TAR
natsukoshi_ay
DOODLEリクエストいただいた間の中でも特別甘い血でたくさんの吸血鬼に狙われるほたるさんと、それらから守ってやる代わりに血を吸う吸血鬼しょーさんの話ですほんとはタルタリヤさんもとのことでしたが長くなったので切りました ごめんなさい
吸血鬼、あるいはヴァンパイア。
夜に墓の中から蘇る自殺者、破門者、早く埋葬されすぎたものの死体が一般的にそう呼ばれる。彼らはその長くてするどい犬歯によって人の生き血を啜る。その様から、比喩的に無慈悲に人を苦しめ利益を搾り取る人間の意でも使われることもあるが、それは置いておいて。
血を吸われたひとはこの夜のおとないびとの虜になり、自身もまた吸血鬼へと変貌を遂げる。
太陽や十字架、聖水やニンニクが嫌い。とはいえ日光はともかく、ニンニクを鼻先に突きつけたり聖水をばら撒いてやったらちょっと怯むというくらいであり、真に、永久に、彼らを絶やすには銀の杭を胸に打ち込み、四つ辻に埋めなければならない。
彼らが表舞台に姿を表したのは古代ギリシアやスラヴ、ハンガリーの伝説だとされている。地方で囁かれる民話、伝説の類であった吸血鬼の存在が広く一般に広まったのはロマン派文学の起りである18世紀末以降のことだ。
9012夜に墓の中から蘇る自殺者、破門者、早く埋葬されすぎたものの死体が一般的にそう呼ばれる。彼らはその長くてするどい犬歯によって人の生き血を啜る。その様から、比喩的に無慈悲に人を苦しめ利益を搾り取る人間の意でも使われることもあるが、それは置いておいて。
血を吸われたひとはこの夜のおとないびとの虜になり、自身もまた吸血鬼へと変貌を遂げる。
太陽や十字架、聖水やニンニクが嫌い。とはいえ日光はともかく、ニンニクを鼻先に突きつけたり聖水をばら撒いてやったらちょっと怯むというくらいであり、真に、永久に、彼らを絶やすには銀の杭を胸に打ち込み、四つ辻に埋めなければならない。
彼らが表舞台に姿を表したのは古代ギリシアやスラヴ、ハンガリーの伝説だとされている。地方で囁かれる民話、伝説の類であった吸血鬼の存在が広く一般に広まったのはロマン派文学の起りである18世紀末以降のことだ。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第十二回目【ピアス】所要時間:1h+15min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
未必の故意など知らずに笑う(鍾タル) 習慣というものは当人の自覚よりもずっと執念深く居座り続けるものだ。毎日の何気ない行動は、日々塗り重ねられて自分という存在を形成する。他国で盛んな油彩の絵画がそれに近いのかもしれない。それは何千年でも、二十年かそこらの歳月でも大きくは変わらないだろう。
公子と性行為に及ぶことがひとつの「習慣」となってから暫く経つ。感情を伴わない即物的な欲求を正面からぶつけられたので、応えただけ。それだけの関係であり、特別、公子に対して何らかの感情を抱いているわけではなかった。向こうもそう変わりはないはずだ。単に都合が良いだけの利害の一致。――だが、好きな部位がひとつだけあった。
彼の耳が、どうにも好ましい。赤朽葉色の髪からのぞく、雪国の人間らしい白い肌。武人としては勲章であり、戦士たる証とも言える傷痕は彼の身体の至るところに残されているが、耳にはひとつとして残されていない。唯一、左耳にぽつりと小さな穴が開いているだけ。平時は耳飾りによって隠されたそれを目にしたことがある人物はそう多くはないだろう。それが行為のとき、興奮すると薄く朱が差す。裸体を晒されるよりもずっと、それが淫靡で仕方がないように思われた。
1821公子と性行為に及ぶことがひとつの「習慣」となってから暫く経つ。感情を伴わない即物的な欲求を正面からぶつけられたので、応えただけ。それだけの関係であり、特別、公子に対して何らかの感情を抱いているわけではなかった。向こうもそう変わりはないはずだ。単に都合が良いだけの利害の一致。――だが、好きな部位がひとつだけあった。
彼の耳が、どうにも好ましい。赤朽葉色の髪からのぞく、雪国の人間らしい白い肌。武人としては勲章であり、戦士たる証とも言える傷痕は彼の身体の至るところに残されているが、耳にはひとつとして残されていない。唯一、左耳にぽつりと小さな穴が開いているだけ。平時は耳飾りによって隠されたそれを目にしたことがある人物はそう多くはないだろう。それが行為のとき、興奮すると薄く朱が差す。裸体を晒されるよりもずっと、それが淫靡で仕方がないように思われた。
sky_no_suke
DOODLEリクエストのタル蛍(Chilumi)リクエストが具体的過ぎて、要望に応えられているかはわかりません。
『Childe kissing lumine's underboob while caressing the other boob』 2
piz_tk
DONEZhongchi premise mob male x ChildeThis is an erotic manga about stopping time.
The content of the fantasy play is that the pleasurable act performed while the time
PASS➡成人済ですか?
yes/no 6
watersky_q
DOODLE鍾タル。おしゃべり。稲妻から帰ってきたタルの短いお話。土産この時期にしては涼しい朝だった。
鍾離は往生堂の玄関を出て、階段を降り、すぐにその姿を目にとめた。
「・・・公子殿?」
橋の欄干の上に、見慣れたほっそりとした姿が立っている。額に手でひさしを作って、建物の間から朝日が昇る海を眺めているようだ。
「いつ戻った?」
今更、この男が橋の欄干に上るぐらいのことを気にする璃月人はいないだろう。そんなもの目ではないぐらいのやんちゃだと知れ渡っている。いや、七星ぐらいなら叱りつけるかもしれないが。
公子タルタリヤが旅人の少年に同行して稲妻へ向かったのは、ひと月ほど前だろうか。一度手紙が届いて、見たことのない仕掛けや侍との鍔迫り合いが楽しい、と書いてあった。
ぶわりと海風が彼の衣を靡かせる。こんなところに立って風を受ければ、常人なら足を滑らせてしまうだろうに、彼の真っ直ぐな立ち姿は一切揺らがない。
3801鍾離は往生堂の玄関を出て、階段を降り、すぐにその姿を目にとめた。
「・・・公子殿?」
橋の欄干の上に、見慣れたほっそりとした姿が立っている。額に手でひさしを作って、建物の間から朝日が昇る海を眺めているようだ。
「いつ戻った?」
今更、この男が橋の欄干に上るぐらいのことを気にする璃月人はいないだろう。そんなもの目ではないぐらいのやんちゃだと知れ渡っている。いや、七星ぐらいなら叱りつけるかもしれないが。
公子タルタリヤが旅人の少年に同行して稲妻へ向かったのは、ひと月ほど前だろうか。一度手紙が届いて、見たことのない仕掛けや侍との鍔迫り合いが楽しい、と書いてあった。
ぶわりと海風が彼の衣を靡かせる。こんなところに立って風を受ければ、常人なら足を滑らせてしまうだろうに、彼の真っ直ぐな立ち姿は一切揺らがない。
hariyama_jigoku
DONE鍾タル小説。モブ視点から見る鍾タル。「凄惨なエトランゼ」のおまけなので、読んでないとたぶんわかんない。不運だったと泣けばいい 独特の香が、鼻に纏わりつく。ここに来るのも少々久しぶりになると、息をついた。
あの日、公子から逃げ出した私は何事もなく家に帰り着いた。家族にはこっ酷く叱られ、その上服に跳ねていたらしい血を見咎められて数日家で反省するようにと謹慎を言い渡されていたのである。
流石にもう夜間に一人で外出することはしないと決めた。命の危機はもう当分御免だ。けれど、往生堂へ来ることは別である。太陽は高く、今は昼を少し過ぎた頃合いだ。
結局口実にしていた用事は、他の者が済ませてしまっている。それでもここに来たのは、件の公子のことが気にかかるのと鍾離にせめてこちらの気持ちを知って欲しかったからだ。何用と問われれば、あなたに会いたいから来た、と正面切って伝えるつもりである。どう転ぼうと、それは進展には違いない。想いを打ち明ける恐れはあるものの、部屋で反省する日々の中で覚悟ならとうに決めた。
3478あの日、公子から逃げ出した私は何事もなく家に帰り着いた。家族にはこっ酷く叱られ、その上服に跳ねていたらしい血を見咎められて数日家で反省するようにと謹慎を言い渡されていたのである。
流石にもう夜間に一人で外出することはしないと決めた。命の危機はもう当分御免だ。けれど、往生堂へ来ることは別である。太陽は高く、今は昼を少し過ぎた頃合いだ。
結局口実にしていた用事は、他の者が済ませてしまっている。それでもここに来たのは、件の公子のことが気にかかるのと鍾離にせめてこちらの気持ちを知って欲しかったからだ。何用と問われれば、あなたに会いたいから来た、と正面切って伝えるつもりである。どう転ぼうと、それは進展には違いない。想いを打ち明ける恐れはあるものの、部屋で反省する日々の中で覚悟ならとうに決めた。
hariyama_jigoku
DONE鍾タル小説。完成~~。先生に片想いしてるモブ視点の公子。先生最後まで出てこなかった。凄惨なエトランゼ3「ん、今気が付いたの?」
へらりと相貌を崩した様子は、確かに往生堂で時折見かける鍾離が「公子殿」と呼ぶその人だった。璃月に滞在している執行官、そして鍾離が呼びかけた公子という呼称。背筋をたらりと汗が伝う。自身の不運を嘆くことより、気付かなかった己に嫌気が刺す。男の気安さと年若さからすっかり失念していたのだ、よもや執行官を目の敵にしていたとは本当に笑えない。
「先生も公子って呼んでるし、とっくに気が付いてたと思ったよ。もしかして俺ってそんなに有名じゃなかったかな」
ううん、と首を捻った様子は年の若さも相まって、益々公子とのイメージを乖離させる。だが、瞼には先程の凄惨な光景が焼き付いていた。機嫌を損ねてはいけない。先の光景で倒れていたのは、一歩間違えば自分かもしれなかった。今も、神の目を持つ彼の前では掌の上のようなものである。冷静になろうと小さく息を吐いた。
1304へらりと相貌を崩した様子は、確かに往生堂で時折見かける鍾離が「公子殿」と呼ぶその人だった。璃月に滞在している執行官、そして鍾離が呼びかけた公子という呼称。背筋をたらりと汗が伝う。自身の不運を嘆くことより、気付かなかった己に嫌気が刺す。男の気安さと年若さからすっかり失念していたのだ、よもや執行官を目の敵にしていたとは本当に笑えない。
「先生も公子って呼んでるし、とっくに気が付いてたと思ったよ。もしかして俺ってそんなに有名じゃなかったかな」
ううん、と首を捻った様子は年の若さも相まって、益々公子とのイメージを乖離させる。だが、瞼には先程の凄惨な光景が焼き付いていた。機嫌を損ねてはいけない。先の光景で倒れていたのは、一歩間違えば自分かもしれなかった。今も、神の目を持つ彼の前では掌の上のようなものである。冷静になろうと小さく息を吐いた。
saku_0_35
TRAININGいただいたお題③CP 行秋とタルタリヤ
一言セリフ 「なんでこれ入れた?」
シチュ お昼ご飯中
関係性 お友達
制限時間 1時間30分
舌先寸分「…公子殿、本当に大丈夫なのかい?」
行秋は普段こそあまり動揺を見せることのない筈の顔を僅かに歪めながら、目の前の男にそう問うた。
「ハハッ、心配しなくても、これでも俺は料理だって結構得意なんだよ。」
不安そうな行秋をよそに、問われた方の男といえば「楽しみにしていてくれ」などと言ってからりと笑う。
手には持参した調理用のお玉を持ち、さらにその目の前、行秋との間にはグツグツと小気味の良い音をたてる鍋がある。
眉を歪めたままの行秋が恐々と身を乗り出し鍋の中を覗き込めば、良く煮立った鍋の中にはあらゆる食材が見え隠れしていた。
「獣肉、玉ねぎ、トマト…と、この見え隠れしている水色のものは…ミントかい?」
「あぁ。モンドや璃月でも料理に良く使うだろう?本当は違う香草があれば良いんだけどね、無いなら代用するしかない。」
2043行秋は普段こそあまり動揺を見せることのない筈の顔を僅かに歪めながら、目の前の男にそう問うた。
「ハハッ、心配しなくても、これでも俺は料理だって結構得意なんだよ。」
不安そうな行秋をよそに、問われた方の男といえば「楽しみにしていてくれ」などと言ってからりと笑う。
手には持参した調理用のお玉を持ち、さらにその目の前、行秋との間にはグツグツと小気味の良い音をたてる鍋がある。
眉を歪めたままの行秋が恐々と身を乗り出し鍋の中を覗き込めば、良く煮立った鍋の中にはあらゆる食材が見え隠れしていた。
「獣肉、玉ねぎ、トマト…と、この見え隠れしている水色のものは…ミントかい?」
「あぁ。モンドや璃月でも料理に良く使うだろう?本当は違う香草があれば良いんだけどね、無いなら代用するしかない。」
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第九回目【自由】所要時間:1h20min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
その唇で教えて(鍾タル) はじめて触れた唇の感触は想像以上に柔らかで、少しだけ乾いているのが意外だった。もっと硬いと思っていた。あるいは、柔らかであるならば若芽のように艶やかであるのかとも思われた。実際はいずれとも違う。若々しいけれど危うくはなく、輪郭の形が定まっている。それがきっとこの男のてざわりなのだろう。――いや、待て。俺は一体、何をした。
はじめて触れ、確かめた感触の情報量を取り込むことに気を取られていた頭に、己のしでかした問題が追い付いてくる。くちづけてしまった。この男に。よりにもよって、公子に。ああ、惜しい。もう一度重ねた。そのあたりで、漸く我に返る。
その回数は合計三度に及んだ。口を吸ってから三度目に迅速に顔を離す。公子の顔は、あろうことか、笑っている。その唇がなにごとかを紡ぐ前に、手で塞いだ。平時から手袋を身に着けていることに安堵したのはこれがはじめてだ。素手だったら何をしていたか、想像するだけで頭痛がする。
2072はじめて触れ、確かめた感触の情報量を取り込むことに気を取られていた頭に、己のしでかした問題が追い付いてくる。くちづけてしまった。この男に。よりにもよって、公子に。ああ、惜しい。もう一度重ねた。そのあたりで、漸く我に返る。
その回数は合計三度に及んだ。口を吸ってから三度目に迅速に顔を離す。公子の顔は、あろうことか、笑っている。その唇がなにごとかを紡ぐ前に、手で塞いだ。平時から手袋を身に着けていることに安堵したのはこれがはじめてだ。素手だったら何をしていたか、想像するだけで頭痛がする。
hariyama_jigoku
PROGRESS鍾タル小説。途中。先生に片想いしてるモブ視点。先生全然出てこないです。凄惨なエトランゼ2 先程までこちらに向けられていた敵意が、一気に目の前に現れた男への怯えに変わる。一歩、一歩と男の足取りはゆったりとしたものだったが、相手を射すくめるような何かがあった。
「なんでって……さあ、どうしてだろうね」
―――執行官。悪名高いファデュイを統率する、幾人かの精鋭。璃月に滞在しているとは聞いていたものの、まさかこんなタイミングに出くわすなんて。周りの空気の温度が、一気に下がったような錯覚を起こす。噂ではあるが、岩王帝君を真に暗殺したのはまさにあの執行官なのではないかと言われていたのだ。
「と、とにかく逃げるぞッ!!」
張り詰めた空気を裂くように、男の内の一人が叫ぶ。それに呼応してかもう一人も走り出そうとするが、その間隙をついて影が走った。
1163「なんでって……さあ、どうしてだろうね」
―――執行官。悪名高いファデュイを統率する、幾人かの精鋭。璃月に滞在しているとは聞いていたものの、まさかこんなタイミングに出くわすなんて。周りの空気の温度が、一気に下がったような錯覚を起こす。噂ではあるが、岩王帝君を真に暗殺したのはまさにあの執行官なのではないかと言われていたのだ。
「と、とにかく逃げるぞッ!!」
張り詰めた空気を裂くように、男の内の一人が叫ぶ。それに呼応してかもう一人も走り出そうとするが、その間隙をついて影が走った。
kanamisaniwa
MAIKING鍾タル古き吟遊詩人の詩
昔々、未だ世界が争いと苦難に満ちていた頃。
璃月の側に崑崙山という山があった。
世界創世の頃より存在し多くの道士、仙人を要したこの山は、魔神戦争において戦場となり死と血と多く吸い込み多くの汚れを抱えた。
誇り高き崑崙山の民達はそれでも移住をよしとせず、仙達と力を合わせ山の浄化を試みたが力及ばず…やがて汚れから魔が生まれたことで壊滅的な損害を受けた。
魔は汚れを撒き散らしながら山の民を殺し、道士をなぶりものにし、仙を食いあさった。
かつては百を越えた仙達は魔との戦いで、一人、また一人と数を減らし…ついに12仙を数えるまでに追い詰められた。
追い詰められた崑崙山の民と仙は、璃月の守護者、七神の一柱岩王帝君モラクスに助けを求めた。
6275昔々、未だ世界が争いと苦難に満ちていた頃。
璃月の側に崑崙山という山があった。
世界創世の頃より存在し多くの道士、仙人を要したこの山は、魔神戦争において戦場となり死と血と多く吸い込み多くの汚れを抱えた。
誇り高き崑崙山の民達はそれでも移住をよしとせず、仙達と力を合わせ山の浄化を試みたが力及ばず…やがて汚れから魔が生まれたことで壊滅的な損害を受けた。
魔は汚れを撒き散らしながら山の民を殺し、道士をなぶりものにし、仙を食いあさった。
かつては百を越えた仙達は魔との戦いで、一人、また一人と数を減らし…ついに12仙を数えるまでに追い詰められた。
追い詰められた崑崙山の民と仙は、璃月の守護者、七神の一柱岩王帝君モラクスに助けを求めた。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第八回目【キス】所要時間:1h50min
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
・色街の話題が出る
だってそんな目をするから(鍾タル) 手に届きそうで手が届かないときが一番欲しいと思う。触れられそうで触れられないものに触れたいと思う。焦らされるほどそそられる。人間の欲望はそういう風にできている。あの時、そんな当たり前に気が付かなかった自分が恨めしくて仕方がなかった。
「公子」タルタリヤは後悔していた。あの日、鍾離先生にキスをしてしまったことに。それもただのキスではない。あの記憶力が良すぎる男に何も残さないようにだなんて馬鹿な配慮をして、水越しに唇を合わせた。今思えば魔が差したの一言に尽きるが、あの瞬間の自分としては、別れのキスのようなニュアンスがあったのだと思う。まったく、相当酔っていたとはいえ女々しいことこの上ない。馬鹿野郎が。明日別れるならまだしも、いつ別れの日が来るかだなんて数日後か、数か月後か、数年後かなんてわかりもしないのに。
2421「公子」タルタリヤは後悔していた。あの日、鍾離先生にキスをしてしまったことに。それもただのキスではない。あの記憶力が良すぎる男に何も残さないようにだなんて馬鹿な配慮をして、水越しに唇を合わせた。今思えば魔が差したの一言に尽きるが、あの瞬間の自分としては、別れのキスのようなニュアンスがあったのだと思う。まったく、相当酔っていたとはいえ女々しいことこの上ない。馬鹿野郎が。明日別れるならまだしも、いつ別れの日が来るかだなんて数日後か、数か月後か、数年後かなんてわかりもしないのに。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第七回目【契約】所要時間:3h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
眩暈の所為にしてもいいですか(鍾タル) 例外を認めてはならない。越境を許してはならない。妥協してはならない。それは人を弱くする。魔神とてそれが変わらない原則なのだということを、いやというほど思い知っていた。
彼が横たわる却砂材製の寝台は、何から何まで一級品が揃えられているようだった。さぞ素晴らしい寝心地だろう。一般人が横になればどんな不眠の持ち主であろうとも、そのまま昏々と眠れるに違いない。しかし実際、この寝室の主である男は何者かが近寄ればすぐさま飛び起き、喉元に刃を突き付けることができてしまうだろう。しかも、嬉々として。
今、公子の枕元に立てている状況も、凡人となった身の上でも使える程度の仙術を行使しなければ叶わなかった。寝込みを襲おうとしたのが悪いという口実で歓喜のまま襲いかかられては堪らない。たとえそれで生じた損害をすべて彼が被ることになるのだとしても、だ。
2616彼が横たわる却砂材製の寝台は、何から何まで一級品が揃えられているようだった。さぞ素晴らしい寝心地だろう。一般人が横になればどんな不眠の持ち主であろうとも、そのまま昏々と眠れるに違いない。しかし実際、この寝室の主である男は何者かが近寄ればすぐさま飛び起き、喉元に刃を突き付けることができてしまうだろう。しかも、嬉々として。
今、公子の枕元に立てている状況も、凡人となった身の上でも使える程度の仙術を行使しなければ叶わなかった。寝込みを襲おうとしたのが悪いという口実で歓喜のまま襲いかかられては堪らない。たとえそれで生じた損害をすべて彼が被ることになるのだとしても、だ。
hariyama_jigoku
PROGRESS鍾タル小説。途中。先生に片想いしてるモブ視点。鍾タル全然出てこないです。凄惨なエトランゼ1 息を切らして、夜道を駆ける。日は既にとっぷり暮れていて、人の姿も疎らな璃月港の細道を急いでいた。
目的はただのお使いである。それも、ただの書簡を届けるだけのもので、わざわざ商家の娘がこんな時間に供もつけずに家を飛び出すほどの用事ではない。けれど、自分にとってはこれ以上ない口実であった。
荷物を大事に抱え直しながら、頭の中に想い人の顔を浮かべる。―――往生堂の鍾離様。端正なお顔立ちはさることながら、博識で璃月について知らぬことはないと語る者を多く知っていた。噂では武芸にも達者であるらしい。
皆が嫌がる往生堂への使いを引き受けているのも、偏に鍾離と親しくなるためであった。それでもかの御仁の反応は芳しくない。勿論素っ気ない対応をされたという訳ではないし、彼自身は極めて紳士的だ。だが、それがどうにも一線を引いているように感じられる。それに―――。
2189目的はただのお使いである。それも、ただの書簡を届けるだけのもので、わざわざ商家の娘がこんな時間に供もつけずに家を飛び出すほどの用事ではない。けれど、自分にとってはこれ以上ない口実であった。
荷物を大事に抱え直しながら、頭の中に想い人の顔を浮かべる。―――往生堂の鍾離様。端正なお顔立ちはさることながら、博識で璃月について知らぬことはないと語る者を多く知っていた。噂では武芸にも達者であるらしい。
皆が嫌がる往生堂への使いを引き受けているのも、偏に鍾離と親しくなるためであった。それでもかの御仁の反応は芳しくない。勿論素っ気ない対応をされたという訳ではないし、彼自身は極めて紳士的だ。だが、それがどうにも一線を引いているように感じられる。それに―――。
kino_fic
DONE鍾タルワンライ・第六回目【休暇】所要時間:2.5h
(!)注意
・魔神第1章3幕までのネタバレ
交わって、離れて、その先は(鍾タル) 出来心だった。一人で過ごす時間は決して嫌いではないけれど、誰か、一緒にいて楽しめる人間がいるならもっといいと思っている。あのとき、旅人以外にと考えたときに、一番に思い当たったのが鍾離先生だった。ただ、それだけだ。――彼には、そう伝えていた。
時を遡ること数日前。久しぶりに会った旅人と手合わせと食事をして、満足な一日を過ごしたときのことだった。もうじき稲妻に発つ予定だという旅人は、もしタルタリヤがよければお願いがあるんだけど、と言って塵歌壺を取り出した。曰く、稲妻に発つにあたって暫く出入りができるか、どうなるかもわからないから気が向いたときに中の様子を見に行って欲しい、と。向こうでの寝食を心配したが旅人とおチビちゃんは平気な顔をして胸を張っていた。まったく逞しいことで何よりだ。そうして暫くの間、旅人の塵歌壺を預かることになった。
3177時を遡ること数日前。久しぶりに会った旅人と手合わせと食事をして、満足な一日を過ごしたときのことだった。もうじき稲妻に発つ予定だという旅人は、もしタルタリヤがよければお願いがあるんだけど、と言って塵歌壺を取り出した。曰く、稲妻に発つにあたって暫く出入りができるか、どうなるかもわからないから気が向いたときに中の様子を見に行って欲しい、と。向こうでの寝食を心配したが旅人とおチビちゃんは平気な顔をして胸を張っていた。まったく逞しいことで何よりだ。そうして暫くの間、旅人の塵歌壺を預かることになった。
hariyama_jigoku
DONE鍾タル小説。二人とも先天的女体化してますがあんまそんな感じしない。一人称の差異は趣味です。香膏の話。纏う香 昼下がりのチ虎岩はこれからが働き盛りというように、忙しなく人が行き交っている。その人の波を縫うように、タルタリヤと鍾離は連れ合って歩いていた。
「はあ、俺もうお腹いっぱい」
タルタリヤはそう言って、肩を竦める。鍾離の薦める店は、値段を気にしなければ基本的に外れはない。珍しく誘い合わせたわけでもないのに昼食前に出くわしたのは、僥倖であったといえよう。
「それは良かった」
鍾離はそっと花が綻ぶように笑う。いつもはあまり表情を変えることの少ない鍾離だが、こうして微笑み一つ取ってみても女のタルタリヤから見て端正だと言って遜色ない。璃月の伝統に精通していて、こんなに見目麗しいとくる。多少金銭感覚に疎いところはあるが、そこは甲斐性の見せ所だろう。
4556「はあ、俺もうお腹いっぱい」
タルタリヤはそう言って、肩を竦める。鍾離の薦める店は、値段を気にしなければ基本的に外れはない。珍しく誘い合わせたわけでもないのに昼食前に出くわしたのは、僥倖であったといえよう。
「それは良かった」
鍾離はそっと花が綻ぶように笑う。いつもはあまり表情を変えることの少ない鍾離だが、こうして微笑み一つ取ってみても女のタルタリヤから見て端正だと言って遜色ない。璃月の伝統に精通していて、こんなに見目麗しいとくる。多少金銭感覚に疎いところはあるが、そこは甲斐性の見せ所だろう。
かいと
TRAINING鍾タルワンドロ・ワンライ 第五回 お題「祝福」で書かせて頂きました。前回投稿の設定の続きになってしまいました→https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=9112&TD=4862537 読まずとも、両片想いだった二人、公子が今際の際に魂をあげることを約束して、生まれ変わった公子が先生と再会した後って事を念頭に置いて頂ければ十分かと思います。 生まれ変わった俺が先生と再会して約半年経った。
大人と子供がどうやって交流するんだって思ったけど、実は先生はお隣の大きな空き家に越してきた人で、近くの大学の客員教授してたり、歴史関係の執筆活動をしたりする有名な先生で身分もしっかりしている上に以前より完璧に“凡人らしく”振舞えるようになっていたので気付けば俺の家族とも仲良くなっていて、
「先生、お邪魔するよ」
「あぁ。良く来たな“公子殿”」
"物知りな鍾離先生に懐いてる俺"が、先生の家に頻繁に泊まりに行くのも家族に何も不思議がられる事が無いくらい俺の家族と馴染んでいた。
先生に再会した時に前世の記憶を思い出したので精神的にはとっくに成人しているけど、見た目はまだまだ子供だから前の人生と続きの関係を築くには、色んな意味で人目をはばかる必要がある。
2560大人と子供がどうやって交流するんだって思ったけど、実は先生はお隣の大きな空き家に越してきた人で、近くの大学の客員教授してたり、歴史関係の執筆活動をしたりする有名な先生で身分もしっかりしている上に以前より完璧に“凡人らしく”振舞えるようになっていたので気付けば俺の家族とも仲良くなっていて、
「先生、お邪魔するよ」
「あぁ。良く来たな“公子殿”」
"物知りな鍾離先生に懐いてる俺"が、先生の家に頻繁に泊まりに行くのも家族に何も不思議がられる事が無いくらい俺の家族と馴染んでいた。
先生に再会した時に前世の記憶を思い出したので精神的にはとっくに成人しているけど、見た目はまだまだ子供だから前の人生と続きの関係を築くには、色んな意味で人目をはばかる必要がある。
watersky_q
DONE鍾タル。7/24ワンライ「祝福」より。お誕生日後日談な鍾タル。
祝福の音歌が聞こえる。
聞き覚えのあるその音色に、鍾離はぴたりと足を止めた。手には不卜廬の紙袋。これから往生堂へ帰ろうと、石造り階段に足をかけたところだった。
「・・・公子殿?」
この歌を知っている者が、鍾離には彼の他に思いつかなかった。鍾離自身、これはスネージナヤの歌だと彼に教えて貰ったのだから。鍾離はくるりと方向転換して、歌が聞こえるほうへ向かった。
不卜廬のすぐ脇、建物の傍らから聞こえる歌を追っていくと、思った通りの人物がそこにいた。石の欄干に背中を預け、如何にも愛おしそうな目をして手元の紙のようなものを眺めて、歌っている。
何と美しいものだろう。今から日が落ちようという璃月の街を背景に、彼の声は波が囀るかのようだ。
3206聞き覚えのあるその音色に、鍾離はぴたりと足を止めた。手には不卜廬の紙袋。これから往生堂へ帰ろうと、石造り階段に足をかけたところだった。
「・・・公子殿?」
この歌を知っている者が、鍾離には彼の他に思いつかなかった。鍾離自身、これはスネージナヤの歌だと彼に教えて貰ったのだから。鍾離はくるりと方向転換して、歌が聞こえるほうへ向かった。
不卜廬のすぐ脇、建物の傍らから聞こえる歌を追っていくと、思った通りの人物がそこにいた。石の欄干に背中を預け、如何にも愛おしそうな目をして手元の紙のようなものを眺めて、歌っている。
何と美しいものだろう。今から日が落ちようという璃月の街を背景に、彼の声は波が囀るかのようだ。