冬至の晩に柚子が三つ、湯に浮かんでいる。
TETSUは湯の中で黄色い柚子が揺れるのを眺めていた。
冬至だからと柚子を用意したのは譲介だ。TETSUが入る前に慌ててやってきて、元気よく湯船に投げ込んでいった。
「マメなやつだ……」
譲介が季節の行事に積極的なのは意外なことだとTETSUは思った。TETSUの知らないところで、暦を調べて準備をしている。楽しそうで良いことだ。
TETSUはこういうことに関して無頓着なほうだった。TETSU自身の年中行事といえば年に一度、クリスマスプレゼントを施設へ届けるぐらいである。
そんなわけで、TETSUが冬至の晩に柚子湯へ入るのは相当に久しぶりのことだった。
三つの柚子がTETSUの目の前で、それぞれ別の方向へ漂っていく。湯気にほのかな香りが混ざる。TETSUは湯の中で軽く伸びをして、息をつく。こんなにゆったりした冬の晩はいつ以来だろうか。
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