Candy Love Bind工房からは少し離れたK社の巣へと続く検査場の前、いつもよりさらに増してオレンジ色に照らし出されたこの区で最も大きく治安のマシな裏路地。
<わ……やっぱりまだ夜はちょっと涼しいね>
路地を満たす灯りは暖かくとも、吹いた夜風はまだ幾分冷たいものだ。深い意味もなく出た言葉に隣の男が上着を脱ごうとする気配を感じ、ダンテは慌ててそれを制止した。
<そこまでじゃないよ! ありがとう、ムルソー>
インナーにもある程度は丈夫な加工が施されているけれども、やはり重ね着の方が安全だ。この工房の武器は大抵がエンジンを回し火花を散らすものだから、自らの得物からも敵の攻撃からも身を守るものは多い方が良い。
予定された勤務区域まではもうすぐだ。喧騒に近づけば道の両端にたち並ぶ屋台に、浴衣姿で走り回る子供の姿。今見えているのは上澄みといえどこんなところは巣も裏路地もそう変わらないのだな、とダンテの見えない口角が上がる。
2933