ためしがき そろそろデジタルに移行も考えてるけど、通い慣れた画材屋の雰囲気だって、やっぱり嫌いになれない。
打ち合わせの為に久しぶりに新しい服を着て外に出た。ちょっと早めに出て買い物もしたいな、て思ったけど、結局ここにいる。
ペンの書き味は違うとはいえ、試し書きの紙に落書きしているようだったら、家にいるのと変わらない暇つぶしだ。
オレンジのペンを選んで、つい手癖で焔くんを描いてしまう。わたしと一緒にここまでやってきた、大事なキャラクター。自分の描いた落書きを見直していると、ちょっと離れて、見慣れない漫画のキャラが描いてあるのに気づいた。
クールそうな外見の、短めの髪の男の子が、水色のペンで描かれていた。この線、絶対わたしじゃ描けない。少しの嫉妬と、大きな憧れと。
ペン先が軋む音がする。
顔をあげて周りを見ると、真剣な眼差しでペンを走らせているセーラー服を着た子がいた。この子だ。顔立ちがどことなく、描く絵に似ている。
「えっと、この絵、描いたの、あなたですか?」
図々しいかもしれないけれど、素敵な絵を見ると、もういてもたってもいられなくなって話しかけてしまう。そのせいで大火傷したことだって、二度や三度じゃきかない。でもやめられない。絵を描くこと、お話をつくることが、わたしをこの世に繋ぎ止めていてくれたから。