ユーキャンフライ。その11「エリザベスはここでお給仕しないの?」
ようやく最後の客が帰り、店の片付けを手伝いながらエレインはメリオダスに尋ねた。
「ああ、今日は俺だけだけど、時々手伝ってくれるぜ! あいつも本当はこっちに来たいみたいだけどな」
俺と違って真面目だから、と言ってにししと笑う。
「私はいいから行ってらっしゃいって言われるからつい甘えちまう。エレインもエリザベスがいないのに手伝わせて悪かったな」
「そんな、いいのよ! 確かにエリザベスと一緒だともっと楽しいかもしれないけど、ここのお仕事大好きよ。本当はバンだって、」
ね、とそのバンを振り返れば、少し前まで起きていたのにもうカウンターに突っ伏してぐうぐう寝ていた。一応、片付けを手伝うつもりだったのだろうか、空のジョッキといっしょにダスターを握りしめている。
「……ええと、じゃあ、私達、これからお宿を探しに行こうかな」
「いやいやお前ら賓客なんだから、家に来いよ。エリザベスも楽しみに待ってるんだ」
「そう?じゃあお言葉に甘えて……バン、起きて。ねぇってば……ダメだわ、また運ぶわ」
「いや、バン一人くらいでウチまでなら俺に任せろ」
帰り支度を済ませたメリオダスがバンを担いだのでエレインは扉を開けてやり、自身も外に出た。外はすっかり夜中だが、森ほど星は見えない。代わりに街の建物から漏れる明かりがきらめいていた。
豚の帽子亭の扉を施錠したメリオダスはバンを抱え直す。エレインが改めて礼を述べようとすると「ちょっと昔に」とメリオダスが先に言葉を発した。
「ディアンヌにやって貰った、いい方法があるんだよな。あれを真似する。多分イケるぜ」
「え、ディアンヌって」
珍しくチラっとメリオダスの心が見えた。見せた、のかもしれない。それでエレインは「あっ」と思ったと同時に、メリオダスはポイとバンを城めがけて放った。
スゴクトンデイキマシタ