sayuta38
DONE現パロショショ布団でゴロゴロしたり、デートしてみたりしようとする話
有意義な時間「鍾離様……もうだいぶ日が昇っています……」
「そのようだな」
「お、起きないのですか……?」
「今日は休みだ。お前とまだこうしていたい」
「先程もそう仰ってましたよね」
「つまりまだ起きないということだ」
今日は日曜日で、魈のバイトもなく二人とも休みの日であった。鍾離の部屋で一夜を過ごし、ずっと身体をくっつけていたようなものだが、朝になっても鍾離は腕に魈を抱いたままだった。
「朝ごはんは……」
「お前はいつも食べなくても良いと言っているだろう」
「洗濯は……」
「洗濯機に乾燥まで任せておけばいい」
布団から起き上がる口実を即座に潰されていく。そればかりか腕の拘束が強くなった。出ていこうとする身体を後ろから抱き締められている。
3724「そのようだな」
「お、起きないのですか……?」
「今日は休みだ。お前とまだこうしていたい」
「先程もそう仰ってましたよね」
「つまりまだ起きないということだ」
今日は日曜日で、魈のバイトもなく二人とも休みの日であった。鍾離の部屋で一夜を過ごし、ずっと身体をくっつけていたようなものだが、朝になっても鍾離は腕に魈を抱いたままだった。
「朝ごはんは……」
「お前はいつも食べなくても良いと言っているだろう」
「洗濯は……」
「洗濯機に乾燥まで任せておけばいい」
布団から起き上がる口実を即座に潰されていく。そればかりか腕の拘束が強くなった。出ていこうとする身体を後ろから抱き締められている。
sayuta38
DONEしょしょかいと~さいその後のif話祭りのあと「鍾離様……そろそろ……」
「まだ休んでいても良いだろう。お前にも休息は必要だ」
海灯祭が終わり、先日まであった璃月港の賑やかな灯りは、まるで何事もなかったかのように跡形もない。祭りのあとの静けさや寂しさなどは全く感じないが、璃月港は今日も相変わらず船の往来が多く賑わい、平穏な生活が続いているように見える。
往生堂もそれほど今は忙しくないようで、鍾離も少し空いている時間があるらしい。やっとのことで魈が望舒旅館へ戻り、敷布の上で羽を休めた次の日には、日の出と共に鍾離が望舒旅館へ来ていた。
着の身着のままで横になっていたのだが、鍾離が来るとなるとせめて湯浴みくらいは済ませておきたかった。
それを伝えると、俺がやるから良い。と静かに言われ、あっという間に鍾離の洞天へと連れて行かれた。
1957「まだ休んでいても良いだろう。お前にも休息は必要だ」
海灯祭が終わり、先日まであった璃月港の賑やかな灯りは、まるで何事もなかったかのように跡形もない。祭りのあとの静けさや寂しさなどは全く感じないが、璃月港は今日も相変わらず船の往来が多く賑わい、平穏な生活が続いているように見える。
往生堂もそれほど今は忙しくないようで、鍾離も少し空いている時間があるらしい。やっとのことで魈が望舒旅館へ戻り、敷布の上で羽を休めた次の日には、日の出と共に鍾離が望舒旅館へ来ていた。
着の身着のままで横になっていたのだが、鍾離が来るとなるとせめて湯浴みくらいは済ませておきたかった。
それを伝えると、俺がやるから良い。と静かに言われ、あっという間に鍾離の洞天へと連れて行かれた。
sayuta38
DONEしょしょドロライ7回目お題「海灯祭」祭りの期間中は先生に会わないと決めていた魈の話。
街の灯り「う……」
木の上に座って、気絶するように僅かな休息を取って瞼を開ける。横になって眠ったのはどれくらい前であったかも忘れた。
疲労を感じる暇もないくらいに、連日妖魔が現れる。屠っても終わりがなく、まるで魔神戦争の渦中にいるかのようだ。
休める時に休み、妖魔の気配がすればすぐに動き出す。その繰り返しで朝も昼も夜もない。海灯祭の期間は毎年そうだ。百年以上そうしてきたのだから、今更それに対しては何も思うことはない。
鍾離から貰った薬を口に放り込んで噛み砕く。正直苦くてあまり口にしたくはないが、これがないといつ魔に堕ちてしまうかわからない。街の灯火の中に入りたいとは思わないが、折角凡人が祭り事で盛り上がっている中、災厄をもたらす存在になることだけは避けたかった。
3785木の上に座って、気絶するように僅かな休息を取って瞼を開ける。横になって眠ったのはどれくらい前であったかも忘れた。
疲労を感じる暇もないくらいに、連日妖魔が現れる。屠っても終わりがなく、まるで魔神戦争の渦中にいるかのようだ。
休める時に休み、妖魔の気配がすればすぐに動き出す。その繰り返しで朝も昼も夜もない。海灯祭の期間は毎年そうだ。百年以上そうしてきたのだから、今更それに対しては何も思うことはない。
鍾離から貰った薬を口に放り込んで噛み砕く。正直苦くてあまり口にしたくはないが、これがないといつ魔に堕ちてしまうかわからない。街の灯火の中に入りたいとは思わないが、折角凡人が祭り事で盛り上がっている中、災厄をもたらす存在になることだけは避けたかった。
YmLiBItnyo12595
DONE『黎明』年の終わりも始まりも、特に変わらない魈の話。
(時間軸としては『生辰』の一年前くらいを想定)
登場人物⇒魈、鍾離、旅人(空)、パイモン
・注意事項
捏造解釈設定が多々あります。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第6回お題【①初日の出+②札遊び】
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
(https://pirirara.com/) 10
sayuta38
DONE鍾魈小話現パロ軸おててつなぎたいしょしょ
手を繋ぎたい「魈、お疲れ様」
「! 鍾離様」
バイト先の通用口の扉を開けると、鍾離がそこに立っていてぎょっとしてしまった。
「今日は俺も遅かったので迎えに来たんだ。一緒に帰ろう」
「は、はい」
迎えに来てくれたことには素直に嬉しく感じる。家に帰れば顔は見れるのだが、いつもは一人で帰る道のりを、隣に鍾離が居てくれるのはそれだけで気持ちが綻ぶ。
鍾離が歩き出したので、急ぎ足でそれに追いつき並んで歩く。てっきり車で来ているものかと思ったが、どうやら歩いて来ているようだった。
駅まで約徒歩十分、そこから電車に乗って一駅、更に歩いて十分くらいのところに二人で住んでいる家がある。今日は何の御飯も用意出来なかったので、最寄り駅についたら何か食べて帰ろうか。と鍾離は言っていた。
2973「! 鍾離様」
バイト先の通用口の扉を開けると、鍾離がそこに立っていてぎょっとしてしまった。
「今日は俺も遅かったので迎えに来たんだ。一緒に帰ろう」
「は、はい」
迎えに来てくれたことには素直に嬉しく感じる。家に帰れば顔は見れるのだが、いつもは一人で帰る道のりを、隣に鍾離が居てくれるのはそれだけで気持ちが綻ぶ。
鍾離が歩き出したので、急ぎ足でそれに追いつき並んで歩く。てっきり車で来ているものかと思ったが、どうやら歩いて来ているようだった。
駅まで約徒歩十分、そこから電車に乗って一駅、更に歩いて十分くらいのところに二人で住んでいる家がある。今日は何の御飯も用意出来なかったので、最寄り駅についたら何か食べて帰ろうか。と鍾離は言っていた。
sayuta38
DONE鍾魈小話現パロ寒い日に一緒の布団で寝るしょしょの話
こんな寒い日は「寒い……」
家で独り言を呟かずにいられない程、今日は寒さを感じていた。
床は氷の上を歩いているかのように冷たい。普段はスリッパなどいらないと思っているが、この時ばかりは鍾離の買ってきた鳥の顔がついているふわふわのそれを履いて廊下を歩いた。
荷物を部屋に置き、リビングの暖房を入れる。仙人であった頃は暑さや寒さなど気にしたことはなかったが、凡人の身に寒さはとても堪える。風邪を引くわけにもいかないのでこたつの電源も入れ、しばし身を潜らせて部屋が暖まるのを待った。
今日は鍾離が帰ってくるまでに晩御飯を作らねばならない。何か身体の温まるものが良いかと、今日は鍋を作ることにした。材料さえあればあとは放り込んでおくだけで良く、あまり失敗の少ない料理だ。
3082家で独り言を呟かずにいられない程、今日は寒さを感じていた。
床は氷の上を歩いているかのように冷たい。普段はスリッパなどいらないと思っているが、この時ばかりは鍾離の買ってきた鳥の顔がついているふわふわのそれを履いて廊下を歩いた。
荷物を部屋に置き、リビングの暖房を入れる。仙人であった頃は暑さや寒さなど気にしたことはなかったが、凡人の身に寒さはとても堪える。風邪を引くわけにもいかないのでこたつの電源も入れ、しばし身を潜らせて部屋が暖まるのを待った。
今日は鍾離が帰ってくるまでに晩御飯を作らねばならない。何か身体の温まるものが良いかと、今日は鍋を作ることにした。材料さえあればあとは放り込んでおくだけで良く、あまり失敗の少ない料理だ。
sayuta38
DONE鍾魈現パロ小話 隠し事をするしょに対してそれを聞きたい先生の話やきもちその③ 近頃、バイトからの魈の帰宅時間が遅い。時間で言うと三十分程度なのだが、訳を尋ねても「少し……」と言うばかりだ。それ以上尋問する気はないが、普段寄り道をしない魈が、こうも連日訳も話さず帰りが遅いのは気になる。バイトが終わる頃に車で迎えに行こうかと打診してみたが、断られてしまった。
魈にも生活があり、今や鍾離と二人だけの世界という訳でもない。友人と食事に行くことは喜ばしいし、彼が外へ興味を持つことは良いことだと感じる。それはそれなのだが、気になることには変わりない。
魈は世間の移り変わりがよく知れる。という理由で書店でバイトをしている。バイトの終わり時間は二十二時。そこから三十分もすれば帰ってくるのだが、今日も二十三時近い帰宅であった。
4772魈にも生活があり、今や鍾離と二人だけの世界という訳でもない。友人と食事に行くことは喜ばしいし、彼が外へ興味を持つことは良いことだと感じる。それはそれなのだが、気になることには変わりない。
魈は世間の移り変わりがよく知れる。という理由で書店でバイトをしている。バイトの終わり時間は二十二時。そこから三十分もすれば帰ってくるのだが、今日も二十三時近い帰宅であった。
sayuta38
DONEしょしょワンドロ6回目お題「やきもち」現パロのやきもち
やきもち(現パロ)「鍾離先生! 卒論このままじゃ終わらなくて、助けて欲しいの!」
「それは……この場に来ている場合ではないのではないか? しかし、俺であれば助言しよう」
「ずるい! 私も今日先生に聞きたいことがあったのに!」
「順番に聞くので、まとめておいてもらえないか?」
魈は何故この場に来てしまったのかと、色々な香水の匂いが混ざり漂う空間に頭を痛めながら、早くも後悔していた。
授業を受け持っている子達がどうしてもというので、一度夜に食事に行くことになった。と告げられたのは数日前のことだ。断れなくてすまない。という鍾離に、別に構いません。と返した。鍾離のことだ。さぞ人気の教授なのだろう。
「女性も来るのだが、お前は気にならないのか?」
3610「それは……この場に来ている場合ではないのではないか? しかし、俺であれば助言しよう」
「ずるい! 私も今日先生に聞きたいことがあったのに!」
「順番に聞くので、まとめておいてもらえないか?」
魈は何故この場に来てしまったのかと、色々な香水の匂いが混ざり漂う空間に頭を痛めながら、早くも後悔していた。
授業を受け持っている子達がどうしてもというので、一度夜に食事に行くことになった。と告げられたのは数日前のことだ。断れなくてすまない。という鍾離に、別に構いません。と返した。鍾離のことだ。さぞ人気の教授なのだろう。
「女性も来るのだが、お前は気にならないのか?」
YmLiBItnyo12595
DONE『愛着』鍾離が飼っているガビチョウを連れて、魈に会いに来た時の話。
・注意事項
過去捏造設定があったり、魈が鳥の声を理解出来たり、話せたりします。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第6回お題③『やきもち』
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
(https://pirirara.com/) 9
sayuta38
DONE鍾魈小話。現パロ。鍾離が飲み会に行くので魈も飲み会に行く話
飲み会の日 今日は珍しく、鍾離が飲み会で夜にいない日だった。散々魈もやれ大学やらバイト先やらの人と飲みに行っているので、飲み会に鍾離が行くこと自体は別に何とも思わない。しかし魈を気遣ってか、大抵の飲み会はいつも断って帰ってくる。何千年も一緒にいるのに、同じ家に帰ってきて食事をするのを楽しみにしている。と言われてしまえば返す言葉に詰まってしまい、そうですか。としか言えなくなる。
他に誰も居ない、二人だけの家で生活を始めて数年が経った。最低限の物音しかしない静かな暮らしだ。
鍾離は近くにいることはわかっていたが、高校へ行っていた時にたまたま実習生として授業に来ていたことで再会を果たせた時には、訳もわからず涙が溢れて仕方がなかった。高校卒業と同時に鍾離の家に転がり込んでいるような状況だが、鍾離の家は元からいつ魈が来てもいいように一部屋開けてあったらしい。
3284他に誰も居ない、二人だけの家で生活を始めて数年が経った。最低限の物音しかしない静かな暮らしだ。
鍾離は近くにいることはわかっていたが、高校へ行っていた時にたまたま実習生として授業に来ていたことで再会を果たせた時には、訳もわからず涙が溢れて仕方がなかった。高校卒業と同時に鍾離の家に転がり込んでいるような状況だが、鍾離の家は元からいつ魈が来てもいいように一部屋開けてあったらしい。
sayuta38
DONE鍾魈短文「まだ眠りたい」現パロ。同棲している二人のなんでもない朝の日。
まだ眠りたい 鍾離は月に一度くらい、朝全く起きてこないことがある。
平日は魈が起きて来た時には既に朝食の用意が終わっている。それくらいには朝早く起きているというのに、今日はもうすぐ昼になろうとしていたが、リビングに鍾離は来なかった。
元々朝食は食べなくても平気なので、鍾離に見つからないことをいいことに抜いた。代わりにホットミルクを飲みながら課題に手をつけていたのだが、昼飯はどうしようかとそろそろ考える時間になってしまった。
そもそも、今日は朝から買い物に行こうと鍾離は言っていたはずだ。ここで空や甘雨が相手なら分単位で寝坊した時間を伝えるのだが、鍾離の前となると話は別だ。鍾離も疲れて眠りこけることもあるだろう。そう思っていたが、万が一鍾離が体調不良ということもある。今日の予定をどうするのか確認すると共に、鍾離の様子を伺おうと立ち上がった。
2096平日は魈が起きて来た時には既に朝食の用意が終わっている。それくらいには朝早く起きているというのに、今日はもうすぐ昼になろうとしていたが、リビングに鍾離は来なかった。
元々朝食は食べなくても平気なので、鍾離に見つからないことをいいことに抜いた。代わりにホットミルクを飲みながら課題に手をつけていたのだが、昼飯はどうしようかとそろそろ考える時間になってしまった。
そもそも、今日は朝から買い物に行こうと鍾離は言っていたはずだ。ここで空や甘雨が相手なら分単位で寝坊した時間を伝えるのだが、鍾離の前となると話は別だ。鍾離も疲れて眠りこけることもあるだろう。そう思っていたが、万が一鍾離が体調不良ということもある。今日の予定をどうするのか確認すると共に、鍾離の様子を伺おうと立ち上がった。
sayuta38
DONE鍾魈ドロライより「やきもち」魈が勝手にやきもち焼いたりそれに鍾離がおこったりする話です。
やきもち 近頃、鍾離が望舒旅館へ来なくなった。忙しいのだろう。元々岩王帝君であった頃も、年に一度、生辰の祝いの席以外では基本的には会うことはなかった。鍾離が凡人になってから会い過ぎていたのだ。ぱたりと途絶えた鍾離の往来に、胸の内がぽっかりと空いてしまったような気すら感じる。
自分から璃月港に行けば、いつでも鍾離は歓迎してくれるのであろう。しかし用も無いのに訪ねるのは、些か敷居が高過ぎる。
鍾離様にお会いしたい。
そんなことを思ってしまう自分に嫌気が差した。そう思うのは、精神の鍛錬を怠っているからだと思い、今日は降魔の合間を縫って修行に励むことにした。
しかし、空いた穴は塞がらない。鍾離は今日も来なかったな。などと思ってしまう。
3738自分から璃月港に行けば、いつでも鍾離は歓迎してくれるのであろう。しかし用も無いのに訪ねるのは、些か敷居が高過ぎる。
鍾離様にお会いしたい。
そんなことを思ってしまう自分に嫌気が差した。そう思うのは、精神の鍛錬を怠っているからだと思い、今日は降魔の合間を縫って修行に励むことにした。
しかし、空いた穴は塞がらない。鍾離は今日も来なかったな。などと思ってしまう。
sayuta38
DONE鍾魈短文、だきまくら。鍾離にだきまくらにされる魈のはなし抱きまくら 珍しく夜通しで業務に当たった。堂主の仕事の振り方は、こちらが元岩神である事を知っているかのように容赦がない。
陽の光が海を照らし始め、璃月を今日も輝かせている。その景色を見ること自体は好んでいるのだが、些か目に染みるような気もした。身体が休むことを欲しているのは、少し凡人の生活にも慣れてきたということなのだろう。
ようやく自宅へ辿り着いたが、今日も午後から来て欲しいと堂主に言われているため、一休みした後に家を出なければならない。神であった頃の忙しさとはまた違う種類の忙しさに、疲労とはこのようなことを言うのだろうか。と玄関の扉を開けた。
昨日窓掛けを開けたまま出掛けていたので、程よく居間には太陽の光が入っていた。外套を脱ぎ洋服棚へ納め、折角休むならと睡衣に着替えた。
2428陽の光が海を照らし始め、璃月を今日も輝かせている。その景色を見ること自体は好んでいるのだが、些か目に染みるような気もした。身体が休むことを欲しているのは、少し凡人の生活にも慣れてきたということなのだろう。
ようやく自宅へ辿り着いたが、今日も午後から来て欲しいと堂主に言われているため、一休みした後に家を出なければならない。神であった頃の忙しさとはまた違う種類の忙しさに、疲労とはこのようなことを言うのだろうか。と玄関の扉を開けた。
昨日窓掛けを開けたまま出掛けていたので、程よく居間には太陽の光が入っていた。外套を脱ぎ洋服棚へ納め、折角休むならと睡衣に着替えた。
sayuta38
DONE鍾魈ドロライより、紅葉紅葉 彼と歩いていると、独りで散策をしている時とはまた違った趣がある。季節が移り変わり、先日まで青々としていたイチョウの葉は、段々と色づき黄金の色に染まっていた。ハラハラと舞い落ちるそれを見て、美しいと思った。
それは、隣に歩く彼の瞳と同じ色をしているからそう思うのかは定かではない。太陽の光を浴びて輝き、枝にとどまらず風に乗って飛んでいく様が、どこか魈に似ている気がしたのだ。
「ほら、魈、見てくれ」
風の乗るそれを指でつまんだ。まだ泥にも塗れず、裂けた様子もない綺麗なイチョウの葉だ。それを魈に見せた。すると魈は、しばし考え込んでしまった。また真意がわからないなどと思っているのだろう。ただ、お前の瞳と同じ色をしたそれが綺麗だったから、見せたかったのだ。
914それは、隣に歩く彼の瞳と同じ色をしているからそう思うのかは定かではない。太陽の光を浴びて輝き、枝にとどまらず風に乗って飛んでいく様が、どこか魈に似ている気がしたのだ。
「ほら、魈、見てくれ」
風の乗るそれを指でつまんだ。まだ泥にも塗れず、裂けた様子もない綺麗なイチョウの葉だ。それを魈に見せた。すると魈は、しばし考え込んでしまった。また真意がわからないなどと思っているのだろう。ただ、お前の瞳と同じ色をしたそれが綺麗だったから、見せたかったのだ。
sayuta38
DONE鍾魈小話「いつかの終わり」発狂した魈を閉じ込めてる鍾離の話。ちょっと暗いです。
いつかの終わり「魈、帰ったぞ」
「ぁ……、あ」
「うん。ただいま」
カシャン。と音がした。魈が鎖を引きちぎろうと引っ張る音だ。初めは岩元素の拘束を手首にしていた。しかし、もはや痛みなどを認識しなくなった魈が、いくら皮膚が深く傷つこうともそれをやめなかった。なので柔らかい素材に変えて、鎖で壁に繋いである。
拘束を解けば直ぐ様鋭い爪を首に当てて自害しようとする。あの日見つけた時には、魈は既に発狂していた。いくら名前を呼び掛けても反応しなかった。今までは幾度となく既のところで間に合ってきたが……間に合わなかったのだ。目が合った瞬間、瞬時に消えようとする魈を掴んで咄嗟に洞天に連れて来てしまった。
俺は、まだ魈と離れる決断が出来ていなかった。
1422「ぁ……、あ」
「うん。ただいま」
カシャン。と音がした。魈が鎖を引きちぎろうと引っ張る音だ。初めは岩元素の拘束を手首にしていた。しかし、もはや痛みなどを認識しなくなった魈が、いくら皮膚が深く傷つこうともそれをやめなかった。なので柔らかい素材に変えて、鎖で壁に繋いである。
拘束を解けば直ぐ様鋭い爪を首に当てて自害しようとする。あの日見つけた時には、魈は既に発狂していた。いくら名前を呼び掛けても反応しなかった。今までは幾度となく既のところで間に合ってきたが……間に合わなかったのだ。目が合った瞬間、瞬時に消えようとする魈を掴んで咄嗟に洞天に連れて来てしまった。
俺は、まだ魈と離れる決断が出来ていなかった。
YmLiBItnyo12595
DONE『生辰』鍾離の誕生日を祝いに来た魈が、『暖め鳥』にされた時の話。
・注意事項
捏造解釈設定が多々あります。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第5回『過去お題ウィーク』
第4回お題①『誕生日(生辰)
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
(https://pirirara.com/) 17
sayuta38
DONE鍾魈短文「酒に酔う」酒に酔う 魈は酒を好んで飲まない。勧めても精々一杯飲めば良い方だ。いつでも戦闘に行けるようにしているのもあると思うが、一杯程度ではさほど様子が変わったようには見受けられないので、全くの下戸ではなさそうだ。
今日は夜風もあまりなく、景色を堪能しながら酒を飲むには絶好の日であった。ならば、隣で酒を嗜んでくれる想い人がいれば、尚更良い一日の終わりとなる。
そんな訳で望舒旅館を訪れ、広めの良い部屋を取った。窓から見える景色は申し分ない。あとは、彼が帰ってくるのを待つだけだ。
夜もだいぶ更けた頃、僅かに風が動く感触がした。そのような事をせずとも気配でわかるものだが、少しばかり彼の帰宅を嬉しく思ってしまう。
勝手に待っている間にだいぶ一人酒は進んでしまっていた。盃を置いて部屋を出る。階段を上がり、魈の部屋へと足を進めた。早く会いたい。と思ってしまうのは、些か酒に酔っているのかもしれない。夜風が気持ちよく身体をすり抜けていく。熱を冷ますには丁度良い風だ。
2440今日は夜風もあまりなく、景色を堪能しながら酒を飲むには絶好の日であった。ならば、隣で酒を嗜んでくれる想い人がいれば、尚更良い一日の終わりとなる。
そんな訳で望舒旅館を訪れ、広めの良い部屋を取った。窓から見える景色は申し分ない。あとは、彼が帰ってくるのを待つだけだ。
夜もだいぶ更けた頃、僅かに風が動く感触がした。そのような事をせずとも気配でわかるものだが、少しばかり彼の帰宅を嬉しく思ってしまう。
勝手に待っている間にだいぶ一人酒は進んでしまっていた。盃を置いて部屋を出る。階段を上がり、魈の部屋へと足を進めた。早く会いたい。と思ってしまうのは、些か酒に酔っているのかもしれない。夜風が気持ちよく身体をすり抜けていく。熱を冷ますには丁度良い風だ。
sayuta38
DONE鍾魈ドロライより「龍と鳥」転生ものパロディです。人の姿ではないので注意です。
龍と鳥 何度目かの生を受けた。パリパリと殻を割り空気に触れた。息を吐くと、ぴぃと鳴いた。今回は鳥か。と、まだ何も見えない目を凝らす。共に生まれた兄弟達はしきりにぴぃぴぃと鳴いて、餌を欲しがっていた。我も母から餌を与えられ、少しずつは大きくなっていったが、いささか他の兄弟より小さかったと思う。
ある日眠っていたところ、巣から蹴落とされた。弱肉強食の世界ではよくあることだ。皆生きることに必死なのである。我だって早く巣立って鍾離様を探しに行きたい思いはあった。しかしまだ我は飛べなかった。巣に帰れなくなった者に待っているのは『死』のみである。
見上げた巣には、相変わらずピィピィ鳴く兄弟の姿があった。彼等が悪い訳ではない。ならば、己の力で生きて行かなければならないと地を歩いた。
2597ある日眠っていたところ、巣から蹴落とされた。弱肉強食の世界ではよくあることだ。皆生きることに必死なのである。我だって早く巣立って鍾離様を探しに行きたい思いはあった。しかしまだ我は飛べなかった。巣に帰れなくなった者に待っているのは『死』のみである。
見上げた巣には、相変わらずピィピィ鳴く兄弟の姿があった。彼等が悪い訳ではない。ならば、己の力で生きて行かなければならないと地を歩いた。
sayuta38
DONE鍾魈短文「羽根つき」羽根つき「はっ!」
カンッ!
「あまい!」
カンッ!
「くっ」
なぜ……何故我は、鍾離様と羽根を打ち合うことになったのか、未だに理解出来ていなかった。
「魈」
名を呼ばれ、はっと目を覚ます。しかし、身体が動かない。何故だろうかと昨夜の出来事を思い起こす。
昨夜は鍾離様の生辰を祝う為、宴に呼ばれていた。
皆酒を飲みながら昔話に花を咲かせ、いくつもの酒瓶を開けていたように思う。我も酒を勧められた。降魔を理由に断ろうと思ったが、上機嫌の鍾離様の笑みに逆らえる訳もなく、盃を手にし少しばかり酒を嗜んだ。
途中からあまり記憶がない。頭がふわふわし始めた所で、転ぶと危ないと我を赤子扱いし始めた鍾離様の膝の上に、不敬にも座らされていた。そのまま鍾離様の胸に寄りかかり、ウトウトとしながら皆の話を聞いていたように思う。
2727カンッ!
「あまい!」
カンッ!
「くっ」
なぜ……何故我は、鍾離様と羽根を打ち合うことになったのか、未だに理解出来ていなかった。
「魈」
名を呼ばれ、はっと目を覚ます。しかし、身体が動かない。何故だろうかと昨夜の出来事を思い起こす。
昨夜は鍾離様の生辰を祝う為、宴に呼ばれていた。
皆酒を飲みながら昔話に花を咲かせ、いくつもの酒瓶を開けていたように思う。我も酒を勧められた。降魔を理由に断ろうと思ったが、上機嫌の鍾離様の笑みに逆らえる訳もなく、盃を手にし少しばかり酒を嗜んだ。
途中からあまり記憶がない。頭がふわふわし始めた所で、転ぶと危ないと我を赤子扱いし始めた鍾離様の膝の上に、不敬にも座らされていた。そのまま鍾離様の胸に寄りかかり、ウトウトとしながら皆の話を聞いていたように思う。
sayuta38
DONE鍾魈短文「ままならない」現パロ。魈くんが部屋にこもって出てこなくなったので心配する先生の話。
ままならない 寝室を別にしているのは、何も明確な理由がある訳ではない。勿論共に眠るのは至福のひとときなのだが、眠る時間も起きる時間も違う。敢えて理由をつけるなら、魈は俺が後から布団へ入ったり寝返りを打つ程度でも一瞬目を覚ましてしまうので、ゆっくり眠って欲しいと思った。ということと、たまにお互いの部屋へ行って眠ると新鮮な気持ちになって、心が少し踊ってしまう。ということだろうか。
朝、日の出と共に目覚め、関節を伸ばしながら起き上がる。洗顔などを済ませた後、湯を沸かして珈琲豆を挽く。全自動のコーヒーメーカーをそろそろ購入しても良いのだが、自分の挽き方で味が変わるのが面白く、なんとなく自分でゴリゴリと豆を挽いている。たまに魈が豆を挽いてくれるが、物凄く細かく粉にしてくれるので、その時の珈琲は割と苦い仕上がりになる。それすら楽しいと思ってしまうのだから、どうしようもない。
4367朝、日の出と共に目覚め、関節を伸ばしながら起き上がる。洗顔などを済ませた後、湯を沸かして珈琲豆を挽く。全自動のコーヒーメーカーをそろそろ購入しても良いのだが、自分の挽き方で味が変わるのが面白く、なんとなく自分でゴリゴリと豆を挽いている。たまに魈が豆を挽いてくれるが、物凄く細かく粉にしてくれるので、その時の珈琲は割と苦い仕上がりになる。それすら楽しいと思ってしまうのだから、どうしようもない。
sayuta38
DONE現パロ鍾魈「こたつ」こたつ 想い人の傍であれば、例え無言で時が流れようと、それぞれが別のことをしてようと、気にならないものだ。
テレビも特に必要に感じていなかったのでこの家にはない。共に暖まるのが面白そう。ということで鍾離が購入したこたつに入り、向かい合って座っている。
なるほど、暖かくてここから出たくない。という学友の言葉もわからなくはない。
などと思いながら、魈は冬休みの宿題に手を伸ばした。
今日はバイトも夕方からで、昼過ぎまでは時間が空いている。朝早く目覚めなくとも良いのだが、なんとなく身体が起きてしまう。
それは同居している鍾離も同じようで、休みの日だからとだらだら惰眠を貪るようなことはしていなかった。
朝食を終えた後は、各々温かい飲み物を用意して、好きなことをしている。
2927テレビも特に必要に感じていなかったのでこの家にはない。共に暖まるのが面白そう。ということで鍾離が購入したこたつに入り、向かい合って座っている。
なるほど、暖かくてここから出たくない。という学友の言葉もわからなくはない。
などと思いながら、魈は冬休みの宿題に手を伸ばした。
今日はバイトも夕方からで、昼過ぎまでは時間が空いている。朝早く目覚めなくとも良いのだが、なんとなく身体が起きてしまう。
それは同居している鍾離も同じようで、休みの日だからとだらだら惰眠を貪るようなことはしていなかった。
朝食を終えた後は、各々温かい飲み物を用意して、好きなことをしている。
YmLiBItnyo12595
DONE『前を征く』帝君の視察に、金鵬が護衛として同行した時の話。
・注意事項
捏造解釈設定が多々あります。
一瞬ですが、帝君が子どもの姿になります
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第4回お題①『待ち合わせ』+②今年最後の(視察)
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
(https://pirirara.com/) 11
sayuta38
DONE鍾魈ワンドロ第4回お題「待ち合わせ」待ち合わせ『明日十時、帰離原にてお前を待つ。鍾離』
魈が降魔を終え望舒旅館へ戻ると、手紙が来ているとオーナーにそれを手渡された。自分に手紙を寄越す者といえば、旅人か、稀にだが凡人の場合もある。どうしたものかと手紙を開けば、差出人は驚くべきことに、鍾離であった。
端的ながらもとても達筆で、流れるような筆の運びから繰り出される文章はとても美しく、その上これが魈に向けられたものであり唯一のものである。これは後生大事にしようと思い、再び手紙を丁寧に畳んだ。
しかし、呼び出される理由が全く思い当たらない。けれども、この書き方には覚えがある。夜叉の間でこのような手紙のやり取りを交わしたことがあった。主に魈は手紙を受け取る側ではあったが、これは……そう、果たし状である。と思い至った。
3031魈が降魔を終え望舒旅館へ戻ると、手紙が来ているとオーナーにそれを手渡された。自分に手紙を寄越す者といえば、旅人か、稀にだが凡人の場合もある。どうしたものかと手紙を開けば、差出人は驚くべきことに、鍾離であった。
端的ながらもとても達筆で、流れるような筆の運びから繰り出される文章はとても美しく、その上これが魈に向けられたものであり唯一のものである。これは後生大事にしようと思い、再び手紙を丁寧に畳んだ。
しかし、呼び出される理由が全く思い当たらない。けれども、この書き方には覚えがある。夜叉の間でこのような手紙のやり取りを交わしたことがあった。主に魈は手紙を受け取る側ではあったが、これは……そう、果たし状である。と思い至った。
YmLiBItnyo12595
DONE『遠い背中』救われた後の金鵬が、強くなりたいと願った話。
登場人物⇒金鵬(魈)、浮舎、岩王(鍾離)
以前投稿した『残照』と地続きの話ですが、読まなくても大丈夫です。
・注意事項
捏造解釈設定が多々あります。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第3回お題③ 【遠い背中】
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
(https://pirirara.com/) 8
sayuta38
DONE鍾魈短文「雨」雨 その日は、冷たい雨が降っていた。港からは人々の気配が少なくなり、今日は閑古鳥が鳴いてますよ。などと行商人は言っていた。
こんな日は、魔の気配が活発になる。魈や方士が退治してくれるとはいえ、全く気にしていない訳ではない。きっと濡れ鼠になりながらも、魈は今日も璃月の平和を守ってくれているのだろう。
雨が降っているのに葬儀を行うものもいない。簡単な事務仕事を終えた後は、自宅へ戻っても良いと言われたのでこうして帰路についている。
番傘に落ちる雨音が軽快で、まだまだ雨は止みそうにない。
ふと踵を返して、璃月港の出口へと足を向ける。自宅で骨董品の手入れをするのも良いが、疲弊して帰ってくるであろう彼に薬を持って行こうと思ったのだ。
3418こんな日は、魔の気配が活発になる。魈や方士が退治してくれるとはいえ、全く気にしていない訳ではない。きっと濡れ鼠になりながらも、魈は今日も璃月の平和を守ってくれているのだろう。
雨が降っているのに葬儀を行うものもいない。簡単な事務仕事を終えた後は、自宅へ戻っても良いと言われたのでこうして帰路についている。
番傘に落ちる雨音が軽快で、まだまだ雨は止みそうにない。
ふと踵を返して、璃月港の出口へと足を向ける。自宅で骨董品の手入れをするのも良いが、疲弊して帰ってくるであろう彼に薬を持って行こうと思ったのだ。
YmLiBItnyo12595
DONE『クリスマスの約束』無自覚両想いで互いの距離を測りかねている二人が、クリスマスの約束をした話。
登場人物⇒鍾離、魈、ウェンティ(最後に少しだけ)
・注意事項
捏造解釈設定が多々あります。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第3回お題①+② 【クリスマス】+【ゆびきり(約束)】
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
(https://pirirara.com/) 10