don_tatsu
MAIKING気が向いたときに書き足す、嘘世界のようなパラレルのような疑似親子ノースディン×クラージィ(♀)の特に落ちのない話。R-18入ったら合言葉つけます。逆光体中にまだ人間達の怨嗟が纏わりついている気がする。
凍えて死ぬ程度、炎にまかれるより楽だろうに。人間は死に方にさえ注文をつける。
冷気と怨嗟がまとわりついた外套を使い魔の雪だるまに渡す。翌夜には綺麗になっているだろう。
「おとうさま!」
階段の上から、十歳前後の少女の声が響いた。
大声を出すなどはしたない。やめなさい。
などという注意はしなかった。
「おかえりなさい、おとうさま!」
「ただいま、私の愛しい仔」
転げるように階段を降り脚へと抱きついてきた癖毛の子供を抱き上げる。
柔らかい身体の中から聴こえるひたすら遅い鼓動。
それでも聞こえてくる小さな心臓の音に氷笑卿は微かに微笑んだ。
※
子供──クラージィには過去も記憶もない。
1354凍えて死ぬ程度、炎にまかれるより楽だろうに。人間は死に方にさえ注文をつける。
冷気と怨嗟がまとわりついた外套を使い魔の雪だるまに渡す。翌夜には綺麗になっているだろう。
「おとうさま!」
階段の上から、十歳前後の少女の声が響いた。
大声を出すなどはしたない。やめなさい。
などという注意はしなかった。
「おかえりなさい、おとうさま!」
「ただいま、私の愛しい仔」
転げるように階段を降り脚へと抱きついてきた癖毛の子供を抱き上げる。
柔らかい身体の中から聴こえるひたすら遅い鼓動。
それでも聞こえてくる小さな心臓の音に氷笑卿は微かに微笑んだ。
※
子供──クラージィには過去も記憶もない。
nomori94081
MAIKINGまだくっついたばかりのノスクラが、真面目に空回るお話の加筆修正版。癖と癖を詰めた結果、徹頭徹尾シモの話をしているので、完成版は後日支部に上げます。
真面目×真面目かつ玄人×素人にしか出せない味があると言うお気持ちです。
もだもだしている期間が一番好きまであります。 4383
🌱(め)
MEMOクラさん誕生日祝いのノスクラを書こうとしていたんですが最初の数行で詰んでしまったのでプロットだけ放流させてください 1日オーバー…清書を諦めたプロットになりますのでご了承ください…
黒杭時代の過去を勝手に捏造しています 黒杭さんも昏夢のクラさんもみんなひっくるめて生まれてくれてありがとうおめでとう
※ノスクラです 要素は薄い
全ての貴方が祝福されますように。教会の鐘が鳴る。
カソック姿で振り向く。一瞬黒杭時代の自分を幻視する。懐かしい故郷の土の匂い。手の中には杭がある。
ーーーすぐに我に帰る。
ここはビルの屋上である。200年前のルーマニアでは、ない。握っていた拳を開いた。足元ではクラージィが引き千切ってやった下等吸血鬼の腕部が灰になってあっという間に強風に攫われていくところだった。吸血鬼の聴覚が地上の喧騒を捉え、屋上の端へ寄ってみる。眼下には吸血鬼対策課の制服を着た男女が何人も集まって来ているのが見えた。下等吸血鬼に囚われていた成人や子供たちは皆一様に屋上に倒れ伏している。じきに発見されるだろう。
クラージィが街を歩いていたところで路地の奥から子供の母親を呼ぶ悲痛な声が聴こえたのだ。目をやると母親が縋り付く幼児の手を振り払いふらふらと人形のような足取りで異形の手を取ろうとしている所だった。クラージィの背丈の数倍はあろうかというその吸血鬼は襤褸を纏って人間のような背格好に見えたが、覗く顔と母親に伸ばす手は人間のものではなかった。クラージィが駆け寄ろうとすると吸血鬼は母親の身体に前腕を巻き付けてビルの壁伝いに上方へ飛び上がろうとした。おそらくそれが『狩り』の方法だったのだろう。咄嗟に軟体生物じみた脚部のうちの1本を掴み、そのままクラージィもビルの屋上へ引き摺り上げられたのだった。
4950カソック姿で振り向く。一瞬黒杭時代の自分を幻視する。懐かしい故郷の土の匂い。手の中には杭がある。
ーーーすぐに我に帰る。
ここはビルの屋上である。200年前のルーマニアでは、ない。握っていた拳を開いた。足元ではクラージィが引き千切ってやった下等吸血鬼の腕部が灰になってあっという間に強風に攫われていくところだった。吸血鬼の聴覚が地上の喧騒を捉え、屋上の端へ寄ってみる。眼下には吸血鬼対策課の制服を着た男女が何人も集まって来ているのが見えた。下等吸血鬼に囚われていた成人や子供たちは皆一様に屋上に倒れ伏している。じきに発見されるだろう。
クラージィが街を歩いていたところで路地の奥から子供の母親を呼ぶ悲痛な声が聴こえたのだ。目をやると母親が縋り付く幼児の手を振り払いふらふらと人形のような足取りで異形の手を取ろうとしている所だった。クラージィの背丈の数倍はあろうかというその吸血鬼は襤褸を纏って人間のような背格好に見えたが、覗く顔と母親に伸ばす手は人間のものではなかった。クラージィが駆け寄ろうとすると吸血鬼は母親の身体に前腕を巻き付けてビルの壁伝いに上方へ飛び上がろうとした。おそらくそれが『狩り』の方法だったのだろう。咄嗟に軟体生物じみた脚部のうちの1本を掴み、そのままクラージィもビルの屋上へ引き摺り上げられたのだった。
amamatuka
DONEノスクラ誕生日妄想漫画の長めの小話です!ノスの使い魔の設定を捏造してます。bon先生ありがとうノスクラ誕生日小話「誕生日?この前ヨシダさんたちに知らないと伝えたら決めてもらってな」
「今度一緒にパーティをしてもらうことになったんだがよければお前もどうだ?」
真夏のはずの新横浜の空が急激に曇り、真っ暗になったかとおもうと轟々と吹雪が吹き荒れ始めた。
ドラルクはまたあのバカ師匠になにか機嫌を損ねることがあったなと首を竦め、一駅先にあるスーパーの特売を諦め帰ることにした。
寒さで死んでは元も子もない。師匠の屋敷はかなり遠いはずなのに、影響がシンヨコにまで及ぶとなると相当の地雷があったはずだ。
父絡みか、それとも。
「クラージィさんか…」
バカ師匠など放っておいてもいいがこっちにまで影響が来るのは御免被る。後でクラージィさんにラインしておこう。決意を固め、足元が雪で埋まらないうちに踵を返した。
3196「今度一緒にパーティをしてもらうことになったんだがよければお前もどうだ?」
真夏のはずの新横浜の空が急激に曇り、真っ暗になったかとおもうと轟々と吹雪が吹き荒れ始めた。
ドラルクはまたあのバカ師匠になにか機嫌を損ねることがあったなと首を竦め、一駅先にあるスーパーの特売を諦め帰ることにした。
寒さで死んでは元も子もない。師匠の屋敷はかなり遠いはずなのに、影響がシンヨコにまで及ぶとなると相当の地雷があったはずだ。
父絡みか、それとも。
「クラージィさんか…」
バカ師匠など放っておいてもいいがこっちにまで影響が来るのは御免被る。後でクラージィさんにラインしておこう。決意を固め、足元が雪で埋まらないうちに踵を返した。
amamatuka
DONEヒゲともじゃ2開催おめでとうございます!ノスクラ誕生日n番煎じ妄想ネタです!誕生日2つあるとか最高すぎる クラさんのもう一つの誕生日を決めるきっかけがミキサンたちのおかげだったら嬉しいなという捏造です
amamatuka
DONEヒゲともじゃ2開催おめでとうございます!去年の3月に出したドラロナ+ノスクラ本アップします。ノスクラのみのお目当ての方はご注意ください。WEB漫画を加筆・内容修正後、話を追加したドラロナ+ノスクラ本です。ノスクラ再会と師弟の会話と転化にまつわるドラロナのシリアスっぽいイチャイチャです。 21
kakuto94
DONE【ノスクラ/全年齢版】温泉漫画ヒゲともじゃ2開催おめでとうございました!
こちらはノスクラ温泉漫画からR18シーンを除いた全年齢版です。
パスワードなしでご覧いただけます。
(2024/03/30更新)紙版が完成したので画像を更新しました。表紙、最後の1p、影の追加です。 19
オサハタ
DOODLE先生のポストでクラージィさんの誕生日がふたつあると知って書いたメモ的なもの誕生日を尋ねられた。
私は
『分からない』
と真実を口にした。
それを受けて、ふたりは
『ふぅん』
と、何の抵抗もなく納得した。
程なくして私の誕生日が定められた。ふたりの意見と、そして私の考えも汲まれた日だ。
有難いと成るが儘に頬を緩めた一方で、ふと、ひとつの可能性も頭に浮かんだ。
故に、問うた。
『私に誕生日はあるのか』
と。
誕生日の定められた日から少しばかり経ったとある逢魔時、その輪郭を夜闇に溶かしながら姿を見せたその人に。
聞いた刹那、周囲の空気が僅かに冷えた。
その人の表情に変化はない、が、紅い相貌が、微かに揺れた。
『 』
ぽつりと告げられた日付。それは先日、友人たちと定めた日とはかけ離れている。
当然だ、知らなかったのだから、致し方ない。だが──
856私は
『分からない』
と真実を口にした。
それを受けて、ふたりは
『ふぅん』
と、何の抵抗もなく納得した。
程なくして私の誕生日が定められた。ふたりの意見と、そして私の考えも汲まれた日だ。
有難いと成るが儘に頬を緩めた一方で、ふと、ひとつの可能性も頭に浮かんだ。
故に、問うた。
『私に誕生日はあるのか』
と。
誕生日の定められた日から少しばかり経ったとある逢魔時、その輪郭を夜闇に溶かしながら姿を見せたその人に。
聞いた刹那、周囲の空気が僅かに冷えた。
その人の表情に変化はない、が、紅い相貌が、微かに揺れた。
『 』
ぽつりと告げられた日付。それは先日、友人たちと定めた日とはかけ離れている。
当然だ、知らなかったのだから、致し方ない。だが──
おもち
DONEノスクラ♀です。多分付き合っている二人です。ノスはスケコマなのに、クラさんには上手に振る舞えないの可愛いですね…。
初めての出会いの時は、ウィンプルを身に付けていて、そのブルネットの巻き髪は隠れていた。二度目に彼女を見たのは教会を破門された後の事だった。ぼろをまとい、ブルネットの長い巻き毛は手入れされていないのだろう、あちこちに跳ねていた。
三度目は、血に塗れ臓腑が腹からはみ出ていて、死の匂いが濃くした。うねる髪は、血や汚泥にまみれ、どろどろに汚れていた。まともに食事にもありつけなかったのだろう、頬はこけその身は痩せ細っていた。
そして四度目は新横浜で。彼女は現代の服装を纏っていた。安物だが、どこにも汚れなどない清潔なものだった。
コートをまとっていたが、それでも棺に納めたあの頃に比べれば随分と肉が付いていたことが一目で分かる。有り得ないと思っていた出来事に混乱をきたしてはいたが、女性に対してそのような言葉を言うほど愚かではない。
3314三度目は、血に塗れ臓腑が腹からはみ出ていて、死の匂いが濃くした。うねる髪は、血や汚泥にまみれ、どろどろに汚れていた。まともに食事にもありつけなかったのだろう、頬はこけその身は痩せ細っていた。
そして四度目は新横浜で。彼女は現代の服装を纏っていた。安物だが、どこにも汚れなどない清潔なものだった。
コートをまとっていたが、それでも棺に納めたあの頃に比べれば随分と肉が付いていたことが一目で分かる。有り得ないと思っていた出来事に混乱をきたしてはいたが、女性に対してそのような言葉を言うほど愚かではない。
shakota_sangatu
MENU12月に無料配布するノスクラ本のサンプルです。配布のため、部数は少量となります。無料配布という特殊な形での配布となるため、プロフにつけた🔞垢で告知致します。成人の方で、興味のある方は頒布時期だけフォローしていただけると、手配がスムーズに行えるので助かります。
Gra Go Deo -Gra Geal Mo Chroi- お前という善を、ただの悲劇のままにしたく無かったのだ。
その男のことを考える時、私の心はいつだって、200年という時を遡る。
春には祭りを催す静かな村の、郊外に構えられた貴族の屋敷。かつて私はその屋敷で、大切な親友の子どもを預かり、その子の師匠として研鑽の日々を送っていた。
その屋敷は、いくつかある拠点の一つでしか無かった。
吸血鬼として、長き時を生きる我らにとって、一所に留まることは悪手でしかなく。食料である人間達のコミュニティに紛れながらも、昼の光を厭い生きる姿にいかに違和感を覚えさせないかは、吸血鬼としての力量にも比例していた。
人間達は異端を厭い、一瞬の綻びが災禍を招く。大切な親友の子どもを預かっていた私が、その屋敷を一時の拠点に選んだ理由は、その村が戦禍や飢饉といった事象から遠い場所にあり、日が暮れてからしか顔を見せぬ住人への違和感を、「お貴族様だから」という簡単な暗示で丸め込める素直な気質の者達が多かったからだった。
35367その男のことを考える時、私の心はいつだって、200年という時を遡る。
春には祭りを催す静かな村の、郊外に構えられた貴族の屋敷。かつて私はその屋敷で、大切な親友の子どもを預かり、その子の師匠として研鑽の日々を送っていた。
その屋敷は、いくつかある拠点の一つでしか無かった。
吸血鬼として、長き時を生きる我らにとって、一所に留まることは悪手でしかなく。食料である人間達のコミュニティに紛れながらも、昼の光を厭い生きる姿にいかに違和感を覚えさせないかは、吸血鬼としての力量にも比例していた。
人間達は異端を厭い、一瞬の綻びが災禍を招く。大切な親友の子どもを預かっていた私が、その屋敷を一時の拠点に選んだ理由は、その村が戦禍や飢饉といった事象から遠い場所にあり、日が暮れてからしか顔を見せぬ住人への違和感を、「お貴族様だから」という簡単な暗示で丸め込める素直な気質の者達が多かったからだった。
🌱(め)
DONEノスクラ。悪夢に迷い込むクラさんの話。
あんまり捏ね回しすぎて溜まっているものが多すぎるので考えすぎないでどんどん上げていって練習量を増やそうの試みです…
※都合により時期外れのクリスマスの話が挟まります。季節を反復横跳びしている。手記の内容及び野犬関係の描写あります。
氷は熱い、狼は冷たい、春の夜は、『お前の能力は美しいな』
『…なんだと?』
指揮者のようにくるりと指先を踊らせていた男が訝しげにこちらを見返した。
窓の向こう、雪深い古城の庭で雪だるまが踊るように荷を運んでいる。
御真祖様からお前へのクリスマスプレゼントだそうだ、とノースディンは言った。
先日一族への面通しだと言われ小さな宴へと連れられたのは記憶に新しい。小さな、とは言ってもクラージィが知る教会の祝祭や村の宴に比べればずっと賑やかで華やかで、驚いてばかりの私にノースディンは「一族全員が集まればこんなものではないぞ」と苦い顔をしていたの覚えている。
私は子供ではないが、と言ったら「受け取っておけばいい、私の仔であることは確かだ」と笑われた。ひどく気恥ずかしい思いではあったが、せっせと運ばれていく大小様々な荷物の中に"Northdin"の名が刻印された物も含まれているのが見えて、それ以上を言うのはやめた。隣に立つ男も似た思いをして複雑な顔をしているのだろうと思った。
2658『…なんだと?』
指揮者のようにくるりと指先を踊らせていた男が訝しげにこちらを見返した。
窓の向こう、雪深い古城の庭で雪だるまが踊るように荷を運んでいる。
御真祖様からお前へのクリスマスプレゼントだそうだ、とノースディンは言った。
先日一族への面通しだと言われ小さな宴へと連れられたのは記憶に新しい。小さな、とは言ってもクラージィが知る教会の祝祭や村の宴に比べればずっと賑やかで華やかで、驚いてばかりの私にノースディンは「一族全員が集まればこんなものではないぞ」と苦い顔をしていたの覚えている。
私は子供ではないが、と言ったら「受け取っておけばいい、私の仔であることは確かだ」と笑われた。ひどく気恥ずかしい思いではあったが、せっせと運ばれていく大小様々な荷物の中に"Northdin"の名が刻印された物も含まれているのが見えて、それ以上を言うのはやめた。隣に立つ男も似た思いをして複雑な顔をしているのだろうと思った。
おもち
DONE成立前ノスクラです。手記後から書き始めたものです。ノースが頑張っています。貰い物のボールペンを握り、クラージィは日記帳に今日の出来後を書き連ねる。
語学勉強を兼ねて書き始めたそれは、まだまだ拙い文字に表現だが徐々に上達してきている。分からない表現はまずは自分で調べ、それでも分からない時は隣に住む友人たちに尋ねている。
母国語と日本語を脳内で照らし合わせ、ペンを握る手を止める。
そこにピンポーンと来訪を告げるチャイムの音に、クラージィは日記帳から顔を上げた。
時刻は午前一時。吸血鬼として新たな生を受けた身としては寝入る時間ではないが、人間の感覚で言えば真夜中だ。
そんな時間の来訪者に心当たりは無いものの、クラージィは日記帳を閉じてテーブルの端に寄せ立ち上がった。
ドアを開ける前に、親切な隣人の『不用意に玄関を開けてはいけませんよ』という言葉が過ぎったが、再びチャイムが鳴り響き、クラージィはドアを開けてしまった。
6244語学勉強を兼ねて書き始めたそれは、まだまだ拙い文字に表現だが徐々に上達してきている。分からない表現はまずは自分で調べ、それでも分からない時は隣に住む友人たちに尋ねている。
母国語と日本語を脳内で照らし合わせ、ペンを握る手を止める。
そこにピンポーンと来訪を告げるチャイムの音に、クラージィは日記帳から顔を上げた。
時刻は午前一時。吸血鬼として新たな生を受けた身としては寝入る時間ではないが、人間の感覚で言えば真夜中だ。
そんな時間の来訪者に心当たりは無いものの、クラージィは日記帳を閉じてテーブルの端に寄せ立ち上がった。
ドアを開ける前に、親切な隣人の『不用意に玄関を開けてはいけませんよ』という言葉が過ぎったが、再びチャイムが鳴り響き、クラージィはドアを開けてしまった。
おもち
DONEノスクラ成立後です。ノースが自販で血液パックを買っていたあたりに書いた話です。
再会前のため、クラさんからノースへの二人称が「きみ」です。
再会した彼は、かっちりとした立襟の黒のカソックを身に付けることはなくなった。
少しだけ、勿体ないと思ってしまう。彼の雰囲気や美しくぴんと伸びた背筋にその装いはとても似合っていたから。
初めて会った頃の張り詰めた様子は消え、随分と表情も柔らかくなった。目覚めてからは、体が酷く冷えるらしく、最近ではこの国のこたつがお気に入りのようだ。
こたつに吸い寄せられように、すっぽりと収まり天板に腕を枕代わりに置き、うとうととしている。
来客を前にした態度とは到底思えないが、油断しきった我が子は可愛くもあるし、彼にとって己はもてなすべく来客ではなく、もう身内なのだろうと思うと口元が緩んでしまう。
「クラージィ、眠いならベッドに行きなさい」
1335少しだけ、勿体ないと思ってしまう。彼の雰囲気や美しくぴんと伸びた背筋にその装いはとても似合っていたから。
初めて会った頃の張り詰めた様子は消え、随分と表情も柔らかくなった。目覚めてからは、体が酷く冷えるらしく、最近ではこの国のこたつがお気に入りのようだ。
こたつに吸い寄せられように、すっぽりと収まり天板に腕を枕代わりに置き、うとうととしている。
来客を前にした態度とは到底思えないが、油断しきった我が子は可愛くもあるし、彼にとって己はもてなすべく来客ではなく、もう身内なのだろうと思うと口元が緩んでしまう。
「クラージィ、眠いならベッドに行きなさい」
おもち
DONE成立前ノスクラ。本誌でノースが自販で血液パックを買っていたあたりに書いた話です。
まだ再会前のタイミングで書いていたため、クラさんからノースへの二人称が「きみ」です。
夜も尚喧騒に包まれ、煌々とした明かりに照らされた地は品も無く、好きになれそうにもない。
この地へ来る目的は、不肖の弟子であるドラルクに会うためか、ドラウスに呼び出されでもしなければ訪れることが無かった。
ノースディンが、新横浜にこの数ヶ月で訪れる頻度が劇的に上がってしまったことには当然理由がある。
騒がしい地に降り立ち、自販機であまりに安っぽい血液パックを購入するのも慣れたものだ。けたたましい音を立て落ちてきた血液パックを手に取り、慣れた道を歩いていく。
手軽に買えるという以外の利点は何一つない粗悪な品だが、それでもこれを購入するには理由がある。
痩せ干せた我が子のために、以前は血液ボトルを差し入れていたのだが、清貧さを尊ぶところのある元聖職者は、ノースディンの差し入れるボトルの価格をどこからか知り得たらしく、丁重に断るようになってしまったのだ。
3170この地へ来る目的は、不肖の弟子であるドラルクに会うためか、ドラウスに呼び出されでもしなければ訪れることが無かった。
ノースディンが、新横浜にこの数ヶ月で訪れる頻度が劇的に上がってしまったことには当然理由がある。
騒がしい地に降り立ち、自販機であまりに安っぽい血液パックを購入するのも慣れたものだ。けたたましい音を立て落ちてきた血液パックを手に取り、慣れた道を歩いていく。
手軽に買えるという以外の利点は何一つない粗悪な品だが、それでもこれを購入するには理由がある。
痩せ干せた我が子のために、以前は血液ボトルを差し入れていたのだが、清貧さを尊ぶところのある元聖職者は、ノースディンの差し入れるボトルの価格をどこからか知り得たらしく、丁重に断るようになってしまったのだ。
おもち
DONE黒い杭後に書いたノスクラ。両片思いからの成立する話です。クラさんは完全に片思いだと思っていて、ノースは両思いだと気付いているけど、まだ手を出しあぐねているくらいの時期なんだと思います。書いた時期の関係上、クラさんからノースへの二人称が「きみ」です。
神よ、これは罰なのでしょうか。
今は遠い天上へと問いかけるが、当然答えなど返ってこない。
落ち着け、大それた事態ではない。そう己に言い聞かせるが、どうしたところで落ち着けそうにもない。
「ノースディン」
小声で呼び掛けるが、返事はない。規則正しい呼吸に、その鼓動。穏やかに眠っているようだ。
なんとか距離を取ろうと動くが、案外逞しいノースディンの胸に抱きすくめられていて、それは叶わなかった。
何故こんな事態になってしまったのか、と数刻前のことを思い起こすとどう考えても自分に非がある。ノースディンは被害者と言えるだろう。
小さくドアが開く音がして、その後にベッドへと歩み寄る足音がする。人間の時と比べ、聴覚が鋭くなっているようで、些細な音だが目が覚めてしまった。
3526今は遠い天上へと問いかけるが、当然答えなど返ってこない。
落ち着け、大それた事態ではない。そう己に言い聞かせるが、どうしたところで落ち着けそうにもない。
「ノースディン」
小声で呼び掛けるが、返事はない。規則正しい呼吸に、その鼓動。穏やかに眠っているようだ。
なんとか距離を取ろうと動くが、案外逞しいノースディンの胸に抱きすくめられていて、それは叶わなかった。
何故こんな事態になってしまったのか、と数刻前のことを思い起こすとどう考えても自分に非がある。ノースディンは被害者と言えるだろう。
小さくドアが開く音がして、その後にベッドへと歩み寄る足音がする。人間の時と比べ、聴覚が鋭くなっているようで、些細な音だが目が覚めてしまった。
おもち
DONE黒い杭後に書いた同棲中のノスクラの話です。書いた時期はまだ二人は会話どころか再会していなかったため、ノースへの二人称が「きみ」になっております。「お前」呼びも美味しいけど、「きみ」も好きだったので、そのままにしています。だいぶノースが浮かれポンチだけど、仕方ないんです。年下の恋人が可愛くて仕方ないです。
香り高い紅茶に、少しいびつな形のアイスボックスクッキーをお茶請けに、夜の二人きりのティータイムを過ごす。
さくり、と音を立て口の中でほろりとクッキーがほどけていく。見た目は及第点だが、味は十分に美味と言えた。
少し前までは想像もしなかった穏やかな時間に、ノースディンは向かいに座る緊張した面持ちの男を見る。
「どうだろうか?」
「上出来だ」
ノースディンの言葉にクラージィは安堵の息を吐き、骨ばった指先でクッキーを一つ抓み口へと運ぶ。
いつもは難しい顔をした男が、顔をほころばせる姿につられて微笑みそうになり、ノースディンは誤魔化すために完璧な所作でティーカップを口元へと運ぶ。
「君やドラルクの作ったものには到底及ばないが…うまいな」
1939さくり、と音を立て口の中でほろりとクッキーがほどけていく。見た目は及第点だが、味は十分に美味と言えた。
少し前までは想像もしなかった穏やかな時間に、ノースディンは向かいに座る緊張した面持ちの男を見る。
「どうだろうか?」
「上出来だ」
ノースディンの言葉にクラージィは安堵の息を吐き、骨ばった指先でクッキーを一つ抓み口へと運ぶ。
いつもは難しい顔をした男が、顔をほころばせる姿につられて微笑みそうになり、ノースディンは誤魔化すために完璧な所作でティーカップを口元へと運ぶ。
「君やドラルクの作ったものには到底及ばないが…うまいな」
おもち
DONE同棲中のノスクラ成立前の二人です。黒い杭の後に書いたもの。そのため、ノースがわりとまだ格好つけています(当社比)冷え性クラさんにノースがマッサージしています。下心は無いとまだ言い張る時期のノースです。
この頃はノースと再会しているのかすら分からない時期でしたね…。今となっては懐かしい。
吸血鬼は何に祈り、何に誓うのだろうか。ノースディンは、とうの昔に人間であることを辞めた頭の片隅で考える。
つい先日目覚めたばかりの、吸血鬼としてはまだ赤ん坊同然の我が子を保護し屋敷へと連れ帰ったのは、血を与えた親吸血鬼として当然の成り行きだった。
誓って――――あえて誓うとすれば、クラージィに誓って、やましい気持ちなど何一つ無い。
そう誰に言い訳するでもなくノースディンは、ベッドヘッドに背を預け戸惑った様子でこちらを見る赤い瞳に気付かないふりをした。
再会したクラージィは体が酷く冷たく、どれだけ部屋を暖炉の炎で温め、その瘦せ細った身を毛布でくるんでも末端が冷えるらしく、寝付きが悪い。
ノースディンがそれに気付いたのは、クラージィの目元にくまが出来てからという事実は、思い返す度に無意識下に室温を下げてしまうほどに許し難いことだった。
2029つい先日目覚めたばかりの、吸血鬼としてはまだ赤ん坊同然の我が子を保護し屋敷へと連れ帰ったのは、血を与えた親吸血鬼として当然の成り行きだった。
誓って――――あえて誓うとすれば、クラージィに誓って、やましい気持ちなど何一つ無い。
そう誰に言い訳するでもなくノースディンは、ベッドヘッドに背を預け戸惑った様子でこちらを見る赤い瞳に気付かないふりをした。
再会したクラージィは体が酷く冷たく、どれだけ部屋を暖炉の炎で温め、その瘦せ細った身を毛布でくるんでも末端が冷えるらしく、寝付きが悪い。
ノースディンがそれに気付いたのは、クラージィの目元にくまが出来てからという事実は、思い返す度に無意識下に室温を下げてしまうほどに許し難いことだった。