ひだまりこもれび「陸岡は、女慣れしてるからな」
ってクラスメイトに言われたけど、それは大きな誤解だと思う。だいたい俺が訊かれることといったら、
「清怜生徒会長って、付き合ってる人いるのかな」
とか、
「歩照瀬くんのタイプって、どんなのか知ってる?」
とか、そんなのばっかりだ。俺自体に興味があるわけじゃない。まあ、好意を持たれても困るし、別に人間の好意を引いて愛著を集めてるわけじゃないから、気にしてないけど。
だいたい、女だどうだって気にしてたらBAR Fのランチタイムの手伝いだってできやしない。俺は、水をお客さんに出すだけで赤面してる焔とは違うんだ。
そうクラスメイトに言うと、
「バーのバイト…陸岡、意外にオトナじゃん」
と返された。悪い気はしなかった。BAR Fの古ぼけた、木でできた内装。死んだ木でできてるってわかってるけど、あそこにいると、昔の、まだみんないた頃の故郷を思い出す。誰かの膝枕で眠りに落ちる前の、あのきらきらした木漏れ日を。二階でバックンたちと一緒に眠って、目覚める前に考えてしまう。もうあの頃のみんなはいないのに、俺だけ、あの幸せな時間の中にいてもいいのかなって。