バンさんRE:BORNまたね! れんごくばんちゃんは森にいた。
ももいろの葉を茂らせる大樹のもと、小さな泉のそのほとり。
泉の真ん中には台のようなものが立っていて、そこには盃が置いてある。それは不思議な盃で、中から水がひっきりなしに湧いて出ていた。
とすると、この泉はあの盃からあふれ出た水がたまってできたものなのだろうか。
それにしてもあれをどこかで見たことがある気がする。どこかで。
ばんちゃんが考えてこんでいると、小さな女の子がふわりと浮いてやってきて、泉のそばにしゃがみこんだ。金の髪、白いドレス。
「れイんダ」
ふう、とためいきをついている。何か悩みごとだろうか、腹を空かせているのかもしれない。
飯を持って行ってやらないと、と思ったところで若い男がエレインの側にやって来た。妙に腹の立つ風貌の男だ。さらに腹立たしいことに、その男を認めると同時にエレインの顔はぱあっと晴れた。
いつの間にかジバゴとキルアもいる。ふたりはエレインと男を何故か幸せそうに見つめている。
男はすっと立ち上がって、泉にある盃を手に取りエレインに渡す。エレインはその中の水を飲みほした。
ばんちゃんはなんかおかしいな、と違和感を覚えたが、それがなんだかわからない。でも、エレインが楽しそうだからまぁいいか。それにしてもあの男、見覚えがあるがいったい誰だっけ。
考えていてもわからない。ばんちゃんも彼らの輪に混じろうと一歩踏み出した。
その瞬間、ジバゴとキルアがこちらを見て、ふたり口をそろえてこういった。
「 お め で と う 」
「なにが?」
はっきりと口に出して言った己の言葉に驚いて、バンは目が覚めた。が、起きたと同時に何を口にしたのかもう忘れた。
バリバリ頭をかき、ゴシゴシ顔をこすって伸びをする。
ああ、なんだかどえらいよく寝た気がするわ~♪
「バー―――ン!!」
突然その胸に、エレインが飛び込んできた。寝起きでぼんやりしていたバンもさすがに驚き、そして脂下がった。
「なんだよエレイン。朝から大胆だな~♪」
「うふふふ、バンだぁ。バンはバンだけどこっちが落ち着くなァ。あのままだったらどうしようって、本当はちょっと焦ったわ」
「……なにが?」
この約一か月間の出来事を、バンはさっぱり覚えていなかった。バンとしては飲んで寝て起きたら一か月経っていた感覚である。
「そういえばなんか黒くてでっかくなって、チョイ焦ったってのはぼんやり覚えてるな。それよりスッゲーいい夢見ていたみたいな気がする♪」
「そうなのね。どんな夢だったの」
「忘れた♪」
エレインはそれ以上、追及しなかった。ただ、「ばんちゃんはあかちゃんみたいで可愛かった」と笑っていた。
「きっとあんなふうだと思うの。バンの子供」
「マジか~? てかエレインの子供でもあるぜ♫」
「うん。だからね、会えるのがとっても楽しみ。あのね、今朝からね……」
エレインははにかむ。そっと手を腹に当てて。
「かすかだけどここから自分のじゃない、魔力を感じるの……」
バンはこれでもか、というほど目を見開いた。ゆうに数分、そのまま固まる。じわじわとエレインの言葉が重みをもって、バンの脳に浸透した。そしてその意味を完全に理解するより先に、喉から歓声が漏れる。
「ヒャッホー!最高だぜ、エレインー!!」
そういえば、今日はエレインの誕生日なのだ。寝ている場合じゃなかった、今から食材調達して最高にうまいもんを作らねば。
きっとキングたちも来るだろう。奴らの驚く顔も楽しみだ。
「私もいっしょに行く!」
ふわっと浮いたエレインは、小鳥が止まり木にとまるかのようにバンの肩に乗った。
「動いてへいきなのか」
「気が早いなぁ。もちろん大丈夫よ」
「そうか? よし、旨いもん一杯食わせてやるからな!」
れんごくばんちゃんはふしぎなけもの。バン自身のこころのかけら。
今日は初めての家族と一緒に、エレインと森へご飯を採りにおでかけしたよ。
木々もよろこびにざわめいて「おめでとう」って祝福してる。
ばんちゃんとエレイン、エレインのなかの小さい魔力の。三人一緒のしあわせかぞく。
「おめでとう」
「ずっと見守ってるよ」