは喜びをもって受け入れられた。
「でもみんな割と大きいから、このまんま元の姿に戻ったらお家が壊れちゃう」
という訳で、外で仕切り直しとなった。寒くもなく、風も穏やか空は晴天、おあつらえ向きの月夜である。
「でも他から見られて大丈夫なの?」
エレインが心配すると「外から魔神の姿は見えない仕組みだから大丈夫」とゴウセルが保証した。
「便利だな〜♪ エグい魔力をうまくつかいやがる♬」
「褒めてるんだよね?」
「ああ、もちろんだ♪」
「では、一時的に結界の一部を解くね」
キュピン☆ とゴウセルがいつものポーズを取ると、人間の姿をしていた村人達は、瞬く間に異形の、もとい本来の姿に戻った。ゴウセルの言っていた通り、聖戦で何度も見た――もしくはそれ以前にも――、赤色や灰色の魔神たちだ。
「おおみんなでっけぇ♪ 壮観だな♪」
呆れ笑いするバンに、エレインがそっと寄り添う。
「大丈夫か、エレイン」
「私はバンが大丈夫かなって思ったのよ」
「こいつらはあん時のデブじゃねぇからな。その理由で種族ごと憎んでたら俺は、人間も片端から殺さなきゃなんなくなるっつーの♬」
「もう、嫌な例えするわね!」
「カッカッ♬」
二人のそばに、さっきまで元気いっぱいだった魔神の坊やが様子を伺うかのようにそっと近寄ってきた。周りの村人もこちらを見ている。
「お前、さっき絵をくれたガキか?」
男の子は嬉しそうに頷く。男の子、と言ってももうバンよりずっと大きい。だがバンとエレインが知っている、今まで見たことのある魔神と比べ、明らかに子供である事は容姿でわかる。
「魔神族も子供は小さいのね! いえ、大きいけど」
エレインが感心してそういうと「生まれてから姿があんまり変わらねぇのは多分妖精くらいだぜ」と苦笑した。
「んじゃまお前ら! 飲み直しだぜ〜♬」
「ダメよもう! 飲み過ぎです!!」
のみすぎはダメだぞ☆