精瓶の蒼砂-ミハイル1――ジジジジ……。
聞き馴染みのない虫の音が耳を煩わす。目を閉じているにもかかわらず、瞼の先の明るさがわかるほどの暑い日差しに眉を顰めた。
「……ん……っ……」
びっしょりと全身が汗を滲ませ、服も髪も張り付いて気持ちが悪い。
土臭く、古びた風が鼻を掠めて、エルフの男――ミハイルは目を覚ます。
美しいほどの雲ひとつもない青空。
太陽が燦々と降り注ぎ、その眩しさに目を小刻みに瞬かせる。それを数回繰り返せば、目は次第にその強い光にも慣れていった。
ミハイルが体を起こして、辺りを見渡すとそこは見たことのない廃鉱山だった。
土と金属の匂い、耳障りな虫の音――どれも馴染みがなく、胸の奥に妙なざわつきが残る。
カラン、カランと石と金がぶつかる音が響く。
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