魔神
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第二十回目【心臓】所要時間:2h
(!)注意
・魔神1章3幕までのネタバレ
溶けあうのは真夜中だけ(鍾タル) 食事と睡眠は生きるために欠かせない。生きるために必要ということは、戦い続けるためにも無論必須ということだ。よく食べ、よく動き、よく眠る。それなりの訓練を積んでいる身なので、多少それらが欠けていたとしても動くことはできるが、それは満たせるときに十分満たしているからこそ叶えられる。女皇の刃、戦士たる己にとっての食事と睡眠はメンテナンス的な意味が強い。
でも、それだけじゃないとも思う。たとえば俺が完全に食事も睡眠も必要としない身体になったとしても、きっと俺はどちらの習慣も欠かすことをしないはずだから。
隣に横たわった鍾離先生に腕を伸ばす。そのまま頭を抱え込むように腕を回すと、居心地が悪そうにもぞりと腕の中で男が身じろぐ気配がした。自分と同じ背丈の男相手だが、大して問題は感じなかった。多少デカいが、やりかたは妹や弟を寝かしつけるのとそう変わらない。そう言ったら、きっとこの男は嫌そうな顔をするだろうと思うとどうにも可笑しい。
2118でも、それだけじゃないとも思う。たとえば俺が完全に食事も睡眠も必要としない身体になったとしても、きっと俺はどちらの習慣も欠かすことをしないはずだから。
隣に横たわった鍾離先生に腕を伸ばす。そのまま頭を抱え込むように腕を回すと、居心地が悪そうにもぞりと腕の中で男が身じろぐ気配がした。自分と同じ背丈の男相手だが、大して問題は感じなかった。多少デカいが、やりかたは妹や弟を寝かしつけるのとそう変わらない。そう言ったら、きっとこの男は嫌そうな顔をするだろうと思うとどうにも可笑しい。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十八回目【酒、毒】お題だけお借りしましたが、時間も長さも投稿タイミングも無配慮のためお題だけです。
(!)注意
・魔神1章3幕までのネタバレ
・全部捏造です
処女雪を踏み荒らして踊る(鍾タル) はじめてというものはいつだって喪失と隣り合わせだ。まっさらな新雪の上に足を踏み入れるように、踏みつけた場所はもう元には戻らない。永遠に失った「はじめて」を惜しむことも、振り返ることも今更したりはしない。俺は前だけを見て進むことを信条としているから。ただ、それでも。だからこそ、かもしれないが。人より多くの経験を重ねたこの身に残された数少ない初体験というものを見つけると、どこかくすぐったい気持ちになってしまう。
だから鍾離先生が泥酔というものを知らないと話したとき、「俺もだよ」と思わず零してしまったのだ。食後の茶を啜る男はぴくりとも表情を動かさずに、意外だな、と呟いた。だったらもう少し意外そうな顔を作ってほしいものだが。
6201だから鍾離先生が泥酔というものを知らないと話したとき、「俺もだよ」と思わず零してしまったのだ。食後の茶を啜る男はぴくりとも表情を動かさずに、意外だな、と呟いた。だったらもう少し意外そうな顔を作ってほしいものだが。
nakasu_ktak
REHABILI ##1日1推し模写 1日目(連続とは言っていない)幻魔神狐ヤッセンボー@薩摩剣士隼人
模写元:公式HP画像複数枚
数年ぶりに描いたけど全身わけわからん サークル主の神々がなんであそこまで何度もかけるのか私にはわかりません お前の画力が全然足りないからだよ!
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十四回目【抱擁】所要時間:1.5h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
・先生のケツを狙うような言動をする公子
空いた隙間に綺麗に嵌まるものだから(鍾タル) 公子殿、と唐突に名を呼ばれて手が止まった。外しかけた神の目に指を添えたまま、視線だけを男に向ける。なんだ、気が変わりでもしたのだろうか。
「俺を抱いてくれないか」
「えっ、いいの?」
「……待て。性行為の話ではないぞ」
露骨に目を輝かせた俺にすかさず否定が入った。まるで俺が非常識なことを言ったかのような胡乱な目つきに逆に言い返したくもなってくる。今このタイミングで言うそっちの方が悪いんじゃないだろうか。肉体関係を持っている男二人。いつも性行為に及ぶ鍾離先生の自宅の寝室で「抱く」といえば連想するべきものはひとつに決まっているのに。
なぁんだ、と肩を竦めた。どこかで断るのが面倒になってきたり、変な気を起こしたりしてその気になってくれやしないかと何度か戯れに持ち掛けたことはあった。だが、一度も承諾を得たことはない。何がそこまで拘るのかはよくわからない。無理矢理とか、何かしらの手段を用いることは考えなかったわけじゃないが、後が怖いので実行したことはなかった。強者に挑むことは好きだが負け戦がしたいわけではないので。
1944「俺を抱いてくれないか」
「えっ、いいの?」
「……待て。性行為の話ではないぞ」
露骨に目を輝かせた俺にすかさず否定が入った。まるで俺が非常識なことを言ったかのような胡乱な目つきに逆に言い返したくもなってくる。今このタイミングで言うそっちの方が悪いんじゃないだろうか。肉体関係を持っている男二人。いつも性行為に及ぶ鍾離先生の自宅の寝室で「抱く」といえば連想するべきものはひとつに決まっているのに。
なぁんだ、と肩を竦めた。どこかで断るのが面倒になってきたり、変な気を起こしたりしてその気になってくれやしないかと何度か戯れに持ち掛けたことはあった。だが、一度も承諾を得たことはない。何がそこまで拘るのかはよくわからない。無理矢理とか、何かしらの手段を用いることは考えなかったわけじゃないが、後が怖いので実行したことはなかった。強者に挑むことは好きだが負け戦がしたいわけではないので。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十三回目【悪趣味】所要時間:2h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
倒錯は誰のせい(鍾タル) 誰も彼もが寝静まる深い夜の頃。鍾離先生の自宅を訪れると出迎えてきたのは、つくりもののように美しい女だった。
その女は、赤い紅を引いた薄いくちびるで、「ああ、公子殿か」といつも通りの低音で紡ぐものだから。すごく、混乱した。視覚情報と音声情報の不一致でおかしくなったのかとさえ思うほどに。
「……は?」
「どうした。随分と愉快な顔つきになっているが、入らないのか」
俺の頭がおかしくなってしまったのだろうか。あまりにも当然のような顔をする。俺はどんな間抜け面をしていたなど考えたくはないけれど。
「……入るよ。おじゃまします」
「ああ、」
招き入れられるまま室内に足を踏み入れる。一人暮らしには広すぎる彼の自宅の中でも俺が入ったことがあるのは寝室と浴室ぐらいのものだった。そのまままっすぐ寝室に向かう。俺よりも先んじて進む鍾離先生の後ろ姿に、妙に意識が向いた。
2400その女は、赤い紅を引いた薄いくちびるで、「ああ、公子殿か」といつも通りの低音で紡ぐものだから。すごく、混乱した。視覚情報と音声情報の不一致でおかしくなったのかとさえ思うほどに。
「……は?」
「どうした。随分と愉快な顔つきになっているが、入らないのか」
俺の頭がおかしくなってしまったのだろうか。あまりにも当然のような顔をする。俺はどんな間抜け面をしていたなど考えたくはないけれど。
「……入るよ。おじゃまします」
「ああ、」
招き入れられるまま室内に足を踏み入れる。一人暮らしには広すぎる彼の自宅の中でも俺が入ったことがあるのは寝室と浴室ぐらいのものだった。そのまままっすぐ寝室に向かう。俺よりも先んじて進む鍾離先生の後ろ姿に、妙に意識が向いた。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十二回目【ピアス】所要時間:1h+15min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
未必の故意など知らずに笑う(鍾タル) 習慣というものは当人の自覚よりもずっと執念深く居座り続けるものだ。毎日の何気ない行動は、日々塗り重ねられて自分という存在を形成する。他国で盛んな油彩の絵画がそれに近いのかもしれない。それは何千年でも、二十年かそこらの歳月でも大きくは変わらないだろう。
公子と性行為に及ぶことがひとつの「習慣」となってから暫く経つ。感情を伴わない即物的な欲求を正面からぶつけられたので、応えただけ。それだけの関係であり、特別、公子に対して何らかの感情を抱いているわけではなかった。向こうもそう変わりはないはずだ。単に都合が良いだけの利害の一致。――だが、好きな部位がひとつだけあった。
彼の耳が、どうにも好ましい。赤朽葉色の髪からのぞく、雪国の人間らしい白い肌。武人としては勲章であり、戦士たる証とも言える傷痕は彼の身体の至るところに残されているが、耳にはひとつとして残されていない。唯一、左耳にぽつりと小さな穴が開いているだけ。平時は耳飾りによって隠されたそれを目にしたことがある人物はそう多くはないだろう。それが行為のとき、興奮すると薄く朱が差す。裸体を晒されるよりもずっと、それが淫靡で仕方がないように思われた。
1821公子と性行為に及ぶことがひとつの「習慣」となってから暫く経つ。感情を伴わない即物的な欲求を正面からぶつけられたので、応えただけ。それだけの関係であり、特別、公子に対して何らかの感情を抱いているわけではなかった。向こうもそう変わりはないはずだ。単に都合が良いだけの利害の一致。――だが、好きな部位がひとつだけあった。
彼の耳が、どうにも好ましい。赤朽葉色の髪からのぞく、雪国の人間らしい白い肌。武人としては勲章であり、戦士たる証とも言える傷痕は彼の身体の至るところに残されているが、耳にはひとつとして残されていない。唯一、左耳にぽつりと小さな穴が開いているだけ。平時は耳飾りによって隠されたそれを目にしたことがある人物はそう多くはないだろう。それが行為のとき、興奮すると薄く朱が差す。裸体を晒されるよりもずっと、それが淫靡で仕方がないように思われた。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第九回目【自由】所要時間:1h20min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
その唇で教えて(鍾タル) はじめて触れた唇の感触は想像以上に柔らかで、少しだけ乾いているのが意外だった。もっと硬いと思っていた。あるいは、柔らかであるならば若芽のように艶やかであるのかとも思われた。実際はいずれとも違う。若々しいけれど危うくはなく、輪郭の形が定まっている。それがきっとこの男のてざわりなのだろう。――いや、待て。俺は一体、何をした。
はじめて触れ、確かめた感触の情報量を取り込むことに気を取られていた頭に、己のしでかした問題が追い付いてくる。くちづけてしまった。この男に。よりにもよって、公子に。ああ、惜しい。もう一度重ねた。そのあたりで、漸く我に返る。
その回数は合計三度に及んだ。口を吸ってから三度目に迅速に顔を離す。公子の顔は、あろうことか、笑っている。その唇がなにごとかを紡ぐ前に、手で塞いだ。平時から手袋を身に着けていることに安堵したのはこれがはじめてだ。素手だったら何をしていたか、想像するだけで頭痛がする。
2072はじめて触れ、確かめた感触の情報量を取り込むことに気を取られていた頭に、己のしでかした問題が追い付いてくる。くちづけてしまった。この男に。よりにもよって、公子に。ああ、惜しい。もう一度重ねた。そのあたりで、漸く我に返る。
その回数は合計三度に及んだ。口を吸ってから三度目に迅速に顔を離す。公子の顔は、あろうことか、笑っている。その唇がなにごとかを紡ぐ前に、手で塞いだ。平時から手袋を身に着けていることに安堵したのはこれがはじめてだ。素手だったら何をしていたか、想像するだけで頭痛がする。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第八回目【キス】所要時間:1h50min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
・色街の話題が出る
だってそんな目をするから(鍾タル) 手に届きそうで手が届かないときが一番欲しいと思う。触れられそうで触れられないものに触れたいと思う。焦らされるほどそそられる。人間の欲望はそういう風にできている。あの時、そんな当たり前に気が付かなかった自分が恨めしくて仕方がなかった。
「公子」タルタリヤは後悔していた。あの日、鍾離先生にキスをしてしまったことに。それもただのキスではない。あの記憶力が良すぎる男に何も残さないようにだなんて馬鹿な配慮をして、水越しに唇を合わせた。今思えば魔が差したの一言に尽きるが、あの瞬間の自分としては、別れのキスのようなニュアンスがあったのだと思う。まったく、相当酔っていたとはいえ女々しいことこの上ない。馬鹿野郎が。明日別れるならまだしも、いつ別れの日が来るかだなんて数日後か、数か月後か、数年後かなんてわかりもしないのに。
2421「公子」タルタリヤは後悔していた。あの日、鍾離先生にキスをしてしまったことに。それもただのキスではない。あの記憶力が良すぎる男に何も残さないようにだなんて馬鹿な配慮をして、水越しに唇を合わせた。今思えば魔が差したの一言に尽きるが、あの瞬間の自分としては、別れのキスのようなニュアンスがあったのだと思う。まったく、相当酔っていたとはいえ女々しいことこの上ない。馬鹿野郎が。明日別れるならまだしも、いつ別れの日が来るかだなんて数日後か、数か月後か、数年後かなんてわかりもしないのに。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第七回目【契約】所要時間:3h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
眩暈の所為にしてもいいですか(鍾タル) 例外を認めてはならない。越境を許してはならない。妥協してはならない。それは人を弱くする。魔神とてそれが変わらない原則なのだということを、いやというほど思い知っていた。
彼が横たわる却砂材製の寝台は、何から何まで一級品が揃えられているようだった。さぞ素晴らしい寝心地だろう。一般人が横になればどんな不眠の持ち主であろうとも、そのまま昏々と眠れるに違いない。しかし実際、この寝室の主である男は何者かが近寄ればすぐさま飛び起き、喉元に刃を突き付けることができてしまうだろう。しかも、嬉々として。
今、公子の枕元に立てている状況も、凡人となった身の上でも使える程度の仙術を行使しなければ叶わなかった。寝込みを襲おうとしたのが悪いという口実で歓喜のまま襲いかかられては堪らない。たとえそれで生じた損害をすべて彼が被ることになるのだとしても、だ。
2616彼が横たわる却砂材製の寝台は、何から何まで一級品が揃えられているようだった。さぞ素晴らしい寝心地だろう。一般人が横になればどんな不眠の持ち主であろうとも、そのまま昏々と眠れるに違いない。しかし実際、この寝室の主である男は何者かが近寄ればすぐさま飛び起き、喉元に刃を突き付けることができてしまうだろう。しかも、嬉々として。
今、公子の枕元に立てている状況も、凡人となった身の上でも使える程度の仙術を行使しなければ叶わなかった。寝込みを襲おうとしたのが悪いという口実で歓喜のまま襲いかかられては堪らない。たとえそれで生じた損害をすべて彼が被ることになるのだとしても、だ。
たると
DOODLEQ.主人公はやっぱりICBMで死んでしまうのでしょうか?A.魔神皇に勝った彼(彼女)が、そうあっさり死ぬとは思えない。きっと大破壊後も運良く生き残り、30年後に活躍するあの3人の噂をどこかで聞いているに違いない。
(DDS-NET 9号より)
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第六回目【休暇】所要時間:2.5h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
交わって、離れて、その先は(鍾タル) 出来心だった。一人で過ごす時間は決して嫌いではないけれど、誰か、一緒にいて楽しめる人間がいるならもっといいと思っている。あのとき、旅人以外にと考えたときに、一番に思い当たったのが鍾離先生だった。ただ、それだけだ。――彼には、そう伝えていた。
時を遡ること数日前。久しぶりに会った旅人と手合わせと食事をして、満足な一日を過ごしたときのことだった。もうじき稲妻に発つ予定だという旅人は、もしタルタリヤがよければお願いがあるんだけど、と言って塵歌壺を取り出した。曰く、稲妻に発つにあたって暫く出入りができるか、どうなるかもわからないから気が向いたときに中の様子を見に行って欲しい、と。向こうでの寝食を心配したが旅人とおチビちゃんは平気な顔をして胸を張っていた。まったく逞しいことで何よりだ。そうして暫くの間、旅人の塵歌壺を預かることになった。
3177時を遡ること数日前。久しぶりに会った旅人と手合わせと食事をして、満足な一日を過ごしたときのことだった。もうじき稲妻に発つ予定だという旅人は、もしタルタリヤがよければお願いがあるんだけど、と言って塵歌壺を取り出した。曰く、稲妻に発つにあたって暫く出入りができるか、どうなるかもわからないから気が向いたときに中の様子を見に行って欲しい、と。向こうでの寝食を心配したが旅人とおチビちゃんは平気な顔をして胸を張っていた。まったく逞しいことで何よりだ。そうして暫くの間、旅人の塵歌壺を預かることになった。
オルト
TRAINING723文字悪魔神父のタイカケ
「なぁ、おめぇってなんで神の事信じてんの?」
「え?」
俺が尋ねると、カケルはキョトンとした顔をした。神父という立場の人間におかしなことを聞いているとは思っているけど、どうしてか知りたくなった。カケルのこと、もっと知りたい。……だって、その方が、なんつーか、堕としやすい、し?
「勿論、信じているよ。だからこうしてお仕えしているし、教えを皆に伝えているんだ」
「……本当に?」
「疑り深いなぁ。まぁ、正確には少し違うかな」
カケルは首から掛けて服の中に入れているロザリオを出した。うわ、そんなもん出すな! 俺は目を背ける。
「これをくれたのが、僕の尊敬する人。その人が僕に色々教えてくれてね……僕はその人のお陰で今こうしていられる。その人が信じていたから、信じるようになった、って感じかな」
747「え?」
俺が尋ねると、カケルはキョトンとした顔をした。神父という立場の人間におかしなことを聞いているとは思っているけど、どうしてか知りたくなった。カケルのこと、もっと知りたい。……だって、その方が、なんつーか、堕としやすい、し?
「勿論、信じているよ。だからこうしてお仕えしているし、教えを皆に伝えているんだ」
「……本当に?」
「疑り深いなぁ。まぁ、正確には少し違うかな」
カケルは首から掛けて服の中に入れているロザリオを出した。うわ、そんなもん出すな! 俺は目を背ける。
「これをくれたのが、僕の尊敬する人。その人が僕に色々教えてくれてね……僕はその人のお陰で今こうしていられる。その人が信じていたから、信じるようになった、って感じかな」
kino_ui
DONE鍾タルワンライ・第四回目【寂しがり】所要時間:2h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
・付き合っていないが肉体関係のある2人
・事後
その幻肢痛を撫でてやりたい(鍾タル) 誰かの代わりになるのも、止まり木扱いされるのも嫌だった。でも、もし彼が俺を望んで呼ぶのならば、ちょっとくらい隣にいてあげてもいいかなと思う。この感情に名前は付けられなかったが、要するに、そういう情だった。
鍾離先生の自宅を訪れたときには小降りだった雨も、今や本格的に降りはじめて雷鳴まで響く始末だった。体液まみれの身を清めた後でまた濡れる羽目になるのは億劫だったが仕方がない。ここに朝まで留まる理由も道理も持ち合わせてはいないのだから。
いつものように寝台から身体を起こす。滞在している旅館にも負けず劣らずの価格をしているのであろうこの寝台は、このまま眠ってしまいたいという誘惑がいつも頭をよぎる程度には寝心地が良い。いつも身綺麗にした後も、なんだかんだと暫く居座ってしまう。鍾離先生は何度も過ごした夜と何ら変わらず、寝台にはいたけれど身体を起こしたまま読書中だった。
3049鍾離先生の自宅を訪れたときには小降りだった雨も、今や本格的に降りはじめて雷鳴まで響く始末だった。体液まみれの身を清めた後でまた濡れる羽目になるのは億劫だったが仕方がない。ここに朝まで留まる理由も道理も持ち合わせてはいないのだから。
いつものように寝台から身体を起こす。滞在している旅館にも負けず劣らずの価格をしているのであろうこの寝台は、このまま眠ってしまいたいという誘惑がいつも頭をよぎる程度には寝心地が良い。いつも身綺麗にした後も、なんだかんだと暫く居座ってしまう。鍾離先生は何度も過ごした夜と何ら変わらず、寝台にはいたけれど身体を起こしたまま読書中だった。
kino_ui
DONE鍾タルワンライ・第一回目【はじめて】所要時間:1h+30min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
・付き合っていないが肉体関係のある2人
・事後
・先生の尻を狙うタル
・先生が非処女
睦言と卑怯者(鍾タル)「俺だけがはじめてなんて、不公平じゃない?」
つう、と一本美しく通った背骨の筋を指先でなぞる。こんな事後の、寝床の上。どんな男でも少しは気が抜けてしまう場面でも、この男の背は一本鉄骨が入っているかのようにすらりと伸びている。隙ひとつない背中。どれだけ己が爪を立てても傷ひとつ残らない背中だ。正確に言うなら、ついたとしてもすぐに治ってしまうらしい。キスマークもどれだけ強く吸いついてみても同じだった。凡人らしくないよと笑ったのは記憶に新しい。
鍾離先生はさんざん脱ぎ散らかした服を畳んでいた手を止めて、ちらりと顔をこちらに向けた。限りなく真顔に近い。でもすこしだけ間が抜けてみえるような、理解不能って顔。悪くない。愉快な気分になってきた。なんでも知っているってすまし顔が僅かにあどけなく崩れる瞬間が俺は結構好きだった。
1696つう、と一本美しく通った背骨の筋を指先でなぞる。こんな事後の、寝床の上。どんな男でも少しは気が抜けてしまう場面でも、この男の背は一本鉄骨が入っているかのようにすらりと伸びている。隙ひとつない背中。どれだけ己が爪を立てても傷ひとつ残らない背中だ。正確に言うなら、ついたとしてもすぐに治ってしまうらしい。キスマークもどれだけ強く吸いついてみても同じだった。凡人らしくないよと笑ったのは記憶に新しい。
鍾離先生はさんざん脱ぎ散らかした服を畳んでいた手を止めて、ちらりと顔をこちらに向けた。限りなく真顔に近い。でもすこしだけ間が抜けてみえるような、理解不能って顔。悪くない。愉快な気分になってきた。なんでも知っているってすまし顔が僅かにあどけなく崩れる瞬間が俺は結構好きだった。
udukihp
PROGRESSしょうほた/第二章魔神任務のネタバレがあります ごん、と音がした。控えめに言えば鈍い音、ものすごく詳細に描写するなら、重ための打撃音に近い。
何事かと驚いて振り返れば、そこには頭を軽くさする少年――魈が立っている。なんとも言えない表情を浮かべていて、蛍と視線が合うと慌てた様子でそらした。
どうやら状況からして、道すがらに生えている木の幹に頭をぶつけたようである。
「魈、大丈夫?」
「問題ない」
問題ない、音では無かったような気がする。蛍が慌てて駆け寄ると、ショウは微かに首を振った。かすかな赤みを帯びた額が、ちらりと見える。どう考えても痛そうだ。多分、あとでアザになってしまうやつだろう。パイモンが蛍同様に、魈の様子を見て心配そうに表情を曇らせる。
2498何事かと驚いて振り返れば、そこには頭を軽くさする少年――魈が立っている。なんとも言えない表情を浮かべていて、蛍と視線が合うと慌てた様子でそらした。
どうやら状況からして、道すがらに生えている木の幹に頭をぶつけたようである。
「魈、大丈夫?」
「問題ない」
問題ない、音では無かったような気がする。蛍が慌てて駆け寄ると、ショウは微かに首を振った。かすかな赤みを帯びた額が、ちらりと見える。どう考えても痛そうだ。多分、あとでアザになってしまうやつだろう。パイモンが蛍同様に、魈の様子を見て心配そうに表情を曇らせる。