ご機嫌夜も更けたリビング。テレビもつけず、ふたりはただ隣り合って、晩酌と称して長らくソファに腰を下ろしていた。
ご機嫌な様子の真島が、新たに缶を手に取ろうとするも、その指先に柏木の手がそっと重ねられる。
「......?」
「そろそろ顔が赤い」
「なんや、夜はこれからやろ」
気の抜けた声を返しながらも、柏木の指が自分の手を包んだままでいるのが、妙に嬉しくて仕方がなかった。振り払うこともできず、ただ視線を逸らしかけた。その時ーーー
「吾朗」
呼び名とともに、そっと顎に指が添えられる。
「...っ、まっ」
抗議の声を上げる間もなく、顎をぐいと引かれ、唇が深く重なった。
「……っ、ふ、ぁ……」
一瞬の強引さに、胸がきゅうと鳴る。
押し当てられた唇から、舌先がじわじわと侵入してきた。
舌の裏を撫でられた瞬間、びくんと小さく肩が跳ねる。
くちゅ、と水音が響いて、耳まで熱い。
「んっ……ぁ、ふ……っ」
ぞくぞくと、触れられているところだけが、やけに敏感で、くすぐったく。
怖くはない。
ただ気持ちよくて、頭の芯がぼうっとしてくる。
「……っ、は……ぁ」
ようやく唇が離れた瞬間、名残を惜しむような熱が舌先に残った。
息を整えながら、真島はとろんとした目で柏木を見上げる。
「な、に、えらい急やし......」
「急じゃない。ずっと、タイミングを伺ってたんだ」
「は?なんでや」
「あまりに楽しそうにしてたんでな、飲み終えるまでは抑えようと思ってた。」
だが、と前置きする柏木の眼差しには、鋭い獣のような光が差していた。
その視線に身が竦み、思わず距離を取ろうとするも、再び顎をすくわれる。
嫌な予感がする。
「ちょっ...かしわぎさ、」
「お前が可愛すぎるのが悪い」
「、やっぱあんた酔うとるやろ」
「同じほろ酔いだ。なあ、吾郎」
距離が縮まり、柏木の顔が近づく。
耳まで真っ赤になっているのは自覚しているが、酔っているからという言い訳も無駄なようだ。視線も定められず、ぐるぐると目が彷徨う。
「次したら止まれそうにないんだが、いいか?」
「...っ〜、もう好きにせえ!!」