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    kohiruno

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    kohiruno

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    第五回 #LH1dr1wr の参加。テーマは「結婚」。
    二人になんらかの儀式をしてほしい欲が出ました。

    婚儀の朝 石の寝台に敷いた布が湿っている。ヒュンケルよりも先に目覚めたラーハルトは、起き上がり、白い器の水を飲み干した。老いた神官に案内された古い神殿。その部屋は、床より数段高く作られており、東側の壁には明り取りの大きな窓があった。二人は小さな灯火のもと、どちらが言うでもなく、互いの熱を確かめ合いながら夜を過ごした。
     あとは、部屋に点した燭台の焼け焦げた芯を、日が昇る前に二人で湖の祠に備えればよい。婚礼の儀そのものは思っていた以上に簡単だった。半日前、日が暮れかける頃に、湖畔に出向き儀式は始まった。伴侶となることを示す言葉を竜の神に告げる。二人で摘んだ香草を燃やし、供物の酒を湖に注ぎ、残りを一口ずつ飲んだ。
     試練も、伝説のアイテムも、証もない。誰の許可も祝福も求めない。神官の立ち会いのもと、ただ二人が自分の意思で告げるだけ。今、隣に立つのものを我が生涯の伴侶とする、と。
     パプニカの女王と勇者の婚儀は慎ましくも厳粛に行われた。神々への宣誓と酒宴。王家の婚礼衣装が宝物庫から見つかったことは、民に希望を与えた。
    「結婚とは大掛かりなものだな」
    「なに、市井の民はただ教会なりで誓いを立てれば終わりだ」
     あの頃はまだ友だった。宴が終わり、帰路につくヒュンケルを見送る際の何気ない会話。いざ、彼と伴侶となるときに、幼い頃にバランと隠れ住んだテランを思い出した。養父と重なる神に身の成り行きを伝えたい。彼の提案にヒュンケルは笑顔で頷いた。
     空が暗い青から白くなり、やがてひとときだけ黄金に光る。昨日、たった数分の儀式を経ただけ、夜を過ごした場所が違うだけなのに。部屋に注ぐ朝の光が、やけに眩しく感じる。
    「ほら、起きろ。ヒュンケル。もうひと仕事だ」
     この男は、敵から友に、友から恋人に、そして今、生涯の伴侶になった。己の、分かち難い半身だ。
     ラーハルトは、まだ汗の匂いがするヒュンケルの髪を遠慮なくかき撫で、柔らかい頬を指でついた。
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