namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ59
アル空 会話文。眠れないときのお話。
59 アル空「眠れないのかい?」
「ん……ごめん」
「謝ることはないよ。……何か、話でもしていようか」
「いいの? アルベド、朝早いって」
「キミが眠れないまま夜を過ごすことの方が気になってしまうから。それに、確かに起床は早いけれど、するべきことは午前中で終わる予定だから。ボクのことは気にしないで」
「そう、なの? ……あのさ、じゃあ少し話しててもいい?」
「もちろん。どんなことを話そうか?」
「そうだな……パイモンが最近、ほんとに食欲旺盛なんだ。たくさん食べるって健康的だろ、って本人は言うんだけど、モラの減りが早くて」
「ふふ。そういえば今日も、レザーと互角と思えるくらい豪快に食べていたね」
「そうなんだよ。それがしょっちゅうでさ。しかもやけに高級そうなものを選ぶんだよねえ……」
965「ん……ごめん」
「謝ることはないよ。……何か、話でもしていようか」
「いいの? アルベド、朝早いって」
「キミが眠れないまま夜を過ごすことの方が気になってしまうから。それに、確かに起床は早いけれど、するべきことは午前中で終わる予定だから。ボクのことは気にしないで」
「そう、なの? ……あのさ、じゃあ少し話しててもいい?」
「もちろん。どんなことを話そうか?」
「そうだな……パイモンが最近、ほんとに食欲旺盛なんだ。たくさん食べるって健康的だろ、って本人は言うんだけど、モラの減りが早くて」
「ふふ。そういえば今日も、レザーと互角と思えるくらい豪快に食べていたね」
「そうなんだよ。それがしょっちゅうでさ。しかもやけに高級そうなものを選ぶんだよねえ……」
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ57
アル空 テリトリーの外側(https://poipiku.com/4282409/6640546.html)の翌日、空くんが味噌汁つくってアルベドくんが飲む話。ゲストにトーマがいます。
57 アル空喉の渇きで目が覚める。瞼を押し開くと、あまり見慣れない天井と照明器具が見えて、空はぼんやりと、眠る前の記憶を掘り返した。
容彩祭で絵師として招かれたアルベドと会えたことに浮かれていたのも束の間、彼はウェンティに酒を奢り、そのままずいぶんと長い間、吟遊詩人の話し相手をしていた。
久しぶりに会った恋人の空を蔑ろにしている訳ではない、と理性が呆れて訴えても、やきもきしていたのは事実だった。
いわゆる「やきもち」と呼ばれる感情に引っ張られていたのだが、どうやらアルベドも同じであったことが昨晩明らかになった。
行秋を始め、稲妻で出会った人々となんでもない世間話をしていただけと空は思っていたが、彼にとってはそう単純には映っていなかったらしい。
3322容彩祭で絵師として招かれたアルベドと会えたことに浮かれていたのも束の間、彼はウェンティに酒を奢り、そのままずいぶんと長い間、吟遊詩人の話し相手をしていた。
久しぶりに会った恋人の空を蔑ろにしている訳ではない、と理性が呆れて訴えても、やきもきしていたのは事実だった。
いわゆる「やきもち」と呼ばれる感情に引っ張られていたのだが、どうやらアルベドも同じであったことが昨晩明らかになった。
行秋を始め、稲妻で出会った人々となんでもない世間話をしていただけと空は思っていたが、彼にとってはそう単純には映っていなかったらしい。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ55
アル空 バーテンダーイベントで、もしアルベドくんがやってきたら…という話。
55 アル空「滑らかな味わいのフルーツジュースが欲しいな。名前が思い出せないんだけど……スモールサイズでお願い」
「かしこまりました、スイートシードル湖、スモールサイズですね」
「コーヒーと紅茶と……あと、ミルク! それら全てを一気に味わえるようなドリンクはあるかしら? ラージサイズで飲みたいわ」
「晩鐘ですね、かしこまりました」
「濃厚な味わいのコーヒーを飲みたいんだ。サイズはスモールでいいから、とにかく濃くしてほしい。頼んだよ」
「アテネウムでコーヒーを濃いめですね、お待ちください」
ドリンクの正式名称を口にしない客たちから次々にオーダーを受けていた空は、にこやかな表情で接客しつつも、途切れる気配のない列に疲れを感じ始めていた。
4647「かしこまりました、スイートシードル湖、スモールサイズですね」
「コーヒーと紅茶と……あと、ミルク! それら全てを一気に味わえるようなドリンクはあるかしら? ラージサイズで飲みたいわ」
「晩鐘ですね、かしこまりました」
「濃厚な味わいのコーヒーを飲みたいんだ。サイズはスモールでいいから、とにかく濃くしてほしい。頼んだよ」
「アテネウムでコーヒーを濃いめですね、お待ちください」
ドリンクの正式名称を口にしない客たちから次々にオーダーを受けていた空は、にこやかな表情で接客しつつも、途切れる気配のない列に疲れを感じ始めていた。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ54
アル空 センチメンタル空くんとただ聴き役に徹するアルベドくんの話。
54 アル空甘い夢だ。現実ではないことはすぐわかる。
俺の前に、妹がいる。
お兄ちゃん、と昔からたくさん聴いてきた声が鈴のように鳴っている。やっと会えたねと嬉しそうに笑う。目的は達成されたのだ。もうテイワットに用はないから早く行こうと、落ち着きなく旅立ちを待つ妹に、そんなに急くことはないだろうと苦笑する。
『何を言ってるの? お兄ちゃんが全然ここから離れようとしない方がおかしいのに?』
それは、まだ離れ難いというか、みんなにまだ挨拶もできてないし。
『それは改めてしなきゃならないの? もしかして、彼らと別れるときに都度、〝またね〟なんて言っていたの?』
それは挨拶として自然な言葉だろう?
『……ねえお兄ちゃん、私たちは異世界の人間だよ。お互いがたったひとりの家族。忘れてないよね?』
1688俺の前に、妹がいる。
お兄ちゃん、と昔からたくさん聴いてきた声が鈴のように鳴っている。やっと会えたねと嬉しそうに笑う。目的は達成されたのだ。もうテイワットに用はないから早く行こうと、落ち着きなく旅立ちを待つ妹に、そんなに急くことはないだろうと苦笑する。
『何を言ってるの? お兄ちゃんが全然ここから離れようとしない方がおかしいのに?』
それは、まだ離れ難いというか、みんなにまだ挨拶もできてないし。
『それは改めてしなきゃならないの? もしかして、彼らと別れるときに都度、〝またね〟なんて言っていたの?』
それは挨拶として自然な言葉だろう?
『……ねえお兄ちゃん、私たちは異世界の人間だよ。お互いがたったひとりの家族。忘れてないよね?』
namo_kabe_sysy
MAIKINGまたしてもすけべ前段階 次こそ本番 きっと本番テリトリーの外側2どうして、と言いかけて、飲み込む。席を外した時間が長すぎたのだろう。おそらく、こちらの様子を伺いにきたと容易に推測できる。アルベドはお猪口に残った酒を飲み干して、ほんの僅か液体の入った瓶を持ち「これから戻ろうとしてた」と、なんとなくバツが悪い口調で呟いた。
「ごめん、急かすつもりで来たんじゃないんだ。ただ、いつもより言葉数も少なかったし、もしかして体調でも悪いのかなと思って、心配で」
言いながら、隣に座ってもいいか尋ねる空にゆるく首を振ることで応じた。彼は未成年という枠のため昨日も今日も一滴の酒も飲んでいない。完全に素面だ。完全な理性の塊の彼を隣に感じると、無性に自分のことが情けなくなって、アルベドは「ごめん」と口を開いた。
3009「ごめん、急かすつもりで来たんじゃないんだ。ただ、いつもより言葉数も少なかったし、もしかして体調でも悪いのかなと思って、心配で」
言いながら、隣に座ってもいいか尋ねる空にゆるく首を振ることで応じた。彼は未成年という枠のため昨日も今日も一滴の酒も飲んでいない。完全に素面だ。完全な理性の塊の彼を隣に感じると、無性に自分のことが情けなくなって、アルベドは「ごめん」と口を開いた。
namo_kabe_sysy
MAIKING稲妻イベントでのアル空妄想 すけべに入る前段階、ベドくんがもやもやする話。テリトリーの外側容彩祭に招かれたアルベドは、吟遊詩人やクレーを伴ってモンドから渡航して稲妻に降り立った。初めて訪れる異国への期待を表現するにはクレーの方が表情豊かではあったが、アルベドも内心、普段と全く異なる環境で絵画の機会を得られたことに胸が躍っていた。
出迎えてくれた案内役は、パイモンと旅人である空だった。はしゃぐクレーや吟遊詩人たちと共に導かれ会場までを歩いていると、道中で空を見かけた稲妻の住民たちが時折声をかけてきた。
「よお旅人の兄ちゃん、今日はえらく大所帯じゃねえか! こっちじゃあんまり見ない格好の奴らばっかりだが、知り合いか?」
「うん、彼らは容彩祭で招かれたモンドからの客人だよ」
「オイラたち、この祭りの間は稲妻にきたみんなを案内してやるんだ!」
4875出迎えてくれた案内役は、パイモンと旅人である空だった。はしゃぐクレーや吟遊詩人たちと共に導かれ会場までを歩いていると、道中で空を見かけた稲妻の住民たちが時折声をかけてきた。
「よお旅人の兄ちゃん、今日はえらく大所帯じゃねえか! こっちじゃあんまり見ない格好の奴らばっかりだが、知り合いか?」
「うん、彼らは容彩祭で招かれたモンドからの客人だよ」
「オイラたち、この祭りの間は稲妻にきたみんなを案内してやるんだ!」
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ50
アル空 空くん独白。眠るアルベドくんとの話。
50 アル空三日前のこと。「この日の十八時、モンドの研究室に来て欲しい」とアルベドから頼まれた空は、定刻通り研究室前に到着していた。手土産にはアルベドが好んで食べるスイーツを選び、それを二人分持ってきている。
「アルベド、来たよー。入ってもいい?」
実験中というプレートはさがっていても、構わず入っておいでと最初に言われている。そのためノックをしつつ室内に向けて声を発するが、中からの応答はなく、扉も開かれないままだった。
珍しいな……と首を傾げた空は、途中スクロースと会った時に、どうやらこの数日間、実験の大詰めでほとんど寝ていない様子だと聞かされていたことを思い出す。効率を重視するアルベドでも、様々な事情があって無理をしていたのかもしれない。それならばおそらく、休憩のため睡眠をとっている可能性もある。
2068「アルベド、来たよー。入ってもいい?」
実験中というプレートはさがっていても、構わず入っておいでと最初に言われている。そのためノックをしつつ室内に向けて声を発するが、中からの応答はなく、扉も開かれないままだった。
珍しいな……と首を傾げた空は、途中スクロースと会った時に、どうやらこの数日間、実験の大詰めでほとんど寝ていない様子だと聞かされていたことを思い出す。効率を重視するアルベドでも、様々な事情があって無理をしていたのかもしれない。それならばおそらく、休憩のため睡眠をとっている可能性もある。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ48
アル空 テイワットに四季はあるのだろうか…??とりあえずくっつきむしな二人の話。
48 アル空「もうすぐ春になっちゃうなあ」
ホットミルクで満たされたマグを両手で持って、空はぽつんと息をついた。
アルベドのために用意された私室。その中央にあるソファに並んで座り、空と自分の膝上に一枚のブランケットを掛けたアルベドは、「来て欲しくない言い方だね」と疑問符を浮かべた。春になったら出来ることも増えるのにと、色違いのマグを自らも口元へ運ぶ。
「そうなんだけどさ。春がきたら、夏がくるでしょ? あったかくなって、暑くなるよね?」
「それはそうだね。そういう季節だから」
「そうなったら今使ってるブランケットも、しばらくはクローゼットの中に入るよね?」
「そうだね……もう少し通気性のいいものをかわりに取り出すから」
「……さむいね、って言って、そうだね、って、くっつけなくなるじゃん」
1494ホットミルクで満たされたマグを両手で持って、空はぽつんと息をついた。
アルベドのために用意された私室。その中央にあるソファに並んで座り、空と自分の膝上に一枚のブランケットを掛けたアルベドは、「来て欲しくない言い方だね」と疑問符を浮かべた。春になったら出来ることも増えるのにと、色違いのマグを自らも口元へ運ぶ。
「そうなんだけどさ。春がきたら、夏がくるでしょ? あったかくなって、暑くなるよね?」
「それはそうだね。そういう季節だから」
「そうなったら今使ってるブランケットも、しばらくはクローゼットの中に入るよね?」
「そうだね……もう少し通気性のいいものをかわりに取り出すから」
「……さむいね、って言って、そうだね、って、くっつけなくなるじゃん」
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ46
アル空 とある休日、朝のひととき。
46 アル空「空、おはよう。今日もいい天気だよ」
耳に馴染んだ優しい声で目を覚ます。まだぼんやりとしている視界の中に、ミルクティー色が揺れていた。
「……アルベド」
いつの間に起きてたの、とからからになった喉が質問を投げた。
空の声に艶がなくなっているのは、昨夜の情事でアルベドから受けた愛に全身で応えていたためだった。腰にある鈍い重みも、噛み跡が残る肌も、彼の熱を受け止めた胎内も……まだ色香を残している。少し痺れる甘いそれを感じ続けるとまた彼を欲しくなってしまうから、なるべく感覚を追いかけないように軽く首を振り、まつ毛を震わせた空は、腕を支えにして身体を起こした。
「十五分程前かな」
「早起き〜……」
「そうでもないよ。時計も見えるだろう? 今日は休日だし、いつもよりずっとゆっくり起きてる」
1741耳に馴染んだ優しい声で目を覚ます。まだぼんやりとしている視界の中に、ミルクティー色が揺れていた。
「……アルベド」
いつの間に起きてたの、とからからになった喉が質問を投げた。
空の声に艶がなくなっているのは、昨夜の情事でアルベドから受けた愛に全身で応えていたためだった。腰にある鈍い重みも、噛み跡が残る肌も、彼の熱を受け止めた胎内も……まだ色香を残している。少し痺れる甘いそれを感じ続けるとまた彼を欲しくなってしまうから、なるべく感覚を追いかけないように軽く首を振り、まつ毛を震わせた空は、腕を支えにして身体を起こした。
「十五分程前かな」
「早起き〜……」
「そうでもないよ。時計も見えるだろう? 今日は休日だし、いつもよりずっとゆっくり起きてる」
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ44
アル空 現パロ軸。映画とデートと独占欲の話。
44 アル空ある日の休日。二人で暮らすマンションのリビングでソファに並んで腰掛けて、ボクたちは一本の映画を鑑賞していた。
ガラステーブルの上にはからっぽになったティーカップとケーキ用の皿が二人分。途中席を離れてお茶を足そうかと思ったけれど、空が真剣に観ているものだから気を散らせたくなくてやめておいた。
映画のタイトルを見た時から、内容はすでにわかっていた。それは初めて観るものではなかったから。過去に一度、映画館で、ボクはこの作品をすでに鑑賞している。
まだ付き合う前の空と一緒に。
学生だったボクと空は、学校は同じでもクラスが違っていた。彼の存在を知ったのは合同授業の実験中で、同じグループの中で会話をしたことが始まりだった。
4046ガラステーブルの上にはからっぽになったティーカップとケーキ用の皿が二人分。途中席を離れてお茶を足そうかと思ったけれど、空が真剣に観ているものだから気を散らせたくなくてやめておいた。
映画のタイトルを見た時から、内容はすでにわかっていた。それは初めて観るものではなかったから。過去に一度、映画館で、ボクはこの作品をすでに鑑賞している。
まだ付き合う前の空と一緒に。
学生だったボクと空は、学校は同じでもクラスが違っていた。彼の存在を知ったのは合同授業の実験中で、同じグループの中で会話をしたことが始まりだった。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ41
アル空 現パロ軸。コンビニで買えるちいさな幸せの話。
41 アル空コンビニで手軽に得られる幸せがある。それがデザートコーナーで見繕ったケーキやパフェだ。アルベドに感化されたせいか、最近は空も頻繁に買うようになったちいさな幸せ。周囲には複数のコンビニがあるため、曜日ごとにローテーションして商品棚を眺める時間を作っている。
今日は新作のシールが貼られたいちごのロールケーキに決めた。定番のロールケーキは中央のクリームがホワイトだけれど、新作のいちご味は薄桃色の可愛らしい色をしている。トッピングにはカットされたいちごがひとつ。埋められた赤色のそれは宝石のようにも見えた。
二人分を手に取って、レジでふたつのスプーンをつけてもらい会計を済ませる。ビニール袋をぶら下げて家に帰り玄関を開くと、カレーの匂いが鼻を掠めた。靴を脱いで急ぎキッチンへ向かうと、エプロンを纏ったアルベドが空を迎える。
1686今日は新作のシールが貼られたいちごのロールケーキに決めた。定番のロールケーキは中央のクリームがホワイトだけれど、新作のいちご味は薄桃色の可愛らしい色をしている。トッピングにはカットされたいちごがひとつ。埋められた赤色のそれは宝石のようにも見えた。
二人分を手に取って、レジでふたつのスプーンをつけてもらい会計を済ませる。ビニール袋をぶら下げて家に帰り玄関を開くと、カレーの匂いが鼻を掠めた。靴を脱いで急ぎキッチンへ向かうと、エプロンを纏ったアルベドが空を迎える。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ39
アル空 空くんを傷つけたいアルベドくんの話。
39 アル空知らないことを知っていることに変えていく。この作業に終わりはなく、身体が生きることを辞める日まで延々と続くことはすでに理解している。
知らないことを知るのには、知らないことを認識するところから始めなければならない。
そのため周囲の物事へ常に興味関心を向けることが肝要だ。そして同時に己へと問う。『目の前にある物や事象は知っているか?』と、自らの内側に投げかける。
知らない、と返ったなら、予想を立てた後、実験を通して結果を得る。獲得した知識は空きスペースの中に一枚ずつ重ねられていって、身体の一部になっていく。
これまでもこれからも変わらず続く作業の中で、永遠にすべての結果を得られない恐れのある人間と出会った。旅人である空だった。
1583知らないことを知るのには、知らないことを認識するところから始めなければならない。
そのため周囲の物事へ常に興味関心を向けることが肝要だ。そして同時に己へと問う。『目の前にある物や事象は知っているか?』と、自らの内側に投げかける。
知らない、と返ったなら、予想を立てた後、実験を通して結果を得る。獲得した知識は空きスペースの中に一枚ずつ重ねられていって、身体の一部になっていく。
これまでもこれからも変わらず続く作業の中で、永遠にすべての結果を得られない恐れのある人間と出会った。旅人である空だった。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ37
アル空 空くん誕生日かつ現パロ設定。同棲してる二人。ワインを飲む話。
37 アル空空の成人祝いにワインを開ける。芳醇な葡萄の香りがたちまち広がって、グラスに注がれた深い赤に、空はうっとりため息をこぼした。
「はあ……やっと飲めるんだ……」
アルベドは自分のグラスにもワインを満たして、ボトルをテーブルに置く。ラベルが空にも見えるように向きを整えて、首を傾げた。
空と暮らし始めたのは、彼が十八歳を迎えてからだった。高校を出て大学生になる空を、一緒に暮らそうかと誘ったのはアルベドの方だった。
二人は幼少の頃から育ってきたいわば幼馴染だったが、アルベドの方が三つ年上で、中学以降は同じ校舎ですれ違うこともできなかった。互いの家を行き来することはあっても、共有できる時間は減っていたし、付き合い始めても清い交際のまま……身体の関係になることもなかった。欲求不満になる一方の空が精一杯の色仕掛けをしても、アルベドは何もなかったように振る舞うため、空は勝手に「もう俺のこと好きじゃないの?」と悲観的になっていた。が、同棲が決まるとあれだけなにも進展のなかった関係は一気に加速した。
2431「はあ……やっと飲めるんだ……」
アルベドは自分のグラスにもワインを満たして、ボトルをテーブルに置く。ラベルが空にも見えるように向きを整えて、首を傾げた。
空と暮らし始めたのは、彼が十八歳を迎えてからだった。高校を出て大学生になる空を、一緒に暮らそうかと誘ったのはアルベドの方だった。
二人は幼少の頃から育ってきたいわば幼馴染だったが、アルベドの方が三つ年上で、中学以降は同じ校舎ですれ違うこともできなかった。互いの家を行き来することはあっても、共有できる時間は減っていたし、付き合い始めても清い交際のまま……身体の関係になることもなかった。欲求不満になる一方の空が精一杯の色仕掛けをしても、アルベドは何もなかったように振る舞うため、空は勝手に「もう俺のこと好きじゃないの?」と悲観的になっていた。が、同棲が決まるとあれだけなにも進展のなかった関係は一気に加速した。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ35
アル空 起きたくないアルベドくんの話。
35 アル空「アルベド、ねえ、起きてるんでしょ」
「……起きてない」
「返事してるじゃん。……ほら、そろそろ支度しよう?」
「……もう少し」
「それ何回目だと思ってるの……」
アルベドの実験を手伝うため、空はモンドにある研究室に出向いた。実験手順の説明を受け、空にわかりやすいように整理されていた器具や薬品についても細かにレクチャーを受ける。一通り聴いた後、アルベドが先導する実験の補佐をやりきった空は、夜も遅くなってしまったからという理由で、アルベドの元で泊まることになった。
シャワーを済ませて、アルベドと同じベッドに潜り込む。客人用としてベッドはもうひとつ準備されていたが、空には最初から別々で寝る頭はなく、当然のことのようにアルベドの隣に寄り添った。
1958「……起きてない」
「返事してるじゃん。……ほら、そろそろ支度しよう?」
「……もう少し」
「それ何回目だと思ってるの……」
アルベドの実験を手伝うため、空はモンドにある研究室に出向いた。実験手順の説明を受け、空にわかりやすいように整理されていた器具や薬品についても細かにレクチャーを受ける。一通り聴いた後、アルベドが先導する実験の補佐をやりきった空は、夜も遅くなってしまったからという理由で、アルベドの元で泊まることになった。
シャワーを済ませて、アルベドと同じベッドに潜り込む。客人用としてベッドはもうひとつ準備されていたが、空には最初から別々で寝る頭はなく、当然のことのようにアルベドの隣に寄り添った。
toshi
DOODLE"Once broken considered sold? Well, I‘ll buy this naughty cat."“ 一旦破损视为已售出?好,这只淫乱的小猫我买下了。”
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ27
アル空 現パロ軸、魈くんと空くんの会話。アルベドくんは出てこない。ねむたい空くんの話。
27 アル空「眠そうだな、空」
「ん? んー……うん」
「おい、言ってるそばから船を漕ぐな」
「わかってる、そっちの瓶だよね……」
「……瓶? なんの話だ」
「……え、あ、ごめん。……夢の中でも実験の手伝いしてた……」
「実験……アルベドのか?」
「うん。最近は家でもやってて……いや、最近でもないか。割と前から家でも実験はしてたんだけど、その時間がだいぶ増えてるんだ。だから俺にも手伝えることあるか聞いたら、簡単なものを任せてもらって……そしたら、だんだんこっちも楽しくなってきちゃって。他にも出来ること増やしてもらったんだけど、気づいたらその、結構いい時間だったんだよね……」
「のめり込みすぎだろう……」
「んー、でも楽しかったし、アルベドも喜んでくれてたから俺としてはいいかなって。あとね、手際がいいねって褒めてもらったし、忙しいのはアルベドなのに糖分摂取のためにって美味しいスイーツも用意してくれたんだ。それになにより一緒にいられる時間が増えたから、余計舞い上がっちゃってさ」
1151「ん? んー……うん」
「おい、言ってるそばから船を漕ぐな」
「わかってる、そっちの瓶だよね……」
「……瓶? なんの話だ」
「……え、あ、ごめん。……夢の中でも実験の手伝いしてた……」
「実験……アルベドのか?」
「うん。最近は家でもやってて……いや、最近でもないか。割と前から家でも実験はしてたんだけど、その時間がだいぶ増えてるんだ。だから俺にも手伝えることあるか聞いたら、簡単なものを任せてもらって……そしたら、だんだんこっちも楽しくなってきちゃって。他にも出来ること増やしてもらったんだけど、気づいたらその、結構いい時間だったんだよね……」
「のめり込みすぎだろう……」
「んー、でも楽しかったし、アルベドも喜んでくれてたから俺としてはいいかなって。あとね、手際がいいねって褒めてもらったし、忙しいのはアルベドなのに糖分摂取のためにって美味しいスイーツも用意してくれたんだ。それになにより一緒にいられる時間が増えたから、余計舞い上がっちゃってさ」
_maruno_
DOODLEどのカプでスケベ書こう…って悩んでたら、相互さんからアル空で、ってリクエストしてもらったので、初アル空すけべです。でもスケベってなんだっけ…???ってなったので飽きて途中書きになってます。ご了承ください。気が向いたらそのうち追記するかも。しないかも。 4034
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ18
鍾魈とアル空
18 アル空と鍾魈人は苦難に打ち克つことができる。
各人の前に立ちはだかる問題、その壁は何かしらの術をもってすれば、必ず乗り越えられるもののはず。
乗り越えた先にあるのは自身への勝利、そして成長や名誉があるだろう。
だから今、この目の前にある強敵に、怯む訳にはいかない――
「鍾離様……! もう、もうおやめください! あとは我が……!」
「いいんだ、魈。これは俺の問題……いや、課題なのだろう。俺のために用意されたものならば、俺が対処せねばならない」
「ですが……」
「そんなに不安そうな顔をするな。お前は俺を信じてくれればそれでいい」
「……信じております。心から、あなたのことを信じております! ですが、……あなたにその海鮮丼はあまりに負担が大きすぎます!」
1843各人の前に立ちはだかる問題、その壁は何かしらの術をもってすれば、必ず乗り越えられるもののはず。
乗り越えた先にあるのは自身への勝利、そして成長や名誉があるだろう。
だから今、この目の前にある強敵に、怯む訳にはいかない――
「鍾離様……! もう、もうおやめください! あとは我が……!」
「いいんだ、魈。これは俺の問題……いや、課題なのだろう。俺のために用意されたものならば、俺が対処せねばならない」
「ですが……」
「そんなに不安そうな顔をするな。お前は俺を信じてくれればそれでいい」
「……信じております。心から、あなたのことを信じております! ですが、……あなたにその海鮮丼はあまりに負担が大きすぎます!」
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ16
アル空と鍾魈
16 アル空と鍾魈青い草原の広がる洞天の中で、桜の木を植えたからお花見しようと空が誘ったのは、魈と鍾離、そしてアルベドだった。
稲妻の城下を歩いていた時に舞い散る薄桃色の花弁が美しく、いつでものんびり観たいなと思っていた矢先にマルが用意してくれたため、迷わずコインと樹木を引き換えのだ。
雨の降らない洞天の中は気温も安定していて過ごしやすい。パイモンが「お花見するなら団子がいるよな!」と瞳を輝かせたために、稲妻の土産と称した三色団子も買ってきている。鍾離は茶を用意してくれて、魈は望舒旅館のオーナーから預かったという菓子を取り出し、アルベドはつまみもあるといいのではとガイアに勧められた、モンド風焼き魚を持ち寄った。
持ってきた料理のほとんどを食べきったパイモンは、満腹になったせいかそのまますよすよ寝息を立て始めてしまった。花より団子を体現するパイモンに、期待を裏切らないなあと空は苦笑をこぼす。
1216稲妻の城下を歩いていた時に舞い散る薄桃色の花弁が美しく、いつでものんびり観たいなと思っていた矢先にマルが用意してくれたため、迷わずコインと樹木を引き換えのだ。
雨の降らない洞天の中は気温も安定していて過ごしやすい。パイモンが「お花見するなら団子がいるよな!」と瞳を輝かせたために、稲妻の土産と称した三色団子も買ってきている。鍾離は茶を用意してくれて、魈は望舒旅館のオーナーから預かったという菓子を取り出し、アルベドはつまみもあるといいのではとガイアに勧められた、モンド風焼き魚を持ち寄った。
持ってきた料理のほとんどを食べきったパイモンは、満腹になったせいかそのまますよすよ寝息を立て始めてしまった。花より団子を体現するパイモンに、期待を裏切らないなあと空は苦笑をこぼす。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ15
アル空と鍾魈 アル空の成分がやや多め
15 アル空と鍾魈「無相の氷、削りに削ったら大量のかき氷ができたりしないかな……」
稲妻にて、素材集めのため無相の炎をかれこれ十回連続で討伐していた空がぼやくと、パーティに組まれていた魈、鍾離、アルベドが各々反応を示した。
「氷とはいえ食べるようなものでもあるまい? ……そのようなことを考えるとは、疲れ過ぎているのではないか?」
魈は若干の心配をみせつつ嘆息して、
「そうかもしれないな。戦闘も続いたし、少し休むといいだろう。それにしても面白い発想だな……コアとそのまわりを覆う氷とで味の変化はあるのだろうか?」
鍾離は考察を始め、
「中心の方がエネルギーは凝縮されているだろうし、変化はあるかもしれないね。どちらも削るとして、あれだけの大きさがあればかき氷はたくさん作れるだろうけど……配るにしても、同じだけシロップも必要だね」
1140稲妻にて、素材集めのため無相の炎をかれこれ十回連続で討伐していた空がぼやくと、パーティに組まれていた魈、鍾離、アルベドが各々反応を示した。
「氷とはいえ食べるようなものでもあるまい? ……そのようなことを考えるとは、疲れ過ぎているのではないか?」
魈は若干の心配をみせつつ嘆息して、
「そうかもしれないな。戦闘も続いたし、少し休むといいだろう。それにしても面白い発想だな……コアとそのまわりを覆う氷とで味の変化はあるのだろうか?」
鍾離は考察を始め、
「中心の方がエネルギーは凝縮されているだろうし、変化はあるかもしれないね。どちらも削るとして、あれだけの大きさがあればかき氷はたくさん作れるだろうけど……配るにしても、同じだけシロップも必要だね」
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字(前後)チャレンジ14
アル空
14 アル空スケッチする対象は実に様々だ。
荒野に咲く一輪の花、緑豊かな大地に咲き乱れる花々、常に雪に覆われた山肌、その中で逞しく生きる動物。
アルベドがスケッチ用のペンを持てば、曇りのない真っ白な画用紙の中にそれらの対象が細かに描き込まれていく。空がその様子を傍で見たことは何度もあったし、パイモンが「またモデルになるか?」と声を掛けるのも繰り返された光景だった。
これまで描いたものを見てみたい、空が言うと、それならモンドにあるボクの部屋においでと錬金術師は微笑んだ。
「わあ……たくさんあるね」
「そうだね。定期的に整理はしているけれど、それよりも描く回数が上回ってしまうから」
研究するための部屋とは別の眠ったり食事をする一室に通された空が目にしたのは、厚みのあるファイル五冊分にもなるスケッチの数々だった。
1547荒野に咲く一輪の花、緑豊かな大地に咲き乱れる花々、常に雪に覆われた山肌、その中で逞しく生きる動物。
アルベドがスケッチ用のペンを持てば、曇りのない真っ白な画用紙の中にそれらの対象が細かに描き込まれていく。空がその様子を傍で見たことは何度もあったし、パイモンが「またモデルになるか?」と声を掛けるのも繰り返された光景だった。
これまで描いたものを見てみたい、空が言うと、それならモンドにあるボクの部屋においでと錬金術師は微笑んだ。
「わあ……たくさんあるね」
「そうだね。定期的に整理はしているけれど、それよりも描く回数が上回ってしまうから」
研究するための部屋とは別の眠ったり食事をする一室に通された空が目にしたのは、厚みのあるファイル五冊分にもなるスケッチの数々だった。
namo_kabe_sysy
TRAINING800文字チャレンジ12
アル空
12 アル空今日はこれといった記念日ではないはずだ。誕生日でもないし、想いを伝えるイベントがある日でもない。
しかしアルベドの研究室、その一角にあるデスクの上には、リボンの巻かれた箱や袋、束ねられた手紙が山積みになっていた。
「アルベド、これは……?」
ここ数ヶ月実験を進めていたアルベドが、ひと段落ついたからと空を誘い部屋に招くまではよかった。が、これまで見たこともないようなプレゼントと思しきものが山になっているのを見て、もしかして自分は何か特別な日を忘れているのでは? と不安が拭えない。
空の視線が向く方へ顔を動かしたアルベドは、無感動に「あれか」とこぼした。
「最近、絵画教室を開いてね。今回は女性が中心に集まったんだけど、何回か開催していたら、日に日に贈り物を貰うことが増えていって……」
1110しかしアルベドの研究室、その一角にあるデスクの上には、リボンの巻かれた箱や袋、束ねられた手紙が山積みになっていた。
「アルベド、これは……?」
ここ数ヶ月実験を進めていたアルベドが、ひと段落ついたからと空を誘い部屋に招くまではよかった。が、これまで見たこともないようなプレゼントと思しきものが山になっているのを見て、もしかして自分は何か特別な日を忘れているのでは? と不安が拭えない。
空の視線が向く方へ顔を動かしたアルベドは、無感動に「あれか」とこぼした。
「最近、絵画教室を開いてね。今回は女性が中心に集まったんだけど、何回か開催していたら、日に日に贈り物を貰うことが増えていって……」