自由時間 制服姿の三人を出迎えた寶は失望を表に出さぬよう、表情を取り繕う。また、蘭丸を見失ってしまったらしい。
「みんな、おかえり」
「ごめん寶、また蘭丸がいなくなっちゃっってる」
鞄を置きながら樹果が報告した。店内には客の姿はない。
「あれほど規律が乱れると言い聞かせていたのに」
うるうが大きな溜息をつく。
「毎日毎日同じような説教ばかり聞いてたら、嫌にもなるだろうよ」
焔が誰にともなく呟く。
「当たり前の規則が守れない無法者に限って、いらない無駄口を叩くのが得意なものだな」
「まあまあ、蘭丸くん、ひょっとして気になる子でもできたのかもしれへんで」
「なるほど」
樹果の目が輝きはじめた。他人の色恋沙汰が気になる年頃なのだろう。
「今頃、デートの真っ最中やったり」
蘭丸くんの気になる子。星の名前をもつ過去の相棒。もし「デート」が本当のことなら、おれの仕事は速攻引き上げだな。そう寶は思う。
「どちらにせよ、規律破りなら罰を受けるべきだが…」
うるうはそこで言葉をいったん切って、思い直したように後を続けた。
「あのボーッとした阿以のことだ、おおかた道にでも迷ったのだろう」
「そうだよねー、あいつクラスでも女子とそんなに喋ってないし。デートとかありえないし」
「一人でボーっとしたいだけかもしんねえじゃねえか」
珍しく、焔が会話に割って入る。
せやせや。デートの邪魔をするのは野暮やし、こっちも商売あがったりや。そう言おうとしたが寶は黙って笑顔だけ浮かべている。できるだけ金を細く、長く引っ張れたらそれでいい。こいつらの顔を見飽きるくらいまで長く仕事できれば、それに越したことはない。