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    だいだ

    PAST霊律お題「仕方ないか」
    「うおっ!すまん!」
    バタン!俺は慌てて相談所のドアを閉めてその前に立ち尽くす。そうだここは霊とか相談所だ。俺の事務所なのだから俺が慌てる必要はなかった筈だ…たとえ相談所のドアを開けたら影山律がパンツ一丁で立っていたとしても。

    最近律は特に呼ばれなくてもひとりでふらりと相談所に来ることがある。今日もそうなのだろう。学校帰りに雨に降られ、家よりもここの方が近いと相談所に雨宿りしにきた。そして濡れた服を脱いでる最中に俺がドアを開けてしまったという訳だ。…そもそも男同士だし慌ててドアを閉める必要もなかった筈だ。なかった筈だが…。

    律は長ズボンが多い。真夏でも七分丈くらいのズボンを履いていて膝から上を見せない。俺が一度暑くないのか聞いたら無表情のまま「セクハラですよ。」と言いやがった。可愛くない奴なのだ。俺は初めて律の膝から上を、更にパンツを、その更に上の腰や薄い胸板を見た訳だ。別に見たかった訳ではない。不可抗力、仕方なかったというやつだ。何度も言うが男同士だ。興味なんぞない(そもそも相手は中学生だ。俺は中学生をそんな目で見たことはない)。だからさっきから胸がザワザワするコレは単純に驚いたからだ。いつも済まして隙のない律の、無防備にさらけ出された太ももや縦長のヘソの窪みを……具体的に思い返すのは止めよう。俺の頭の中で何かが警報を鳴らす。警報が鳴る事自体がおかしいということは無視する。
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    exchira_oxchira

    DONE律ちゃま、お誕生日おめでとうございます。あなたが生まれてきたこの世界を、憂うことはのなつが担当します。せめて、今日だけは、今夜だけは。
    愛されて、愛して生きているあなたを愛おしみます。これは、羨みかもしれません。のなつの夏に律ちゃまのお誕生日は来ないかもしれないけれど、のなつの夏に律ちゃまはいないのかもしれないけれど、いないかもしれないからこそ、のなつは律ちゃまを消費します。待ってて、君の夏で。
    あくるひその日は茹だるような暑さで、朝に撒いた水は30分もしないうちに干上がって地面から色すら消えてしまって、もう面影もなかった。昨日の夕方に降った大粒で大量な雨の恩恵すらも消え失せて、草花木果は喘ぐことも出来ず項垂れている。夏仕様に花など生けてある暖炉はけれど、この国の花では似合わないな、とは、この季節に入ってから毎日ぼんやり感じていた。そんなこと気にも留めないように、彼女は桃のカプレーゼを退屈してつつく私を見ている。満足そうに、夕日色のおめめを弧にして。私は本当なら、カプレーゼを食べるなら白ワインがいい。こんな夏には、着たいワンピースがあるし、実家に帰らない、と、…それってどこのことだっけ。誰がいるからそうしなきゃいけないんだっけ、ワンピースがしまってあるのはどこで、…ああまたこれだ。彼女といるようになってから、この屋敷に来てから?全部が曖昧模糊して、いやだ。ぜんぶ、ぜんぶ希薄になろうとしている。外との繋がり、他者との繋がり、…おかしいな、目の前の彼女だって、他者なのに、どうして今、一瞬含めないでいいと思ったんだろう。でも、こういう無駄なこと考えようとしちゃうのは、昔からだよね。ねえ。
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