浬-かいり-
DOODLEハロハピ。赤ちゃんになった(?)奥沢とハロハピがわちゃわちゃやるはなし。
Gimme a smile, Baby「あら?」
本日は、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピの練習日だった。CiRCLEのラウンジに一番乗りした弦巻こころは、部屋に入った瞬間にいつもと違う光景に気付いた。
ラウンジの隅っこに、黒いベビーカーが一台鎮座していた。ライブハウスではおおよそ見ない物に、こころは物珍しげに近付く。日除けのシェードが下ろしてあった為全容は見えないが、そこから小さな足が覗いているのは見えていた。
しゃがみ込んで、シェードの裏を覗き込む。そこには、こころが期待していた通りのものがあった。
「赤ちゃんだわ!」
ボリューム抑えめに歓声を上げる。
ぷっくりとした小さな手足、こぼれ落ちそうなほっぺた、控えめに聞こえてくる寝息。
3597本日は、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピの練習日だった。CiRCLEのラウンジに一番乗りした弦巻こころは、部屋に入った瞬間にいつもと違う光景に気付いた。
ラウンジの隅っこに、黒いベビーカーが一台鎮座していた。ライブハウスではおおよそ見ない物に、こころは物珍しげに近付く。日除けのシェードが下ろしてあった為全容は見えないが、そこから小さな足が覗いているのは見えていた。
しゃがみ込んで、シェードの裏を覗き込む。そこには、こころが期待していた通りのものがあった。
「赤ちゃんだわ!」
ボリューム抑えめに歓声を上げる。
ぷっくりとした小さな手足、こぼれ落ちそうなほっぺた、控えめに聞こえてくる寝息。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ年少組+戸山市ヶ谷サマーナイト・センセーション「……やっぱり、さ。無理だよ、あたしには」
7バンド合同の野外ライブ。特設ステージの裏、機材が並びスタッフが往来する灯りの少ないスペースで、ライブTシャツを着た奥沢美咲は蒼い顔をして首を振った。
今は夜。日中にぎらぎらと殺人的な光を放っていた太陽は引っ込んでいるとはいえ、熱帯夜の今日は蒸した空気が流れていて嫌な暑さだ。ステージの方からは熱気の冷めない観客達の声が聞こえてくる。
「諦めるのはまだ早いわ、美咲!」
「そうだよ、みーくん! そんなこと言わないでよ……!」
眉を下げる美咲を囲うようにして声を掛けているのは、同じバンドメンバーである弦巻こころと北沢はぐみだ。この二人も今日はステージ衣装とは違い、この日の為に作られたライブTシャツを着用している。
24287バンド合同の野外ライブ。特設ステージの裏、機材が並びスタッフが往来する灯りの少ないスペースで、ライブTシャツを着た奥沢美咲は蒼い顔をして首を振った。
今は夜。日中にぎらぎらと殺人的な光を放っていた太陽は引っ込んでいるとはいえ、熱帯夜の今日は蒸した空気が流れていて嫌な暑さだ。ステージの方からは熱気の冷めない観客達の声が聞こえてくる。
「諦めるのはまだ早いわ、美咲!」
「そうだよ、みーくん! そんなこと言わないでよ……!」
眉を下げる美咲を囲うようにして声を掛けているのは、同じバンドメンバーである弦巻こころと北沢はぐみだ。この二人も今日はステージ衣装とは違い、この日の為に作られたライブTシャツを着用している。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ+戸山&市ヶ谷※ピコふぃーばー21話ネタ
サンバ三分前 北沢はぐみは頭を抱えていた。いや、正しくははぐみの姿をした松原花音が頭を抱えていた。
遡ること僅か数十分前。一体何をどうつもりだったか分からない瞬間移動装置というものを弦巻家が開発し、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピのメンバーはそれのお披露目会に立ち会った。
そんな中、装置へ行っちゃうモンモンしてわちゃもちゃっとしてしまうハプニングがあって、そんな訳で今彼女達五人は身体が入れ替わっている状態になってしまったのである。
弦巻こころの姿になった奥沢美咲が、状況を不審に思った使用人を誤魔化すべく部屋から退室。「この部屋で大人しく待っているように」といった旨のハンドサインを他の四人に送るものの伝わっていなかったのか、はたまた好奇心が強過ぎて一瞬で忘れ去られてしまったのか。
2784遡ること僅か数十分前。一体何をどうつもりだったか分からない瞬間移動装置というものを弦巻家が開発し、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピのメンバーはそれのお披露目会に立ち会った。
そんな中、装置へ行っちゃうモンモンしてわちゃもちゃっとしてしまうハプニングがあって、そんな訳で今彼女達五人は身体が入れ替わっている状態になってしまったのである。
弦巻こころの姿になった奥沢美咲が、状況を不審に思った使用人を誤魔化すべく部屋から退室。「この部屋で大人しく待っているように」といった旨のハンドサインを他の四人に送るものの伝わっていなかったのか、はたまた好奇心が強過ぎて一瞬で忘れ去られてしまったのか。
浬-かいり-
DOODLEハロハピHello, Happy Halloween……?「そういえば、美咲って仮装してなかったわよね?」
始まりは、ハロハピ会議の中突然零された、弦巻こころのそんな一言だった。あまりにも突然過ぎた為、奥沢美咲含めハロハピのメンバー達はきょとんと首を傾げる。
因みに先程までは、好きなおでんの具について話をしていた。本来は次のライブについて話し合う為の会議であったが、話題が大幅に逸れることはハロハピ会議では日常茶飯事だ。そして、こころの突拍子のない一言も。
「……なんの話?」
「この間サーカスでやったハロウィンライブの話よ! 美咲だけ仮装していないじゃない!」
「そりゃ、アレは衣装だったし」
先日大成功を収めた、ハロハピがオープニングアクトを務めたサーカスでのライブ。ハロウィンだった為、その時の衣装は仮装も兼ねていた。仮装だけど衣装。だからミッシェルとして舞台に上がっていた美咲には、衣装が無いのは当然だったのだが。
1978始まりは、ハロハピ会議の中突然零された、弦巻こころのそんな一言だった。あまりにも突然過ぎた為、奥沢美咲含めハロハピのメンバー達はきょとんと首を傾げる。
因みに先程までは、好きなおでんの具について話をしていた。本来は次のライブについて話し合う為の会議であったが、話題が大幅に逸れることはハロハピ会議では日常茶飯事だ。そして、こころの突拍子のない一言も。
「……なんの話?」
「この間サーカスでやったハロウィンライブの話よ! 美咲だけ仮装していないじゃない!」
「そりゃ、アレは衣装だったし」
先日大成功を収めた、ハロハピがオープニングアクトを務めたサーカスでのライブ。ハロウィンだった為、その時の衣装は仮装も兼ねていた。仮装だけど衣装。だからミッシェルとして舞台に上がっていた美咲には、衣装が無いのは当然だったのだが。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ+ラスボスバンド過保護は程々にしましょう「あ、こころー」
「美咲!!」
放課後。2年B組の教室にやってきた奥沢美咲がバンドメンバーの名前を呼べば、弦巻こころは目を輝かせながら飛び付いた。
それをなんなく受け止めてから、美咲は苦笑いを浮かべる。
「美咲から迎えに来てくれるなんて嬉しいわ! 早速CiRCLEへ練習に行きましょう!」
「いやいや、違うってば。やっぱり忘れてたかー……」
溜息を吐けば、こころがきょとんと首を傾げた。その後ろで、山吹沙綾が手を振った。
「あれっ、美咲お疲れ! もしかして迎えに来てくれた?」
「いや、それもあるんだけど……。こころがきっと、忘れてるだろうなって思ったから一応伝えにきた」
「こころーーん! みーーくーーん! 練習行こ〜〜〜〜〜っっ!!」
2909「美咲!!」
放課後。2年B組の教室にやってきた奥沢美咲がバンドメンバーの名前を呼べば、弦巻こころは目を輝かせながら飛び付いた。
それをなんなく受け止めてから、美咲は苦笑いを浮かべる。
「美咲から迎えに来てくれるなんて嬉しいわ! 早速CiRCLEへ練習に行きましょう!」
「いやいや、違うってば。やっぱり忘れてたかー……」
溜息を吐けば、こころがきょとんと首を傾げた。その後ろで、山吹沙綾が手を振った。
「あれっ、美咲お疲れ! もしかして迎えに来てくれた?」
「いや、それもあるんだけど……。こころがきっと、忘れてるだろうなって思ったから一応伝えにきた」
「こころーーん! みーーくーーん! 練習行こ〜〜〜〜〜っっ!!」
浬-かいり-
DOODLEハロハピ特にそういうオチは求めてなかった まだ残暑が残る夏休みの夜。弦巻家にハロー、ハッピーワールド! の五人は集まっていた。
畳の部屋に敷かれた布団の上に正座する五人。真っ暗な部屋の中、彼女達が囲む一本の蝋燭の火だけが揺らめいていた。
「それじゃあ第一回! ハロハピ怪談大会を始めるわよ!」
おどろおどろしい雰囲気に似つかわしくない、弦巻こころの明るい号令が響く。正座して目を輝かせる北沢はぐみが拍手をして、膝を抱える松原花音が苦笑いをして、そわそわと落ち着きの無い瀬田薫が表情を硬くした。
奥沢美咲はこの状況に首を傾げた。ハロハピの普段の雰囲気とかけ離れ過ぎたこの部屋の様相に、戸惑うばかりだった。
「あの、こころ? ……なんで突然怪談?」
「この間モカがね、Afterglowのみんなで怪談大会をしたってお話ししてくれたの!」
2821畳の部屋に敷かれた布団の上に正座する五人。真っ暗な部屋の中、彼女達が囲む一本の蝋燭の火だけが揺らめいていた。
「それじゃあ第一回! ハロハピ怪談大会を始めるわよ!」
おどろおどろしい雰囲気に似つかわしくない、弦巻こころの明るい号令が響く。正座して目を輝かせる北沢はぐみが拍手をして、膝を抱える松原花音が苦笑いをして、そわそわと落ち着きの無い瀬田薫が表情を硬くした。
奥沢美咲はこの状況に首を傾げた。ハロハピの普段の雰囲気とかけ離れ過ぎたこの部屋の様相に、戸惑うばかりだった。
「あの、こころ? ……なんで突然怪談?」
「この間モカがね、Afterglowのみんなで怪談大会をしたってお話ししてくれたの!」
浬-かいり-
DOODLEはぐみと美咲夕立にスキップ 空を見上げて、北沢はぐみは一人溜息を吐いた。灰色の空からは、激しく雨が降り注いでいる。雨はベンチの屋根を叩きつけ、グラウンドをあっという間にぬかるみにしていく。
夏休みに入って最初のソフトボールの練習に、すっかり舞い上がっていたのがつい数十分前。来週末には、試合を控えていて気合も入っていた。
今日の分の練習はとっくに終わったのだが、なんだかもう少しだけ練習したい気分で。帰り支度を整えるチームメンバー達に手を振って、一人自主練習に打ち込んでいた。そしたらこの有様だ。
グラウンドに居残りしたことを、少しだけ後悔する。両手にはバットとグローブ。傘なんて持ち合わせていなかった。
「濡れて帰るしかないかなぁ……」
2379夏休みに入って最初のソフトボールの練習に、すっかり舞い上がっていたのがつい数十分前。来週末には、試合を控えていて気合も入っていた。
今日の分の練習はとっくに終わったのだが、なんだかもう少しだけ練習したい気分で。帰り支度を整えるチームメンバー達に手を振って、一人自主練習に打ち込んでいた。そしたらこの有様だ。
グラウンドに居残りしたことを、少しだけ後悔する。両手にはバットとグローブ。傘なんて持ち合わせていなかった。
「濡れて帰るしかないかなぁ……」
浬-かいり-
DOODLEハロハピ(※マフィアパロ)「銃声は一度きり」の後日談
拝啓、過保護なきみたちへ。「おかえり、みーくん! よかったよ〜〜〜!!」
不覚にも敵のアジトに捕らえられて尋問……というか拷問に近いソレに合うも、ボスであるこころに直々に救助されて。無事に五体満足で本拠地に帰ってきた。
涙目のはぐみに出迎えられて、きつくハグされる。正直身体の節々が痛いけれど、心配を掛けさせちゃったからな。大人しく受けておく。はぐみも無事みたいで良かった。
薫さんと花音さんも手を振って出迎えてくれるけど、いやあなた達も敵アジトに乗り込んでたこと知ってるんですからね。白々しくない? 有難いけどさ。
「そうね、美咲はまずお風呂に入ってくるといいわ! そのままだと寒いでしょう?」
今のあたしは、水を頭から被った為ずぶ濡れだ。帰る時に、寒いからと自分のジャケットを貸そうとしてくれるこころと一悶着もあった。惨敗したので今のあたしの肩にはこころのジャケットが掛けられている。濡らしちゃったけどこれ一体いくらするジャケットなんだろう。怖いので聞かずにそのまま黒服さんに託しておいた。
2515不覚にも敵のアジトに捕らえられて尋問……というか拷問に近いソレに合うも、ボスであるこころに直々に救助されて。無事に五体満足で本拠地に帰ってきた。
涙目のはぐみに出迎えられて、きつくハグされる。正直身体の節々が痛いけれど、心配を掛けさせちゃったからな。大人しく受けておく。はぐみも無事みたいで良かった。
薫さんと花音さんも手を振って出迎えてくれるけど、いやあなた達も敵アジトに乗り込んでたこと知ってるんですからね。白々しくない? 有難いけどさ。
「そうね、美咲はまずお風呂に入ってくるといいわ! そのままだと寒いでしょう?」
今のあたしは、水を頭から被った為ずぶ濡れだ。帰る時に、寒いからと自分のジャケットを貸そうとしてくれるこころと一悶着もあった。惨敗したので今のあたしの肩にはこころのジャケットが掛けられている。濡らしちゃったけどこれ一体いくらするジャケットなんだろう。怖いので聞かずにそのまま黒服さんに託しておいた。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ平穏にだなんて言わせない 元旦。神社での和太鼓演奏も終え、その日の午後はハロハピ全員揃っての初詣だった。初詣を終え、屋台の間を並んで歩く。綿飴の屋台に弦巻こころが吸い込まれ、北沢はぐみがたこ焼きを頬張り、瀬田薫がファンに囲まれ、松原花音が焦り、そのまま何故かこころとはぐみが振袖のままバク転を披露し、奥沢美咲に首根っこを掴まれ強制退場させられる。
今は少し落ち着いて、再び屋台を見て回っていた。
「あっ見て! 獅子舞さんが居るわ!」
こころが指差した先、人集りの中心に獅子舞を見つけた。笛や太鼓の音に合わせて踊る獅子舞に混じり、大人の笑い声や子供の泣き声が響いている。
人混みの間からちらりと見えた獅子舞と目が合ったような気がして、美咲が息を詰まらせた。
1839今は少し落ち着いて、再び屋台を見て回っていた。
「あっ見て! 獅子舞さんが居るわ!」
こころが指差した先、人集りの中心に獅子舞を見つけた。笛や太鼓の音に合わせて踊る獅子舞に混じり、大人の笑い声や子供の泣き声が響いている。
人混みの間からちらりと見えた獅子舞と目が合ったような気がして、美咲が息を詰まらせた。
浬-かいり-
DOODLEハロハピミッション・サンタクロース「みんな、準備はいいかしら?」
「おー!!」
12月25日、午前4時。真っ暗な早朝の中、弦巻こころが高らかな号令を掛ける。それに対して北沢はぐみが元気よく答えた。松原花音は戸惑うばかり、瀬田薫にいたっては目を閉じて半分夢の世界だ。因みに美咲は四人が眠っていた部屋で一人まだ夢の中である。
「えーと……、どういう状況かな?」
弦巻家の広い屋根の上に四人は立っていた。何故か屋根の上はライトで照らされ明るく、前日までの雪も積もっていないし凍結もしていないので安全。おまけに何故かヒーターがあり暖かい。薫が眠くなるのも頷ける。
何故クリスマス当日の早朝に屋根の上に。昨日クリスマスライブを終えて、打ち上げという名のお泊まり会を楽しんでいたのに。戸惑う花音に、こころは切り出した。
2991「おー!!」
12月25日、午前4時。真っ暗な早朝の中、弦巻こころが高らかな号令を掛ける。それに対して北沢はぐみが元気よく答えた。松原花音は戸惑うばかり、瀬田薫にいたっては目を閉じて半分夢の世界だ。因みに美咲は四人が眠っていた部屋で一人まだ夢の中である。
「えーと……、どういう状況かな?」
弦巻家の広い屋根の上に四人は立っていた。何故か屋根の上はライトで照らされ明るく、前日までの雪も積もっていないし凍結もしていないので安全。おまけに何故かヒーターがあり暖かい。薫が眠くなるのも頷ける。
何故クリスマス当日の早朝に屋根の上に。昨日クリスマスライブを終えて、打ち上げという名のお泊まり会を楽しんでいたのに。戸惑う花音に、こころは切り出した。
浬-かいり-
DOODLEハロハピばいばい、ナイトメア 今日のハロハピ恒例のお泊まり会は私の家で行われた。あんまり広くはない私の部屋にお布団を敷いて(四枚は敷き切れないので二枚だけ)、みんなでトランプやボードゲームをして遊んだり、次のライブの構想を練ったり、お喋りをしたり。明日もバンド練習があるし、あんまり遅くまで起きていられないねって、ちょっとだけ後ろ髪を引かれながらお布団に入ったのだった。
「ん……、」
むくり、と身体を起こす。まだ真っ暗で間接照明の光しか無い部屋の中、四人分の寝息が聞こえてきた。枕元のスマホをちらりと見れば、みんなでおやすみを言ってからまだ一時間も経っていなかった。今日はとっても楽しかったから、身体がまだ起きていたいって目が覚めちゃったのかな。水でも飲みに行こうと思って、ベッドから降りる。
2912「ん……、」
むくり、と身体を起こす。まだ真っ暗で間接照明の光しか無い部屋の中、四人分の寝息が聞こえてきた。枕元のスマホをちらりと見れば、みんなでおやすみを言ってからまだ一時間も経っていなかった。今日はとっても楽しかったから、身体がまだ起きていたいって目が覚めちゃったのかな。水でも飲みに行こうと思って、ベッドから降りる。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ君を撫で回したい 何これ。
弦巻邸の一室。姿見の鏡の前で、奥沢美咲は眉間にこれでもかと皺を寄せている。そんな彼女を囲むように、他のハロー、ハッピーワールド! メンバーが目を輝かせていた。
「とーーーっても可愛いわよ、美咲!」
「うんうん! みーくんすっごく似合ってるよ!」
「嬉しくなーーーーいっっ!!」
はしゃぐ弦巻こころと北沢はぐみを跳ね除けて、美咲が叫ぶ。その叫びとリンクするかのように、彼女の洋服の裾、正しくはショートパンツからはみ出た黒くて長いフサフサのシッポが、毛を逆立てさせピンと伸びた。更に黒髪から覗くのは、シッポや髪と同じく黒い毛並みの三角の耳だ。
「美咲は本当に子猫ちゃんになってしまったんだね……。儚い……」
2591弦巻邸の一室。姿見の鏡の前で、奥沢美咲は眉間にこれでもかと皺を寄せている。そんな彼女を囲むように、他のハロー、ハッピーワールド! メンバーが目を輝かせていた。
「とーーーっても可愛いわよ、美咲!」
「うんうん! みーくんすっごく似合ってるよ!」
「嬉しくなーーーーいっっ!!」
はしゃぐ弦巻こころと北沢はぐみを跳ね除けて、美咲が叫ぶ。その叫びとリンクするかのように、彼女の洋服の裾、正しくはショートパンツからはみ出た黒くて長いフサフサのシッポが、毛を逆立てさせピンと伸びた。更に黒髪から覗くのは、シッポや髪と同じく黒い毛並みの三角の耳だ。
「美咲は本当に子猫ちゃんになってしまったんだね……。儚い……」
浬-かいり-
DOODLEハロハピ笑顔で待ってる ベッドに腰掛けたままカッターの刃をゆっくりと出すと、ちきちきちき、という特徴的な音が耳に届いた。いつもはなんとも思わない音なのに、今日に限ってはいやに不快で、耳を刺すように響いてくる。頭が痛いのは、きっと音が不快だからってだけじゃない。
頭が痛い。ガンガンと低い音が鳴り響くように感じるのに、夕陽が射し込む部屋の中はあたし一人しか居なくて静まり返っている。それが余計に、あたしの中の思考をぐるぐると掻き回していた。
言われた言葉が、経験した出来事が、まるで今さっきの出来事だったかのように反芻しているような気さえして吐き気がする。気分が悪い。中学生にもなって、油断すると大声を上げて暴れて泣いてしまいそうだった。悲哀にも、焦燥にも、苛立ちにも、どれに部類するのか自分でもよく分からない、ぐちゃぐちゃとした感情がせめぎ合って胸の奥をのたうち回る。
1943頭が痛い。ガンガンと低い音が鳴り響くように感じるのに、夕陽が射し込む部屋の中はあたし一人しか居なくて静まり返っている。それが余計に、あたしの中の思考をぐるぐると掻き回していた。
言われた言葉が、経験した出来事が、まるで今さっきの出来事だったかのように反芻しているような気さえして吐き気がする。気分が悪い。中学生にもなって、油断すると大声を上げて暴れて泣いてしまいそうだった。悲哀にも、焦燥にも、苛立ちにも、どれに部類するのか自分でもよく分からない、ぐちゃぐちゃとした感情がせめぎ合って胸の奥をのたうち回る。
浬-かいり-
DOODLEハロハピハロハピ年少組がアリの行列を眺めてるだけ「あらっ、」
昼休み、花咲川の中庭で弦巻こころはそんな拍子抜けした声を挙げた。弁当の入った巾着袋を片手に駆けていた足を止めて、中庭の隅で蹲る。
日の当たらない木陰の中は心地よく風が吹いている。今日は日射しはそれ程強くなく、爽やかな陽気だ。連日の暑さにより冷房の効いた教室で食べていた生徒も、今日はちらほらと中庭に出てきているようだった。
そんな久々に賑わいを見せている中庭の隅。視線の先には、
「アリさんだわ!」
アリの行列があった。中庭の隅に巣でもあるのだろう。何処からか続いている黒い点の集まりは、何処かへと向かって進んでゆく。
こころの大きな金色の瞳がそれを映し込んでも、顔を地面に近付けて思い切り覗き込んでも、アリの行列がその列を乱れさせることはない。こころは真顔で、無言で行列を見つめ続ける。その小さな後ろ姿に気付いたのは、北沢はぐみだった。
2334昼休み、花咲川の中庭で弦巻こころはそんな拍子抜けした声を挙げた。弁当の入った巾着袋を片手に駆けていた足を止めて、中庭の隅で蹲る。
日の当たらない木陰の中は心地よく風が吹いている。今日は日射しはそれ程強くなく、爽やかな陽気だ。連日の暑さにより冷房の効いた教室で食べていた生徒も、今日はちらほらと中庭に出てきているようだった。
そんな久々に賑わいを見せている中庭の隅。視線の先には、
「アリさんだわ!」
アリの行列があった。中庭の隅に巣でもあるのだろう。何処からか続いている黒い点の集まりは、何処かへと向かって進んでゆく。
こころの大きな金色の瞳がそれを映し込んでも、顔を地面に近付けて思い切り覗き込んでも、アリの行列がその列を乱れさせることはない。こころは真顔で、無言で行列を見つめ続ける。その小さな後ろ姿に気付いたのは、北沢はぐみだった。
浬-かいり-
DOODLEハロハピお前らのとこのDJだろ、なんとかしろよ この日はガールズバンドパーティが主催する、大規模なライブの打ち上げだった。成人した今でも、こうしてみんなとバンド活動を続けていられるのは有難いし嬉しい。……表で言うことは、恥ずかしいからなかなか無いけど。
弦巻さんの敷地内に何故か建っている居酒屋で行われる打ち上げには、総勢30名超が集結していた。
「有咲〜! 次何飲む〜?」
隣に座る程よくほろ酔いの香澄に、ウーロン茶を頼んでおく。彼女は悪酔いすると非常に面倒なので見張っておきたいところだが、今回は中心になってみんなを引っ張ってくれたので、今日くらいは大目に見てあげたい。
それよりも、そう。もっと面倒見なくちゃいけない相手が私の隣に居るのだ。
「えへへへ、いちがゃさーーん!! これおかわり〜〜!!」
2902弦巻さんの敷地内に何故か建っている居酒屋で行われる打ち上げには、総勢30名超が集結していた。
「有咲〜! 次何飲む〜?」
隣に座る程よくほろ酔いの香澄に、ウーロン茶を頼んでおく。彼女は悪酔いすると非常に面倒なので見張っておきたいところだが、今回は中心になってみんなを引っ張ってくれたので、今日くらいは大目に見てあげたい。
それよりも、そう。もっと面倒見なくちゃいけない相手が私の隣に居るのだ。
「えへへへ、いちがゃさーーん!! これおかわり〜〜!!」
浬-かいり-
DOODLEハロハピ末っ子を可愛がって甘やかしたいの会「今日一日、美咲はあたし達の妹になればいいんだわ!」
「は?」
◆
今日はハロハピの練習日。昼食を食べてから練習の予定なので、お昼前にCiRCLEへ。車で送ってくれた親にお礼を言ってから、中へと入った。
「ごめん、お待たせ」
「美咲っ!」
到着したのはあたしが最後。こころが嬉しそうに振り返って、いつも通りあたしに飛びつこうとして……、足を止め立ち尽くす。他の三人も、あたしを見て驚いた顔をしていた。
「美咲、それ……?」
「あー……その……、」
みんなが呆然とするのも無理はない。あたしの身体は傷だらけだった。
顔には頰にガーゼが貼られ、口の端にも絆創膏。手首は捻挫。足は打撲。ともに包帯が巻かれている。
一番目立つのは、左手でついている松葉杖だろう。
3005「は?」
◆
今日はハロハピの練習日。昼食を食べてから練習の予定なので、お昼前にCiRCLEへ。車で送ってくれた親にお礼を言ってから、中へと入った。
「ごめん、お待たせ」
「美咲っ!」
到着したのはあたしが最後。こころが嬉しそうに振り返って、いつも通りあたしに飛びつこうとして……、足を止め立ち尽くす。他の三人も、あたしを見て驚いた顔をしていた。
「美咲、それ……?」
「あー……その……、」
みんなが呆然とするのも無理はない。あたしの身体は傷だらけだった。
顔には頰にガーゼが貼られ、口の端にも絆創膏。手首は捻挫。足は打撲。ともに包帯が巻かれている。
一番目立つのは、左手でついている松葉杖だろう。
浬-かいり-
DOODLEハロハピはっぴー☆しゃっふるっ!「えっとさぁ……、」
“瀬田薫”が困惑顔で溜息を吐くと、頭を乱暴に掻こうとして、……今は髪をまとめていることに気付いて、所在なさげにその手を下ろした。
その前では、楽しげに微笑んでいる“奥沢美咲”が薫を見上げていた。手を顎に当て、目を閉じる。
「この状況……、実に儚いね」
「あたしの顔でそれ言うのやめてもらえます?」
美咲の周りにキラリと輝く真っ赤な薔薇が現れ(※幻覚)、それをじっとりとした視線の薫がばっさりと切り捨てた。
◆
事の始まりは数十分前。
ライブハウスに先に到着した薫と美咲は、他の三人を待つ間先にスタジオの準備を進めていた。
その時コードに足を躓かせた美咲が転倒しかけ、それを庇った薫と共に床に倒れ込んだ。
2823“瀬田薫”が困惑顔で溜息を吐くと、頭を乱暴に掻こうとして、……今は髪をまとめていることに気付いて、所在なさげにその手を下ろした。
その前では、楽しげに微笑んでいる“奥沢美咲”が薫を見上げていた。手を顎に当て、目を閉じる。
「この状況……、実に儚いね」
「あたしの顔でそれ言うのやめてもらえます?」
美咲の周りにキラリと輝く真っ赤な薔薇が現れ(※幻覚)、それをじっとりとした視線の薫がばっさりと切り捨てた。
◆
事の始まりは数十分前。
ライブハウスに先に到着した薫と美咲は、他の三人を待つ間先にスタジオの準備を進めていた。
その時コードに足を躓かせた美咲が転倒しかけ、それを庇った薫と共に床に倒れ込んだ。
浬-かいり-
DOODLE昨夜のことは忘れて一生思い出さないで/美咲総受け昨夜のことは忘れて一生思い出さないで/美咲総受け「美咲!」
「美咲」
「みーくん!」
「美咲ちゃん」
「「お誕生日おめでとう〜〜〜〜!!」」
「ありがとう……」
鳴らされるクラッカーに、あたしは照れながらもお礼の言葉を口にした。
今日は、あたしの20歳の誕生日。あたし自身があんまり大勢で祝ってもらうのは気恥ずかしくて慣れてないっていうことで、こうしてハロハピのメンバーだけで祝ってもらっている訳なのだが。
「ねえ、こころ」
「何かしら?」
「ここどこ?」
「居酒屋よ!」
良質な畳が敷かれた座敷の個室に、大きなテーブルの上に並べられた料理。種類豊富なドリンクメニュー。至って普通の居酒屋だ。……客が、あたし達以外居ないことを除けば。
「あたしの誕生日に居酒屋に行った時、美咲がとーってもお腹の痛そうな顔をして、一人だけ飲めないのは寂しいって言っていたでしょう?」
2621「美咲」
「みーくん!」
「美咲ちゃん」
「「お誕生日おめでとう〜〜〜〜!!」」
「ありがとう……」
鳴らされるクラッカーに、あたしは照れながらもお礼の言葉を口にした。
今日は、あたしの20歳の誕生日。あたし自身があんまり大勢で祝ってもらうのは気恥ずかしくて慣れてないっていうことで、こうしてハロハピのメンバーだけで祝ってもらっている訳なのだが。
「ねえ、こころ」
「何かしら?」
「ここどこ?」
「居酒屋よ!」
良質な畳が敷かれた座敷の個室に、大きなテーブルの上に並べられた料理。種類豊富なドリンクメニュー。至って普通の居酒屋だ。……客が、あたし達以外居ないことを除けば。
「あたしの誕生日に居酒屋に行った時、美咲がとーってもお腹の痛そうな顔をして、一人だけ飲めないのは寂しいって言っていたでしょう?」
浬-かいり-
DOODLEハロハピハロハピ、成人四人と未成年みーくんの飲み会「美咲ー!あたしおかわり〜!」
「あー、はいはい。じゃあここから選んで」
つい先日、こころが20歳を迎えたことで弦巻家では大々的なパーティが行われた。高校の時の同級生は勿論、なんかテレビで観たことある偉い人なんかもいて、完全にドレスコードで行われたそれは、高校の卒業パーティとは規模が段違いだった。まあ成人だもんね、そうだよね。
だから主役のこころは祝われる身だけど忙しそうにしてて、とてもじゃないけど直接話す時間はあんまり無かった。ライブは披露したけどね。
と言うわけで、後日改めてこころの誕生日祝いを、ハロハピメンバーだけで行なっている次第ですよ。居酒屋で。
「このはいぼーる? っていうの? あたしこれが飲みたいわ!」
1598「あー、はいはい。じゃあここから選んで」
つい先日、こころが20歳を迎えたことで弦巻家では大々的なパーティが行われた。高校の時の同級生は勿論、なんかテレビで観たことある偉い人なんかもいて、完全にドレスコードで行われたそれは、高校の卒業パーティとは規模が段違いだった。まあ成人だもんね、そうだよね。
だから主役のこころは祝われる身だけど忙しそうにしてて、とてもじゃないけど直接話す時間はあんまり無かった。ライブは披露したけどね。
と言うわけで、後日改めてこころの誕生日祝いを、ハロハピメンバーだけで行なっている次第ですよ。居酒屋で。
「このはいぼーる? っていうの? あたしこれが飲みたいわ!」