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    fuji_u2dch

    MOURNING亡国の死神のおはなし。或いは何処かの国にいる情報を一手に担った、爪を出さない鷹のおはなし。

    完成させる未来が一切見えないので供養しておきます。古参ふぉろわが覚えているか分かりませんが一応説明すると「一族シリーズ」です。なお文章ではないです。文章ではない。これは(書きたいところしか書いていない)箇条書きと言うんだ
    亡霊の墓を暴く夢の中だ。
    そう、これは夢の中だ。或いは過去の懐かしき記憶の回想。
    自分も彼も、今よりほんの少しだけ背丈が低くて、今よりもっと若いときなのだろう。
    対面する彼の顔は見えない。長い前髪が目を覆い隠してしまっているのだ。深い深い海の底のような瞳を。
    彼が口を開く。
    常の軽々しい声とは異なり、それは重く、決意に満ちた声だった。
    「これだけは、譲れへん。例えグルちゃんの頼みでも、僕は絶対にこれだけは曲げん」
    思えば、彼が明確な意思表示をするのはとても珍しいものだった。確固たる意思なんて持ち合わせていないように見えて、その実、磐石とした決意とプライドを持ち合わせている彼は、それを他者から隠す。何枚ものヴェールを重ね、煙に巻いて、その中身を決してわからせない。性分なのか、誰かからの教えなのか。まぁそんなことはどうでもいいのだ。大切なのは、そんな彼が自分に言い放った内容。
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    twyulanov

    DONEツイッターで書いていたアズフロまとめです。
    画像化投稿のみのものの文章版です。
    「爪」/「匂いの海」/「銀変幻」
    アズフロまとめ『爪』

    「アズールさ、爪きれーにしてるよね」
     書類仕事は飽きる確率の高い幼馴染が、ふと気まぐれに呟いたのにアズールは手元から視線を上げた。確認する気分のうちに計算を終わらせたのか、書き込みの見える紙束が鎮座する前で、頬杖をついた金とオリーブの目がこちらを見ている。下がり気味の目尻が決して優しそうには見えないあたりは普段の行いというやつだろうか、可愛く見えるのは間違いなく贔屓目であることは自覚できた。今は離席している彼の兄弟がここにいたならうんうんと頷いていただろう想像が頭を過ぎるのをそっと振り払う。
     爪、と言ったか。紙を捲るために手袋を外した自分の指先はゆるやかなカーブを描いている。深爪ではないがどちらかといえば短めのそれは、手袋をする際に邪魔にならない程度に整え、かつ多少の衝撃から皮膚を守る役割はきちんと果たせる長さとカーブを保っている。髪一本から足のつま先まで、かのポムフィオーレ寮長ほどではなくともアズールは己の見栄えに気を使っている上に、タコの人魚である故かそれなりに感覚の鋭い指先は大切なセンサーの一つだ。温度も、形も、感触も、条件が揃えばそれ以上に多くの情報をそこから得ることができる。
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