番外編1─37.2℃
ピピッという電子音と共に、ほんのりと温まった体温計が脇の下から取り出される。液晶画面に表示されとるのは、そこそこの数字。ベッドの上の病人は、掛け布団を首元まで上げると瞼を閉じた。いつもはふわふわの前髪が一筋、日に焼けた額にしっとりと張り付いとる。
「熱、あるにはあるな」
「ん……」
せやけどルームメイトであり、俺のダブルスパートナーでもあるこの男は、体温以上にぐったりとして、この1LDKのアパートのベッドに横たわっとった。
「薬飲もか。食べ物何もないけど……。パスタとか茹でたら、食べられるか?」
東京のこの部屋には、昨日帰国したばっかりやったから、冷蔵庫には飲み物と調味料ぐらいしか入っとらんかった。
1808