長編にしたい異ぐ「お父様、やっぱりあの屋敷に嫁ぐのは私じゃないと思うの。え、どの屋敷って? わかってるくせに、嫌な人! 化け物の屋敷に決まっているでしょう! ずっと顔を隠している、醜い男の住む屋敷よ! いくら血筋が良いからって、好き好んであんな小さな屋敷に住んでいる変人に、大事な娘を嫁がせるのは嫌でしょう? わかってるわ、だから良いことを思いついたの!」
すうぅ、と息を吸い込んだ彼女の長台詞に、いつも痛い頭がもっと痛くなる。
すごい力で二の腕を掴まれ、思わず小さな悲鳴を上げた。
優柔不断なこの家の主人の前に、無理やり立たされる。
「これを私の代わりに送るのよ! どうせ向こうは私の顔を知らないんだから、バレやしないわ! 万が一バレたって、折檻されるのはこれなんだし、悪いことなんて一つもないでしょう? あぁ、私ったらなんて賢いのかしら」
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