壺の中身「ただいま」
いつもにも増して呆けた声で蘭丸が言った。胸には大きな風呂敷包みを抱えている。
「寶、どんだけ歳上に手ぇ出したんだよ」
「樹果くん、きみ盛大に勘違いしてるようやけど、これ骨壷とちゃうで」
BAR Fの席で本を読んでいたうるうが、本から視線を外した。
「全く火焔属は面倒を引き起こして……それはともかく、中身は何だ」
「おれが知るかよ」
カウンターで水を飲んでいた焔がむせながら答える。
蘭丸はボックス席に風呂敷包みを置き、ためいきをついた。
「なんか、お年をめした方から「このお店にいつもいる男の子に渡しておいて」て言われて……」
「男の子っていわれたって、五人もいるじゃん。誰だかわからないよ」
樹果が呟く。
「ワイ、ヤングのグループに入ってええのん?」
「この中で女性トラブルを起こしそうなのは。寶か歩照瀬かだな」
寶の発言を無視して、うるうが言った。
「まあまあ、犯人探しは趣味が悪いで。とりあえず中身を見て判断しようやないの」
風呂敷をほどくと、木の箱が現れ、それを開けると壺が現れた。
「なんや知らんけど、高そうな壺やな」
封を開け、中身を確認すると、壺の中には赤っぽいものが詰まっていた。
「あーーッ!!」
いきなりの樹果の大声に、蘭丸以外の四人は耳を押さえる。
「ごめん俺だ。クラスの子に毎日カレー食ってるっていったら可哀想がられて、ママの作ったジャムを持っていってあげるって言われてたの忘れてた」
「いや、でもこんな和風のものに入れられてもわかんないだろ」
焔が助け舟を出す。
「寶に見つかったら、どうせカレーの隠し味に使われるから、うまいこと偽装しといてって言ったのも俺で…」
「え〜ぇアイデアやな、それ」
樹果は口を抑えたが、それで発言が取り消せるわけもなかった。