何度目か忘れてしまったが、口吸いをする度に覚えさせられたのは煙草の味。
忘れられない味だと思った時、似た味の食べ物を探した。
甘い味のする食べ物を口に含んだが、どれも該当することはなかった。
甘味の中に混じる独特の苦味。
試しに調理場の英霊と共に、西洋の菓子を作ってみたがこれも近いようで遠い味としか言えなかった。
最終的に辿り着いたのは、やはり同じく煙草。
何個か試しに吸わせて貰ったが、俺の中でこれだと思った銘柄はあの人とは異なっていた。
それでも口に咥えた時の味と紫煙を吐き出す時の匂いは、言われた銘柄よりはこちらの方が近いと感じたのだ。
「こいがいっばん近か味や」
煙草を吸うのは決まって、周回先だった。
煙草を吸っているのを見られるのも知られるのも何処か気恥ずかしく感じ、口の固そうな英霊との周回先でのみ吸っていた。
1467