named 名前など何の意味があろうと思っていた。人間界のかりそめの名など、所詮は意味のないものと、そう思いたかった。
ベテルギウスは自分の名さえ忘れてしまった。己に刃を向けたのは、プロキオンの名に逆らえなかったからということくらいわかっている。だから己に協力してくれさえすれば、別に恨みもしないというのに。
人間に扮したベテルギウスは、正体を気取られない為か、実に地味な学生に見える。量産型、とでもいうのだろうか。動作に機敏さはなく、いつも無難な笑いを浮かべている。どうして思い出せないのか。あいつをベテルギウスと呼べるのは、もう己と、あの女だけで、あの女の配下にベテルギウスがいるということは、己は本当に一人きりの存在で、何もかもをあの女に奪われてしまったということなのか。
あの名前は誰が考え、誰がつけたのか、ベテルギウス。己はその名前でおまえを呼ぶ気などない。ベテルギウス自身がそう名乗ろうと、己は阿以蘭丸とかつての相棒を呼ぶ気はない。