買い食い祭り「そこの神社さあ、夏祭りで屋台出てるみたいだよ、後で見に行ってみない?」
BAR Fへ帰宅そうそう、話を切り出したのは樹果だった。蘭丸はその横で、ただにこにこと笑っている。
「カレー以外のものが食えるんだったら行きてえ」
焔が忌憚のない発言をした。
「それはあるに決まっているだろう。だがそこまでして行く価値があるかどうかは疑問だがな。ただでさえ暑いのに、人混みに塗れて、小銭で割高な食べ物を買い食いして…」
本を読んでいたうるうが、話題に入ってきた。
「楽しそうじゃねえか」
「そうだな。たまにはな」
言い合いというよりじゃれあいに近い焔とうるうのやりとりを見やり、寶は安堵の笑みを浮かべる。
「ワイ、晩飯作らなくてええのん?」
カウンターに集合した四人が、無言でうんうん、とうなずく。
「お小遣い、支給しなくてもええの?」
一見、四人が無言で首を横にふったようだが、樹果が蘭丸の頭を両手で押さえて無理やり首をふらせている。
「寶も一緒に行こうよ。えーと、浴衣のおねえちゃんとかが、いる! 多分!」
樹果がいきなりの大声を出した。
「財布扱いが目に見えとんな……ワイ、そんな金と女に弱いと思われとるのん?」
「そこまでは言ってない。でもお小遣いは欲しい」
しばらく窓の外を見ていた寶が「500円……」と引き絞るようなうめき声を出した。
「みんなで500円じゃないだろうな」
うるうが釘をさす。
「いまどき100円ぽっちじゃ缶ジュースも買えやしまへんがな」
「やったー! 行こう行こう! 蘭丸!」
樹果が蘭丸に、眠っていたバックンを放り投げる。
「そいつも連れてこうよ。持ってりゃ、縁日で当てたぬいぐるみくらいにしか見えないだろ」
そうだね、と笑って腕丸はバックンを抱き上げた。