mmmsssrrr0
DONE黒限、黑限(成長後)百年ぶりに情欲を催したので誰でもいいから見繕いにいく无限に小黒が立候補するだけの話、だったんですが言いくるめるところまで書きました。
黒限 立候補黒限 立候補
1.
「小黒、すこしいいか」
「はい」
小黒が背筋をしゃんと伸ばして返事をしたのは、師の声に緊張の色を聞き取ったからだった。きっと、任務に関係する、それもいつもよりも難しくて重要な件についての話があるのだろう。そう思って振り返ったが、予想に反して无限はいつも任務におもむく時の格好ではなく、美しく装った姿をしていた。暗緑の長衫の上に、えりにラインの入った深衣。普段から无限が好んで着ている服だが、髪は丁寧に結われ、わずかに、香油のにおいがする。
(デートだ)
小黒は直観し、すぐさま心の中でその考えを振り払った。
无限がデートだなんて、ありえない。六歳で无限の弟子となってから、小黒が大人になり、いっぱしの執行人としてひとかどの信頼を得た今に至るまで、无限には恋人の影など一切なかった。長くひそかにその座を狙っていた小黒にはわかる。
82251.
「小黒、すこしいいか」
「はい」
小黒が背筋をしゃんと伸ばして返事をしたのは、師の声に緊張の色を聞き取ったからだった。きっと、任務に関係する、それもいつもよりも難しくて重要な件についての話があるのだろう。そう思って振り返ったが、予想に反して无限はいつも任務におもむく時の格好ではなく、美しく装った姿をしていた。暗緑の長衫の上に、えりにラインの入った深衣。普段から无限が好んで着ている服だが、髪は丁寧に結われ、わずかに、香油のにおいがする。
(デートだ)
小黒は直観し、すぐさま心の中でその考えを振り払った。
无限がデートだなんて、ありえない。六歳で无限の弟子となってから、小黒が大人になり、いっぱしの執行人としてひとかどの信頼を得た今に至るまで、无限には恋人の影など一切なかった。長くひそかにその座を狙っていた小黒にはわかる。
badger_0107
DONE■ベス野郎さまのイラスト(https://x.com/bessyarou/status/1776973171662749983)が素敵すぎて、ご本人様の許可を得て書かせていただいている神様小黒と天仙無限のパラレルです■科白のあるモブ多数
■紫羅蘭ちゃんは「スミレ」でいいか不明ですが、展開上カタカナ表記にしたかったため、得られる情報の範囲でこの表記としています。
春の神様(3)【黒限】 花と若草の香りの中で午睡を楽しんだ後は、川原で向き合って座って、ムゲンが金属(かね)の操り方を教えてくれます。
「初めてだからな。今日は金属に慣れよう」
「ふーん?」
「金属は冷たいだろ。でも今は?」
そう言って、ムゲンが腕を差し出しました。巻かれている金属に触ると、ぽかぽかと温かくなっています。
「あったかい」
「そう。陽に温められた。川にでも浸ければまたすぐに冷たくなる。この板は曲げられるか?」
「ムリだよ、かたいし」
「じゃあこうしたら?」
ムゲンが薄く平たくした金属が、少し距離を置いて立つ2人の間にふわりと浮かびます。目の前に降りてきた金属を手に取ってみると、しなやかに曲がりました。
「できる!」
「そうだな。こんな風にもできる」
7639「初めてだからな。今日は金属に慣れよう」
「ふーん?」
「金属は冷たいだろ。でも今は?」
そう言って、ムゲンが腕を差し出しました。巻かれている金属に触ると、ぽかぽかと温かくなっています。
「あったかい」
「そう。陽に温められた。川にでも浸ければまたすぐに冷たくなる。この板は曲げられるか?」
「ムリだよ、かたいし」
「じゃあこうしたら?」
ムゲンが薄く平たくした金属が、少し距離を置いて立つ2人の間にふわりと浮かびます。目の前に降りてきた金属を手に取ってみると、しなやかに曲がりました。
「できる!」
「そうだな。こんな風にもできる」
badger_0107
DONE■ベス野郎さまのイラスト(https://x.com/bessyarou/status/1776973171662749983)が素敵すぎて、ご本人様の許可を得て書かせていただいている神様小黒と天仙無限のパラレルです■科白のあるモブ多数
■紫羅蘭ちゃんは「スミレ」でいいか不明ですが、展開上カタカナ表記にしたかったため、得られる情報の範囲でこの表記としています。
春の神様(2)【黒限】 にこりともしないしシャオヘイを猫よばわりするし、良いヤツとはとても思えないけれど、美味しいご飯を食べさせてくれるから悪いヤツでもない。そう思っていたムゲンにはしばらく警戒を解かずにいましたので、別れがたいほどに仲良くなったのは、春の終わりが目の前まで来てからでした。ある日の「再見(さよなら)」でずいぶん長く頭を撫でてくれて、それが今年のお別れだったと知ったのは翌日になってから。昨年まで関心のなかったシャオヘイは、ムゲンがこの地に春を楽しみに来ているだけとは知らなかったのです。
「大丈夫、来年もまたいらっしゃるから」
ムゲンが天へ帰ってしまったと知って無言で大粒の涙を零していたシャオヘイを、スミレが一生懸命慰めてくれます。そしてムゲンが再びこの地へ戻ってくるまでの夏と秋と冬の間に、たくさん話を聞かせてくれました。
8293「大丈夫、来年もまたいらっしゃるから」
ムゲンが天へ帰ってしまったと知って無言で大粒の涙を零していたシャオヘイを、スミレが一生懸命慰めてくれます。そしてムゲンが再びこの地へ戻ってくるまでの夏と秋と冬の間に、たくさん話を聞かせてくれました。
badger_0107
DONE■ベス野郎さまのイラスト(https://x.com/bessyarou/status/1776973171662749983)が素敵すぎて、ご本人様の許可を得て書かせていただいている神様小黒と天仙無限のパラレルです■科白のあるモブ多数
■紫羅蘭ちゃんは「スミレ」でいいか不明ですが、展開上カタカナ表記にしたかったため、得られる情報の範囲でこの表記としています。
春の神様(1)【黒限】 耳の先を撫でた一陣の南風に、丸くなって昼寝していたシャオヘイは頭をもたげました。湿った鼻の先を、むぐむぐと蠢かします。
『来た』
明るく晴れた春の空を、じっと見上げます。
砂糖菓子のような白い雲の合間に五色にきらめく彩雲があらわれて、その端がすうっと梯子のように地まで伸びてきました。
藪に埋もれる小さな小さなシャオヘイの廟は、盛りの近い春の花たちに彩られ、甘い香りに包まれています。その両端の反った屋根から飛び降りて、一心に走り出しました。向かう先は、もうすぐ満開の桃の林です。目を反らさずに見つめ続ける彩雲の端は薄紅の霞さながらの林の上にかかり、その中に一つの影が浮かびました。シャオヘイの大きな耳に聞こえてくるのは猫よりも密やかな足音、真っ黒な鼻へ届くのは春よりも芳しい香り。
6505『来た』
明るく晴れた春の空を、じっと見上げます。
砂糖菓子のような白い雲の合間に五色にきらめく彩雲があらわれて、その端がすうっと梯子のように地まで伸びてきました。
藪に埋もれる小さな小さなシャオヘイの廟は、盛りの近い春の花たちに彩られ、甘い香りに包まれています。その両端の反った屋根から飛び降りて、一心に走り出しました。向かう先は、もうすぐ満開の桃の林です。目を反らさずに見つめ続ける彩雲の端は薄紅の霞さながらの林の上にかかり、その中に一つの影が浮かびました。シャオヘイの大きな耳に聞こえてくるのは猫よりも密やかな足音、真っ黒な鼻へ届くのは春よりも芳しい香り。
badger_0107
DONE■猫洋服のふたり■My Sweet Honey Bunny(https://poipiku.com/1473087/10539128.html)の続きです
■イチャイチャした翌朝にまたイチャイチャしてるだけ
■内容はないです
My Sweet Honey Bunny - 後朝 -【黒限】 気怠くも快い微睡から、ゆっくりと浮かび上がっていく。
カーテンの向こうの朝まだきの街から物音は一つも聞こえず、夜とのあわいの青い空気に染まって、部屋ごと水底に沈んでいるようだ。
眠りの中でも感じていた規則正しい鼓動と日向の匂い、自分自身のものと錯覚するほどに馴染んだ体温。心ゆくまで情を交わした後に、小黒に抱きこまれて眠った。長い腕の中で静かに体勢を変えて、健やかな寝息の恋人の顔を間近に見つめる。すっきりと細い輪郭の中に配されている唇も鼻も閉ざされている目も、彫り上げたように端正だ。
外見ばかりではない。
430歳も年上の無限を最も身近な存在として過ごしてきたせいか年齢の割に老成したところもあるが、一方で朗らかであり、物腰も柔らかく、心配りも細やかだ。5年前に移り住んだこの街で、妖精にも人間にも瞬く間に多くの知己を得た。
3769カーテンの向こうの朝まだきの街から物音は一つも聞こえず、夜とのあわいの青い空気に染まって、部屋ごと水底に沈んでいるようだ。
眠りの中でも感じていた規則正しい鼓動と日向の匂い、自分自身のものと錯覚するほどに馴染んだ体温。心ゆくまで情を交わした後に、小黒に抱きこまれて眠った。長い腕の中で静かに体勢を変えて、健やかな寝息の恋人の顔を間近に見つめる。すっきりと細い輪郭の中に配されている唇も鼻も閉ざされている目も、彫り上げたように端正だ。
外見ばかりではない。
430歳も年上の無限を最も身近な存在として過ごしてきたせいか年齢の割に老成したところもあるが、一方で朗らかであり、物腰も柔らかく、心配りも細やかだ。5年前に移り住んだこの街で、妖精にも人間にも瞬く間に多くの知己を得た。
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■師父の家族ほか捏造あれこれ
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(8)【黑限】 小黒と無限はいつも通り5時に起きて、素読と軽い手合わせをこなす。とっくに金属製と水属性の術を使えるようになった無限に毎日新しい課題を出して、鍛錬する。毎朝の朝食の時間は8時だ。7時半頃に部屋へ戻ると、好きな時間に起きればいいと伝えてあった小白が、寝ぼけた顔でパジャマ姿のままリビングへ出てきた。
「早(はよ)。早飯(あさめし)なにがいい? ルームサービス頼むけど 」
「なんでもいいよ、ありがと。着替えてくる」
今日は、小白のリクエストで風息公園へ行く。身支度と食事を終えて、ホテルを出たのは10時に近い。小白と無限が手を繋ぎ、半歩後ろを小黒が歩く。
「師父さんと手繋げるとか思わなかったな。私はいい思い出って感じだけど、なんかごめんね」
6794「早(はよ)。早飯(あさめし)なにがいい? ルームサービス頼むけど 」
「なんでもいいよ、ありがと。着替えてくる」
今日は、小白のリクエストで風息公園へ行く。身支度と食事を終えて、ホテルを出たのは10時に近い。小白と無限が手を繋ぎ、半歩後ろを小黒が歩く。
「師父さんと手繋げるとか思わなかったな。私はいい思い出って感じだけど、なんかごめんね」
badger_0107
DOODLE■書きかけみたいな、出会い編完結みたいな■設定ふんわり
■小黒がそれなりの年齢で師父と出会って、反発から始まる話が見たいな~からスタートしたパラレル。続きは書くか不明。
■(1)と(2)には名前とセリフのあるモブが出ます
没落貴族の小黒が大貴族の無限に買われる話(3) 紫檀の卓子を挟み、釈然としないまま睨むようにして見つめますが、無限は相変わらず涼やかに蓋椀を取り上げました。蓋の縁で茶葉を除け、わずかに蓋をずらして口をつける、流れるような仕草も伏し目がちに茶を飲む半分しか見えない顔も、憎らしいくらいに優雅で美しいと感じてしまいます。
「……やっぱりみんなで俺のことからかってんじゃねーの」
目の前の青年が47歳の青嶺公爵無限大人であるなど信じられないと言い張った小黒に、案内をしてくれた家令を始めとする幾人かの家臣たちを無限が呼んで、己が何者であるかを証言させました。生真面目な顔をしながらも家臣たちにどこか苦笑いの気配があったのは、小黒の誤解もさもありなんといったところだったのでしょうか。
4711「……やっぱりみんなで俺のことからかってんじゃねーの」
目の前の青年が47歳の青嶺公爵無限大人であるなど信じられないと言い張った小黒に、案内をしてくれた家令を始めとする幾人かの家臣たちを無限が呼んで、己が何者であるかを証言させました。生真面目な顔をしながらも家臣たちにどこか苦笑いの気配があったのは、小黒の誤解もさもありなんといったところだったのでしょうか。
badger_0107
DOODLE■書きかけみたいな、出会い編中編みたいな■設定ふんわり
■小黒がそれなりの年齢で師父と出会って、反発から始まる話が見たいな~からスタートしたパラレル
■名前とセリフのあるモブが出ます
没落貴族の小黒が大貴族の無限に買われる話(2) 言われていたとおり、迎えの者が羅家へやってきたのは昼前です。紫羅蘭と共に、鄭家の屋敷へ連れて行かれました。大門の内で執事に迎えられた小黒はそのまま外院に留め置かれ、紫羅蘭は召使い頭らしき年配の女性に奥向きへ伴われていきます。
「お泊まりいただく房間(おへや)です」
案内された房間には数人の召使いが控え、何着もの華やかな絹の衣装が並べられていました。
「お見合いのためのお衣装合わせです」
「衣装合わせ?」
「羅小黒さまはそのまま立っていていただければよろしい」
そう告げられると、召し使いたちに取り囲まれてみすぼらしい単衣を脱がされます。
「えっ、あ」
驚いている間に手際よく衣装の一揃いを着せられ、執事に上から下まで吟味され、また脱がされて着せられて、何回もそれを繰り返して、小黒に一等似合う衣装が慎重に選び出されました。合わせて、柔らかな革の長鞋や絹の組紐の佩玉も見立てられます。まるで人形にでもなった気分で、体力には自信がありますが、どうにも勝手が違いすぎて疲労困憊してしまい、召使いたちが引き取った後は暖かな炕牀(暖房付きベッド)にぐったりと懐いていました。
5873「お泊まりいただく房間(おへや)です」
案内された房間には数人の召使いが控え、何着もの華やかな絹の衣装が並べられていました。
「お見合いのためのお衣装合わせです」
「衣装合わせ?」
「羅小黒さまはそのまま立っていていただければよろしい」
そう告げられると、召し使いたちに取り囲まれてみすぼらしい単衣を脱がされます。
「えっ、あ」
驚いている間に手際よく衣装の一揃いを着せられ、執事に上から下まで吟味され、また脱がされて着せられて、何回もそれを繰り返して、小黒に一等似合う衣装が慎重に選び出されました。合わせて、柔らかな革の長鞋や絹の組紐の佩玉も見立てられます。まるで人形にでもなった気分で、体力には自信がありますが、どうにも勝手が違いすぎて疲労困憊してしまい、召使いたちが引き取った後は暖かな炕牀(暖房付きベッド)にぐったりと懐いていました。
badger_0107
DOODLE■書きかけみたいな、出会い編前編みたいな■設定ふんわり
■小黒がそれなりの年齢で師父と出会って、反発から始まる話が見たいな~からスタートしたパラレル
■名前とセリフのあるモブが出ます
没落貴族の小黒が大貴族の無限に買われる話(1) 遠い親戚であり後見人の鄭氏が羅家を訪ねてきたのは、小黒が16歳の誕生日からちょうど3ヶ月後の寒さの盛りです。
掃除こそ行き届いているものの、年月による傷みは隠せない客庁へ通しました。貴族としては領地も持たない傍流ながら戸部で七品の官を務めているとやら、鄭氏は口利きなどで金回りもよく、たっぷりと綿の入った袷の長衣に毛皮の裏打ちのある外套と帽子で暖かく装っています。片や小黒は長く続く名門・羅伯爵家の嫡男ながら、数代前の祖先の放蕩で領地の多くを失い、今や残るものは都城(みやこ)の家屋敷とわずかの家宝ばかり、うらぶれた邸宅の中は外と変わらぬ寒さにも関わらず、古ぼけて薄くなった単衣を重ね着するほかありません。もっとも、小黒の若い肉体は溌剌として熱を帯び、寒さを寒さと感じもしませんが。
3188掃除こそ行き届いているものの、年月による傷みは隠せない客庁へ通しました。貴族としては領地も持たない傍流ながら戸部で七品の官を務めているとやら、鄭氏は口利きなどで金回りもよく、たっぷりと綿の入った袷の長衣に毛皮の裏打ちのある外套と帽子で暖かく装っています。片や小黒は長く続く名門・羅伯爵家の嫡男ながら、数代前の祖先の放蕩で領地の多くを失い、今や残るものは都城(みやこ)の家屋敷とわずかの家宝ばかり、うらぶれた邸宅の中は外と変わらぬ寒さにも関わらず、古ぼけて薄くなった単衣を重ね着するほかありません。もっとも、小黒の若い肉体は溌剌として熱を帯び、寒さを寒さと感じもしませんが。
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■師父の家族ほか捏造あれこれ
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(7)【黑限】 無限と龍游へ来てから、1ヶ月が過ぎた。
2~3ヶ月かかると当初から告げていたためか、聡い無限はいつ戻れるのかとは訊いてこない。
元に戻る兆しも見えないままに、幼い無限との日常が少しずつ組み上がっていく。
朝は5時に起き、目覚めるとすぐに口直しの甘いものを添えて逸風の薬を飲ませる。無限の四書五経の素読に付き合い、ホテル近くの公園で軽い鍛練をして、朝食を取る。夕方までは、気ままだ。龍游の街や郊外の山で遊ぶこともあれば紫羅蘭と洛竹に会いに行くこともあり、人の少ない公園で鍛練や組み手を行い、無限の書の稽古を傍らで眺めもする。美味い店や屋台で昼食と夕食を食べ、日暮れにはホテルに戻って、無限は薬を飲むと早々に寝てしまう。
75812~3ヶ月かかると当初から告げていたためか、聡い無限はいつ戻れるのかとは訊いてこない。
元に戻る兆しも見えないままに、幼い無限との日常が少しずつ組み上がっていく。
朝は5時に起き、目覚めるとすぐに口直しの甘いものを添えて逸風の薬を飲ませる。無限の四書五経の素読に付き合い、ホテル近くの公園で軽い鍛練をして、朝食を取る。夕方までは、気ままだ。龍游の街や郊外の山で遊ぶこともあれば紫羅蘭と洛竹に会いに行くこともあり、人の少ない公園で鍛練や組み手を行い、無限の書の稽古を傍らで眺めもする。美味い店や屋台で昼食と夕食を食べ、日暮れにはホテルに戻って、無限は薬を飲むと早々に寝てしまう。
mugenkouyatoufu
SPOILER39話を見てわーーーーーーーーーってなったまま描いて7月11日のイベントに持っていった無配です!
完全に妄想な上に、これを視界共有でみんな見てるし(誰!?ってなにしてるの!?)
巨乳のお姉さん達の目の前でこれ見せられてる…ってとこまで描けなかったですw
そしてまだ自分の中でなにも消化できてません!!!!!!!!
40話どうなるの!?
あんな優しい笑顔で弟子見てるの!?みんなに見られてるよ師父!? 4
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■師父の家族ほか捏造あれこれ
■終盤でガチ挿入あり(予定)のセンシティブな展開のため、リスト限定です。ご希望の方はDMかリプでお声がけください。F外の方もお気軽にどうぞ。
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(6)【黑限】 朝食の後で、無限を老君の元へ連れてきた。迎えの諦聽は当然居ないが、小舟が独りでに小黒と無限を老君山まで運んでくれる。老君の閑居である老君閣の薄明とも薄暮ともつかぬ淡い青い光の中で、不思議と視界は奪われない。片や胡座のまま、片や宝貝でそれぞれ宙に浮く少年の姿の神々に、無限が緊張した面持ちで拱手した。背筋を伸ばしたままの折り目正しい礼から、跪いて額ずく。
「太上老君並びに哪吒太子に申し上げます。私(わたくし)は名を無限と申します。ご尊顔を拝する栄を賜りましてまことに恐悦の至り」
「いいよ無限、そんなの。大丈夫、この人たち気楽だから」
途中で遮り、無限の脇の下に手を入れて抱き上げた。
「お、なんだよ。せっかく気分良かったのに」
9634「太上老君並びに哪吒太子に申し上げます。私(わたくし)は名を無限と申します。ご尊顔を拝する栄を賜りましてまことに恐悦の至り」
「いいよ無限、そんなの。大丈夫、この人たち気楽だから」
途中で遮り、無限の脇の下に手を入れて抱き上げた。
「お、なんだよ。せっかく気分良かったのに」
badger_0107
DONE■2022二十四節気イラスト「冬至」にまつわる捏造SS■クリスマス話のつもりで大遅刻
完全に黑限のつもりで打ってましたが、これはただの師弟だな…?って気づき、でも黑限工場で生産されたのでやっぱり黑限かもしれないです。
山のおうち 険しい深山の道なき道を、飛ぶように行く。
冬枯れの木立にしがみつくように残る葉が寒々しく、吐く息は視界を奪うほどに白い。
寒さが足の裏から身体の芯に凍み入ってくる冬の山奥で、インナーにタートルネックのニットを着てはいるが、中綿すら入っていない裾と袖の長い綿の交領衫に簡素な綿の帯を結び、足下もまた綿の褲子に半長靴、荷物すら持たない軽装だ。その上にも、膝まで届く長い藍い髪に白皙の美貌。登山者に行き会おうものなら、相手は無限を人外と見て逃げ出すだろう。
「ねー、師父。こんな山の中だし飛んじゃえば」
胸元からひょっこりと顔を出した黒い仔猫が、そう言って顔を顰める。
「駄目だ。規則だからな。それにもうすぐ着く」
4691冬枯れの木立にしがみつくように残る葉が寒々しく、吐く息は視界を奪うほどに白い。
寒さが足の裏から身体の芯に凍み入ってくる冬の山奥で、インナーにタートルネックのニットを着てはいるが、中綿すら入っていない裾と袖の長い綿の交領衫に簡素な綿の帯を結び、足下もまた綿の褲子に半長靴、荷物すら持たない軽装だ。その上にも、膝まで届く長い藍い髪に白皙の美貌。登山者に行き会おうものなら、相手は無限を人外と見て逃げ出すだろう。
「ねー、師父。こんな山の中だし飛んじゃえば」
胸元からひょっこりと顔を出した黒い仔猫が、そう言って顔を顰める。
「駄目だ。規則だからな。それにもうすぐ着く」
badger_0107
DONE黑限未満の、特になんでもないSS長い恋にまつわる短い話 膝の上で寛ぐ黒猫の天鵞絨の被毛を撫でながら、やはりこんな寒い夜の暖かなこの部屋の、2人で選んだこのソファに座っていた時だったと思い出す。
今にも雪が降りだしそうな厚い雲に街の灯りが反射していた、ちょうど10年前の白っぽい夜だった。
「俺、師父が好き」
ソファの上で膝とマグカップを抱えていた小黒が、真っ直ぐに顔を上げてそう言った。日頃から気安く伝え合う言葉に何故そんな表情(かお)をしているのかとも思ったが、どこか思い詰めても見える真摯な眼差しが愛しく可愛く、自然と口元が綻んでしまう。
「知ってるよ。私も」
「違くて」
言いさす言葉を遮って、小黒がもどかしげに継いだ。大きな猫の耳がわずかに後ろに倒れて、雄弁な長い尾が忙しなく左右に揺れている。
3795今にも雪が降りだしそうな厚い雲に街の灯りが反射していた、ちょうど10年前の白っぽい夜だった。
「俺、師父が好き」
ソファの上で膝とマグカップを抱えていた小黒が、真っ直ぐに顔を上げてそう言った。日頃から気安く伝え合う言葉に何故そんな表情(かお)をしているのかとも思ったが、どこか思い詰めても見える真摯な眼差しが愛しく可愛く、自然と口元が綻んでしまう。
「知ってるよ。私も」
「違くて」
言いさす言葉を遮って、小黒がもどかしげに継いだ。大きな猫の耳がわずかに後ろに倒れて、雄弁な長い尾が忙しなく左右に揺れている。
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■師父の家族ほか捏造あれこれ
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(5)【黑限】 無限が目を覚ましたのは1時間後だ。
寝ているからといって置いて出る気にはならず、猫の姿に戻って無限に寄り添い、微睡みながら首元に丸まっていた。
「ねこ」
呟きが聞こえて背中を撫でられ、無限が起きたと知る。大きく伸びをして足の先から尻尾の先まで万全にストレッチして、ベッドから飛び降りながら人の容に変化した。もぞもぞと無限が起き上がり、小黒を心許ない顔つきで見上げてくる。
「起きた?」
「ん。厠所(かわや)に行きたい」
『そういえば』
無限は朝から一度もトイレへ行っていない。人の子たちの間で暮らした日々から時間が空いて、気にもしていなかった。遠慮していたのか、それとも水分が足りていないのか。
「こっちだよ」
8838寝ているからといって置いて出る気にはならず、猫の姿に戻って無限に寄り添い、微睡みながら首元に丸まっていた。
「ねこ」
呟きが聞こえて背中を撫でられ、無限が起きたと知る。大きく伸びをして足の先から尻尾の先まで万全にストレッチして、ベッドから飛び降りながら人の容に変化した。もぞもぞと無限が起き上がり、小黒を心許ない顔つきで見上げてくる。
「起きた?」
「ん。厠所(かわや)に行きたい」
『そういえば』
無限は朝から一度もトイレへ行っていない。人の子たちの間で暮らした日々から時間が空いて、気にもしていなかった。遠慮していたのか、それとも水分が足りていないのか。
「こっちだよ」
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■捏造あれこれ
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(4)【黑限】 秋の空は高く透明に晴れ渡り、穏やかな陽射しが心地良い。
龍游の中心部であるこの場所は、買い物に困らない。6車線の道路に沿って大型のショッピングセンターや百貨店、オフィスビル、ホテルが建ち並び、街路樹の法国梧桐(プラタナス)が色づくゆったりと広い歩道に平日でも人が多く行き交う。ホテルまでは車窓から眺めていた街を興味深げな様子で見回す無限が、時折居心地悪げに臀を揺すっているのは気づいていた。
「小黒」
ついに意を決したような呼びかけを受けても、歩みは止めない。
「やっぱり下ろしてくれ。自分で歩く」
「だから、迷子になったら困るだろ。俺タッパあるから手繋ぐの大変だし、抱っこの方が絶対間違いないよ」
一緒に買い物に行くと言い張ったが鳩老からの電話に呼び戻された若水とホテルのロビーで別れるなりに、「街は人が多いから」と無限を抱き上げた。迷子になったところで気を辿って簡単に探し出せるが、それは伏せておく。守るなら、こうして腕に抱えておくのが最も確実だ。
9344龍游の中心部であるこの場所は、買い物に困らない。6車線の道路に沿って大型のショッピングセンターや百貨店、オフィスビル、ホテルが建ち並び、街路樹の法国梧桐(プラタナス)が色づくゆったりと広い歩道に平日でも人が多く行き交う。ホテルまでは車窓から眺めていた街を興味深げな様子で見回す無限が、時折居心地悪げに臀を揺すっているのは気づいていた。
「小黒」
ついに意を決したような呼びかけを受けても、歩みは止めない。
「やっぱり下ろしてくれ。自分で歩く」
「だから、迷子になったら困るだろ。俺タッパあるから手繋ぐの大変だし、抱っこの方が絶対間違いないよ」
一緒に買い物に行くと言い張ったが鳩老からの電話に呼び戻された若水とホテルのロビーで別れるなりに、「街は人が多いから」と無限を抱き上げた。迷子になったところで気を辿って簡単に探し出せるが、それは伏せておく。守るなら、こうして腕に抱えておくのが最も確実だ。
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■捏造あれこれ
■終盤でガチ挿入あり(予定)のセンシティブな展開のため、リスト限定です。ご希望の方はDMかリプでお声がけください。F外の方もお気軽にどうぞ。
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(3)【黑限】 転送門で、龍游中心部に位置する会館の地上オフィスへ転送される。待っていたオフィスの責任者に車に乗せられ、送られた先は車で20分ほどの五ツ星ホテルだ。チェックインは済ませてあると言われてフロントで別れ、心得たようなベルボーイと代る。エレベーターは最上階で止まり、ソールが沈むカーペットの敷かれた廊下の突き当たりの部屋へと案内され、ベルボーイが恭しく開いたドアの内側へ入った。
「おっ、スイートじゃん。さすが師父」
一目では部屋数もわからない広さのスイートは、首席執行人である無限に相応しいよう手配されたものだろう。紫檀と黒の落ち着いたトーンで統一された、モダンシノワズリの品のいいインテリアで設えられている。無限を促し、さっそく室内を見て回る。
8315「おっ、スイートじゃん。さすが師父」
一目では部屋数もわからない広さのスイートは、首席執行人である無限に相応しいよう手配されたものだろう。紫檀と黒の落ち着いたトーンで統一された、モダンシノワズリの品のいいインテリアで設えられている。無限を促し、さっそく室内を見て回る。
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■捏造あれこれ
■終盤でガチ挿入あり(予定)のセンシティブな展開のため、リスト限定です。ご希望の方はDMかリプでお声がけください。F外の方もお気軽にどうぞ。
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(2)【黑限】 会館上層部の面々と首席執行人の愛弟子に囲まれ、厨師の責任者である螻蛄の妖精がVIPルームの豪奢な椅子で居心地悪げに臀を揺する。
「非時香果(ときじくのかくのこのみ)って物らしいです。万病を癒し、不老不死をもたらす霊果だとか」
何事が起きているのかと様子をうかがいながら、厨師が語って曰く。
日本まで新作ゲームを買いに行かされた諦聽が彼の地の神々へ挨拶に立ち寄った際に、「大変に美味」として老君に非時香果を賜った。神である老君にとっては、不老不死の霊果も滋養強壮剤程度のものだ。それよりも、頑健とはいえ肉体自体は人間(ひと)である無限にこそ役に立つだろうと考えたらしい。無限と小黒が『衆生の門』での任務にあたっている間に、諦聽が霊果を携えて龍游を訪れた。
8414「非時香果(ときじくのかくのこのみ)って物らしいです。万病を癒し、不老不死をもたらす霊果だとか」
何事が起きているのかと様子をうかがいながら、厨師が語って曰く。
日本まで新作ゲームを買いに行かされた諦聽が彼の地の神々へ挨拶に立ち寄った際に、「大変に美味」として老君に非時香果を賜った。神である老君にとっては、不老不死の霊果も滋養強壮剤程度のものだ。それよりも、頑健とはいえ肉体自体は人間(ひと)である無限にこそ役に立つだろうと考えたらしい。無限と小黒が『衆生の門』での任務にあたっている間に、諦聽が霊果を携えて龍游を訪れた。
badger_0107
DONE■25才小黒×7才無限のおにショタ(ゆっくりめの連載)■捏造あれこれ
非時香果(ときじくのかくのこのみ)/(1)【黑限】 規則正しく刻む命の音の中で、優しく暖かい闇に揺蕩う。交歓の疲れはいつも、気怠くも快い。
『あ~、朝……』
絹と紗の帳で外界から切り離された秘密の空間に陽光は射し込まないが、小黒の体内の時計が時間を教えてくれる。現在時刻は6:00少し前で間違いない。
『早飯(あさごはん)……頼まなきゃ……』
傍らに眠る、情人(こいびと)にして果てなき敬愛を捧げる師のために、可能ならば自らの手で料理したいところだが、会館に滞在中とあってはそうもいかない。
闇(くらがり)の中で手探りして、巨大な架子牀(天蓋付きベッド)のどこかに放ったままのスマートフォンを探す。
『あった』
ようやく指先に触れた硬く薄い物体を引き寄せて、液晶画面に触れた。呼び出す先は、厨房だ。
9151『あ~、朝……』
絹と紗の帳で外界から切り離された秘密の空間に陽光は射し込まないが、小黒の体内の時計が時間を教えてくれる。現在時刻は6:00少し前で間違いない。
『早飯(あさごはん)……頼まなきゃ……』
傍らに眠る、情人(こいびと)にして果てなき敬愛を捧げる師のために、可能ならば自らの手で料理したいところだが、会館に滞在中とあってはそうもいかない。
闇(くらがり)の中で手探りして、巨大な架子牀(天蓋付きベッド)のどこかに放ったままのスマートフォンを探す。
『あった』
ようやく指先に触れた硬く薄い物体を引き寄せて、液晶画面に触れた。呼び出す先は、厨房だ。
dai3nohato
DONE[2/11洞房花燭夜]web展示だったもの。連作その2。引き続き恥ずかしいのでフォロ限です〜
いっこ前の話→ https://poipiku.com/856785/6164531.html
通販受付2/13まで→ https://pictspace.net/hatopon 1292
dai3nohato
DONE[2/11洞房花燭夜]web展示だったもの。連作その3、ようやく初夜です!!!大したことしてませんがR18、フォロ限
その1→ https://poipiku.com/856785/6164531.html
その2→ https://poipiku.com/856785/6164533.html
紙版は完売しました。ありがとうございます! 8791
badger_0107
PROGRESS10/10「黒猫邁進」で発行の新刊「嘘 [ xū ]」の書き下ろし(1)の サンプルです。詳細>
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15912010
■本編後日談のため、本編のネタバレを含みます)
※縦書き原稿から抜粋のため、数字が漢数字になっています
番外編:逸風 若水ほど手放しに「好き」だとは言えないまでも、人間は嫌いではない。任務やプライベートで人間(じんかん)へ降りるのは、楽しみですらある。
館の幹部と龍游市幹部との二ヶ月に一度の定例ミーティングに随員として同行し、まだ陽が高い内に解散となった後は、上司でもあり友人でもある冠萱と買い物と食事のために地上へ残った。広い龍游の中心部に位置する市庁舎の最寄り駅から、地下鉄に乗って二駅の繁華街へ向かう。若水から情報を仕入れておいた新規開店の餐庁で遅めの昼食をゆっくりと終えてから、買い物に出た。
メインストリートの両サイドには老舗の百貨店やハイブランドの旗艦店、大型のショッピングモールが建ち並び、秋冬物の新作ファッションが溢れかえっている。街路樹が色づく葉を広げる石畳の歩道を歩きながら、メンズのディスプレイのショーウインドウを流し見ていった。
4452館の幹部と龍游市幹部との二ヶ月に一度の定例ミーティングに随員として同行し、まだ陽が高い内に解散となった後は、上司でもあり友人でもある冠萱と買い物と食事のために地上へ残った。広い龍游の中心部に位置する市庁舎の最寄り駅から、地下鉄に乗って二駅の繁華街へ向かう。若水から情報を仕入れておいた新規開店の餐庁で遅めの昼食をゆっくりと終えてから、買い物に出た。
メインストリートの両サイドには老舗の百貨店やハイブランドの旗艦店、大型のショッピングモールが建ち並び、秋冬物の新作ファッションが溢れかえっている。街路樹が色づく葉を広げる石畳の歩道を歩きながら、メンズのディスプレイのショーウインドウを流し見ていった。
badger_0107
PROGRESS10/10「黒猫邁進」で発行の新刊「嘘 [ xū ]」の書き下ろし(2)の サンプルです。詳細>
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15912010
■本編後日談のため、本編のネタバレを含みます)
※縦書き原稿から抜粋のため、数字が漢数字になっています
番外編:無限 空が完全な黄昏の色に染まる前に帰り着く。
玄関に各々の新しいコートの入ったショップバッグを置き、洗面所で手を洗う。
一緒にキッチンへ入って、無限は買ってきた茶菓子を手にミネラルウォーターをピックアップし、リビングで電気ポットに注してスイッチを入れる。その間に、小黒が茶の道具一式と小皿を支度してきてくれた。
「ありがとう」
「うん。無限にしたよ、お茶」
東方美人(オリエンタルビューティー)。蜜の香りと色を持つ茶を、小黒は時折冗談で「無限」と呼ぶ。
「古臭いっていつも言ってるだろ、その冗談」
「冗談じゃないし、全然本気」
ローテーブルへ茶道具と皿を置きながら、無限の開けているケーキの箱の中を覗き込んできた。小黒が評判を聞きてきた新規開店のパティスリーのスペシャリティ、タルト・オ・フィグとピスターシュフランボワーズが収まっている。
1034玄関に各々の新しいコートの入ったショップバッグを置き、洗面所で手を洗う。
一緒にキッチンへ入って、無限は買ってきた茶菓子を手にミネラルウォーターをピックアップし、リビングで電気ポットに注してスイッチを入れる。その間に、小黒が茶の道具一式と小皿を支度してきてくれた。
「ありがとう」
「うん。無限にしたよ、お茶」
東方美人(オリエンタルビューティー)。蜜の香りと色を持つ茶を、小黒は時折冗談で「無限」と呼ぶ。
「古臭いっていつも言ってるだろ、その冗談」
「冗談じゃないし、全然本気」
ローテーブルへ茶道具と皿を置きながら、無限の開けているケーキの箱の中を覗き込んできた。小黒が評判を聞きてきた新規開店のパティスリーのスペシャリティ、タルト・オ・フィグとピスターシュフランボワーズが収まっている。