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    sushiwoyokose

    @sushiwoyokose

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    sushiwoyokose

    DOODLEめたふぁ~の読書感想文です 主とルイ エンディングまでの全てのネタバレを含みます 
    主人公の名前は「リンドウ」です。
    彼方へ送る追憶の一束※主人公の名前は「リンドウ」です

    幼少の砌、閉ざされたかの故里で過ごした記憶はひどく曖昧に混濁している。穏やかな風を浴びればほのかな懐かしさが過ぎり、ひとけのない静けさにこれ以上ない安寧を覚えるのは確か。しかし人里離れた森の奥、閉ざされた静かな村を見て胸に滲む感想はといえば御伽噺のようだなんて少し他人行儀なものだ。あるはずの思い出が霞んでいるのは、魂と体の分離があまりに長く続いたせいだろうと説いてくれたのはグルデアだった。どこへでも駆けていく願望を形どった己の記憶に、幼子のまま眠っていた己の記憶が、まだうまく結合し切っていないらしい。
    「よいしょ……っ、と、あいてっ」
    朝露に濡れた草花をかき分け、新緑の空気を胸いっぱいに吸い込んだのも束の間。額に衝撃を感じ、ややあって頭を打ったのだと理解した。呪いから解放され、時を戻した体は遅れた成長期を迎えている。その速度は目覚ましく、昨日はぴったりだったローブが朝起きると丈が足りないなんてザラなことだった。お忍びに出向く際に使っている抜け道も、いくつか通れなくなってしまったものがある。記憶に誘われるようにして潜った木のうろに頭をぶつけたのも、きっと覚えより背丈が伸びてしまっているからに違いなかった。くすくすと微笑むように緑が揺れている。妖精にでも見られたのだろうか、後でガリカに揶揄われなければいいのだが。
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    sushiwoyokose

    DOODLE欲しいものは書けってばっちゃが言ってたので麻痺の後遺症が残ってるユのアルユリ
    かがり火足先を擽る冷気を感じてふと目を覚ます。寝ぼけ眼をどうにか開けば、窓からうっすらとした曇天の日差しが漏れているのが見えた。次いで壁掛けの振り子時計を見やれば時刻はすっかり朝である。もう少し微睡んだって罰は当たらないような時間だが、隣で寝息を立てる男と食いしん坊の異形に朝食を拵えてやらなくてはならない。大して呆けることなく身体を起こそうとしたが、腹に力を入れた途端俄かな痺れが鋭い痛みをもってして全身を駆け巡っていく。
    「っ」
    思わず漏れそうになる悲鳴を、辛うじて嚙み殺した。情夜が齎す甘い痺れとは違う、純粋な不調の痛みである。結局身を起こすことは叶わず、ふわふわと軽い布団を幾度か揺らすにとどまった。
    吐いた息が真っ白く色づく季節。冷え込みが厳しくなると、上手く身体が動かなくなることがある。骨が軋むようにして強張り、筋肉が震え、脳の指令に四肢が従ってくれないのだ。医者曰く、これは死に瀕した傷の後遺症なのだという。特段の治療法はないとあっさり匙を投げられてしまったが、あれだけの怪我から助かってこの程度で済んだなら幸運と思うべきだと言われればそれもそうかと頷くことしかできなかった。
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    sushiwoyokose

    DOODLE何度でも擦りたいギュステのバカンスアルユリ いずれスケベシーンを足したい気持ち
    西日の祝福常夏のアウギュステは夕暮れ時になっても暑く、しかし祖国の夏と比べれば空気が乾いていてさっぱりとしている。汗ばむ肌を海風に晒すと、ちょうどよく冷えて心地が良い。長髪を靡かせる友が「中へ戻ろう」と言い出さないのは、きっと彼もこの空気を心地いいと考えてくれているからだろうなんて、勝手な推測を押し付ける。コテージのベランダに二人。何を言うでもなく夕日を眺め続けているが、小波の音以外特に会話もなにもない。沈黙の共有は、何より友愛の証だった。美しい光景を隣に立って一緒に見つめる。それがどれだけ幸福なことか、俺たちはよく知っていた。
    (長閑だ)
    執務室で睨む時計と、アウギュステで見つめる時計とでは針の進みが異なる気がしてならない。楽しい時間というのは往々にしてすぐさま過ぎ去ってしまうものだが、常夏の時間はありがたいことにゆったりと遅く流れている。以前より気を遣うようになったといえ、祖国に戻れば執務に追われる毎日が待っていることだろう。酒も煽らず、言葉もなく、ただひたすらにぼうっと呆ける贅沢なひとときは休暇と銘打った今しか味わえない贅沢だ。深呼吸を一つ、二つ。塩辛い空気で肺を満たし、少しずつ色を変えていく空を眺める。
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    sushiwoyokose

    DOODLEガイゼンボーガ→→ジータ
    仄かな兆し あるいは萌芽初めて命を屠った日のことを、昨日のことのように覚えている。誰しもが意外と言うだろう。己自身、不可思議である。今や自ら死の溢れる戦を渇望しているというのに、そこに後悔など何もないように思えるのに。何故、あの不気味な畏れを未だ覚えているだろう。
    初めての戦場はそれはそれは酷いものだった。統率はもちろんろくな装備もない。歪んだ鎧を力づくに捻じ曲げながら着込み、刃こぼれした剣を頼りなく握る。どちらも無駄死にした誰かの使い回しだろう。勝ちに行く気持ちなど微塵も、足掻く気持ちだってもちろん。死への恐怖は積もりすぎてあまり感じず、あと三ヶ月もすれば美しい春の花畑が見れたのにとぼんやりした後悔が残るのみだった。
    律儀な開戦の合図はなかった。強いて言えば、偵察に行った味方の兵士がばん、ばん、と遠方から撃たれたその音と血飛沫が合図であった。雄叫びに悲鳴が混じって足音がやかましくなる。混乱に乗じて後退りすれば逃げられたかもしれない。しかし、誰もが前へ進んだ。後ろへ戻れば、春を待つ故郷がある。それを踏み躙られるくらいならば、足止めになろうと言う気概はもしかするとあったのかもしれない。吾輩に宿る微かな覚悟もそれだった。穏やかな故郷がせめて何か守られれば意味もある。だが覚悟という鎧は、貧相な装備の何より早く弾け飛んでしまった。立ちはだかる相手軍は皆足並みが揃っている。戦いに慣れた一振りの太刀筋が、洗練された一発の砲撃が、何か恐ろしい獣のように見えた。
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