おれに関わる噂「クラスの子にも「歩照瀬くん、彼女とかいるの?」とか聞かれるよ。まあ俺はうるうくんのほうがカッコいいと思うけど!」
秩序が乱れるとのことで、学生に扮した夭聖たちは一緒に帰ることになっている。ただ、焔だけが、校門に姿を見せていない。
「文化祭も近いしな。いつものサボり場所がなくなって、誰かに喧嘩でも吹っかけてなければいいが」
下校時の生徒たちを見遣りながらうるうはつぶやいた。
「焔は、そういうことはしないよ」
いつもボーッとした蘭丸がいきなり口をきいたので、うるうと樹果は驚きの表情を見せる。
「なにを根拠に……ああそっか、マンガとかでもそうだしね」
樹果はコミック雑誌を鞄から取り出した。蘭丸が横から覗き込む。
「おれに関わるんじゃねえって言ってる奴ほど、めんどくさい奴の面倒見るハメになるんなよ」
「それ、本当にマンガの話?」
樹果はうなずいた。
「火と水って、そういう感じじゃん? いつか、俺たちにもそういう相手が出てくるのかなー」
蘭丸は話に飽きたのか、立ったまま眠り始めた。
「もう帰ったほうがいい。あまり遅くても寶が心配するからな」
返事を待たず、うるうは歩き始めた。一瞬だけ頬が赤く染まっていたのは、樹果の見まちがいかもしれない。