リオネスとうちゃく!その8! 次の朝、二人は近道は諦めて街道に戻り、暫く歩いたところで小高い丘に行き当たった。
「意外と遠回りしてなかったな♪ これを超えたら」
「リオネスね!」
「あ、オイ!」
バンの肩口から離れたエレインはふわっと飛び上がったと思ったら、ぎゅん、と丘を飛び越える。のんびりして見えても妖精族の姫君である。その辺の妖精とは魔力の格が違う。ほんの少しその気になるだけで、ものすごい速さで飛ぶことが出来るのだ。
「カカッ、負けね〜ぞ♬」
競争心をくすぐられたバンはわくわくと数回ステップを踏んだかと思えば地面を蹴り、飛ぶようにしてエレインの後を追った。
競争したおかげで、二人はリオネスの城壁にあっという間に到着したのだった。
久しぶりのリオネスは、彼らの記憶と同じく活気に満ちている。少しだけ違うところといえば、かつては見かけなかった妖精や巨人たちもチラホラと見かけるとことだ。
「相変わらず賑やかね」
「だな〜♪」
街の色彩は森のそれとは違う豊かさがある。様々な色形の屋根、女性は思い思いに着飾り、まるでちょうちょのようだ。通りの向こう側からは食べ物の色々ないい匂いが漂ってくる。ちょうど昼時、バンの腹の虫がくすぐられる。
「そういやあっちの方の店のパイが美味かったよな♪ まだあるといいが……行ってみっか?」
「覚えてるわ。ベリーパイがとっても美味しかったわね。行きたい!」
じゃあ、とご機嫌で歩き出そうとしたその時「バン王様、エレイン様ではありませんか!」と衛兵が肩で息しながら駆け寄ってきた。
「何だよ、もう見つかっちまったか♪」
色々と世話を焼かれるのが目に見えていたので、城門をわざわざ《ゼロサイン》を使ってくぐってきたのだ。
「はぁ、お二人がいらしたら、はぁ、はぁ、お連れするようにと、げほげほっ、お、王から申し使ってはぁ、おりますゆえ、はぁーー」
「無理すんなよ♪ しょーがねぇなぁ、お前も《黒猫のあくび亭》で一杯奢ってやっから、一緒に来な♬」
「お、王に叱られてしまいます!」
「団ちょはそんなケチなことじゃ怒んねーよ。いいから来やがれ!」
「バン、脅かしちゃだめでしょ!」
結局、酔いつぶれたバンをエレインと衛兵とで引きずり、ようやくリオネス城についたのはもう日が沈んでからだった。
その上、肝心のメリオダスが留守だという。
「またか、王は!」
「またって?」
首を傾げ尋ねるエレインに、衛兵たちは慌てて声を揃え、「王はしばしば、御自らお忍びで市井の様子を見に行かれるのです!」とまるで本を読んでいるかのように述べる。
「要するにおサボりしてお城を抜け出しちゃうのね……」
どっかのバンみたい、とエレインは力なく笑う。
「街に戻りましょう。メリオダスは……え、豚の帽子亭?! 案内して頂戴」
なぜバレたんだ、と色めきたつ衛兵の背中を押しやる。既に寝ているバンは置いていく訳にもいかないので、とりあえず空に浮かせ運ぶことにした。それを見た衛兵らは再び面食らうのだった。
つづく!