本物の馬鹿「こ………の、馬鹿野郎!!」
ガッッッと、鈍い音がした。
振り抜いた手が骨まで痺れる。
平手では無く、拳で殴ってしまったと頭の片隅を掠めるが、すぐに熱い感情に呑まれ考えられ無くなる。
伊作は殴られた格好のまま、視線を下に落としている。
反撃はおろか、反論すらしないのは、自分が悪いと分かっているからだ。
それでも、硬い表情が揺るぎもしないのは、何度怒鳴られようが殴られようが、改める気は無いと言う無言の意思表示だ。
頬が痛々しく腫れていくが、触れる素振りすら見せない。
他の誰かなら………例えば殴られたのが仙蔵だったなら、即座に甲斐甲斐しく手当てをするクセに。
それがまた、仙蔵の荒ぶる感情に拍車をかけた。
「この…………っ」
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