バンさんRE:BORNじゅうに! エレインに抱っこされてホクホクしながら森を散策していたバンだったが、にわかに腹の空きを覚えた。と、同時に腹が聞いたこともないような奇妙な音を立てる。
「お腹すいたの?」
すごい音だけど大丈夫? 心配しつつもエレインは、笑いを噛み殺しながら尋ねた。
「食べ物を採りにいきましょうか。えっ、お肉がいい? 狩りに行きたいって? ふふ、じゃあ私はここで待ってるね」
バンが狩りに行っている間、エレインはコロンと地べたに寝そべり、空を見上げた。木々の隙間から見える今日の空は雲ひとつなく、溢れる光も温かだ。
「あったかいなァ」
眠くなっちゃう。
ふんわり襲ってきた睡魔に身を任せて瞳を閉じ、暫くすると夢を見た。
焼け落ちる前の妖精王の森で、エレインは今のように地面に横になっていた。大樹のてっぺっんなので空は真上にあるはずなのに、エレインにはその色が見えない。見えているはずなのに、彼女の意識の中には入ってこない。そんな夢を見ながら考える。
そういえばあの頃は空の色なんて、不吉かどうかでしか見ていなかった。きっと今日のように美しい青空の日だってたくさんあった筈なのに。見ないなら、それはないのと一緒。
沈んだ気持ちで目を伏せようとした瞬間、突然、痛いほどの青が目の中に飛び込んできた。
〈 エ レ イ ン 〉
驚き飛び起きて、夢を見ていたのだと思い出した。側には狩りから戻ってきたバンが心配そうにエレインの顔を覗き込んでいる。
「あ、バン……おかえりなさい」
「レイン、コワメ、ミタのカ?」
「え? ううん」
そう、あの頃も今も、世界の色彩は貴方がいるから見えるのね。
「いい夢だったわ」
心から、そう答えた。
「お腹いっぱいになったの?」
「デカイくマトッた! ウマカッタ」
「そっかぁ」