こたつ「これが……か」
家電量販店のけたたましい店内BGMをよそに、長髪の生徒会長が四角く低いテーブルを睨みつけていた。
「一回入ると出れなくなるらしいよ」
携帯片手に樹果が解説を加える。
「それほど危険そうには見えないが、布団があるとないとでは何か違うのだろうか…擬態型なのか?」
「知らねぇよ。入ってみりゃいいんじゃねえのか?」
荒っぽい焔の提案に、うるうは軽く眉をしかめてみせた。
「相変わらず慎重さの足りない男だな」
すうすうと寝息が聞こえる。蘭丸が歩きながら眠っていた。
「まーた寝てるよ」
蘭丸の肩に乗っていたバックンを抱き上げ、なんとかぬいぐるみに似せられないだろうかと、鞄に挟んだり、制服に入れたり、樹果は無駄な工作を試みる。
「バックン、こたつの形覚えたん?」
離れて様子を観察していた寶が声をかける。
思い当たることがあったようで、樹果はげんなりした表情になる。
「まさか、まさかだけどさあ、寶が俺たちだけでなくバックンをつれてきた理由って、こたつのサイズ見るんじゃなくて、バックンにこたつに化けてもらおうってこと?」
「ようわかったな」
バックンが赤い顔をしていきみはじめる。変身しようとしているのだ。
「ここじゃまずいだろ」
「帰ろう」
「せやな」
そんなバックンの背をなぜながら、蘭丸は「え? なんで?」と寝ぼけた返事を返していた。