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    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

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    すずもち

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    かつてのレキドナとグスタークがあった土地に建てられた慰霊婢に祈りを捧げに行くアルティナとそれに付いていくヴァルバトーゼ
    ヴァルアル風味
    アルティナは自分が死んだ後の両国のことや患者にずっと寄り添ってるよねっていう妄想

    #ディスガイア4
    disgaea4

    平和の鐘が鳴る雪の積もる石畳の道を歩く。季節は冬に入る頃で街中は雪に埋め尽くされ、重たい雲に閉ざされた空からは延々と雪が降っていた。
    しかしここの住民はそんな気候に慣れているのか歩きづらい道も難なく通っている。人間とは何にでも慣れる生き物と聞いたが事実そうらしい。悪魔のように強靭な四肢も魔力も持たないがどんなことであってもその知能や経験、そして絆の力で乗り越えてしまう。そのくせ脆弱であるという何とも不思議な生き物だとヴァルバトーゼが考えていると隣を歩いていたアルティナが目の前を指差した。
    「吸血鬼さんこっちです、あの突き当たりの教会が目的地です」
    「思ったより町から外れているところにあるのだな」
    「ええ……診療所は国境沿いにありましたから、できるだけ近くに埋葬するとなるとこういうところにならざるを得なかったみたいです」
    段々と近づく教会を上から下までざっと眺める。大人数の墓の代わりも担っているだけあって中々大きな教会だった。人間はこういうものに敬いを感じるのかと敬いの反対側に位置する悪魔はそんな感想を抱く。
    誰でも入って構わないようで、すでに両開きの重厚な扉は開かれ切っていた。そしてその中を覗くと両脇には祈りを捧げる信者のための長椅子が整然と並べられ、その奥には神父が説教を行う台とその更に後ろには大きな石碑が建っていた。その石碑に対してじっと目を凝らすとその石碑には細かく人名が彫られてあるのが見える。
    戦没者慰霊婢、というのだったか。
    「では吸血鬼さん入りましょうか」
    当然のように二人で入ろうとする天使に悪魔は首を横に振った。
    「……いや俺はここで待とう、悪魔だしな。それに俺が行っては怖がらせてしまうのだろう?」
    意味ありげに言うとアルティナは一瞬目を丸くして、申し訳なさそうな表情になった。
    「あ、あのとき私が言ったことを覚えてるんですね。いえあれはそういうつもりで言ったのではなく」
    「くく、冗談だ。そう真面目に捉えるな。それに人間どもから恐れられているのが悪魔として正しいのだからあれは当然の言葉だぞ。……そうではなく俺よりもアルティナ、お前こそが待ち望まれているのだからお前一人で十分だろう」
    だからお前の気が済むまでここで待とうと出入り口の壁に背を預けるとアルティナはぱちくりとまばたきをしたあと口許を緩めて笑みを浮かべる。
    「……たまに貴方が暴君と呼ばれているのが不思議な気がしますわ。そう、じゃあちょっとここで待っていて下さいね吸血鬼さん」
    アルティナが教会に入っていくのを出入り口からヴァルバトーゼは見送った。教会の中は誰もいないようでアルティナの靴音が遠く響く。
    今日はヴァルバトーゼもアルティナも恐れや敬いを与えるために訪れた訳ではないのでお互い目立たぬように人間界の服を着ている。
    だから今日のアルティナは天使のそれではなく人間に姿が似ている。だが教会の中を一人歩く彼女は人は決してなれないとても清らかな存在のようにヴァルバトーゼの目には映った。
    アルティナは一番奥の石碑の前にたどり着くとそこで膝を折って祈りを捧げ始めた。何のどのような祈りかは悪魔のヴァルバトーゼには見当がつかなかったがこの祈りは何よりも誰よりも厳かで純粋で切なるものだということが直感的に何故か分かった。
    「……変わっていると俺に言うがな、お前も大概ではないか?アルティナ。400年もかつての患者や関わった者にこうして毎年祈りを捧げる天使を俺はお前の他に知らんぞ」
    どれだけ崇高な意思を持った人間でも清らかな魂を持つ人間でも天使という人の枠から外れた存在となり加えて何百年という途方もない時間を生きればどうあっても人間とはかけ離れた存在へと変容してしまう。
    その意思も魂も人間を導く天使という言わば高みの存在としてふさわしい心を持つようになってしまう。だから人としての記憶や感情そのままに天使として長くやっていくのは難しい。
    でもアルティナは違うらしいなと熱心に祈り続けるその姿を見てヴァルバトーゼはふっと微笑んだ。

    「すっかりお待たせしました」
    しばらくの後、済んだようでようやくアルティナが戻ってきた。
    「構わん。それに待っている間、面白いものを見た」
    「何ですの?」
    「悪魔の俺にすら敬いという感情を抱かせてくる人間だな、いや天使か」
    先ほどの姿を思い浮かべなから言うが、天使にはよく伝わらなかったらしく首をかしげる。
    「?まぁ良いですわ、ところで吸血鬼さんこの後ランチでもどうですか?この近くに私が人間だった頃食べていた郷土料理を振る舞うレストランがありますの。是非吸血鬼さんにも食べて欲しいですわ」
    「ほう、それは良いな。ちなみにイワシは、」
    すかさず好物の有無を確認するが予想していた言葉だったらしくアルティナに途中で遮られる。
    「残念ですけどイワシはありません。けれど雪で甘味を増した野菜とここでしか育っていないお肉を使った美味しいスープや肉料理がありますよ」
    「む、そうか……だがお前がそう誉める料理ならば気になるな。食べて帰るとしよう」
    ノーイワシノーライフな吸血鬼にとってイワシが無いのは残念だったがアルティナが好物と言うものには素直に興味が引かれる。そんなヴァルバトーゼにアルティナはまさしく天使のような笑みで笑った。
    「ふふっ、本当にイワシが好きなんだから……。では行きましょう」
    そう言って歩き出すと後ろの教会から鐘が高らかに鳴り響いた。思わず二人同時に振り返ると灰色の雲が割れて教会が光の柱のように日に照らされていた。悪魔らしからぬがまるで彼女のあの祈りが形を持った眩さだとヴァルバトーゼは思った。
    「……あら」
    「祝福というやつか?」
    「分からないですけど、でもきっとあそこで眠る彼らにとっての安らぎになる。そんな気がします」
    「そうか、お前がそう言うならそうなのだろうな」
    また来ましょうねと言うアルティナに優しい声音でヴァルバトーゼはそうだなと返した。
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    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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