雨。
imori_JB
DOODLE夜に熱を出した娘を医療センターに連れて行った獅子神と、応援で来ていて遭遇した村雨。塩られてる。雌獅子は愛を抱く⑤「ぁーん、えー……」
普段よりずっと弱々しい泣き声がリビングに響く。
ソファーに寝かせた娘は顔を真っ赤にしている。
時折苦しげにヒッ、ヒッ、としゃくり上げる様子を、心配に顔を顰めながら獅子神は従業員達と共に覗き込んでいた。
ピピピと小さな電子音が聞こえると、獅子神は娘の耳に入れていた体温計を外して表示を見、苦く呟く。
「……高いな」
三十八度六分。
夕方までは機嫌良く元気に過ごしていた娘は、夕食後のベビーシッターが退勤した辺りからぐったりし始めた。
水分も取りたがらず、弱々しく泣く姿に獅子神は判断を下す。
「夜間急病行って来る、お前達は上がれ」
「お供しますよ」
「いや、遅くなるだろうしいい」
時間は既に二十二時半に近い。
3153普段よりずっと弱々しい泣き声がリビングに響く。
ソファーに寝かせた娘は顔を真っ赤にしている。
時折苦しげにヒッ、ヒッ、としゃくり上げる様子を、心配に顔を顰めながら獅子神は従業員達と共に覗き込んでいた。
ピピピと小さな電子音が聞こえると、獅子神は娘の耳に入れていた体温計を外して表示を見、苦く呟く。
「……高いな」
三十八度六分。
夕方までは機嫌良く元気に過ごしていた娘は、夕食後のベビーシッターが退勤した辺りからぐったりし始めた。
水分も取りたがらず、弱々しく泣く姿に獅子神は判断を下す。
「夜間急病行って来る、お前達は上がれ」
「お供しますよ」
「いや、遅くなるだろうしいい」
時間は既に二十二時半に近い。
ハテソノ葡萄茶
DONE『雨も名物ですよ!』城プロRE7周年お祝いイラストその1。7周年おめでとうございますありがとうございますこれからもよろしくお願いします!先月撮った写真を使い伊予藤堂姉妹シリーズを描きました。宇和島城を訪れた19日は朝はポツポツ、昼に結構な雨。それでも宇和島のよく降る雨は城山の珍しい植物相を生み出しているのかなと考えたりブラタモリごっこしたりと楽しい雨でした。
傘は板島丸串ママイメージデザイン。
kaisui221225
MAIKING(day2の記憶が吹き飛んだ状態で、衝動が抑えきれず書いたものです)超学の拝田と時雨。まだ書きかけのやつ。拝田と時雨(仮) 目が合った瞬間、体が強張った。
「おっ、せんぱい遅かったじゃ〜ん。無駄骨、ご苦労さんっと」
声の主は、生徒会室のソファーの上にどっかりと身体を預けて寝そべっていた。相変わらずマナーなど知らない獣のような振る舞いだ。
「まだいたのか。てっきりとっくに帰ったのかと思った」
「だ〜れもいなかったからぁ、せんぱい達が無駄な仕事で汗かいてる間に、ここで昼寝させてもらってたんすよぉ。フッカフカでちょー気持ち良かった!」
そう言うと、拝田はケタケタ笑いながらソファーの座面に靴底を擦り付けた。
「こら、拝田……」
と言いかけたところで思わず口をつぐんでしまった。そうして次の瞬間、後輩を叱るのを反射的にためらった自分に対して、小さくため息が漏れる。
790「おっ、せんぱい遅かったじゃ〜ん。無駄骨、ご苦労さんっと」
声の主は、生徒会室のソファーの上にどっかりと身体を預けて寝そべっていた。相変わらずマナーなど知らない獣のような振る舞いだ。
「まだいたのか。てっきりとっくに帰ったのかと思った」
「だ〜れもいなかったからぁ、せんぱい達が無駄な仕事で汗かいてる間に、ここで昼寝させてもらってたんすよぉ。フッカフカでちょー気持ち良かった!」
そう言うと、拝田はケタケタ笑いながらソファーの座面に靴底を擦り付けた。
「こら、拝田……」
と言いかけたところで思わず口をつぐんでしまった。そうして次の瞬間、後輩を叱るのを反射的にためらった自分に対して、小さくため息が漏れる。
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DONE想雨。100本チャレンジその40(2023/2/15)桜と取り決め まんまるい頭と見やすい位置にあるつむじを見つめる。半歩先を歩く北村を視線で追うと、背中よりはつむじのほうが何倍も見やすくて愛らしい。北村が先に階段でも上れば視線は反転するか同じくらいになるのだろうが、北村の家にお邪魔するために使うのはエレベーターだ。結局、玄関の扉をくぐるまで俺は北村のつむじを見ながら歩いていた。
玄関の扉が閉まる。くる、と北村が振り向いたときも俺が意識して視線を下げなくては目線はあわない。そんな身長も年齢も離れた恋人を、俺は酷く好いていた。
「雨彦さんー」
名前を呼ばれるだけではわからない。声色はどうにもらしくない。
「……屈んでくださいー」
俺が言われたとおりに屈めば北村は近づいた唇に自らのそれを重ね合わせた。俺は北村のことを対等な存在だと思っているが、この瞬間だけは、俺にねだってみせないとキスのひとつもできない男が無性に愛おしい。それに俺は口づけを交わすためだけにあるような、この言葉が好きだった。
1203玄関の扉が閉まる。くる、と北村が振り向いたときも俺が意識して視線を下げなくては目線はあわない。そんな身長も年齢も離れた恋人を、俺は酷く好いていた。
「雨彦さんー」
名前を呼ばれるだけではわからない。声色はどうにもらしくない。
「……屈んでくださいー」
俺が言われたとおりに屈めば北村は近づいた唇に自らのそれを重ね合わせた。俺は北村のことを対等な存在だと思っているが、この瞬間だけは、俺にねだってみせないとキスのひとつもできない男が無性に愛おしい。それに俺は口づけを交わすためだけにあるような、この言葉が好きだった。
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DONE想雨。愛してるゲームをするふたりです。100本チャレンジその37(2023-01-18)
殺し文句は明るい部屋で 愛してるゲームを考えた人って賢いか賢くないかで言ったら相当賢いんだと思うけど、そのヒラメキをもう少し他のことに使えなかったのかと思わなくもない。いつもは意識に浮かぶことすらない思考は、愛してるゲームの当事者となった僕の脳内にぷかりと浮かんですぐ消えた。
僕の目の前には雨彦さん。周りにいたギャラリーは半分くらいに減っていて、もちろんカメラが回っているでもなし。パーティの余興で始まった愛してるゲームは決着がつかず、言い出しっぺのプロデューサーは社長に引っ張られて向こうでビールを飲んでいる。文句はあとで言うとして、いまは目の前の男に意識を向ける。僕は雨彦さんと対決中なのだ。
勝負内容は驚くほど簡単で、愛してると交互に言い合って照れた方の負け。この男はやたらといい声で「愛してるぜ」だのとほざいているが、僕はそんなことで照れやしない。驚くほどときめかない自分は薄情者だろうか。僕はこの男と恋仲だというのに。
1575僕の目の前には雨彦さん。周りにいたギャラリーは半分くらいに減っていて、もちろんカメラが回っているでもなし。パーティの余興で始まった愛してるゲームは決着がつかず、言い出しっぺのプロデューサーは社長に引っ張られて向こうでビールを飲んでいる。文句はあとで言うとして、いまは目の前の男に意識を向ける。僕は雨彦さんと対決中なのだ。
勝負内容は驚くほど簡単で、愛してると交互に言い合って照れた方の負け。この男はやたらといい声で「愛してるぜ」だのとほざいているが、僕はそんなことで照れやしない。驚くほどときめかない自分は薄情者だろうか。僕はこの男と恋仲だというのに。
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PAST未亡人の神保美雨。旦那の名前は晴太で息子の名前は虹汰。名前綺麗に作れたなと自画自賛してました。今のところ傀逅だけしか行ってないから他にも出したさあるけど大変な目にあったのでまだ息子とゆっくりしててくれの気持ちもある。また動かせると良いな。
誕生日:10/22
一人称:私
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DONEクリ雨です。クリスさんの妹さんが出てきます。口調などは捏造です。ご容赦ください。以前書いていたものを直しました。レジェエピゼロの内容も少しだけ入れています。(雨彦さんの妹さん、お母様など)
学校帰りのクリスさんの妹さんと会った雨彦さんの話です。付き合ってるクリ雨。 1175
dd9ynsp
REHABILI想雨。想楽くんに内緒でお揃いの服にしようとした雨彦さんの話。
コーデ(想雨)「北村の服はどこのブランドなんだ?」
頭上から響く声に振り返ってみれば、急にそんなことを聞かれた。声の主の表情はいつもと変わらず、いまいち読み取ることが難しい。
聞かれたことに対しては隠すことでもないし、正直に答えてあげたけど。
あの質問って一体なんだったんだろう。
待ちあわせ場所で雨彦さんを待ちながら、ふとそんなことを考える。今日は所詮デートというわけで。少し早めに到着してしまったので、周りの様子やスマートフォンの画面を見て時間を潰すことにした。
(質問の答えは未だ分からない。……特に意味はなくて聞いてきただけなのかもー……。僕だってたまにそういう質問したりするし……)
スマートフォンの画面を再度除くと、そこには『悪い、待たせちまったな』の文字。雨彦さんに質問をされたときみたいに、頭を上げてみれば。
941頭上から響く声に振り返ってみれば、急にそんなことを聞かれた。声の主の表情はいつもと変わらず、いまいち読み取ることが難しい。
聞かれたことに対しては隠すことでもないし、正直に答えてあげたけど。
あの質問って一体なんだったんだろう。
待ちあわせ場所で雨彦さんを待ちながら、ふとそんなことを考える。今日は所詮デートというわけで。少し早めに到着してしまったので、周りの様子やスマートフォンの画面を見て時間を潰すことにした。
(質問の答えは未だ分からない。……特に意味はなくて聞いてきただけなのかもー……。僕だってたまにそういう質問したりするし……)
スマートフォンの画面を再度除くと、そこには『悪い、待たせちまったな』の文字。雨彦さんに質問をされたときみたいに、頭を上げてみれば。
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DONE想雨。雨彦さんがちょっとブレてる。(22/6/17)おかしな話 目の前の狐が似合わない雑誌を持っている。ホワイトデー特集と大きく書かれた雑誌はおそらく女性誌で、そういう一種のちぐはぐさは骨ばった長い指に支えられて奇妙なバランスを保っていた。
「雨彦さん、珍しいものを見ているねー」
似合わない、と言外に告げたつもりはないが、まるで避難されたかのように肩をすくめて雨彦さんは返す。
「よう北村。なに、面白いと思ってな」
「おもしろいー?」
「見てみるかい?」
そう言って雨彦さんが広げたページにはホワイトデーと聞いて連想できる限りの──あるいは想像の外にあるような様々なお菓子が散らばっていた。そこに、何かが書いてある。
「えっと……お返しに込められた意味ー?」
「ああ、奇妙なもんだ。どんな菓子をやるかによって、伝えたいメッセージが決まるんだと」
2019「雨彦さん、珍しいものを見ているねー」
似合わない、と言外に告げたつもりはないが、まるで避難されたかのように肩をすくめて雨彦さんは返す。
「よう北村。なに、面白いと思ってな」
「おもしろいー?」
「見てみるかい?」
そう言って雨彦さんが広げたページにはホワイトデーと聞いて連想できる限りの──あるいは想像の外にあるような様々なお菓子が散らばっていた。そこに、何かが書いてある。
「えっと……お返しに込められた意味ー?」
「ああ、奇妙なもんだ。どんな菓子をやるかによって、伝えたいメッセージが決まるんだと」
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DONE想雨。年の差。『海、ラムネ、金属』というお題で書きました。(22/6/7)海とナイフ「牙崎くんはさー、ラムネを知らなかったよねー」
夏の夜、ベランダから見た夜空には一輪の華も咲いていなかったけれど、僕はふと花火大会の日を思い出して口にした。夏休みの僕は家にいる時間が増えて、夏とは無関係に会社に縛り付けられた兄さんの代わりとでも言うように雨彦さんが恋人の距離で僕とベランダに並んでいる。ここにクリスさんがいない理由は確かに存在していて、色恋には明確なえこひいきがつきものだった。
「なんていうか、牙崎くんってちょっと浮き世離れしてるよねー。浮き世離れっていうか、人間離れっていうかー」
夏の大三角を見ながら、星見を得意だという男の顔を見上げる。雨彦さんは星を見ずにただ僕の目を眺めていた。
3934夏の夜、ベランダから見た夜空には一輪の華も咲いていなかったけれど、僕はふと花火大会の日を思い出して口にした。夏休みの僕は家にいる時間が増えて、夏とは無関係に会社に縛り付けられた兄さんの代わりとでも言うように雨彦さんが恋人の距離で僕とベランダに並んでいる。ここにクリスさんがいない理由は確かに存在していて、色恋には明確なえこひいきがつきものだった。
「なんていうか、牙崎くんってちょっと浮き世離れしてるよねー。浮き世離れっていうか、人間離れっていうかー」
夏の大三角を見ながら、星見を得意だという男の顔を見上げる。雨彦さんは星を見ずにただ僕の目を眺めていた。
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DONE想雨。練り香水の話(22/5/19)
謙虚、陶酔、初恋 季節外れの、金木犀の香りがした。
気がついたのはきっと僕だけだ。ここには雨彦さんと僕しかいなくて、ここにやってくる人間も今日はいない。ここは僕の家──というよりは兄の家で、家主はあと三日ほど、職場に閉じ込められるとの連絡があったばかりだ。
そんな兄さんの不在に乗じるのは少しだけ心が痛むが、こんなときでないと恋人ひとり呼ぶことのできない男が僕だった。別にひとりで暮らすのが嫌なわけでもそれが不可能なわけでもないが、ひとり暮らしを望む理由に雨彦さんが混ざるのは少し癪だった。しかし雨彦さんを除外すると一人暮らしをするための動機がない。結局僕には現状がしっくりと来ていて、この食えない男との逢瀬だって、頻繁じゃないくらいがちょうどいいんだ。
2554気がついたのはきっと僕だけだ。ここには雨彦さんと僕しかいなくて、ここにやってくる人間も今日はいない。ここは僕の家──というよりは兄の家で、家主はあと三日ほど、職場に閉じ込められるとの連絡があったばかりだ。
そんな兄さんの不在に乗じるのは少しだけ心が痛むが、こんなときでないと恋人ひとり呼ぶことのできない男が僕だった。別にひとりで暮らすのが嫌なわけでもそれが不可能なわけでもないが、ひとり暮らしを望む理由に雨彦さんが混ざるのは少し癪だった。しかし雨彦さんを除外すると一人暮らしをするための動機がない。結局僕には現状がしっくりと来ていて、この食えない男との逢瀬だって、頻繁じゃないくらいがちょうどいいんだ。
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DONE雰囲気概念の想雨。100本チャレンジ、その24(22/5/7)雨男「なにこれー?」
記憶の中にある小学校。その教室にそっくりな空間に僕はいた。教室には椅子と、机と、僕。後ろの壁や目の前の黒板には、僕の詠んだ川柳が所狭しと飾られている。黒板の真ん中に、誇らしげに賞状が飾られていた。
窓からは草原が見える。そして、頭上には飲み込まれそうなほど鮮やかな青空が広がっていた。そう、空が見える。
教室に天井はなかった。蓋のない箱のなかに僕はいた。扉の先の気配は華やかに萌えていて、きっとこの箱は草原の中にぽつりと置かれているんだろう。
どこに行くつもりもないのに僕は扉に手をかける。が、開かない。振り向いて開け放たれた窓を見ると、そこには雨が吹き込んでいた。僕の頭上は快晴なのに、外はひどい雨だ。引き寄せられるように窓から乗り出して外を見れば、覗いた窓の下には見知った人影が座り込んでいた。
950記憶の中にある小学校。その教室にそっくりな空間に僕はいた。教室には椅子と、机と、僕。後ろの壁や目の前の黒板には、僕の詠んだ川柳が所狭しと飾られている。黒板の真ん中に、誇らしげに賞状が飾られていた。
窓からは草原が見える。そして、頭上には飲み込まれそうなほど鮮やかな青空が広がっていた。そう、空が見える。
教室に天井はなかった。蓋のない箱のなかに僕はいた。扉の先の気配は華やかに萌えていて、きっとこの箱は草原の中にぽつりと置かれているんだろう。
どこに行くつもりもないのに僕は扉に手をかける。が、開かない。振り向いて開け放たれた窓を見ると、そこには雨が吹き込んでいた。僕の頭上は快晴なのに、外はひどい雨だ。引き寄せられるように窓から乗り出して外を見れば、覗いた窓の下には見知った人影が座り込んでいた。
kwr_Journey
DONE文字書きワードパレット「うつくしいにほんご」10.ほまちあめ
使うことば:唱える/雫/青葉
あまみつさんより、国芥ちゃんで。
ほまちあめ:外持雨。局地的な範囲に降る雨のこと。 2
じゃこ
DOODLE「いろんな匂いが混じり合って、境界線が歪んだ」貴虎くんの事は好きになる対象と見ていなかったのか、見ないようにしていたのか。この日を境にその境界線はなくなって、そういう対象として見るようになった焔。
いつも雨。
shimajun
TRAININGできたらめっちゃ健全だった。現パロ、沖斎、外は大雨。
何も起きないはずがなく──
「恋人は嵐に乗って」 天気予報が大きく外れたくらいで怒りはしない。折りたたみ傘でも携帯しなかった自分が悪いのだと、斎藤はマンションの自宅ドアの前でため息を吐いた。タバコはすっかり湿り切っていたので、本当にため息だけだ。
ガチャリ。
わざわざ施錠を外しドアを開けてくれた沖田に、「すまない」と、無意識に謝罪の言葉が漏れた。出張土産も、ビニールの雨除けの甲斐なくぐっしょりと濡れていて、ほとほと残念な気分になって来る。
今回の出張は斎藤だけだったので、沖田は金曜と土曜と、二人住まいの家を一人で過ごしていたことになる。
二日ぶりに会った沖田は、心なしか嬉しげにも見える。
「お帰りなさい……わ! 随分濡れましたねぇ」
斎藤の荷物を受け取る傍ら、沖田はバスタオルを斎藤に持たせた。スーツはおろか、シャツや下着に至る全てが濡れて肌にぴたりと張り付く感触が甚だ不快で、斎藤はすぐさま洗面所へと飛び込んだ。
1166ガチャリ。
わざわざ施錠を外しドアを開けてくれた沖田に、「すまない」と、無意識に謝罪の言葉が漏れた。出張土産も、ビニールの雨除けの甲斐なくぐっしょりと濡れていて、ほとほと残念な気分になって来る。
今回の出張は斎藤だけだったので、沖田は金曜と土曜と、二人住まいの家を一人で過ごしていたことになる。
二日ぶりに会った沖田は、心なしか嬉しげにも見える。
「お帰りなさい……わ! 随分濡れましたねぇ」
斎藤の荷物を受け取る傍ら、沖田はバスタオルを斎藤に持たせた。スーツはおろか、シャツや下着に至る全てが濡れて肌にぴたりと張り付く感触が甚だ不快で、斎藤はすぐさま洗面所へと飛び込んだ。
last_of_QED
BLANK七夕はいつも雨。ヴァルアルの小話。星の在処【星の在処】
「給料(イワシ)倍増」
「世界征服」
「立派なラスボスになりたいデス」
「父上のような魔界大統領になる」
「いい加減主人が血を飲みますように」
色とりどりの短冊がはためく今日。世に言う七夕であるが、魔界から星に祈ってはならぬという決まりはない。それどころか、一流の悪魔ともなれば星魔法を使いこなすのだから、むしろ星の廻りとこの地は縁深いと言えるかもしれない。
短冊の飾りとして指先で小さな星を作る傍ら、「一流の悪魔」へと話し掛ける。
「吸血鬼さんはどんなお願い事を?」
「大の悪魔(おとな)が今更願掛けするような夢など持ち合わせていると思うか」
お前を恐怖に陥れる……それは己の力で叶えれば良いだけの話だしな。なに、すぐに叶えてみせるさ。そう男が笑えば、こちらもつられてはにかんだ。
640「給料(イワシ)倍増」
「世界征服」
「立派なラスボスになりたいデス」
「父上のような魔界大統領になる」
「いい加減主人が血を飲みますように」
色とりどりの短冊がはためく今日。世に言う七夕であるが、魔界から星に祈ってはならぬという決まりはない。それどころか、一流の悪魔ともなれば星魔法を使いこなすのだから、むしろ星の廻りとこの地は縁深いと言えるかもしれない。
短冊の飾りとして指先で小さな星を作る傍ら、「一流の悪魔」へと話し掛ける。
「吸血鬼さんはどんなお願い事を?」
「大の悪魔(おとな)が今更願掛けするような夢など持ち合わせていると思うか」
お前を恐怖に陥れる……それは己の力で叶えれば良いだけの話だしな。なに、すぐに叶えてみせるさ。そう男が笑えば、こちらもつられてはにかんだ。