Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    TAR

    おにきゅ

    DONE【鍾タルワンドロ0925「月見」「抱擁」】
    鍾タルワンドロ「月見」「抱擁」柱の上に、ひとりの子供が座っている。
    その眼下では流水で形を成した刃が真一文字を描き、ヒルチャールを吹き飛ばした。遠方では木陰に身を潜めたアビスの魔術師が火球を練り上げている。あの水の刃は火球を受け止めたら蒸発するのだろうか。どうやら空気中の水分を元素力で固着しているようだが、例えば周囲を炎の海にしたらどうだろう?空気中の水分は蒸発し、形になる基を失くした状態でも刃を成形できるものだろうか。子供が「ふむ」と思案を混ぜ込んだ一言を零した。

    「公子殿、聞きたいことがあるのだが、――ああ、後で構わないぞ」
    「そりゃ、お気遣いどーも! 今は手一杯だから助かるよ!」

    戦場を舞うように駆ける男――タルタリヤが、周囲を敵に囲まれながら、嫌味混じりの返答を吐き捨てる。手にした松明を掲げ、火の粉を散らしながら走り寄ってくるヒルチャールをくるりと振り向きながら蹴り飛ばし、すぐさま手元の武器を弓へと変形させて火球を作り出していたアビスの魔術師を打ち抜いた。あいにくとシールドに阻まれて致命傷には成り得なかったが、一時的に詠唱を止めることは出来たようだ。不完全な火球は魔術師の足元に落ちて、草原を燃焼させた。
    1841

    おにきゅ

    DONEクライナーチャレンジもどきをする先生とタルが書きたかった話!
    酒を口移し(仮)しています。
    えっちな雰囲気をかもせていたら嬉しいので、ゆるっとR-15くらい(希望)
    【鍾タルワンライ1023「酒」「毒」】
    鍾タルワンライ「酒」「毒」カラン、と来客を告げる鐘が鳴る。ぐるりと視線を巡らせるとすし詰めのような人数の男たちが、酒瓶を片手に大騒ぎをしていた。目的の人物の姿はない。さて、どうしたものかと思案していると「やぁ、」と気安い声が掛かる。視線を声のした方に向けると、手に小さな小瓶を持ち、頬を僅かに赤く染め、吐息に酒気を混ぜた赤毛の男が片手を上げてにこやかに笑っていた。

    「公子殿。これはどういう状況だ」
    「どういうも何も、見ての通り。ただの酒盛りさ」

    大げさな身振りで肩を竦めてみせる。

    「部下の労いの為に『俺のおごり』って連れて来たら、随分と溜め込んでいたものがあったみたいでね。羽目を外して、あのザマだ」

    あの、と視線で指し示す先では幾つもの空瓶が転がり、一方では脱ぎ始め、一方では口喧嘩。隅の方では既に深い眠りについた相手に「なぜ俺は彼女が出来ないのか」と延々愚痴っている様子も漏れ聞こえてくる。混沌としか表現できない光景を見た鍾離は柳眉をひそめ、それを見たタルタリヤから軽やかな笑い声が上がる。
    2016

    kino_fic

    DONE鍾タルワンライ・第十四回目【抱擁】
    所要時間:1.5h

    (!)注意
    ・魔神第1章3幕までのネタバレ
    ・先生のケツを狙うような言動をする公子
    空いた隙間に綺麗に嵌まるものだから(鍾タル) 公子殿、と唐突に名を呼ばれて手が止まった。外しかけた神の目に指を添えたまま、視線だけを男に向ける。なんだ、気が変わりでもしたのだろうか。
    「俺を抱いてくれないか」
    「えっ、いいの?」
    「……待て。性行為の話ではないぞ」
     露骨に目を輝かせた俺にすかさず否定が入った。まるで俺が非常識なことを言ったかのような胡乱な目つきに逆に言い返したくもなってくる。今このタイミングで言うそっちの方が悪いんじゃないだろうか。肉体関係を持っている男二人。いつも性行為に及ぶ鍾離先生の自宅の寝室で「抱く」といえば連想するべきものはひとつに決まっているのに。
     なぁんだ、と肩を竦めた。どこかで断るのが面倒になってきたり、変な気を起こしたりしてその気になってくれやしないかと何度か戯れに持ち掛けたことはあった。だが、一度も承諾を得たことはない。何がそこまで拘るのかはよくわからない。無理矢理とか、何かしらの手段を用いることは考えなかったわけじゃないが、後が怖いので実行したことはなかった。強者に挑むことは好きだが負け戦がしたいわけではないので。
    1944