二人の歩幅「……にがい」
「あー……あはは、やっぱり?」
眉間に皺を寄せた橙真の顔を一瞥して、ひゅーいは苦笑いを浮かべて焦げのついたフライパンをシンクに隠す。上手くいった試しのない料理は、やっぱり今回も失敗だった。明らかに黒くなってしまったそれを橙真に食べさせる気なんてなかったのに、フレンチトーストになる予定だったそれは隠蔽するより早く、横から伸びてきた手に連れ去られてしまった。
指についた粉砂糖を舌で舐め取る橙真から見えないようにカードを出して、小さい声でマナマナと呟く。パッとシンクの中のフライパンが黒から綺麗なシルバーに変わって安心していると、カードを持つ手を咎めるように掴まれた。
「あっこら、マナマナ使っただろ」
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