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    作家

    いずみのかな

    DONE有栖川作家編 健全コメディ。これを書いたころは、まだ有栖も火村も大学時代に懐かしいあのクイズ番組に出られた年代生まれでした。あったんですよ、アメリカ横断ウルトラクイズっていう番組が
    NYははるか遠く 大学というのは非常に特殊なコミュニティだ。その気になれば、四年間誰とも口を利かなくとも不自由はない。二十年ほど生きてきて、自分は人と関わらないほうが生きやすい、という後ろ向きな――しかし魅惑的な結論に達していた火村にとって、誰も自分を知らない土地での学生生活はようやく掴んだ理想の環境であり、四年間、あるいはさらに数年ほど延びるかもしれないが、ともかくその期間は他人を受け付けることなく、日々の暮らしはただ静かにひっそりと営まれるはずだった。
     そんなささやかなプランがあっけなくひっくり返されたのは去年の五月のことで、ふと気が付けば、いつのまに周りには友人と呼べる人間がちらほらと存在するようになっていた。初めのころこそ、理想と現実のあまりのギャップに軽いめまいを覚えたような心地だったが、そうしてしばらく過ごしてみると、人との付き合いはかつて感じたほど苦痛でもなく、ティーンエイジャーだった自分がいかに独善的で視野が狭く、排他的だったことか。つまり一言で表せば平凡に若かったかということを、しみじみと実感してしまったりもした。
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    たまごやき@推し活

    PROGRESS転生現パロアンぐだ♀、喫茶店マスターの童話作家×常連のぐだち


    転生したが片方しか前の記憶を有しておらず相手の記憶が戻るのかも分からずそれでも……という性癖の話

    2020.2〜
    最後の恋を、もう一度 蔦の絡んだお洒落なレンガの壁。まるで向こう側には眠り姫がいるみたいに、植物で囲われたその壁の向こうにはわたしの大好きな空間がある。ドアを開けると控えめなベルの音が鳴る。こんな小さな音で聞き取れるのは、店主が地獄耳だからだろうか。
    「いらっしゃいませ」
     この店の店員はカウンター奥の隅っこでコーヒーを淹れている男性一人だけ。ここに通って随分経つけれど他の店員も、さらにはお客さんも見たことがない。友達に話すと狐にでも化かされてるんじゃないか、なんて言われる。そんなことないと証明するために友達と来てみると、何故だかいつも臨時休業の看板。……そんなことあるわけないでしょ、とは強く言えなくなってしまう。
     まずはじめに店主の見目について。青い髪と青い瞳。透き通るような白い肌。背が高い。外国人かハーフだろう。まるで御伽噺に出てくるような、人形めいたその姿。流暢な日本語と、メニューのボードに書かれた几帳面で綺麗な文字。言葉数は少なく、しかし耳に残る低音。
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    いずみのかな

    DONE有栖川作家編。健全ホラー。
    『文が淵』と同じく、2004年、有栖川サイトの納涼企画ウェブアンソロに寄稿しましたものです。
    終盤のある箇所について、ウェブアンソロに掲載したときはタグで仕掛けを作ったのですが、pixivでは無理だったためそこのみ変更しております。
    ジャパニーズホラー、の王道目指して頑張りました。
    覗く目 太平洋上で台風が発生したらしい。
     しかし大阪上空は相変わらずの快晴で、気温は今日もうなぎ上りだ。私はだらしないと思いながらも首周りが伸びたTシャツを着て、昼前からソファの上でごろごろ寝そべっていた。日が高いうちに飲むビールは、ほんの少しの後ろめたさもスパイスとなって、また格別の味がする。何たる堕落、と咎めるなかれ。私はつい先程短編を脱稿したばかりなのだ。締め切り明けの作家のささやかな道楽としてここは見逃して欲しい。
     ビールを一本空けたらシャワーを浴びて、約三十時間ぶりにベッドに入るのが今日の予定である。明日のうんと遅くまで惰眠を貪り、それから週末で家にいるであろう京都の友人の所にでも出向くのもいいかもしれない。この二週間、会話を交わした相手は担当一人だけ、更に言うなら二度の電話の合計時間は十分に満たない。私は人に飢えている。
    20073