時計の短針が二度目の頂上に差し掛かる時間。ファルガーは重たい身体を引きずって、ようやくオフィスを後にしていた。世間が明日から連休を迎える今夜はやけに静かだ。溜まった疲労とストレスは家に着くまで待ってくれそうもなくて、帰路の途中で人の気配もまばらなコンビニに立ち寄り酒を買った。朝から晩までパソコンに向かい続けて凝り固まった身体は歩くだけでも叫び出して、座れる場所を求めて公園へと足を向ける。歩きながらウイスキー缶を開けて勢いよく煽れば、腹の底で澱んだ何かが口を開けて飲み込むような感覚がした。
手軽さを求めた安っぽい味と、人の気配がない寂れた公園と、恋人もおらず日々仕事に明け暮れるばかりの自分と。世界がまるでモノクロに見えた。
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