エレインちゃん生脚事件。たしかその6!村を出発した二人は次の目的地、リオネスに向かって街道を歩いている。人家もなく、ひたすらに続く道も街道とは名ばかりで、森の中に出たり入ったりを繰り返していた。
「途中で宿がありゃいいが、久しぶりに野宿になるかもな♪」
そう言いつつも、バンの口調は弾んでいる。エレインと二人なら、どこだって城とおなじなのだ。それに野宿など不便と感じる性分ではない。
「こうして二人で歩くのも久しぶり」
もちろんそれはエレインも同様で、同じ気持ちだ。その証拠にふわふわ浮いてみたり、くるんと回ったり、いつになくはしゃいだ様子だった。
太陽が頭のてっぺん来た頃、まるで時報のようにバンの腹が鳴った。
「朝あんだけ食ったんだけどな♪」
我がことながら、とげらげら笑う。かつては飢えが当たり前だったと言うのに、昔よりよほど強欲だ♪
「けっこう歩いたものね。お昼にしましょ。ほら、あそこの木の下がとても居心地良さそうよ」
エレインがふわふわ飛んでバンを先導する。彼女の言った通り、とても居心地の良い場所だ。すぐ近くでは小さな川が流れていて、そよぐ風も心地よい。
バンはどっかと腰を下ろして雑嚢の中を漁った。
「さっきのとこで昼飯貰ったんだ……お、これこれ♪」
「じゃあ私、お水汲んでくるね」
「ああ、頼むわ♪」
貰った昼飯は可愛らしい布巾に包まれている。バンは上品だな、と少し笑いながら包みを解いて地面に並べた。エレインのためと思しき野菜のサンドウィッチの他に、入れ物の可愛さにはいささかそぐわないような肉の塊まである。有難ぇ、と呟いて食べるぶんだけナイフで削いだ。
「見てバン。素敵な物見つけちゃった!」
革袋いっぱいに水を汲んで戻ってきたエレインは、スカートに花を包んで持って来た。バンは顕になったエレインの白い脚に一瞬目を奪われ、そこじゃねぇ、と首をふる。
「綺麗な花だな♬」
「でしょ、おいしいデザートよ!」
エレイン的なお洒落な比喩かと思ったが、そのままの意味だったらしい。花の首を摘んで吸って「このお花の蜜、とっても美味しいの!」と目を細める。
「プッ、……花より団子、ってか♪」
「なぁにそれ?」
「いや……、愛でてヨシ、食ってヨシ、ってとこだな♬」
「そうね!」
二人は気持ちの良い木陰で村人が作ってくれたささやかなごちそうに舌鼓を打ち、デザートには花の蜜を吸って楽しんだ。
今日のおみやげ。
蜜が旨い花。本に挟んどくと、きれいに萎れるらしいがうまくいくか?
(後でエレインがきれいに水分抜いて枯らした。そういうこともできるんだな。また知らない一面はっけん!)
つづく!