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    第57回七五ワンドロワンライ延長戦
    お題「いけないこと」

    七海が高専に戻ってから桜の季節まで。まだ始まる前の七と五です。Twitterに載せたものをほんの少し修正しました。2022.12.4

    #七五
    seventy-five

    いけないこと 高専を離れ、この呪術界からも離れていた男が帰ってきた。本人自らの連絡を受けたとき思うことはいくつもあったが、姿を見れば心の底から単純に嬉しかった。
     
     数段に逞しくなった身体。背も伸びたようだが自分を追い越すことはなかったようだ。頬がこけているのは大人になってそういう輪郭になったということか。さらさらと繊細に流れていた髪は襟足は短く刈られ、サラリーマンだった名残か七三に分けられている。髪質は変わったのだろうか。
    「老けたね」と言えば、「開口一番がそれですか」と、深く吐いたため息と、真っ直ぐに見返してきた妙な形のサングラスの奥の目だけは、翠緑に、あの頃と変わらなかった。
     
     七海の姿を目で追っていることに気付いた。可愛い後輩が帰ってきたのだからと自分に言い訳をしていられたのも最初のうち。程なくして、いや、これは…と、自分の心を御せなくなっていた。
     つい先日、復帰の為の訓練を終え任務をこなすようになった七海が負傷した。家入の治療を受ける前の姿を目にしたとき、一瞬、鈍い痛みに五条は押し潰されそうになった。
     それは本当に一瞬で、すぐに出血に比せず傷はそう深くないとわかったし、こんなことはそう、日常茶飯事ではないか。何か苦言を呈してやろうか、それともその青い顔色を揶揄ってやろうか、そう思って「お前」と口を開いた自分の声があまりにも低くてそのことに動揺した。結局何も言わず、その場を離れた。
     
     誰かを強く思うことはよくない。それによって自分の行動が変わってしまうとは思わないけど。何があっても自分は自分で居続けるのだけど。
     唯一無二と思っていた親友がいなくなってしまったときも、憎からず思っていた後輩が静かに去っていったときも、五条悟である自分は変わらなかった。それでも何かが自分の心の奥を引っ掻いていて、それは長引いていると知ったのは随分後になってからだ。
     
     桜の花を五条は見ていた。後ろからゆっくりと知る呪力が近づいてくる。
    「無限を解いているんですか」
     七海は言った。
    「髪に花びらがついてます」
    「桜にくらい僕に触れさせてやろうかと思って」
     
     七海が戻ってきてから、五条はずっと七海に絡みついていた。後ろから近づき「な〜なみ♡」髪をグシャグシャとやったときは死ぬほど怒られた。相変わらず下ネタが嫌いとわかって、わざと際どい話をしたり下品なことを言ったりして、ため息を吐かれたり額に青筋を立てられたりするのがとても楽しかった。
     それでも五条は高専の外で七海と会おうとはしなかった。大人になった七海が五条のふざけた猥談に顔色も変えずに切り返したり、驚いて顔に血を昇らせる五条を楽しげに見たり、その後ふいに真顔になってじっと見つめてくるときなどは、早々に目を逸らしたし退散した。
     
     七海は五条の正面に回るとゆっくりと手を伸ばした。無限に阻まれず顔に巻かれた包帯を静かに解いていく。
    「…眩しいよ」
     桜の下の碧い目の、白い肌と白い髪、桜よりも濃い艶やかな唇を七海はしばらく見ていた。
    「五条さん」
     そろそろ話をしませんか、七海は言った。話って何を、と五条は言わなかった。わかっている。
    「ごはんも食べに行きましょう」
    「私、車を持っていますよ。ドライブにも行きましょう」
    「でもそれは…」
    「よくないことなんて一つもないですよ」
     
     桜の花びらが降ってくる。
     もういいのかもしれないと五条は思った。もう、いいのかもしれない。
     
     まずはこの金髪の、翠の瞳の後輩と座って話をしよう。いつも固めてあるコイツの髪が、素のときどんななのか、髪質は変わったのかさらさらのままなのか、そんなことが知りたい。
    「甘いものも食べに行こうよ」
    「一人じゃ入りづらい店があるんだ」
     それは…七海は逡巡した。
    「私が一緒だと余計入りづらくなりませんか」
     大丈夫、五条は言った。
     
     いろんなところへ行っていろんなことをしよう。出来る限りに。
     誰かを強く思う気持ちはもうここに既にある。わかっていたんだ、そうしちゃいけないなんて、
     
    「七海」
     五条は言った。
    「桜が綺麗だね」
     ふんわりと笑った。
     七海はほんの少し目を見開いて五条の顔を見ていた。
    「ええ、あなたと一緒に見れて良かったです」



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    さかばる

    MOURNING映画観た記念に書いた七五です!なんと一ミリも映画関係ないです。お仕事の話。
    ※注意※
    妄想爆発のじゆぐ、じゆれいが出てくる
    モブが出てくる
    作者が七五って言ったら七五です
    映画観たよ!記念。 壱、男と『紅』
     
     
     男はその日、仕事でなんだか物々しい屋敷の前に来ていた。男は解体業者の作業員である。数日前に依頼を受けて目の前の屋敷の解体を頼まれた。隣に立っているのがその依頼主である。二十代らしいが顔は青白く、目が落ち窪んで三十代位に見える。生気が無い顔をしている癖に、目がギラついていて金にがめつそうだった。この屋敷を取り壊して土地を売っ払うつもりらしい。社長がかなり安い金額で引き受けさせられたとこぼしていた。これじゃ利益が出ないと断ろうしたが、名家の御子息で断り切れなかったそうだ。
     男は依頼主を前に、後ろに六人の部下を従えながら現場の敷地内に入る。いかめしい門を潜るとそこには美しい庭園が広がっていた。今の季節が花の季節の春だからだろうか。色とりどりの花が植えられ、植えられた木々も綺麗に整えられている。解体を依頼された家屋まで歩く間、枯山水まで見ることができた。こんな美しい庭園を壊してしまうのは勿体無い気がするが、仕事だ。仕方がない。
    12430

    さかばる

    DONEこちらもリクエストを強奪したお話です。
    雪山で裸で抱き合うってこれで合ってます!?ついでに七五っぽくないですね?これ。いや、七五は少年の頃は線が細く繊細そうな(中身は違う)七海が大人になって溢れる大人の色気を醸し出す男になるのが趣だから・・・・・・。
    ホワイトブレス 五条が任務に向かったのは冬の、雪が降り積もる村だった。
     村で何人もの死体が出ているという報告。そして人間でないモノ、恐らくは呪霊の目撃情報が寄せられた。その呪霊の祓除に担任の夜蛾から五条は指名されたのだった。隣には一つ下の後輩、七海がいる。この任務、五条が指名されたというより、七海のサポート役ということで振られたのだろう。夜蛾にはなるべく七海の自由にさせるよう予め言い含められている。五条はその事に不満は無かった。七海は良い術式を持っているし戦闘センスもあるので鍛えたら強くなりそうだった。ここは先輩として見守ってやろうという気持ちである。ただ、
    「さっみぃ〜〜!」
     真冬の夜で今も雪が降り続くこの現状が問題だった。補助監督の運転する車を降りて高専の制服の上に防寒着にマフラーを身につけたが寒いものは寒い。放っておくとサングラスの奥のまつ毛が凍りそうな気がする。
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