菅
koshikundaisuki
DONE12/22 影菅アドベントカレンダーチャレンジ冬至物心ついたときから、実家の庭には柚子の木があった。ただそれは俺にとって、長らく「庭にある樹々のうちのひとつ」でしかなかった。その庭はずっと、俺にとってバレーがもっと上手くなるための練習場所だった。時々変な方向へ飛んでいってしまったボールが引っかかった木が何という名前なのか、一年のうちどの季節に花を咲かせるのか、15になるまで知ろうともしなかった。
一与さんが死んで、庭を眺めているときに美羽がカーテンをめくって外を覗き、言った。
「あの柚子の木、飛雄が生まれたとき一与さんが植えたやつなんだよ」
美羽が指さした先には、柚子の木が立っていた。ずっとそこにあったはずなのに、はじめて認識したような気がした。
ふと目を開けると、俺は菅原さんの腕の中にいた。
2446一与さんが死んで、庭を眺めているときに美羽がカーテンをめくって外を覗き、言った。
「あの柚子の木、飛雄が生まれたとき一与さんが植えたやつなんだよ」
美羽が指さした先には、柚子の木が立っていた。ずっとそこにあったはずなのに、はじめて認識したような気がした。
ふと目を開けると、俺は菅原さんの腕の中にいた。
koshikundaisuki
DONE12/21 影菅アドベントカレンダーチャレンジオムライス目に映った風景に、あれ、と声に出た。駐車場に車を停め、外に出る。
欠け始めた月を背後にしたアパートには、ほとんど明かりが灯っていたけれどうちの部屋の電気はついていなかったから。
影山はまだ帰っていないのだろうか。
後部座席に置いていた荷物をまとめて、階段を上った。部屋の前にたどり着き、コートのポケットから鍵を取り出そうとした。しかし両手に大きめの荷物を持っていたせいで、指先に引っかかったキーチェーンが滑り落ちた。咄嗟に手を伸ばしたせいで、荷物までずり落ちる。
最悪だ、と思う前に背後から伸びてきた手が、素早く俺の荷物を受け止めた。
「……影山」
「おかえりなさい」
影山は床に落ちた鍵を拾い、部屋の扉を開けた。
「どっか行ってきたの?」
2654欠け始めた月を背後にしたアパートには、ほとんど明かりが灯っていたけれどうちの部屋の電気はついていなかったから。
影山はまだ帰っていないのだろうか。
後部座席に置いていた荷物をまとめて、階段を上った。部屋の前にたどり着き、コートのポケットから鍵を取り出そうとした。しかし両手に大きめの荷物を持っていたせいで、指先に引っかかったキーチェーンが滑り落ちた。咄嗟に手を伸ばしたせいで、荷物までずり落ちる。
最悪だ、と思う前に背後から伸びてきた手が、素早く俺の荷物を受け止めた。
「……影山」
「おかえりなさい」
影山は床に落ちた鍵を拾い、部屋の扉を開けた。
「どっか行ってきたの?」
koshikundaisuki
DONE12/20 影菅アドベントカレンダーチャレンジ個人面談太陽がだいぶ昇った頃、隣の部屋から物音がした。「うぅぅ……」という呻き声が扉の隙間から漏れる。チェックしていた試合の録画を一時停止すると、立ち上がって電気ケトルに水を入れた。食器棚から取り出したマグカップにインスタントコーヒーを入れる。お湯が沸く頃、のそのそとようやく菅原さんが寝室から出てきた。あっちこっちにピンピンとはねた髪の毛に、半分も開いていない目。だるだるのスウェット姿に、何故か薄手の毛布を手にしてズルズルと引きずっている。休日の菅原先生の姿を、きっとクラスの子どもたちは想像できない。
「コーヒー、飲みますよね」
ソファに転がり込んだ菅原さんは、毛布にくるまった蓑虫状態で「うん」とも「ううん」とも聞こえる返事をした。しかし胃を悪くしている場合を除き毎朝コーヒーを飲む習慣があるので、聞き返さずにマグカップにお湯を注ぐ。
1708「コーヒー、飲みますよね」
ソファに転がり込んだ菅原さんは、毛布にくるまった蓑虫状態で「うん」とも「ううん」とも聞こえる返事をした。しかし胃を悪くしている場合を除き毎朝コーヒーを飲む習慣があるので、聞き返さずにマグカップにお湯を注ぐ。
koshikundaisuki
DONE12/19 影菅アドベントカレンダーチャレンジ(田潔描写あり)ホームパーティー仙台から少し離れた街に、田中と清水、そしてもうすぐ3歳になる娘ちゃんは住んでいる。娘ちゃんは清水にそっくりのはっきりした目鼻立ちをしており、それでいて人見知りだった。もう何回かあったことのある俺には少しだけ気を許してくれているが、初めて見た190近い大男を見てすっかり清水の脚の後ろにサッと隠れてしまった。影山も子どもが得意ではないので、少し申し訳なさそうに頭を下げながら俺の背中の後ろに回る。
清水は優しく娘ちゃんを抱きあげながら「いらっしゃい」と微笑んだ。
「五輪の時、大地も呼んでここで応援してた」
案内されたリビングでそう話すと、影山は「そうなんですか」と言って部屋を見渡した。コストコで購入した食料はキッチン前のカウンターに置かせてもらう。
2547清水は優しく娘ちゃんを抱きあげながら「いらっしゃい」と微笑んだ。
「五輪の時、大地も呼んでここで応援してた」
案内されたリビングでそう話すと、影山は「そうなんですか」と言って部屋を見渡した。コストコで購入した食料はキッチン前のカウンターに置かせてもらう。
koshikundaisuki
DONE12/18 影菅アドベントカレンダーコストコ「菅原さん、今日は余計なもの買わないでください」
そう釘を刺すと、菅原さんは聞いてるのか聞いてないのかわからない返事をし、隣の田中さんは「何言ってんだよお前」と振り返って笑った。
田中さんは知らないからそんなに呑気に笑っていられるのだ、と思う。菅原さんはIKEAが好きだがコストコはもっと好きだ。
年間約5,000円もの会費に最初は渋っていた菅原さんだが、友人についていくたびに憧れが募っていく一方だった。その結果ずっと一人暮らしだったくせして「どう思う?なあどう思う?」と聞きまくり、俺から「いいんじゃないですか」という言葉を引き出した瞬間、会員になった。
ここで購入する大容量の食材をどうしているのかと思って聞くと、澤村さんと分けたり、近所の人と分けたりしているということだった。
2106そう釘を刺すと、菅原さんは聞いてるのか聞いてないのかわからない返事をし、隣の田中さんは「何言ってんだよお前」と振り返って笑った。
田中さんは知らないからそんなに呑気に笑っていられるのだ、と思う。菅原さんはIKEAが好きだがコストコはもっと好きだ。
年間約5,000円もの会費に最初は渋っていた菅原さんだが、友人についていくたびに憧れが募っていく一方だった。その結果ずっと一人暮らしだったくせして「どう思う?なあどう思う?」と聞きまくり、俺から「いいんじゃないですか」という言葉を引き出した瞬間、会員になった。
ここで購入する大容量の食材をどうしているのかと思って聞くと、澤村さんと分けたり、近所の人と分けたりしているということだった。
koshikundaisuki
DONE12/17 影菅アドベントカレンダーチャレンジ情操教育玄関に荷物を置き、単独リビングに乗り込む。ヨガマットの上でプランクをやっていた影山が顔を上げて「おかえりなさい」と言う。
「ただいま」
「荷物、どうしたんですか?」
「あのさ、影山って動物得意?」
影山は不思議そうな顔をすると筋トレをやめ、居住まいを整えた。
「動物?別に……俺は動物のこと特に何とも思ってないけど……動物が俺のことを多分好きじゃない」
ちょっと不貞腐れたそうな顔をする影山を見て、高校生の時に「俺、なんか動物に嫌われている様な気がします」と呟いていたのを思い出した。帰り道に出会った野良猫が、俺の足にすり寄って甘えてきたときのことだ。未だに和解への道は遠いらしい。
俺は気のせいだよ、と言いながら「喘息とかあったりする?」と続けた。
3152「ただいま」
「荷物、どうしたんですか?」
「あのさ、影山って動物得意?」
影山は不思議そうな顔をすると筋トレをやめ、居住まいを整えた。
「動物?別に……俺は動物のこと特に何とも思ってないけど……動物が俺のことを多分好きじゃない」
ちょっと不貞腐れたそうな顔をする影山を見て、高校生の時に「俺、なんか動物に嫌われている様な気がします」と呟いていたのを思い出した。帰り道に出会った野良猫が、俺の足にすり寄って甘えてきたときのことだ。未だに和解への道は遠いらしい。
俺は気のせいだよ、と言いながら「喘息とかあったりする?」と続けた。
koshikundaisuki
DONE12/16 影菅アドベントカレンダーチャレンジ人気者玄関の靴棚の上にはよく代引きのための金だったり、これから出す予定の郵便物だったりが置いてある。
ランニングへ向かう朝、靴棚の上には束になった年賀はがきが輪ゴムでまとめて置いてあった。本当に80人分書いたのだろうか。
俺は束ねていた輪ゴムを解きながら、まだ湿気っぽい早朝の廊下を歩き、その道すがらで一枚一枚ハガキを確認した。
宛先はすべて印刷だったけど、絵柄のある表面(実際はこっちが裏面だと菅原さんが教えてくれた)にはすべて菅原さんがメッセージを書き込んでいた。
主に仕事関係、生徒(卒業生含む)、友人、親戚で絵柄を変えており、仕事や親戚には谷地さんに送ってもらった厳つい虎の絵、生徒やそこそこ仲のいい友人にはかわいらしい絵柄のものを、そして親しい人達には俺の芋版が押されたものを使用していた。
1618ランニングへ向かう朝、靴棚の上には束になった年賀はがきが輪ゴムでまとめて置いてあった。本当に80人分書いたのだろうか。
俺は束ねていた輪ゴムを解きながら、まだ湿気っぽい早朝の廊下を歩き、その道すがらで一枚一枚ハガキを確認した。
宛先はすべて印刷だったけど、絵柄のある表面(実際はこっちが裏面だと菅原さんが教えてくれた)にはすべて菅原さんがメッセージを書き込んでいた。
主に仕事関係、生徒(卒業生含む)、友人、親戚で絵柄を変えており、仕事や親戚には谷地さんに送ってもらった厳つい虎の絵、生徒やそこそこ仲のいい友人にはかわいらしい絵柄のものを、そして親しい人達には俺の芋版が押されたものを使用していた。
koshikundaisuki
DONE12/15 影菅アドベントカレンダーチャレンジプレゼントこの前の撮影帰りの時のように、影山はプレゼントをされる機会が多い。
そもそもバレー以外に関心がなく、物欲は限りなく無に近い。育った家庭も関係があるのかもしれない。
影山の家はバレーに理解があり、また両親は共働きで、それなりにゆとりのある家庭だったそうだ。
遠征の際も「行きます」と即答し、シューズやタオルも綻びかけると新しいものに変わっていた。
良くも悪くも与えられることを当然として育ってきたのだろう。結果影山はあまり物に執着をしない人間になった。
新作のシューズやウェアが出ても「今はいいです」と言う。
現在使用しているものが、まだ使えるからということだった。デザインにも好き嫌いはあれど、こだわりがあるわけではないらしい。
1986そもそもバレー以外に関心がなく、物欲は限りなく無に近い。育った家庭も関係があるのかもしれない。
影山の家はバレーに理解があり、また両親は共働きで、それなりにゆとりのある家庭だったそうだ。
遠征の際も「行きます」と即答し、シューズやタオルも綻びかけると新しいものに変わっていた。
良くも悪くも与えられることを当然として育ってきたのだろう。結果影山はあまり物に執着をしない人間になった。
新作のシューズやウェアが出ても「今はいいです」と言う。
現在使用しているものが、まだ使えるからということだった。デザインにも好き嫌いはあれど、こだわりがあるわけではないらしい。
koshikundaisuki
DONE12/14 影菅アドベントカレンダーチャレンジ年賀状朝、布団の中に菅原さんがいた。いつ来たんだろう。気持ちよさそうに眠っている顔を見て、心がほんわりとあたたかくなる。
だからだろうか、「納豆ご飯うまいけど飽きた……」と言っていたのを思い出し、いつもと違う朝食にしてみようと思い立ったのだ。
パンを取り出し、全体的に薄くバターを塗ってマヨネーズで囲いを作り、ハムと卵を落として載せるとトースターで焼いた。
恐ろしいカロリーと脂質。その割にそんなに栄養はない。サラダも食わせようと野菜室に残っていたものをドレッシングと和えておいた。
菅原さんは喜んでくれたけどそれ以上に何かを笑っていた。聞いても「なんでもない」と言って教えてくれない。
「そういえばそろそろ年賀状書かないといけないから、もしコンビニとか郵便局とか立ち寄れたら買っておいてほしいんだけど」
3194だからだろうか、「納豆ご飯うまいけど飽きた……」と言っていたのを思い出し、いつもと違う朝食にしてみようと思い立ったのだ。
パンを取り出し、全体的に薄くバターを塗ってマヨネーズで囲いを作り、ハムと卵を落として載せるとトースターで焼いた。
恐ろしいカロリーと脂質。その割にそんなに栄養はない。サラダも食わせようと野菜室に残っていたものをドレッシングと和えておいた。
菅原さんは喜んでくれたけどそれ以上に何かを笑っていた。聞いても「なんでもない」と言って教えてくれない。
「そういえばそろそろ年賀状書かないといけないから、もしコンビニとか郵便局とか立ち寄れたら買っておいてほしいんだけど」
koshikundaisuki
DONE12/13 影菅アドベントカレンダーチャレンジ流星群マグカップに温かいお茶を入れ、バルコニーに出る。この辺りは子育て世代が多いせいか、この時間はシンとして、バルコニーの柵の向こうは真っ暗だった。とても静かで、とてつもなく寒い。ここにいると世界にはもう自分しか生き残っていないのではないか、という不安に駆られそうだった。向こうの建物にはちらほらカーテンから灯りが漏れていて、「あ、俺だけじゃなかったわ」なんて当たり前のことを思う。明日も仕事なんだし、寝ないといけないのに。そう思いながらも空を見上げている。
だって起きてしまったのだ。ふたご座流星群が活発に流れるというこんな時間に。元々見るつもりはなかったのに、急にパッチリ目が覚めた。
トイレに行きたいのだと思ってベッドから降り、リビングに出たところで思い出した。夜のニュースでキャスターが「今夜はふたご座流星群の観測チャンスです」と言っていたのを。
2572だって起きてしまったのだ。ふたご座流星群が活発に流れるというこんな時間に。元々見るつもりはなかったのに、急にパッチリ目が覚めた。
トイレに行きたいのだと思ってベッドから降り、リビングに出たところで思い出した。夜のニュースでキャスターが「今夜はふたご座流星群の観測チャンスです」と言っていたのを。
koshikundaisuki
DONE12/12 影菅アドベントカレンダーぬいぐるみ半日練習の後、昼過ぎに帰るとまだ菅原さんはパジャマ姿だった。
「いくらなんでも……」と言うと「違うんだよ」と言い訳をする。大人しく聞いてみれば、新しいパジャマがあまりに着心地がよくて、着替えずにゴロゴロしてたら三度寝をしてしまい、気がつくと昼を過ぎていた、という話だった。
「何が違うんですか」
「違うんだって……」
菅原さんはそう言いながらも「まあ何も違わないんだけどな」という顔でソファに横たわっていた。
「このままでは何もしない日曜日になってしまう」
ならばひとまずソファから起き上がればいいのに、と思うが菅原さんは「どうしよ……」と言いながら動こうとしない。部屋で着替えをしていると、菅原さんの間延びした声が聞こえた。
4008「いくらなんでも……」と言うと「違うんだよ」と言い訳をする。大人しく聞いてみれば、新しいパジャマがあまりに着心地がよくて、着替えずにゴロゴロしてたら三度寝をしてしまい、気がつくと昼を過ぎていた、という話だった。
「何が違うんですか」
「違うんだって……」
菅原さんはそう言いながらも「まあ何も違わないんだけどな」という顔でソファに横たわっていた。
「このままでは何もしない日曜日になってしまう」
ならばひとまずソファから起き上がればいいのに、と思うが菅原さんは「どうしよ……」と言いながら動こうとしない。部屋で着替えをしていると、菅原さんの間延びした声が聞こえた。
koshikundaisuki
DONE12/11 影菅アドベントカレンダー免許「今日は外に食べに行こう」「焼肉に行きたい!」「カルビ!ハラミ!タン塩!ホルモン!」
夕方にそう言い出した菅原さんは、年末の大掃除を終えたところで「これ以降絶対に家事をしたくない」という顔をしていた。
料理も皿洗いも俺がやりましょうか?そう提案しかけたが、菅原さんの顔を見て察する。家事をやりたくない以上に、焼肉が食べたいのだ。もう菅原さんの心は焼肉に囚われている。
俺が頷くと、菅原さんは「よっしゃー!」と飛び上がり、ドロドロのスウェットを脱ぐと黒いパーカーに着替えた。
思うに、焼肉の臭いがついても洗濯機で洗えてかつタレが飛んでも汚れが目立たない服を選んだのだろう。言わば焼肉屋に行くときの一張羅なのだ。
「わーい、明日休みだしビール飲んじゃお!」ウキウキそう言った菅原さんだが、次の瞬間ぴたりと停止した。
3739夕方にそう言い出した菅原さんは、年末の大掃除を終えたところで「これ以降絶対に家事をしたくない」という顔をしていた。
料理も皿洗いも俺がやりましょうか?そう提案しかけたが、菅原さんの顔を見て察する。家事をやりたくない以上に、焼肉が食べたいのだ。もう菅原さんの心は焼肉に囚われている。
俺が頷くと、菅原さんは「よっしゃー!」と飛び上がり、ドロドロのスウェットを脱ぐと黒いパーカーに着替えた。
思うに、焼肉の臭いがついても洗濯機で洗えてかつタレが飛んでも汚れが目立たない服を選んだのだろう。言わば焼肉屋に行くときの一張羅なのだ。
「わーい、明日休みだしビール飲んじゃお!」ウキウキそう言った菅原さんだが、次の瞬間ぴたりと停止した。
koshikundaisuki
DONE12/10 影菅アドベントカレンダー裏アカその日職員会議では「SNSの全面禁止」が言い渡された。他校ではあるが、市内の教諭が生徒の私的なやりとりを経て大変なトラブルに発展したのだという。
「他にもプライベートを保護者に見られてクレームに発展したり、また個人的な事情で炎上したのち、身元が特定され、学校に悪影響を及ぼすケースも存在します」
ネットリテラシーに関するトラブルをまとめたプリントを掲げて「ましてや未成年とやりとりをするなど言語道断です」と声を張り上げる教頭先生は、インスタとFacebook、Twitterの違いを知らない。職員室に今いるほとんどの先生が「クラブハウス」を大学の学生寮か何かだと思っている。
「ちなみにアカウントを非公開にすればいいというものでもありません。身内しか見ていない思って何もかも赤裸々にトゥイートしていたところ、内部から告発された、というケースもあります。非公開だから大丈夫、は慢心です!もし先生方の中で心当たりのあるSNSをお持ちの場合は、早いうちにけじめをつけていただくようお願い致します」
2940「他にもプライベートを保護者に見られてクレームに発展したり、また個人的な事情で炎上したのち、身元が特定され、学校に悪影響を及ぼすケースも存在します」
ネットリテラシーに関するトラブルをまとめたプリントを掲げて「ましてや未成年とやりとりをするなど言語道断です」と声を張り上げる教頭先生は、インスタとFacebook、Twitterの違いを知らない。職員室に今いるほとんどの先生が「クラブハウス」を大学の学生寮か何かだと思っている。
「ちなみにアカウントを非公開にすればいいというものでもありません。身内しか見ていない思って何もかも赤裸々にトゥイートしていたところ、内部から告発された、というケースもあります。非公開だから大丈夫、は慢心です!もし先生方の中で心当たりのあるSNSをお持ちの場合は、早いうちにけじめをつけていただくようお願い致します」
koshikundaisuki
DONE12/9 影菅アドベントカレンダー乾杯酒は別に好きじゃない。強い弱い以前に、それを自覚するほど飲んだことがない。
幸い職業柄、あとは時代性もあって、周囲に強制する人間はおらず、飲酒に対する嫌な思い出もなかった。好き好んで口にしないというだけであって、付き合いの場や冠婚葬祭では流石に最初の一杯に口をつけるくらいはするのだが、進んでいないグラスを見て何かを察したかのように「俺、もらおうか」と言い出す人もいた。そういう場合は軽く会釈をしてグラスをススッと移動させた。弱いと印象つけたほうが後々楽だ、そう教えてくれたのは菅原さんだった。
菅原さんは酒が好きだ。普段はそんなに飲まないものの、金曜の夜と土曜、そして飲み会では休肝日の分を取り返すかのように飲んだ。飲むとフニャンとした様子になり、人の膝の上に乗ったり人の頬を吸ったりと悪ふざけが加速するので弱い部類に入るのではないかと感じさせられる。介抱しようと近づいた人間は床に、テーブルの下に、そして自身の背中の後ろに大量の空き缶・空き瓶が隠されていたのを見て、大抵ギョッとした顔をする。
2404幸い職業柄、あとは時代性もあって、周囲に強制する人間はおらず、飲酒に対する嫌な思い出もなかった。好き好んで口にしないというだけであって、付き合いの場や冠婚葬祭では流石に最初の一杯に口をつけるくらいはするのだが、進んでいないグラスを見て何かを察したかのように「俺、もらおうか」と言い出す人もいた。そういう場合は軽く会釈をしてグラスをススッと移動させた。弱いと印象つけたほうが後々楽だ、そう教えてくれたのは菅原さんだった。
菅原さんは酒が好きだ。普段はそんなに飲まないものの、金曜の夜と土曜、そして飲み会では休肝日の分を取り返すかのように飲んだ。飲むとフニャンとした様子になり、人の膝の上に乗ったり人の頬を吸ったりと悪ふざけが加速するので弱い部類に入るのではないかと感じさせられる。介抱しようと近づいた人間は床に、テーブルの下に、そして自身の背中の後ろに大量の空き缶・空き瓶が隠されていたのを見て、大抵ギョッとした顔をする。
koshikundaisuki
TRAINING12/8 影菅アドベントカレンダー存在証明「影山はサンタクロースっていると思う?」
直前まで、スマホのCMに出ているアイドルたちの話をしていたから、唐突感はあったと思う。
にもかかわらず影山は爪を整えながら「いないと思ってます」とすぐに答えてくれた。
「そっか。絶対にいるって答えられたらびっくりだけど、それはそれで拍子抜けする回答だな。意外性がない」
「そもそも、サンタってあれなんなんすか?妖怪の類?」
「サンタはサンタですけど?」
そう言いながらも、実は俺もわかっていない。そこを深堀りされると弱いので「いついないって思った?」と聞く。
「いつからっていうか……はじめからそんなに。姉が9歳上だったんで物心ついたころには”いないもんだ”って何となくは」
3411直前まで、スマホのCMに出ているアイドルたちの話をしていたから、唐突感はあったと思う。
にもかかわらず影山は爪を整えながら「いないと思ってます」とすぐに答えてくれた。
「そっか。絶対にいるって答えられたらびっくりだけど、それはそれで拍子抜けする回答だな。意外性がない」
「そもそも、サンタってあれなんなんすか?妖怪の類?」
「サンタはサンタですけど?」
そう言いながらも、実は俺もわかっていない。そこを深堀りされると弱いので「いついないって思った?」と聞く。
「いつからっていうか……はじめからそんなに。姉が9歳上だったんで物心ついたころには”いないもんだ”って何となくは」
koshikundaisuki
DONE12/7 影菅アドベントカレンダーチャレンジパジャマ朝5時。アラームが鳴る前に目が覚めた俺は、そのままウェアに着替え、隣の部屋で眠っている菅原さんを起こさないよう、音を立てずに部屋を出た。
しかしその気遣いは無用のものだったと知る。リビングのソファには毛布に包まりだるまのようになった菅原さんがいたのだ。
「どうしたんすか、こんなに早く」
「なんか最近眠りが浅い……疲れてるし、体はダル重なのに……」
「大丈夫ですか」
ソファでごろ寝する菅原さんに近付き、体に触れる。毛布に包まれているのに、全体的にヒヤッとしていた。
「寒い?」
「うーん、確かに……最近冷え性か?ってくらい体冷たい」
入れた柚子湯をクピクピと飲みながら、時々体を震わせているので心配になった。暖房をつけて部屋を温めた後、寝直すことを提案する。
3701しかしその気遣いは無用のものだったと知る。リビングのソファには毛布に包まりだるまのようになった菅原さんがいたのだ。
「どうしたんすか、こんなに早く」
「なんか最近眠りが浅い……疲れてるし、体はダル重なのに……」
「大丈夫ですか」
ソファでごろ寝する菅原さんに近付き、体に触れる。毛布に包まれているのに、全体的にヒヤッとしていた。
「寒い?」
「うーん、確かに……最近冷え性か?ってくらい体冷たい」
入れた柚子湯をクピクピと飲みながら、時々体を震わせているので心配になった。暖房をつけて部屋を温めた後、寝直すことを提案する。
koshikundaisuki
DONE12/6 影菅アドベントカレンダーチャレンジ酔客たちの帰り道大人数での飲み会だったので会計がもたついた。結果、いつもならハチ公の如くおとなしく外で待っていただろう影山の店内乱入はちょっとした騒ぎになってしまった。
はじめて会う大学の友人たちを前にした影山は「菅原さんがいつもお世話になっております」となれない口ぶりでカクカクと挨拶を述べ、頭を下げたのだが、当然友人たちは「影山飛雄とどんな関係!?」と騒ぎ出し、それによって他のテーブルの客が振り向き、最初は影山を落ち着いた素振りで案内してくれた店員ですら「実はファンなのですが……」と色紙をちらつかせ出した。
「外で待ってて~って言ったべや」
「……だってなかなか来なかったから」
最終的に箸袋にまでサインすることになった影山だったが、店内に入ってきたことに後悔はしてないらしいものの、約束事を破ったことを咎められて少々不貞腐れた態度を見せた。
2471はじめて会う大学の友人たちを前にした影山は「菅原さんがいつもお世話になっております」となれない口ぶりでカクカクと挨拶を述べ、頭を下げたのだが、当然友人たちは「影山飛雄とどんな関係!?」と騒ぎ出し、それによって他のテーブルの客が振り向き、最初は影山を落ち着いた素振りで案内してくれた店員ですら「実はファンなのですが……」と色紙をちらつかせ出した。
「外で待ってて~って言ったべや」
「……だってなかなか来なかったから」
最終的に箸袋にまでサインすることになった影山だったが、店内に入ってきたことに後悔はしてないらしいものの、約束事を破ったことを咎められて少々不貞腐れた態度を見せた。
koshikundaisuki
DONE12/5 影菅アドベントカレンダーチャレンジ ※金国要素あり友達金田一が帰っていたらしく、国見と3人で飯を食いに行くことになった。
国見が予約してくれたのは、とある割烹料理屋の個室だった。前に3人で集まった時は、酔っ払ったおっさんの声にかき消されて会話もできない大衆居酒屋チェーン店だったのに。
そう言うと国見は「お前がいるのにそんなわけにいくか」と面倒くさそうに言った。
「俺?なんでだ」
「自覚しろよ有名人。お前そんなんで週刊誌とかに撮られねぇの?」
国見の呆れた声に、金田一が苦笑しながら言う。
「一回撮られてたよな?渡伊前に、熱愛か!?っつって」
「ああ、美羽といるところ撮られた」
「え?美羽さんって影山の姉ちゃんじゃないの?」
国見と金田一が酒とつまみを適当に頼んでくれるので、俺は目の前にあるものをただ食べるだけだった。
3177国見が予約してくれたのは、とある割烹料理屋の個室だった。前に3人で集まった時は、酔っ払ったおっさんの声にかき消されて会話もできない大衆居酒屋チェーン店だったのに。
そう言うと国見は「お前がいるのにそんなわけにいくか」と面倒くさそうに言った。
「俺?なんでだ」
「自覚しろよ有名人。お前そんなんで週刊誌とかに撮られねぇの?」
国見の呆れた声に、金田一が苦笑しながら言う。
「一回撮られてたよな?渡伊前に、熱愛か!?っつって」
「ああ、美羽といるところ撮られた」
「え?美羽さんって影山の姉ちゃんじゃないの?」
国見と金田一が酒とつまみを適当に頼んでくれるので、俺は目の前にあるものをただ食べるだけだった。
koshikundaisuki
DONE12/4 影菅アドベントカレンダーチャレンジ手と手「季節柄ってのもあるんだろうけど、最近ビニールが捲れなくなってきた」
スーパーのサッカー台で、一向に広げることができない薄手のビニール袋を前にぶつくさ言う。隣から伸びてきた長く、骨ばった指がスルリと口をあけた。
パック入りのキムチを中に入れると「お前はまだ若いからな……カルビもまだ食えるし」と言い訳のようにつぶやいた。
脂っこいものがそろそろきつくなる年齢だな、というのが近年の同級生たちとのもっぱらの話題だった。しかしまさか指先の乾燥までも実感することになろうとは。
子どもの頃、買い物について行ってビニール袋をあけるのは俺の役目だった。手伝いたい盛りの息子に何かやらせてやろうという親心もあったのだろうが、家事・育児に専念していた母親の手は少しかたく、少々かさついていた。あの頃の母親の年齢に、そろそろ近づいてきている。
2055スーパーのサッカー台で、一向に広げることができない薄手のビニール袋を前にぶつくさ言う。隣から伸びてきた長く、骨ばった指がスルリと口をあけた。
パック入りのキムチを中に入れると「お前はまだ若いからな……カルビもまだ食えるし」と言い訳のようにつぶやいた。
脂っこいものがそろそろきつくなる年齢だな、というのが近年の同級生たちとのもっぱらの話題だった。しかしまさか指先の乾燥までも実感することになろうとは。
子どもの頃、買い物について行ってビニール袋をあけるのは俺の役目だった。手伝いたい盛りの息子に何かやらせてやろうという親心もあったのだろうが、家事・育児に専念していた母親の手は少しかたく、少々かさついていた。あの頃の母親の年齢に、そろそろ近づいてきている。
koshikundaisuki
DONE12/3 影菅アドベントカレンダーチャレンジ手料理番組に提出するアンケートの中には「料理は得意ですか?」という質問もあった。
「いいえ」と書いて出せばそこに触れられることはない。
話を振られても「自炊はあまり」と言えば「指先命のバレー選手は、包丁とか危ないですもんねぇ」とみんな勝手に納得するので楽だ。
すると今度は「普段はどうしてるんですか」という質問が来る。
食事にどうするも何もないといつも思うのだが、侑さんに「あれは飛雄くんに彼女がおんのか、遠回しに探っとんねんで」と教えられて驚いた。
「作ってくれる人とかは?」とニヤニヤ聞かれるのは、そういうわけだったのだ。
そうとも知らずに「寮には寮母さんがいました」と答えていた。その話をすると菅原さんはゲラゲラ笑った後、「お前はそれでいいんだよ」と言った。
2076「いいえ」と書いて出せばそこに触れられることはない。
話を振られても「自炊はあまり」と言えば「指先命のバレー選手は、包丁とか危ないですもんねぇ」とみんな勝手に納得するので楽だ。
すると今度は「普段はどうしてるんですか」という質問が来る。
食事にどうするも何もないといつも思うのだが、侑さんに「あれは飛雄くんに彼女がおんのか、遠回しに探っとんねんで」と教えられて驚いた。
「作ってくれる人とかは?」とニヤニヤ聞かれるのは、そういうわけだったのだ。
そうとも知らずに「寮には寮母さんがいました」と答えていた。その話をすると菅原さんはゲラゲラ笑った後、「お前はそれでいいんだよ」と言った。
koshikundaisuki
DONE12/2 影菅アドベントカレンダーチャレンジ家探しのコツ住宅情報誌を意味もなくペラペラ捲っていた。最早俺の目は内容を追ってもいない。ただコタツの温度に溶かされ「人をダメにするソファ」によってダメにされた男がひとり、居るだけだ。同じコタツに入っている影山は、暖をとるために背中こそ丸まっているもののきちんとした姿勢で座っている(※当俺比)。珍しく書き物をしているらしかった。「何してんの?」と聞くと顔を上げ、ペンを置いて言う。
「今度出る番組用のアンケートらしいです」
興味ある。しかし、起き上がるのが億劫だった。「読んで」と強請ってみるが「ダメ」と返される。
「なんでだよ」
「守秘義務」
「影山のくせになまいき~。お前、守秘義務って言えばあきらめざるを得ないと思ってやがんな」
2196「今度出る番組用のアンケートらしいです」
興味ある。しかし、起き上がるのが億劫だった。「読んで」と強請ってみるが「ダメ」と返される。
「なんでだよ」
「守秘義務」
「影山のくせになまいき~。お前、守秘義務って言えばあきらめざるを得ないと思ってやがんな」
tatuzaki02
DONE2021年11月22日、いい夫婦の日そして!大菅の日!!過去にフレンドから頂いた「ばー-か」をお題とした案を元に、短いですがなにか出したいと思い書きました。微R18。#大菅
いい夫婦の日 2021「あっ、う……」
何回目かの夜。
ずるり、と初めて奥まで達したソレをそっと澤村は抜き取る。
「スガ、大丈夫?」
と、澤村は心底心配そうに菅原に言の葉を投げかけるが、いつもなら返ってくる菅原からの返答がない。
「…………───」
(き、気持ち良かった……)
菅原はぐったりと枕に顔をうずくめて、疲労と悦の残り香に浸っていた。が、
(もしかしてガッツキすぎた…?!痛かったとか?!)
澤村はそんなことをぐるぐる頭に過らせてあたふたしている……というかそれは脳内だけで、身体は一周回ってコチンと固まっていた。
澤村の異様な気配を察した菅原は、ずんなりと重たい頭をようやっと持ち上げて彼を見やると、一目でわかった。
(あ、こいつテンパってるな)
464何回目かの夜。
ずるり、と初めて奥まで達したソレをそっと澤村は抜き取る。
「スガ、大丈夫?」
と、澤村は心底心配そうに菅原に言の葉を投げかけるが、いつもなら返ってくる菅原からの返答がない。
「…………───」
(き、気持ち良かった……)
菅原はぐったりと枕に顔をうずくめて、疲労と悦の残り香に浸っていた。が、
(もしかしてガッツキすぎた…?!痛かったとか?!)
澤村はそんなことをぐるぐる頭に過らせてあたふたしている……というかそれは脳内だけで、身体は一周回ってコチンと固まっていた。
澤村の異様な気配を察した菅原は、ずんなりと重たい頭をようやっと持ち上げて彼を見やると、一目でわかった。
(あ、こいつテンパってるな)
koshikundaisuki
TRAINING高3の影山くんに熱愛が発覚する話モブ視点の影菅ですが二人はほぼ出てきません
・当て馬みたいな意地の悪い感じの女の子が出ます
・モブのクセが強め
・影山くんが悪口言われるような描写があります
浮き名俺が通う高校には、影山飛雄という校内でもトップクラスのモテ男がいる。
モテ男というと少し語弊があるかもしれない。別に影山飛雄は笑顔で話しやすいとか、女性に対しての物腰が柔らかいとか、会話がうまいとかチャラいとか、そういうタイプの高校生ではない。
香水の匂いもせず、髪にワックスがつけられていることもなく、制服の着こなしだってオシャレなわけではない。
山積みのプリントを持って廊下を歩いている女の子に「代わりに持つよ」と微笑む優男を想像しているのなら、それはちょっと待ってほしい。そういうんじゃない。
休み時間に机に座りながら、ガムとかミンティアとか差し出して「食べる?」って言ってくるクラスのムードメーカー的な人種でもない。たぶん。教室での彼の知らないが、おそらくはそういうタイプじゃない。
15030モテ男というと少し語弊があるかもしれない。別に影山飛雄は笑顔で話しやすいとか、女性に対しての物腰が柔らかいとか、会話がうまいとかチャラいとか、そういうタイプの高校生ではない。
香水の匂いもせず、髪にワックスがつけられていることもなく、制服の着こなしだってオシャレなわけではない。
山積みのプリントを持って廊下を歩いている女の子に「代わりに持つよ」と微笑む優男を想像しているのなら、それはちょっと待ってほしい。そういうんじゃない。
休み時間に机に座りながら、ガムとかミンティアとか差し出して「食べる?」って言ってくるクラスのムードメーカー的な人種でもない。たぶん。教室での彼の知らないが、おそらくはそういうタイプじゃない。
koshikundaisuki
REHABILI遠距離恋愛で菅原さんの家に帰ってきた影山くんが、部屋に違和感のあるものを見つけた話真夜中のレンジどう見ても市販のものではない焼き菓子がテーブルに放置されていた。
ラップに包まれて全貌は見えないが、おそらくはパウンドケーキだ。
「なんですか、この菓子」と問う声に力が入った。少々ふくらみが足りず、山なりではない不格好さでありながら、焼き色は絶妙なそれに様々な背景を感じてしまったせいだった。
家に入るときに「おかえりなさい」と顔をのぞかせた隣の女。年が近いという恋人の同僚。あるいは、ませた彼の教え子たち。
ラップをめくりながら「あざとい」と思う。完ぺきではないお菓子を差し出された彼が、何を思うのか付き合いが長い影山には容易く想像がついた。
菅原は男としてチョロいと感じる場面が以前から多々あった。誠実な人間ではあるし、愛されているとも思う。もちろん信じてはいるのだが、つけ込む隙はいくらでもあると感じる以上、「見たことか」と思わずにいられない。
4627ラップに包まれて全貌は見えないが、おそらくはパウンドケーキだ。
「なんですか、この菓子」と問う声に力が入った。少々ふくらみが足りず、山なりではない不格好さでありながら、焼き色は絶妙なそれに様々な背景を感じてしまったせいだった。
家に入るときに「おかえりなさい」と顔をのぞかせた隣の女。年が近いという恋人の同僚。あるいは、ませた彼の教え子たち。
ラップをめくりながら「あざとい」と思う。完ぺきではないお菓子を差し出された彼が、何を思うのか付き合いが長い影山には容易く想像がついた。
菅原は男としてチョロいと感じる場面が以前から多々あった。誠実な人間ではあるし、愛されているとも思う。もちろん信じてはいるのだが、つけ込む隙はいくらでもあると感じる以上、「見たことか」と思わずにいられない。
tatuzaki02
CAN’T MAKE菅原さんにばーーかと言わせたくて書いたもののまとまらなかったお話。R18(?)なのでワンクッション。突然始まって突然終わる。ばーーか ぐっ、ぐんっ
澤村が押し切り出す。
「ぁっ、ぁ、」
菅原の喘ぐ声が寝室に響き渡った。菅原の両手を握って覆いかぶさる形だった澤村の汗が、菅原の額にぱたりと落ちる。
「スガ、大丈夫?」
澤村が抜き取りながら聞いた。
「……ばーーーーか」
呼吸が整わない中、肩を上下させながら、少し余裕のない顔で 、額から澤村の汗を伝わせながらうっすら笑ってそう澤村に投げかけた。足で澤村の肩を軽く蹴る。
コチン
澤村が一瞬固まった。
あまりに、菅原が煽情的だったから───。
思わず澤村は菅原をグッと抱きしめる。固いものが当たるのに気が付いた菅原、
「あの、大地、なんか当たってるんですけど……」
「誰のせいだと思ってんの?」
「は?俺?!」
894澤村が押し切り出す。
「ぁっ、ぁ、」
菅原の喘ぐ声が寝室に響き渡った。菅原の両手を握って覆いかぶさる形だった澤村の汗が、菅原の額にぱたりと落ちる。
「スガ、大丈夫?」
澤村が抜き取りながら聞いた。
「……ばーーーーか」
呼吸が整わない中、肩を上下させながら、少し余裕のない顔で 、額から澤村の汗を伝わせながらうっすら笑ってそう澤村に投げかけた。足で澤村の肩を軽く蹴る。
コチン
澤村が一瞬固まった。
あまりに、菅原が煽情的だったから───。
思わず澤村は菅原をグッと抱きしめる。固いものが当たるのに気が付いた菅原、
「あの、大地、なんか当たってるんですけど……」
「誰のせいだと思ってんの?」
「は?俺?!」