花式 カイロ @arisaki_hspr 自創作本編とは1μも関係のない怪文書と、自創作の小説を投げつけるだけの場所です。あとちょっとセンシティブな絵も載せようと思う。 ☆quiet follow Yell with Emoji POIPOI 38
花式 カイロDONE登場キャラクター・ヴァイス・ノワール二十一話 面白いもの ぐっと伸びをしながら廊下を進む。途中ですれ違った寮の住人達と軽く挨拶を交わしつつ、ヴァイスは食堂へと向かっていた。夕飯を摂るためだ。 実はディアンとの作業中、実にシンプルな流れで夕飯の話題を振りかけたのだが、他にやることがあるらしく呆気なく断られてしまったのだ。その一件で変な形に吹っ切れたヴァイスは、ごく稀にあるレベルの珍行動を取ろうとしていた。そう、おひとり様ディナーだ。 他に人がいる可能性が高い食堂で夕飯を食べるのだから、厳密にはおひとり様ディナーではないだろう。が、隣やあい向かいで駄弁りながら皿を囲む者がいないのだ。それはもうお一人様と言っても相違ない。 ヴァイスは雑破な思考回路をつなげることが多かったから、そういう結論に至ることも少なくはないことだ。 4673 花式 カイロDONE登場キャラクター・ヴァイス・ディアン二十話 白状 カチコチと、時計の秒針が規則的なリズムを堅苦しそうに刻んでいる。聞き飽きたそれに鬱屈としながら、ヴァイスは目の前にある机にだらりと身を寄せた。 「なんで入り浸ってるんだ、お前は」 向かいに座る人物から言葉が飛んでくる。ヴァイスは鉛を持ち上げるように顔を上げて、その人物を見た。 「ディアン……」 「声低っ」 獣が唸るように声を漏らして、眼前の人の名前を呼ぶ。テンションが低いながらも、どこか憂慮するような声色に気が抜ける。伴うようにして更に体をだらけさせれば「邪魔すんな」と叱咤された。 今日はディアンが報告書作成を担当する日。自室にこもってカタカタとパソコンで作業を続けるディアンの元へ、ヴァイスはほぼちょっかいをかける形で押しかけたのだ。アポイントもなしにこういうことをしても、ディアンは怒りも何もしない。相変わらず甘い彼ではあるが、昔からそれが当たり前だったヴァイスは、そんな認識もなく作業を続けるディアンのことを眺めていた。 4453 花式 カイロDONE登場キャラクター・ヴァイス・グレース・ノワール・ディアン・スティル十九話 なんでもない ヴァイスは、あれからどうやってグレースの言葉に返事をしたのか覚えていない。抱いた不信感と違和感が強すぎたせいなのか、とどこか他人事に考えたが、理由を追求したところで思い出せはしなかった。 そしていつの間にやら会話は終えられ、ヴァイスは研究所を発つことになった。 「グレース様、今日はありがとうございました」 「あぁ。何かあったらいつでも来ていいからな。なんなら、検査じゃなくてただ遊びにくるのでも大歓迎だぞ? 立場上表に出ることが少ないと、お前たちに会う機会も中々訪れない。やはりそれは寂しいから」 「わ、分かりました! 分かりました、また来ますので!」 帰り際にもグレースのマシンガントーク癖が発動しかけたため、慌てたヴァイスは語気を強めてそう言った。グレースもぽかんとした後にまたもや頭を抱えたが、「待ってるぞ」と羞恥の渦中でぽそりと伝えてくれる。反省をしながらもそう返してくるのだから、歓迎している旨は本意なのだろう。ヴァイスは勝手に解釈しつつ、「はい!」と元気に答える。それに釣られたのか、グレースもにこやかに笑ってくれた。 5885 花式 カイロDONE【登場キャラクター】・ヴァイス・グレース十八話 白い蝶 検査を受けている間、ヴァイスは意識を失って、眠りの最中にいるような柔らかさに包まれる。そうして目を覚ませば、知らぬ間に検査が終わっていて、結果や所感を伝えられるのだ。 けれど今日は違った。例えるなら、夢の中で起床をすると言ったような、そんな心地を味わっていた。 体を動かそうと試みて、けれど上手くいかないことに気付く。眉を寄せて訝しみ、そうして声をあげようとしたところでまた一つの気付きを得る。声も出せない。音を紡ごうとして喉を震わせても、ヒュッと情けない空気が漏れるだけ。それも感覚だけで、実際にそのような音が聞こえる訳ではなかった。 あたりは薄闇に包まれており、そしてヴァイスは急激に不安へと誘われる。瞼にすら上手く力が入らない中、神経を集中させてどうにか目を閉じようとした。この不安から逃れるために。目を閉じたところで待つのは同じ暗闇だ。それでも何もできないよりはできた方がマシだと懸命に力を込めていれば、唐突に一筋の白が視界を掠める。急なことで驚きはしたが、目の痛みなどは一切なく、不思議な感覚を抱きながら眼球だけを動かしてその正体を追った。 5078 花式 カイロDONE【登場キャラクター】・ヴァイス・グレース十七話 親 コツコツと鳴る一人分の足音は、室内に反響して与えた以上の大きさを返してくる。一人の寂しさを味わいながら、目的の人物を探した。室内にいくつかあるドアを順に見ていって、とりあえず一番最後に目についたところに向かおうとする。そしたら、そのタイミングでヴァイスが入ろうとしていた扉とは別の扉が開く。驚いて、ばっと振り向きそちらを見やった。 「あぁ、ヴァイスか! 来ていたんだな、いらっしゃい!」 ヒールの音を高鳴らしてそう出迎えたのは、月白の長髪を高く結った一人の女性。力強い笑みを見て、ヴァイスはほんの少しだけ目を見開いた。 「——グレース様」 つぶやいたように呼んだ名は、緊張感を纏っていた。 人工亜人を造り出すことができる研究者は、両手どころか片手の指でもすっぽりと収まってしまうほどに数少ない。世代交代の面もあるが、そもそもの“方法”を知る者が限られているからなのだ。 5174 花式 カイロDONE【登場キャラクター】・ヴァイス・ノワール十六話 いざ、検査へ 翌日、ヴァイスはいつも通り朝食を済ませていつも通り労働に勤しもうとしていた。寝癖なし、武器の手入れも百点満点。よし、と意気込み部屋を出る。 そんな時、ノワールに捕まった。扉を閉めようとした瞬間、ドアノブをがっと押さえつけられて追い詰められたのだ。ヴァイスは焦り、何か彼の不況を買うようなことをしてしまったのだろうかと考える。けれど普段から自分に甘い彼に対して、何かをやらかした覚えはない。 いつにも増して深みを増したノワールの瞳を見ながら、ヴァイスは恐る恐る彼の名を呼んだ。ノワールの薄い口が開かれる。 「昨日は随分と無茶をしたみたいじゃないか」 口調はいつもの柔和なそれだったが、どこか責め立てるような感情が声に滲み出ていた。 5570 花式 カイロDONE【出演メンバー】・ヴァイス・ノワール・ディアン・スティル・ニーファ十五話 ことの終わり デジャヴのような光景は過ぎ、安心し切って泣き出してしまったニーファをヴァイスとスティルの二人がかりで宥める。横目で捉えたノワールの顔は、様々な要因からくる安堵で固められた微笑を湛えていた。 「本当にっ、ヴァイスさん、だけでなく……皆さんも、無事で……良かった……」 涙は止まったものの、ニーファはいまだに後悔を残したような声色でヴァイス達を案じている。今まで身内以外にこんな風に激しく心配されたことはなかったため、ヴァイスはどうしたら良いのか分からずに狼狽えてしまった。「再生の体質で絶対に死なないから大丈夫です」とでも言えれば良いのだが、同じ組織の親密度が高い相手というわけでもなく、彼女はただの一般亜人だ。易々と言えることではない。 4717 花式 カイロDONEモノ君十四話更新です!かなり重要な情報が出てくる回出演メンバー・ヴァイス・ディアン・スティル・ノワール・ニーファ十四話 こういう体 忙しく流れていた時は嘘のように静まり返って、この場にしっかりと己の足で立っているのは大型異形のみとなった。爪に多量についたヴァイスの血を気にすることもなく、異形はあたりを見渡している。もう息をしていない仲間を数秒見つめて、そうしてこの場から立ち去ろうとした。 その時、先程まで地面に伏せって死体と成り果てていたヴァイスが体を起こした。体の裂け目から血を滴らせながら、ゆっくりと立ち上がる。ヴァイスは異形と同じように、自分の足でその地に立っていた。 異形は目を見開き、信じられない出来事にでも遭遇したかのような顔をする。それを見て、ヴァイスは思わずあははと笑った。 「仲間意識が強い、だけじゃなく……表情も、豊かなんだね。っ、ごめんね……僕、こういう体・・・・・なんだ」 6840 花式 カイロDOODLE怪文書「いつつめ」です。またまた年上組です。ギリギリ18禁に抵触しない程度にセンシティブにパラメータ振ろうとしたら、予想以上に酷くなりました。なので閲覧は自己責任でお願いします。閲覧してからの文句は受け付けませんからね!よろしくお願いしますよ!!そして飽きもせず首を〆ている。推敲してて思ったこと→事後(ではない)のピロートークシーン(でもない)、要らなくね? 8897 花式 カイロDONEモノ君十三話!です!!出演メンバー・ヴァイス・ノワール・ニーファ十三話 真紅の花 三人分の足音がバラバラなリズムで鳴っている。ヴァイスは自分の隣を行く、怯えたような早歩きの主に声をかけた。 「僕はヴァイス、あっちはノワールです。……多分、気遣ってくれたのに、こんなことになっちゃってごめんなさい」 恐らく同世代である初対面のニーファにどう接して良いか分からず、ヴァイスは辿々しげに言葉を選んだ。ニーファは少し遅れてそれに反応し、瞬きを一つする。 「い、いえっ! 実はちょっぴり怖かったので、助かりました」 屈託なく笑うニーファの表情は、どこかの誰かさんが浮かべるテンプレ微笑とはまるで違う。久しぶりに目にする純粋な笑みを眩しげな思いで見ながら、いえ、と答えた。 「それより、その……私のせいでギクシャク? させてしまって、ごめんなさい」 6085 花式 カイロDONEモノ君十二話です!お久しぶりのネームドキャラ登場!出演メンバー・NoDiWS一行・ニーファ十二話 胡桃色の少女 深緑の木々がざわめく中をヴァイス達四人は駆け抜けていた。異形の魔力を追跡可能なノワールが先頭を行き、ノワールと同じく魔力感知を得意とするスティルが補助役として斜め後ろを進む。そして二人の後ろでヴァイスとディアンが並走する。特に何かを話し合ったわけではなく、自然とこの陣形となっていた。 「さっきのが嘘みたいだね、あれ」 「本当にな。苦労した甲斐があったのかなかったのか、分かんねえわ」 先導する二人を追いつつ、ヴァイスがそう切り出す。横で走っていたディアンは、呆れ笑いを浮かべながらもそう返した。ヴァイスは彼の返答を飲み込んで、確かに、と独り言みたく小さく溢す。 スティルがマッチポンプだと叫んだシーンのその後は、それはもう大変なものだった。奇人ぶりを言動に滲み出させるノワールと、それに苛立ち堪忍袋の緒が切れる寸前だったスティル。それを必死で宥め説き伏せたのがヴァイスとディアンだった。全く悪びれない——というより己の言動が悪いとも思っていなさそうな——ノワールをディアンが黙らせ、ヴァイスの拙い弁論でなんとか仲裁したのだ。 4477 花式 カイロDONEはい、モノ君の十一話です出演メンバー・NoDiWS一行十一話 マッチポンプ! ノワールがマントに覆い隠されていない方の腕を振り上げる。彼の手の周囲には小さい稲妻が発生し、パチパチと控えめながらも鋭い音を放っている。 「待って」 そんな攻撃準備は万全だというようなノワールに、ヴァイスは待ったをかける。ノワールはその通りに腕をそっと下ろし、ヴァイスの意図を読み取ろうとするかのように顔を覗き見た。ヴァイスはその行動に応えぬまま、ザッザッと砂を踏みつけながら前に出て、持っていた片手剣を地面に突き刺した。 その動作でヴァイスが何をしようとしているのかを察したらしいノワールは、ヴァイスの邪魔には決してなるまいと言うように距離を取り、そして傍観した。 ヴァイスは先程まで剣を握っていた右手を前に掲げる。目を閉じ深く集中して、人知れず咲く懸氷けんぴょうのような静けさをその身に纏う。 4810 花式 カイロDOODLEモノ君十話で〜〜す。前半にクソ長い説明があります、ゆるして出演メンバー・ヴァイス・ノワール・ディアン・スティル・青鈴十話 依頼任務 休みは明けて、そうしてまた仕事仕事の日々がやってきた。 とは言ったものの、ここ数日の任務はどれも軽いもので、カティアに対して盛大な宣誓をしてしまったが故に肩透かしを喰らったような気分だった。けれど、至って平穏な日々を享受するのもそれはそれで構わないし、きっとそちらの方が良いことではあるのだろう。そうしてヴァイスは、急がば回れと善は急げのラインを反復横跳びしていた。 ある日、ヴァイス含むNoDiWS一行はいつぞやの執務室へと呼び出されていた。あらかじめ任務の話ではあると聞いていたので、四人は既に戦闘服に身を纏っている。 入室してみれば、青鈴が何やら一人で忙しそうにしていた。カティアは別の用事があって今日はいないらしい。 6114 花式 カイロDONE怪文書「よっつめ」です。こちらは年上組ふたつめの世界線からのお話になっているので、一応続いていると思ってくだされば幸いかと首絞めですか?してます 9638 花式 カイロDONE怪文書「みっつめ」です。みっつめって表してるけどふたつめの世界線から続いてます今回も首を絞めている 5407 花式 カイロDOODLE年下組!(1)と世界線が繋がってますやっぱり首を絞めている 5068 花式 カイロDONE年上組!!!!首を絞めてる定期 4866 花式 カイロDONE性癖を詰め込んだ怪文書。フリーホラゲをイメージして書いたので、場面を想像しながら読んでいただけたら嬉しいです。首絞め描写があるので、苦手な方はブラウザバック🫵 1858 花式 カイロDONEモノ君九話!区切りが雑です(すまん)出演メンバー・ヴァイス・ディアン・ノワール・スティル九話 成し遂げるよ ツルツルとした広い廊下。そんな廊下を二人で歩けばコツコツと硬く心地の良い音が耳に入ってくる。ふいに、ヴァイスの後ろで鳴る足音が止まった。くるりと振り返る。 「随分デカい啖呵切ったな」 そういう割に、ディアンは楽しそうな表情を浮かべていて。へへと笑いながら肘で小突いてやった。 「かっこ良かったろ〜? さっきの僕」 誇らしげに笑ってみせれば、はいはいと適当に返される。全くつれないやつだ。ふんっ、と鼻を鳴らした。 ヴァイスはふと天井を見上げ、そしてのろのろと廊下の壁際に後退する。後手を組んで、片方ずつ足をぷらぷらとさせる。ザラザラとした壁の感触を手に与えた。それと同じタイミングで壁際にやってきたディアンは、不思議そうな顔をして首を傾げている。ヴァイスの不意の行動に疑念でも抱いたのだろう。目を合わせてから、にっと笑ってやった。 7329 花式 カイロDONEモノ君八話「啖呵」です。出演メンバー・ヴァイス・ディアン・カティア八話 啖呵 黒鉄を纏ったような重厚感のある扉。ヴァイスは見た目ほど重くはないそれを、隣に立つディアンと一緒に押し開いて中へと入った。中央に鎮座する、紙が高く積まれたスクエアテーブルと、乱雑に文房具が転がっている壁際の長机。年季の入ってるらしい赤褐色のそれらを見ながら、ヴァイス達は部屋の中を歩いた。 「先生、いないね」 「だな。まぁ、いつも事務室にいるとは限らねえしな……」 そうだね。柔く同意して部屋を出て行こうとするが、ヴァイスは部屋の壁に気を取られその足は止まったまま。視線の先にあるのは、様々な文字が書き連ねられた大量のメモだ。真新しい質感のものもあれば、色褪せて黄ばんだものもあったり。幼いながらにも、ヴァイスはそれらに“歴史”を感じることができた。 5700 花式 カイロDONEモノ君七話「NoDiWS」です。元々彼らのチーム名は決まってたのですが、ようやく本編でも名付けることができましたね、おめでとう。今日はNoDiWS記念日です。因みに読みは「ノーディウズ」です。出演メンバー・ヴァイス・ノワール・ディアン・スティル七話 NoDiWS 翌日、チームを組んで初めての見回り以外の討伐任務を請け負っていたヴァイスたちは、家族由来の抜群のチームワークを発揮し、特に大きな負傷もなく無事に仕事を終え帰路についていた。ぽかぽかとした柔らかい陽気に当てられながらも、彼らの足取りは一人を除きやけに重い。ヴァイスは胸に抱えるもどかしさを吐き出すように、剣身が剥き出しの片手剣をブンブンと振っていた。諭すような口調でスティルに「危ないですよ」と言われてからは、ぐっと眉間に皺を寄せながらも代わりとして硬い質感の白黒制帽を振った。 チーム名無し——ヴァイスが仮名として勝手に呼んでいる——は、本日の任務で現地に赴く最中にもチーム名候補をいくつか考えようとしていた。 4623 花式 カイロDONEモノ君六話〜!出演メンバー・ヴァイス・ノワール・ディアン・スティル六話 苦戦 歩を進めるたびに、暖かな空気が頬を撫でていく。朝との寒暖差にうんざりとしながら、けれどヴァイスにとってはその暖かさが何よりも気持ちの良いもので。ぽかぽかとした空気に自ら当たりに行くようにして足を動かした。 「お昼寝にはちょうどいい気温だね」 「今日はそんなことしてる暇、なさそうだけどな」 柔らかにつぶやかれたその言葉は、ディアンの硬質な声色によって否定された。瞬時にと言った風に、ヴァイスはぶすくれてみせる。 「冗談だもん」 「そーだな」 拗ねたようにそう言えば、笑い混じりに返された。 昨日と変わらぬ場所での見回り。効率重視で二手に分かれよう、ということになり、何故かディアンがヴァイスをご指名したことにより二人は行動を共にしていた。 5995 花式 カイロDONEモノ君五話です!出演メンバー・ヴァイス・ノワール・ディアン・スティル・青鈴・カティア五話 チーム結成 簡素な装飾の部屋。標準的な大きさのスクエアテーブルを前にして、ヴァイスたち四人は横一列に並んでいた。直立不動でいるノワールや、同じ姿勢で待つディアンとスティル。彼らと違ってヴァイスはそわそわと落ち着かない気持ちでいた。自分たちを呼び出した“先生”はいつ来るのか、と。 「少しは落ち着いたらどうだ? お子様みたいだぞ」 「なっ、……いいよお子様で。まだ十歳だし」 顔の向きはそのままに、揶揄うようなセリフを吐いてきたディアンにそう返す。愉快そうに笑う控えめな声が、ディアン以外にも二人分聞こえてくる。全く、あとどれだけ揶揄われれば良いんだ。原因は自分にあるにも関わらず、ヴァイスはその思考をため息にして吐き出した。 6316 花式 カイロDONEモノ君四話!出演メンバー・ヴァイス・ノワール・ディアン・スティル四話 呼び出し 室内を包むひんやりとした空気。ヴァイスは肌寒さを感じて、自らの二の腕あたりを厚手のパジャマごとギュッと掴んだ。 「さむい……ねむい……」 一夜明けて、現在朝の六時半。元々寝起きの良くないヴァイスは呂律の回らない舌でボソボソと呟きながら、ベッドから這うようにして出た。 ゴトン、と硬い音を響かせる。体を床に打ちつけた衝撃と痛みなど意に介さず、のろりのろりとなんとか立ち上がった。うぅ、と小さく呻き声をあげて、後ろ髪のそこかしこについた寝癖を軽く梳かす。眠気を残す幼児のように、ごしごしと目を擦った。 そしてヴァイスは、パチンと一つ指を鳴らそうとする。だが寝起きの状態では力も入らず、一度目は無様に滑って終わってしまう。何度か慣らすようにして繰り返し、腕ごと勢いよく振ってそれはようやく成功した。 6279 花式 カイロDONEモノ君三話〜出演メンバー・ヴァイス・ディアン・スティル三話 ほおずき ゴーン、ゴーン。不意に、フィルターを介したかのように鈍く不明瞭な鐘の音が聞こえてきた。ヴァイスは一瞬だけ思考を巡らせて、その音が六時の到来を告げるものだと気付いた。 それを合図としたように、するりとディアンの小指が離れていく。その刺激に伴って、ヴァイスは先のやり取りを忘れたかのような無の色を映したディアンの顔を見た。 「六時か、飯時だな。お前も一緒に行くか?」 一緒に行く、とは寮に付属している食堂に、である。ヴァイスたちが住む寮は、つまり人工亜人たちが住む寮ということになるが、その正式名称は国立対異形人工亜人専用寮という、とんでもなく長ったらしい名称だ。 そんな寮は異界のためとは言え、国が人工亜人専用に建てた施設。もちろん、生活するために必要な機能は一通り揃っている。食堂もその一つだ。ヴァイスたちは基本的に、その食堂で日々の活動エネルギー源である食事を摂っていた。 6986 花式 カイロDONEモノ君二話!!出演メンバー・ヴァイス・ノワール・ディアン二話 約束「ノワール、二人で一気に仕留めるよ。援護して」 「仰せのままに」 ヴァイスは隣にいるノワールに声をかけた。仰々しく礼をしたその彼を横目に、ヴァイスは前方へと駆ける。そのまま片手剣で斬りつければ、異形はダークレッドの爪で迎撃した。両者の力は然程差がなく拮抗する。お互い弾くようにして飛び退いた。 「グオオォォォォォ‼︎」 ヴァイスが着地した瞬間、異形が吠えた。ハッとして顔を上げれば、空中に数多浮かぶ岩石が見えた。異形が魔法を行使したのだと気付いたヴァイスは、自身も魔法で迎え撃つべく左手を前に突き出す。 だがヴァイスの魔法が放たれることはなかった。ヴァイスの方へと向かう岩石たち、その全てが轟音と共に消し炭にされたからだ。それがノワールの魔法によるものだと一瞬で理解したヴァイスは、敵が怯んでいる隙に距離を縮めた。 7389 花式 カイロDONE自創作「モノクロの君に捧げるモノローグ」一話です。加筆修正したものになります一話 対異形人工亜人 昔々、そのまた昔。異界という場所はとても穏やかな魔力に満ちていた。異界人たちはともに笑い、動物たちはのびのびと過ごし、個人個人が自由に生きる。正に平和と自由を描き写したようなその世界のバランスは、ある日突然崩れ去った。 異形。魔力を生命源とし、生きるために他の生物を食い殺す化け物。突如現れ、瞬く間に溢れかえったそれが異界の脅威となるのに、そう時間はかからなかった。 異界人たちは絶望した。魔法もろくに効かない未知の化け物。異界の生物は減らされていく一方。誰もが諦観していた中、異界に存在する五つの国のうち「亜人ノ国」の研究者たちは、異形と渡り合うべく死力を尽くした。 戦いの最中研究を重ね、ついには異形に対抗しうるとある“もの”を造り出した。「亜人ノ国」に住む魔法使いと魔女。彼らをオリジナルとして生まれた者たち。彼らは高い戦闘力と豊富な魔力、そして他の種族とは違い異形に対して致命的なダメージを与えることができる特異性を持っていた。救世主とも言えるその者たちの誕生に、人々は驚き喜んだ。 4697 花式 カイロDONE幸氷小説三話です!氷里くんが料理してるくらいであんま進んでないハーバリウムに口付けを 三話 少しの時間が過ぎて五月になった。心地の良い爽やかな風とは裏腹に、氷里は揺れるカーテンを横目に溜息を一つ吐く。机に置かれた教科書は風で捲れて読む必要のないページへと移り、開かれたノートにはいつまで経っても色が乗ることはなかった。 氷里たちの通う高校は、既に定期テストの期間に入っていた。氷里は特別勉強が苦手というわけでもない。どちらかと言えば運動の方が苦手である。背が低い上に運動が苦手、とはなんと不運なことかと氷里は時々嘆くが、別に今の関心はそこに向かっているわけではない。もっぱら、テスト勉強である。 だが勉強が苦手ではないとは言え、それがライクの領域に入ることはなかった。故にテスト期間はいつだって憂鬱だ。中学の頃から、ずっと。だがしかし努力を怠れば赤点は必至。全くもって面倒なことだと、氷里は皐月の清涼には似つかわしくない憂鬱を抱えていた。 5307 花式 カイロDOODLE胡蝶 蘭(ミルクちゃん宅)+乾 明輝(自宅) ※敬称略うちよそ第二弾! 夕暮れ時、無機質な光に照らされた室内で明輝は一人端末を見つめていた。画面の中に映るのは、次に出る新曲の振り付け動画。曲調が激しめであるが故にダンスの難易度も高く、踊りよりも歌を得意としている明輝は一人辟易としていた。 今日は新曲のダンス練習初日。とはいえあまりにも不出来だったため、個人の判断で居残り練習をしている。 明輝が今この場にいるのは、そういう経緯があってのことだった。 振り付けを一通り確認したところで、さてと練習をするべく立ち上がる。ぐっと背伸びをして体をほぐしたところで、ふと遠くから声が聞こえてきた。 「……ん、明輝くーん?」 最初は不鮮明だったその声は、段々とこちらに近づいてきているのか、はっきりとしたものへ変化していく。その声を知覚して数秒後、声の主が誰なのかを理解した。 6774 花式 カイロDOODLEリコリス・ラジアータ(ミルクちゃん宅)+メラン・ノインテッター(カイロ宅) ※敬称略うちよそ! 彼岸花、別名曼珠沙華。その花は毒々しいほどに燃え盛る見た目の通り、その芯に毒を有する花。その名は食べたものに彼岸——死のみをもたらすことから付けられた、という説もある。加えて「採取をすると家が火事になる」などという、子どもから有毒植物を遠ざけるために生まれた迷信もあった。 忌々しい性質と言い伝えを持つその花から彼女は、リコリス・ラジアータは誕生した。周りの者たちは、有毒植物から生まれた彼女をさも当たり前のように忌み嫌った。なおもリコリスは気にすることなく、陰で囁かれる悪意を纏った言葉にも気の強い彼女は打ちのめされることはなかった。 「勝手に言わせておけばいい。私を知らない者の意見を、他の何よりも優先する義務するなんてない」 4783 花式 カイロDONE怪文書やっつめです。年上組です、首〆定期。怪文書ふたつめからの時間軸です。直接の描写はしてないけど、まぁつまり年上組がそういうことになっていますのでご注意を。余談↓本編だけでなく怪文書世界線においても、「前提はノワヴァイ」なんですよ。つまり怪文書世界線の年上組と年下組って不倫なんじゃないの?という考えに至って私は脳を焼かれています。不倫カプ概念を推していきたいです。 10 花式 カイロDOODLEこれは練乳(催眠) 2 花式 カイロDOODLEノワールがアクセサリーショップに行く話(要約)です。ノワールの解像度が上がるかもしれません、本編にはあまり関係ないので読まなくても問題ないです。 9 花式 カイロDOODLE怪文書「ななつめ」です。ついにラッキーセブンです、どうしてここまできてしまったんだ。飽きそうですけど年下組です。なんと!今回は首を〆ていません。でも色々しちゃった、キスもしちゃった。カプ厨の真価を発揮してしまった。もうダメだ 6 花式 カイロDONE怪文書「むっつめ」です。年下組への愛を綴りました。私は一体何を書いているんでしょうね。首〆にするつもりはなかったと言えば嘘になるんですけど、ここまできても首を〆ています。サブタイをつけるならば「策略と愛」です。これは愛です。 18 花式 カイロDONE創作BL「ハーバリウムに口付けを」二話※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係ありません。作者に同性愛者を貶す意図はございません。全て物語の上の出来事です。ご理解・ご了承の程をよろしくお願いいたします。 17 花式 カイロDOODLEなんかちょっと前に鍵で載せたやつです。モノ君の「ノワ(→)ヴァイ」です。暗いしちょっとノワールが可哀想な上にヴァイスが冷酷な風に感じられる部分もあるかもしれないんですけど、この二人は基本こういう関係です。でもちょっと本編より誇張はした 4 花式 カイロDONE創作BL「ハーバリウムに口付けを」一話由塚橋 幸八(誰にでも優しく明るい男子)×羽多 氷里(家で生きづらさを感じている内向的な男子)切なさを感じさせる16歳の少年たちの恋のお話です。尚一話は氷里君しか出ません。※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体は関係ありません。作者に同性愛を貶す意図はありません。全て作品内の出来事です、ご理解・ご了承のほどをよろしくお願いいたします。 13 1