寄り道だよ。その18 街道を進んでいくと小さな集落が見えてきた。風に乗って、楽しげな音楽が聞こえてくる。近づくにつれ音が大きくなり、人々の笑い声も混じるようになった。
「なんだかとっても楽しそうね。お祭りかしら」
「イヤ、ありゃあ多分……」
アコーディオンや太鼓に笛の音、それに合わせて踊る人々。よく見るとその輪の中心には一組の男女がいるようだ。
「ああ、やっぱりな。結婚式だ♬」
「けっこんしき!」
エレインはふわっと飛んで、少し上から宴のさまを眺める。
「兄さんとディアンヌ以外では初めて見たわ! 」
「ああっ、 あそこに妖精が!」
輪の中の一人が目ざとくエレインを見つけて声を上げると、他の人々も一斉に上を見上げた。
「なんと美しい妖精なんだ。見て、あの輝く羽!」
「二人の門出にこんな所に妖精とは、まったく縁起が良いな!」
「妖精さん、よろしければあなたも一緒に彼らを祝ってやってくださいな」
「ええっ、あ、あの」
「いーじゃねぇか、祝ってやろーぜ♬」
「貴方は……妖精さんのお連れさんですか……?」
おろおろするエレインに助け舟を出したバンは、あからさまに疑惑の眼を向けられて一周回って吹き出しそうになった。妖精攫いにでも見えたのかもしれない。
「あっ、彼……バンは怪しくないです! バンは私のえっと、だんなさま? です! 」
そんな村人の心情を察したエレインは慌てて二人の間に割って入った。その発言に村人もバンも目が丸くなって一瞬、音楽も笑い声もやんでしんとなった。
まだつづくよ!