大勝負「へ」
「は?」
決して急だった訳では無い。初めこそ事故だったもののゆっくりとこの関係をひとつずつ進めて、深めて、満を持してその話を持ち出した。そのはずだったのだ、レイシオの認識では。
しかし目の前で特徴的なネオンを見開く彼にとっては違ったのかもしれない。ぽかん、と間抜け面ともいえるそれを晒して、アベンチュリンは仕事用の端末片手にただただレイシオを見やっている。
「……聞こえなかったか」
「ぇ、あ……そ、そうかも」
「ではもう一度言おう。……君の薬指につける指輪を選びに行きたい。空いている日はないか」
そして今度は明確に、その瞳が困惑に揺れた。同棲しているこの家のソファで、彼が連れてきた小さな命と戯れながら。ここまで関係が進んでいるのに予想していなかったのだろうか。まさかこの先の関係を知らないわけでもないだろう。いや、その可能性がない訳ではないのか。
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