TAR
おにきゅ
DONEクライナーチャレンジもどきをする先生とタルが書きたかった話!酒を口移し(仮)しています。
えっちな雰囲気をかもせていたら嬉しいので、ゆるっとR-15くらい(希望)
【鍾タルワンライ1023「酒」「毒」】
鍾タルワンライ「酒」「毒」カラン、と来客を告げる鐘が鳴る。ぐるりと視線を巡らせるとすし詰めのような人数の男たちが、酒瓶を片手に大騒ぎをしていた。目的の人物の姿はない。さて、どうしたものかと思案していると「やぁ、」と気安い声が掛かる。視線を声のした方に向けると、手に小さな小瓶を持ち、頬を僅かに赤く染め、吐息に酒気を混ぜた赤毛の男が片手を上げてにこやかに笑っていた。
「公子殿。これはどういう状況だ」
「どういうも何も、見ての通り。ただの酒盛りさ」
大げさな身振りで肩を竦めてみせる。
「部下の労いの為に『俺のおごり』って連れて来たら、随分と溜め込んでいたものがあったみたいでね。羽目を外して、あのザマだ」
あの、と視線で指し示す先では幾つもの空瓶が転がり、一方では脱ぎ始め、一方では口喧嘩。隅の方では既に深い眠りについた相手に「なぜ俺は彼女が出来ないのか」と延々愚痴っている様子も漏れ聞こえてくる。混沌としか表現できない光景を見た鍾離は柳眉をひそめ、それを見たタルタリヤから軽やかな笑い声が上がる。
2016「公子殿。これはどういう状況だ」
「どういうも何も、見ての通り。ただの酒盛りさ」
大げさな身振りで肩を竦めてみせる。
「部下の労いの為に『俺のおごり』って連れて来たら、随分と溜め込んでいたものがあったみたいでね。羽目を外して、あのザマだ」
あの、と視線で指し示す先では幾つもの空瓶が転がり、一方では脱ぎ始め、一方では口喧嘩。隅の方では既に深い眠りについた相手に「なぜ俺は彼女が出来ないのか」と延々愚痴っている様子も漏れ聞こえてくる。混沌としか表現できない光景を見た鍾離は柳眉をひそめ、それを見たタルタリヤから軽やかな笑い声が上がる。
moku_amekaru
DONE(出来たら)1日1SS鍾タル「下着」
⚠️ちょっと匂わす表現、変態臭い公子
全部捏造二次創作
鼻元思案 その日は一週間ぶりの帰還だった。
放棄された仙境がアビス教団の拠点に使われていると情報を掴み、制圧しようと意気込んで入った。そこまでは良かったが敵は好き放題湧いて出てくるし、そのくせ出口は一向に現れず。まあ、魔物の坩堝に放り込まれるのは本望であるから、携帯食料と空気中の水蒸気から作った飲料で過ごして五日間。そこから移動で二日間。帰り道も生憎の雨で道が悪く、ある程度は自分の水で清めたものの身体は汗まみれ泥まみれの最悪の状況だった。
そんなこんなを乗り越えて無事に帰還し間もなく璃月港である。本来ならすぐにでも北国銀行に戻り報告書を認めなければならないのだが。思う存分暴れ回りすっきりしたというのに、事務仕事に向き合うのは億劫だった。
3183放棄された仙境がアビス教団の拠点に使われていると情報を掴み、制圧しようと意気込んで入った。そこまでは良かったが敵は好き放題湧いて出てくるし、そのくせ出口は一向に現れず。まあ、魔物の坩堝に放り込まれるのは本望であるから、携帯食料と空気中の水蒸気から作った飲料で過ごして五日間。そこから移動で二日間。帰り道も生憎の雨で道が悪く、ある程度は自分の水で清めたものの身体は汗まみれ泥まみれの最悪の状況だった。
そんなこんなを乗り越えて無事に帰還し間もなく璃月港である。本来ならすぐにでも北国銀行に戻り報告書を認めなければならないのだが。思う存分暴れ回りすっきりしたというのに、事務仕事に向き合うのは億劫だった。
gyubeez
SPUR MEChilde really needs to learn how to use chopsticks. Good thing his Xiansheng is there to lend him a helping hand. 5moku_amekaru
DONEうっかり若い子に手を伸ばしてしまった鍾離先生の鍾タル辻褄併せ 名の通り璃月の夜空は美しい。磨き上げた宝石に似た月が街を見下ろし、それに応えるように淡い橙の灯りが通りに並ぶ。穏やかな水面はきらきらと光を返し、港全てが黄金の山のように尊い。
見慣れた愛しい街。硝子越しに指で撫でて、ひとつため息。常と変わらない香に、微かにまじる異質な残り香につい眉が下がった。
振り返った先には男がもう一人。衣服は纏わず、布団一枚が中途半端にその身を隠している。近づいてみたが、草臥れているようで起きる様子はない。
あどけなさの残る寝顔には常の飄逸した空気も氷のような鋭さもない。ぺらりと布団をめくると、鍛え抜かれた身体が姿を現す。刻まれた古傷の上にはいくつかの鬱血痕と歯型が重なっていた。全て、鍾離が残したものだ。
3378見慣れた愛しい街。硝子越しに指で撫でて、ひとつため息。常と変わらない香に、微かにまじる異質な残り香につい眉が下がった。
振り返った先には男がもう一人。衣服は纏わず、布団一枚が中途半端にその身を隠している。近づいてみたが、草臥れているようで起きる様子はない。
あどけなさの残る寝顔には常の飄逸した空気も氷のような鋭さもない。ぺらりと布団をめくると、鍛え抜かれた身体が姿を現す。刻まれた古傷の上にはいくつかの鬱血痕と歯型が重なっていた。全て、鍾離が残したものだ。
maxbannem
DOODLE #鍾タル #종탈 #ZhongChiFor the password, please enter the 4 digits of my birthday shown in my X's bio.
The birthday is only visible to X's followers.
Just look at adults.
moku_amekaru
MOURNING鍾タル(未満)⚠️ちょっと痛そう、中途半端な感じ
あばれくじらのこ あれは嵐だった。台風だった。
黒ずんだ紅に染まる絨毯、床に広がった数多の本、ぱらぱらと木の屑を散らしながら走る風、鼻をつく乾いた油と鉄の匂い。それと焦げ臭さ。
吹き抜けの天井を改めて見上げて知らずのうちに溜息が漏れた。絢爛な硝子細工の照明も破片を散らし、油は血と混じって床板に染み込んでいる。六千年を生きてきた鍾離であっても、未だに呆気に取られる出来事というのは起こりうるらしい。感心すら覚えていた。
傍らの臥牀に横たわる男は昨夜と打って変わって穏やかで何処かあどけない寝姿を晒している。膝を抱いて横向きの姿勢は酷い疲労が溜まっているだか、心の拠り所を探しているだかといつか書物で読んだことがある。鍾離は人間ではないので、本当のところは分からないが。
2396黒ずんだ紅に染まる絨毯、床に広がった数多の本、ぱらぱらと木の屑を散らしながら走る風、鼻をつく乾いた油と鉄の匂い。それと焦げ臭さ。
吹き抜けの天井を改めて見上げて知らずのうちに溜息が漏れた。絢爛な硝子細工の照明も破片を散らし、油は血と混じって床板に染み込んでいる。六千年を生きてきた鍾離であっても、未だに呆気に取られる出来事というのは起こりうるらしい。感心すら覚えていた。
傍らの臥牀に横たわる男は昨夜と打って変わって穏やかで何処かあどけない寝姿を晒している。膝を抱いて横向きの姿勢は酷い疲労が溜まっているだか、心の拠り所を探しているだかといつか書物で読んだことがある。鍾離は人間ではないので、本当のところは分からないが。
rani_noab
PROGRESSアイドルパロ「鍾タル夢」。男主攻。鍾タル、主鍾、主タルみたいな爛れた永遠の三角関係やつ。。。ネタバレはないと思いますが、一章終わってからをお勧めします。夢主の名前は佐神唯嘉(さがみゆいか)です。2000字くらい。暗闇に光が駆け抜ける。開幕を知らせるように、ステージが一気に輝いた。期待にはちきれそうだった世界はこの時を待っていた。弾かれたように世界が歓声でいっぱいになる。その声は空気を震わせ、熱気が遥か高みにまでのぼっていく。ステージの上、眩いライトの中心に照らされて、彼は立っていた。
一万を超えるファンを前に、緊張など知らないかのように楽しそうに笑った青年に、すべての注目が集まる。少しあどけなさの残る輪郭は整い、少し癖のある茶色の髪が強いライトに毛先が金に光るようだ。大きなモニターに見える青い瞳は、深く底のしれない海のような色を湛えて、見る者を魅了した。
彼のために仕立てられた白い衣装に、ピアスを揺らし、彼はマイクを握る。
8649一万を超えるファンを前に、緊張など知らないかのように楽しそうに笑った青年に、すべての注目が集まる。少しあどけなさの残る輪郭は整い、少し癖のある茶色の髪が強いライトに毛先が金に光るようだ。大きなモニターに見える青い瞳は、深く底のしれない海のような色を湛えて、見る者を魅了した。
彼のために仕立てられた白い衣装に、ピアスを揺らし、彼はマイクを握る。
のくたの諸々倉庫
DONE鍾タルワンライお題「喧嘩」「HP低下ボイス」一時間早く書き始めてたやつです。
「先生なんか頑固の神で頑神だよ」「それは罵倒なのか?」 夢を見た。
「——その実力、認めてやらなくもない」
口元の血を拭い、そう笑った先生になぜか——どうしようもなく、胸が高鳴ると同時に。
これを引き出せるのがどうして自分じゃないんだろう、と思ったことも、間違いなく事実だった。
「……先生のばーか」
とはいえそれは、今現実で起こっていることとは悲しいほど無関係だ。なんてったって俺と先生は今、喧嘩の真っ最中で……その原因はよく分かっていないのだから困りものである。
……いや、そう表現すると少し語弊があるだろうか。原因自体は「俺が任務以外で魔王武装を使ったこと」だ。それは分かりきっている。ただ、それで先生が俺を叱りつける理由が分からなかった。
俺だって子供じゃないのだから、言われなくたってその危険性くらいは理解している。それでもやっぱりあの男からすれば、俺なんて赤子同然なんだろうな、と。
2236「——その実力、認めてやらなくもない」
口元の血を拭い、そう笑った先生になぜか——どうしようもなく、胸が高鳴ると同時に。
これを引き出せるのがどうして自分じゃないんだろう、と思ったことも、間違いなく事実だった。
「……先生のばーか」
とはいえそれは、今現実で起こっていることとは悲しいほど無関係だ。なんてったって俺と先生は今、喧嘩の真っ最中で……その原因はよく分かっていないのだから困りものである。
……いや、そう表現すると少し語弊があるだろうか。原因自体は「俺が任務以外で魔王武装を使ったこと」だ。それは分かりきっている。ただ、それで先生が俺を叱りつける理由が分からなかった。
俺だって子供じゃないのだから、言われなくたってその危険性くらいは理解している。それでもやっぱりあの男からすれば、俺なんて赤子同然なんだろうな、と。
morimori
DOODLE【鍾タル】素材を取りに行く鍾+タル+旅人の話。カプ要素が毎度のごとく極薄なんですが一応鍾タルです🦀砂浜にて砂浜にて(鍾タル+旅人) @ruauiue
ザザァン——
潮の香りに満ちた風が吹きすさび、遠慮のない陽光が降り注ぐ。足元は焼かれた砂から立ち上る熱気で僅かに熱い。渡り鳥の鳴き声が遠くから届く。
「海だねえ」
「海だな……」
岩の上に腰掛けつつ暇を持て余し、独り言を言ったつもりの青年は、応えるような声が右後方から聞こえてきたので思わずそちらを見た。振り返れば、目に痛いほど眩く光を反射する砂には到底似合わぬ、黒い出で立ちをした男がしかめ面で立っていた。その男越しに視界に映った水平線上には、突き出した岩が点在しているのが見える。
「やあ鍾離先生。先生も相棒に呼ばれてきたの?」
「こんにちは公子殿。旅人のことか。ああ、探索に付き合ってもらいたいから現地で合流しよう、と、三日前に」
3192ザザァン——
潮の香りに満ちた風が吹きすさび、遠慮のない陽光が降り注ぐ。足元は焼かれた砂から立ち上る熱気で僅かに熱い。渡り鳥の鳴き声が遠くから届く。
「海だねえ」
「海だな……」
岩の上に腰掛けつつ暇を持て余し、独り言を言ったつもりの青年は、応えるような声が右後方から聞こえてきたので思わずそちらを見た。振り返れば、目に痛いほど眩く光を反射する砂には到底似合わぬ、黒い出で立ちをした男がしかめ面で立っていた。その男越しに視界に映った水平線上には、突き出した岩が点在しているのが見える。
「やあ鍾離先生。先生も相棒に呼ばれてきたの?」
「こんにちは公子殿。旅人のことか。ああ、探索に付き合ってもらいたいから現地で合流しよう、と、三日前に」
piz_tk
DONEモブレされてるみたいなタルです。未成年の方は閲覧はご遠慮ください。This is a doodle of Childe being treated badly by mobs.
It is not for minors to view.
PASS➡成人済ですか?
yes/no
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十四回目【抱擁】所要時間:1.5h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
・先生のケツを狙うような言動をする公子
空いた隙間に綺麗に嵌まるものだから(鍾タル) 公子殿、と唐突に名を呼ばれて手が止まった。外しかけた神の目に指を添えたまま、視線だけを男に向ける。なんだ、気が変わりでもしたのだろうか。
「俺を抱いてくれないか」
「えっ、いいの?」
「……待て。性行為の話ではないぞ」
露骨に目を輝かせた俺にすかさず否定が入った。まるで俺が非常識なことを言ったかのような胡乱な目つきに逆に言い返したくもなってくる。今このタイミングで言うそっちの方が悪いんじゃないだろうか。肉体関係を持っている男二人。いつも性行為に及ぶ鍾離先生の自宅の寝室で「抱く」といえば連想するべきものはひとつに決まっているのに。
なぁんだ、と肩を竦めた。どこかで断るのが面倒になってきたり、変な気を起こしたりしてその気になってくれやしないかと何度か戯れに持ち掛けたことはあった。だが、一度も承諾を得たことはない。何がそこまで拘るのかはよくわからない。無理矢理とか、何かしらの手段を用いることは考えなかったわけじゃないが、後が怖いので実行したことはなかった。強者に挑むことは好きだが負け戦がしたいわけではないので。
1944「俺を抱いてくれないか」
「えっ、いいの?」
「……待て。性行為の話ではないぞ」
露骨に目を輝かせた俺にすかさず否定が入った。まるで俺が非常識なことを言ったかのような胡乱な目つきに逆に言い返したくもなってくる。今このタイミングで言うそっちの方が悪いんじゃないだろうか。肉体関係を持っている男二人。いつも性行為に及ぶ鍾離先生の自宅の寝室で「抱く」といえば連想するべきものはひとつに決まっているのに。
なぁんだ、と肩を竦めた。どこかで断るのが面倒になってきたり、変な気を起こしたりしてその気になってくれやしないかと何度か戯れに持ち掛けたことはあった。だが、一度も承諾を得たことはない。何がそこまで拘るのかはよくわからない。無理矢理とか、何かしらの手段を用いることは考えなかったわけじゃないが、後が怖いので実行したことはなかった。強者に挑むことは好きだが負け戦がしたいわけではないので。
うみ 海未
MOURNING吸血鬼の末裔タルタリヤと財閥の御曹司で学級委員を務める鍾離の二人だけの不思議な学園物語。二人は由緒正しい御曹司様♪ーこれは二人だけの学園物語。
タルタリヤと鍾離が出会ったのはタルタリヤが転校して来たことがきっかけだった。
教室に入り、自己紹介を済ませた転校生はタルタリヤと名乗った。
俺は生徒会でもあり学級委員長であるから教師からタルタリヤを部活の案内を頼まれた。
初めてのことだったので少し戸惑ったが、困っている生徒が居たら放ってはおけない。
部活案内をしながら、俺はタルタリヤに「困ったことがあれば俺に言ってくれ」と一言、言ってやった。
タルタリヤは初対面なのか少し静かであまり喋ろうとはしなかった。
だが、サッカー部やアーチェリー部の部活案内をしていると興味津々で俺に話しかけてくる。
俺はそれなりに答えてやるが、その日はまだ本格的には入部するとまでは言ってこなかった。
1486タルタリヤと鍾離が出会ったのはタルタリヤが転校して来たことがきっかけだった。
教室に入り、自己紹介を済ませた転校生はタルタリヤと名乗った。
俺は生徒会でもあり学級委員長であるから教師からタルタリヤを部活の案内を頼まれた。
初めてのことだったので少し戸惑ったが、困っている生徒が居たら放ってはおけない。
部活案内をしながら、俺はタルタリヤに「困ったことがあれば俺に言ってくれ」と一言、言ってやった。
タルタリヤは初対面なのか少し静かであまり喋ろうとはしなかった。
だが、サッカー部やアーチェリー部の部活案内をしていると興味津々で俺に話しかけてくる。
俺はそれなりに答えてやるが、その日はまだ本格的には入部するとまでは言ってこなかった。
長(なが)
DOODLE鍾タルワンドロのお題を借りて描こうと思ったけど思ったよりも薄くなってしまったのでただのワンドロ(+15min)久しぶりに短時間で集中して描いたからものすごく手が疲れた…
追記:本来のお題は「悪趣味」「矛盾」 2
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十三回目【悪趣味】所要時間:2h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
倒錯は誰のせい(鍾タル) 誰も彼もが寝静まる深い夜の頃。鍾離先生の自宅を訪れると出迎えてきたのは、つくりもののように美しい女だった。
その女は、赤い紅を引いた薄いくちびるで、「ああ、公子殿か」といつも通りの低音で紡ぐものだから。すごく、混乱した。視覚情報と音声情報の不一致でおかしくなったのかとさえ思うほどに。
「……は?」
「どうした。随分と愉快な顔つきになっているが、入らないのか」
俺の頭がおかしくなってしまったのだろうか。あまりにも当然のような顔をする。俺はどんな間抜け面をしていたなど考えたくはないけれど。
「……入るよ。おじゃまします」
「ああ、」
招き入れられるまま室内に足を踏み入れる。一人暮らしには広すぎる彼の自宅の中でも俺が入ったことがあるのは寝室と浴室ぐらいのものだった。そのまままっすぐ寝室に向かう。俺よりも先んじて進む鍾離先生の後ろ姿に、妙に意識が向いた。
2400その女は、赤い紅を引いた薄いくちびるで、「ああ、公子殿か」といつも通りの低音で紡ぐものだから。すごく、混乱した。視覚情報と音声情報の不一致でおかしくなったのかとさえ思うほどに。
「……は?」
「どうした。随分と愉快な顔つきになっているが、入らないのか」
俺の頭がおかしくなってしまったのだろうか。あまりにも当然のような顔をする。俺はどんな間抜け面をしていたなど考えたくはないけれど。
「……入るよ。おじゃまします」
「ああ、」
招き入れられるまま室内に足を踏み入れる。一人暮らしには広すぎる彼の自宅の中でも俺が入ったことがあるのは寝室と浴室ぐらいのものだった。そのまままっすぐ寝室に向かう。俺よりも先んじて進む鍾離先生の後ろ姿に、妙に意識が向いた。
moku_amekaru
DONEお題「悪趣味」鍾タルの2回目の話
1h+30m
⚠️ガッツリ事後、R-15程度
#鍾タルワンドロ·ワンライ
お互い様の話 眼下には、溺れる男。小刻みで荒い呼吸に唇が揺れ、肌はしとりと艶のある湿りを帯びている。命からがら漆黒の海から這い出てきたような姿だが、男が鍾離と泳いでいたのは波のように皺を帯びたシーツの上だ。
真白い肌は霜焼けのように赤らみ、朽葉の髪は雪解けのように潤う。常よりもさらに色濃く腫れた唇を親指でなぞり、そのまま頬に手を添える。温度差が心地いいのか、気まぐれに甘える猫のように、一つ擦り寄られた。いじらしい仕草に誘われて、離したばかりの身体を寄せる。背に腕を回し、ぴたりと胸を合わせる。どちらの鼓動も妙に早く、落ち着きがない。擦り寄せた首筋から汐の匂いがした。
「はあっ、なあに、もう一回、する?」
耳に注ぎ込まれる揶揄の声。乱暴な手が鍾離の枝毛のない髪を乱す。強者を挑発するときと同じ調子だ。魅力的な誘いであるが、その声音はすり減って掠れ、確かな疲労が滲んでいる。逆境を得意とする男はこんな時でも侮られるのを嫌がるのか。呆れと感心の半々を添えて、赤らむ目尻に唇を寄せた。
2847真白い肌は霜焼けのように赤らみ、朽葉の髪は雪解けのように潤う。常よりもさらに色濃く腫れた唇を親指でなぞり、そのまま頬に手を添える。温度差が心地いいのか、気まぐれに甘える猫のように、一つ擦り寄られた。いじらしい仕草に誘われて、離したばかりの身体を寄せる。背に腕を回し、ぴたりと胸を合わせる。どちらの鼓動も妙に早く、落ち着きがない。擦り寄せた首筋から汐の匂いがした。
「はあっ、なあに、もう一回、する?」
耳に注ぎ込まれる揶揄の声。乱暴な手が鍾離の枝毛のない髪を乱す。強者を挑発するときと同じ調子だ。魅力的な誘いであるが、その声音はすり減って掠れ、確かな疲労が滲んでいる。逆境を得意とする男はこんな時でも侮られるのを嫌がるのか。呆れと感心の半々を添えて、赤らむ目尻に唇を寄せた。
natsukoshi_ay
DOODLEリクエストいただいた間の中でも特別甘い血でたくさんの吸血鬼に狙われるほたるさんと、それらから守ってやる代わりに血を吸う吸血鬼しょーさんの話ですほんとはタルタリヤさんもとのことでしたが長くなったので切りました ごめんなさい
吸血鬼、あるいはヴァンパイア。
夜に墓の中から蘇る自殺者、破門者、早く埋葬されすぎたものの死体が一般的にそう呼ばれる。彼らはその長くてするどい犬歯によって人の生き血を啜る。その様から、比喩的に無慈悲に人を苦しめ利益を搾り取る人間の意でも使われることもあるが、それは置いておいて。
血を吸われたひとはこの夜のおとないびとの虜になり、自身もまた吸血鬼へと変貌を遂げる。
太陽や十字架、聖水やニンニクが嫌い。とはいえ日光はともかく、ニンニクを鼻先に突きつけたり聖水をばら撒いてやったらちょっと怯むというくらいであり、真に、永久に、彼らを絶やすには銀の杭を胸に打ち込み、四つ辻に埋めなければならない。
彼らが表舞台に姿を表したのは古代ギリシアやスラヴ、ハンガリーの伝説だとされている。地方で囁かれる民話、伝説の類であった吸血鬼の存在が広く一般に広まったのはロマン派文学の起りである18世紀末以降のことだ。
9012夜に墓の中から蘇る自殺者、破門者、早く埋葬されすぎたものの死体が一般的にそう呼ばれる。彼らはその長くてするどい犬歯によって人の生き血を啜る。その様から、比喩的に無慈悲に人を苦しめ利益を搾り取る人間の意でも使われることもあるが、それは置いておいて。
血を吸われたひとはこの夜のおとないびとの虜になり、自身もまた吸血鬼へと変貌を遂げる。
太陽や十字架、聖水やニンニクが嫌い。とはいえ日光はともかく、ニンニクを鼻先に突きつけたり聖水をばら撒いてやったらちょっと怯むというくらいであり、真に、永久に、彼らを絶やすには銀の杭を胸に打ち込み、四つ辻に埋めなければならない。
彼らが表舞台に姿を表したのは古代ギリシアやスラヴ、ハンガリーの伝説だとされている。地方で囁かれる民話、伝説の類であった吸血鬼の存在が広く一般に広まったのはロマン派文学の起りである18世紀末以降のことだ。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十二回目【ピアス】所要時間:1h+15min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
未必の故意など知らずに笑う(鍾タル) 習慣というものは当人の自覚よりもずっと執念深く居座り続けるものだ。毎日の何気ない行動は、日々塗り重ねられて自分という存在を形成する。他国で盛んな油彩の絵画がそれに近いのかもしれない。それは何千年でも、二十年かそこらの歳月でも大きくは変わらないだろう。
公子と性行為に及ぶことがひとつの「習慣」となってから暫く経つ。感情を伴わない即物的な欲求を正面からぶつけられたので、応えただけ。それだけの関係であり、特別、公子に対して何らかの感情を抱いているわけではなかった。向こうもそう変わりはないはずだ。単に都合が良いだけの利害の一致。――だが、好きな部位がひとつだけあった。
彼の耳が、どうにも好ましい。赤朽葉色の髪からのぞく、雪国の人間らしい白い肌。武人としては勲章であり、戦士たる証とも言える傷痕は彼の身体の至るところに残されているが、耳にはひとつとして残されていない。唯一、左耳にぽつりと小さな穴が開いているだけ。平時は耳飾りによって隠されたそれを目にしたことがある人物はそう多くはないだろう。それが行為のとき、興奮すると薄く朱が差す。裸体を晒されるよりもずっと、それが淫靡で仕方がないように思われた。
1821公子と性行為に及ぶことがひとつの「習慣」となってから暫く経つ。感情を伴わない即物的な欲求を正面からぶつけられたので、応えただけ。それだけの関係であり、特別、公子に対して何らかの感情を抱いているわけではなかった。向こうもそう変わりはないはずだ。単に都合が良いだけの利害の一致。――だが、好きな部位がひとつだけあった。
彼の耳が、どうにも好ましい。赤朽葉色の髪からのぞく、雪国の人間らしい白い肌。武人としては勲章であり、戦士たる証とも言える傷痕は彼の身体の至るところに残されているが、耳にはひとつとして残されていない。唯一、左耳にぽつりと小さな穴が開いているだけ。平時は耳飾りによって隠されたそれを目にしたことがある人物はそう多くはないだろう。それが行為のとき、興奮すると薄く朱が差す。裸体を晒されるよりもずっと、それが淫靡で仕方がないように思われた。