またねキュピン☆その27 エレインの鶴の一声でその後は何故かお菓子パーティになった。バンは魔神たちに作り方を説明しながら、焚き火を使ってどっしりとした甘いパンケーキやさくさくのクッキーをたくさん焼いた。魔神たちは甘い食べ物あまり食べたことがないらしく不思議な顔をしつつも大喜びで学び、初めての味覚に舌鼓をうった。甘い匂いの立ち込める中、やがていよいよ材料が尽きたのでお菓子パーティもやっとお開きになったのだった。
翌朝、元の姿に戻った魔神たちに面倒見よく朝ご飯のパンや卵料理の作り方を伝授した。その後帰りしなに、余ったパンをサンドイッチにして持ち帰ろうと雑嚢を開いたら、中からポロリと小枝が落ちてきた。
「あっ、いけね!」
小鳥から頼まれた例の小枝である。
「忘れるとこだったわ♬ オイゴウセル。これやかましい鳥から預かったんだが」
「ああ、ありがとう」
「何なんだ、この枝」
お使いを果たし、ゴウセルに尋ねると彼は「次の行き先だよ」と屈託なくニッコリ微笑む。バンはなんだそりゃ、と思ったがどうせいつものたわごとだろうと適当に流した。
「さて、名残惜しいがそろそろ行くわ♬ お前ら元気でな。てめぇもたまにはうちに顔見せろよ。ランスも喜ぶ。それから……」
残念そうにバンとエレインの顔を見上げる例の魔人族の坊やを抱き上げ、高い高いするように上に掲げる。
「こいつの絵は最高にイカしてるぜ。エールを売る気になったらこいつの絵の瓶のラベルにしろよ♪」
男の子は自分のことを言われているのがわかったのだろう。嬉しそうな笑い声をあげ、エレインもゴウセルもその光景のほほえましさに目じりを下げた。
「皆さん、お世話になりました」
輝く羽の妖精姫もぺこりと頭を下げる。キリがないので気持ちを切り替えさぁ村を出よう、というところでゴウセルが声をかけてきた。
「二人とも、次の場所まで送ってあげるよ」
「次の場所だぁ? 団ちょの謎メモは終わりだし、《旅行チケット》の旅程も終わっているようだが……」
「サプライズはまだ続くよ」
いたずらっぽい表情でキュピーン☆ するゴウセルを見て、つい心を読んだエレインはアッと息をのむ。それにウィンクで返されたと思った瞬間、突如出現したバンとエレインは妙な空間に飲まれた。
「なんじゃあこりゃあ!」
「だから言ったでしょ、次の行き先だよ☆」
ゴウセルが例の小枝を掲げて見せたが、バンが悪態をつく間もなくその姿も見えなくなり、二人の身体はどこか別の場所に飛ばされたのだった。
いってらっしゃい★キュピーン★★